部活事故:高2女子に重い障害 兵庫県に逆転賠償命令

毎日新聞 2015年01月22日 20時57分(最終更新 01月22日 23時40分)

判決後、支援者の集会に車椅子で参加した女性と両脇から手を握る両親=大阪市北区で2015年1月22日午後3時41分、西本勝撮影
判決後、支援者の集会に車椅子で参加した女性と両脇から手を握る両親=大阪市北区で2015年1月22日午後3時41分、西本勝撮影

 ◇大阪高裁、将来の介護費用など2億3000万円支払い命じる

 テニスの部活動中に熱中症で倒れて重い障害が残ったとして、兵庫県立龍野高校(同県たつの市)の2年生だった女性(24)=兵庫県太子町=と両親が県に約4億7000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が22日、大阪高裁であった。森宏司裁判長は女性側の請求を退けた1審・神戸地裁判決を変更し、将来の介護費用や慰謝料など計約2億3000万円の支払いを県に命じた。

 森裁判長は、顧問が出張のために練習に立ち会わない代わりに、練習内容を主将だった女性に指示していたことについて「熱中症に陥らないよう指導すべきだった」と指摘。安全配慮義務違反があったと認定した。

 判決によると、女性は2007年5月24日正午ごろ、学校近くの市営テニスコートで他の部員と練習を始めた。約3時間後、熱中症で倒れて一時心肺停止となり、低酸素脳症による意識障害に陥った。今も手足を動かすことや話すことができず、寝たきりの状態で生活している。

 判決は、当日の状況について(1)普段は夕方に部活動をしていたのに、日差しの強い日中に練習をした(2)定期試験の最終日に当たり、練習は10日ぶりで、部員は睡眠不足の可能性があった(3)女性にとって顧問が不在時に練習を仕切るのは初めてだった−−と大きな負担がかかる状況だったと指摘した。

 更に、顧問が指示した練習メニューは密度が濃く、これまでの練習ぶりから女性が率先してこなすことが予想できたと判断。「練習の様子を直接監督できない以上、部員の健康状態に配慮すべきだった」と述べ、練習を軽くしたり、水分補給の時間を設けたりし、熱中症になるのをあらかじめ防ぐべきだったと結論付けた。賠償額のうち将来の介護費用を約1億円と算定した。

 「顧問は常時練習に立ち会う義務がある」との原告側の主張については1審同様に退けた。

 県教委は「判決内容を検討し、対応を考えたい」とコメントした。【服部陽】

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