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<イスラム国>規律低下…イラクで戦闘長期化、内紛や脱走者

毎日新聞 1月20日(火)20時27分配信

 【カイロ秋山信一】日本人とみられる2人を人質に取り、殺害を警告したイスラム過激派組織「イスラム国」の内部で最近、内紛や脱走者が相次いでいたことがイラク北部の住民の証言などで分かった。昨年6月以降、イラクとシリアで勢力を伸ばしてきたイスラム国だが、戦闘が長期化する中で士気や規律が低下している可能性がある。

【日本人2人殺害を警告 ネットに映像】

 イラク北部では実効支配地域の住民を強制的に徴兵する動きも出ている。近く本格化するとみられる政府側の攻勢に備えて、部隊の立て直しを迫られている模様だ。

 一方、イラクで今月、クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガの訓練を行っているカナダ軍特殊部隊が、イスラム国から攻撃を受け、銃で応戦したことが19日、判明した。米軍主導の有志国連合は昨年8月にイスラム国への空爆を開始し、政府軍やペシュメルガへの訓練も進めてきたが、現地に派遣している米欧諸国がイスラム国と地上で交戦したのは初めてとみられる。

 イラク北部モスルの住民やイラクメディアによると、モスルでは昨年12月、任命されたばかりのイスラム国の「知事」が内通の疑いをかけられて処刑された。シリア東部デリゾール県でも今月、「知事」人事を巡って抗争が起きた。本拠地があるシリア北部ラッカでは、逃亡を図った外国人戦闘員約100人が処刑された。

 こうした中、イラク北部の農村部では、若い住民らを戦闘要員として徴集する動きが強まっている。タルアファル近郊の村では徴兵を拒まれたため、村を攻撃し、3人を殺害。約250人を捕虜にした。イスラム国は従来、複数のメンバーの推薦がなければ、新規に戦闘員を加えることはなかった。だが政府側の攻撃が強まるとの観測が広がる中、戦闘要員の確保を急いでいるとみられる。

 ただ、政府側も軍の再編に手間取っており、実際に攻勢に出られるかは不透明だ。昨年6月にイスラム国が大規模侵攻を始めた際、政府軍はほとんど反撃せずに敗走を重ねた。9月に就任したアバディ首相は、汚職容疑で数十人の軍幹部を更迭するなど立て直しを図っている。

最終更新:1月21日(水)19時0分

毎日新聞

 

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