相続にも関係する住宅資金贈与の期間延長・非課税枠拡充や結婚・子育て資金の非課税贈与の新設が、2015年度の税制改正大綱に盛り込まれています。それぞれの用途でまとまったお金を移動できるメリットはありますが、実際に相続が発生するまでの長いスパンでみるといいことばかりとは限りません。今回は非課税限度額が最大3000万円と大きい住宅資金について、このまま実現した場合どんな点に注意すべきか考えてみましょう。
贈与される側 | 贈与する側 | 期 間 | 非課税限度額 |
20歳以上で所得 2000万円以下 | 父母や祖父母など (直系尊属) | 2014年末まで | 最大1000万円 |
15年1月~12月 | 最大1500万円 | ||
16年1月~16年9月 | 最大1200万円 | ||
16年10月~17年9月 | 最大3000万円(注1) | ||
17年10月~18年9月 | 最大1500万円(注2) | ||
18年10月~19年6月 | 最大1200万円(注3) |
(注1)消費税が10%に上がらなかった場合は最大1200万円
(注2)消費税が10%に上がらなかった場合は最大1000万円
(注3)消費税が10%に上がらなかった場合は最大800万円
ただしそれは、援助を受ける側がいまの時点で実感できる「入り口」のメリットにすぎません。贈与を有効に活用できるかどうかは、援助したお金が将来の相続にどういう影響を及ぼすのかという「出口」まで見据えた選択が重要になってきます。
多額のお金を生前に非課税で移動できるという点では、住宅資金贈与は遺産の額を減らすことに直結します。つまりこの制度を使って贈与した資金は、相続税の計算をする際に遺産の一部としてカウントされることはないため、相続節税にも役立つ場面があるはずです。
ただし例外もあります。分かりやすいのは、住宅資金贈与を使って家を持った子が、その後亡くなった親の自宅も引き継ぐことになるケースです。故人の住居を相続する際には、相続税の計算で土地の評価が最大80%も下がる「小規模宅地等の特例」という優遇策があります。ただし対象になるにはいくつかの要件を満たす必要があり、住宅を引き継ぐ子が持ち家に住んでいた場合には使えないことになっています。
例えば「住宅資金贈与が拡充されているうちに」と焦って非課税贈与を使いマイホームを購入したものの、結果的には「5000万円の土地が80%減の1000万円の評価で済む特例を使った方が得だった」というケースも出てくるかもしれません。援助によって親の遺産と子の住宅ローン負担が減るという目先のメリットばかり見ていると、いざ相続を迎えたときにかえって自宅の引き継ぎ負担が大きくなることが起こりうるのです。