Webな人の大勉強会『CROSS』が、カオスなセッションを用意するまっとうな理由【対談:法林浩之×CROSS実行委員】
2015/01/23公開
1月29日、今年で4回目の開催となる『エンジニアサポート CROSS』が横浜・大さん橋ホールで開催される。
Webに関わる人たちが、業種や担当領域の壁を越えて交流するのを目的としたこのイベント。今回のテーマは「進化と淘汰」だ。
ちょっとドキッとするようなテーマにした理由を、実行委員長のニフティ山口亮介氏と、昨年までの実行委員長である森藤大地氏(同じくニフティ)に聞いたところ、
「淘汰の先には進化がある。その思いを共有し、エンジニアには進化し続けてほしい」
という願いがあるそうだ。
今年の『CROSS2015』では、その進化を後押しするどんなセッションが用意されているのか。根掘り葉掘り聞いてみた。
「同じ仕事だけど違うやり方」、「違う仕事でも同じことしてる人」から学ぶ
写真中央が実行委員長の山口亮介氏。その右隣が、昨年まで委員長をしていた森藤大地氏
法林 『CROSS』は毎年いろんな内容のセッションを盛り込んでいますが、なんでああいうスタイルになったんですか?
森藤 もともとエンジニア向けの勉強会って、Node.jsの勉強会なのにオフ会ではSSL問題について話していたり、Perlの集まりなのにDockerの勉強をしていたりと、いろんな分野に話題が行き来するじゃないですか。それに、意外とオフ会で話していることの方が勉強になったりする。
法林 ありますね、そのパターン。
森藤 なので、いっそ「いろんな技術分野がクロスする」のを前提に勉強会を開催してみたら面白いんじゃないかというのが、『CROSS』の始まりでした。今年も、セッションのバラエティさには自信があります。
法林 今年の開催テーマは「進化と淘汰」ということですが、なぜこれにしたのか教えてください。
森藤 最初、山口から「今年は進化と淘汰でどう?」と聞かされた時はピンと来なかったんですよ。「いいこと言ってる風だけど、結局何が言いたいの?」という感じで(笑)。
法林 (笑)。
森藤 僕は今年、プログラム委員をやることになっていたので、「これじゃプログラム組めないよ」って。その後、山口とはけっこう話しましたね。
今年の「テーマ決め」で長時間話し合った時の様子を語る、山口氏と森藤氏
法林 じゃあぜひ、その真意を今年の実行委員長に伺いたい。改めて、なぜ「進化と淘汰」なんですか?
山口 正直言うと、最近は分かりすくて大きな技術トレンドがないよなぁと悩みまして(笑)。さっき森藤が話していたDockerしかり、その前あたりから話題になっていたCIしかり、去年の前半~半ばくらいまではけっこういろんなトピックスがあったと思うんですよ。
でも、今さらDockerとかをトピックスにしてもなぁ……と思いながら、そういえば「話題の技術を使ってみた後」の経験談ってガッツリ聞く機会があまりないよなと考えまして。
例えばCIを実践する際、「なんでJenkinsを選んだのか?」、逆に「なんでJenkinsを使わずCircleCIを選んだのか」、「CIやろうと思ったけど結局捨て切れなかったプロセスは?」みたいな話を、パネルディスカッションでやるのは面白いかもなーと。
法林 なるほど。
山口 Webが発展してきた裏側には、そうやって新旧の技術を取捨選択しながら、それぞれの会社、それぞれのエンジニアがベターチョイスを探ってきた歴史があると気付いたんです。それで、今年のテーマを「進化と淘汰」にしようと決めました。
森藤 僕もここまで聞いて、初めて意図が分かりました(笑)。同じ技術でも、エンジニアによって受け取り方は百者百様であると知ることが、エンジニアが成長するきっかけになるだろうと素直に思えたので、良いテーマだな、と。
法林 「同じ仕事だけどいろんなやり方でやっている人」、または「違う仕事でも同じことしてる人」との交流は勉強になるし、『CROSS』のコンセプトとも合致しますね。それから、『CROSS』は基本的に複数人が同時に登壇する点も特徴的。講演じゃなくて、パネルディスカッションがメインです。
森藤 ええ。登壇者の方々はその方が資料を作らなくていいし楽みたいですよ(笑)。
全22セッション&お楽しみコーナーのウマい回り方
『CROSS』のセッションは、大きな会場を区切って複数同時に行われるのが特徴。2015のプログラム一覧はコチラ
法林 で、具体的なセッションの話を聞きたいんですが、今年も面白そうなものばかりですね。オススメのセッションはどれですか?
山口 森藤さんは、「はやぶさ2開発者に聞く~一度きりのテスト対策~」(A会場-1)でしょ、たぶん?
森藤 そうですね。最近、仕事でテスト担当になることが多いので、楽しみにしています。登壇者は、はやぶさ2のロボットアーム制御エンジニアだったJAXAの成田慎一郎さんと、TDD(テスト駆動開発)でおなじみの和田卓人さん、あとはテレビ連動のアンケートシステムを担当していたバスキュールの鳥居剛司さんです。
法林 これまたバラエティに富んだ人選ですね。
森藤 どこまでをテストし、どこまでをシミュレーションするのかなど、それぞれ違うシステムの担当者たちに話を聞くのはすごく勉強になると思います。
法林 山口さんは?
山口 僕は、「引継ぎ式年遷宮~私の引き継ぎ・あなたの世界の引き継ぎ~」(C会場-3)ですかね。
法林 どういう方が登壇するんですか?
山口 青森県庁の杉山智明さんとかです。青森県庁に限らず、県庁って基本的に3年で部署を異動するらしいんですよ。つまり、彼らは「引き継ぎのプロ」なんです。
法林 へー。知らなかった。なかなか聞けない話が聞けそうですね。それにしても、今紹介してもらったような仕事用のかっちりしたセッションがあるかと思えば、17:30からは「サントリープレゼンツ美味しいビールの注ぎ方講座」とか「美人と乾杯!! 広報・人事にとってのカッコいいエンジニアとは?」とか、ユルめのセッションもありますね。
森藤 『CROSS』は平日開催なので、会社に「参加したいので許可を下さい」と言いやすいセッションが必要不可欠なんです。そこに、楽しみに行く感覚で「参加してみたい」と思ってもらえるようなオモシロ系セッションをあえて同居させている。
山口 参加費は3000円と有料ですが、ぜひ、勤め先と交渉して参加費を出してもらった上で足を運んでほしいです。アンカンファレンスでのビールの他に、ランチも用意していますし。
入念に準備してきたプログラム内容を法林氏に説明する2人
森藤 ちなみに、ビールはサントリーさんが1トン分用意してくれます。
法林 1トン!? すごいなぁ。
山口 最初は缶ビールのうしろに書いてある「お客様相談窓口」に電話するところから始めたんですよ。そしたら、サントリーさんが快諾してくれた。ダメもとでもお願いしてみると案外うまくいくってことを、声を大にして言いたいです(笑)。
法林 次は、お2人が実行委員じゃなくイチ参加者だったとして、どのセッションを回りたいと思うのかを教えてもらえますか?
森藤 あー、どれだろうなぁ。
法林 森藤さんは「36歳、Webエンジニアの場合」でお願いします。
森藤 さっきA-1のセッションの話はしたので、朝イチはあえて「俺はどうしてそのデータストアを選択したのか~銀河と小宇宙を語る~」(C-1)に行って、その次はさっき山口が挙げた「引継ぎ遷宮」(C-3)、最後は「全文検索エンジン群雄割拠~あなたが使うべきはどれだ!」(C-4)か、「WebエンジニアはIoTをどうあつかえば良いのか」(D-4)ですね。最後のセッションが迷うけど、たぶん、検索エンジンのセッションはUstされると思うので、IoTの方に参加します。
法林 Ustのことまで考えて選ぶんだ(笑)。じゃあ、山口さんは?
山口 僕は「37歳、インフラ系エバンジェリストの場合」として考えますね。うーん、最初は「女子大生UXデザイン概論」(B-1)かな。
法林 インフラの仕事関係ない!(笑)
山口 登壇者にモデルさんがいるようなので(笑)。このセッションのオーナーをしているデザイナーさんはかなり面白い方なので、内容にも期待しています。それから「今こそ語るエンジニアの幸せな未来」(大会場-3)を聞いて、最後が介護ですね。「超高齢化社会到来!介護の現状とこれから我々IT業が出来る事とは?」(A-4)です。
法林 ほー、最後のセッション、てっきり山口さんは同じ時間に大会場でやる「先達に聞くこれからのエンジニア像」に行くかなーと思っていました。パネラーがGoogleの及川卓也さんや楽天のよしおかひろたかさん、テコラス技術研究所の伊勢幸一さんと、大御所ぞろいですし。僕はもう40代なので、このセッションをぜひ聞きたいと思っています。
山口 そうなんですよ、最後のセッションはどれにするかすごく迷いますよね。が、介護はIT化が最も遅れている分野なので、一度聞いてみようと。その後はアンカンファレンスには出ずに、別会場でやっている美人広報&人事セッションに行きたいです。
森藤 ちなみに、今年は法林さんにもセッションをお願いしていますよね?
法林 そうそう。セッションというか、並催のお楽しみコーナーでやる「エンジニア界隈に白黒つけろ!CROSS綱引き大会(仮)」8言語対抗の解説ですよ。好きなプログラミング言語でチーム分けして、なぜか綱引き対決をするという……僕、何を解説すればいいんですか?
山口 お任せします! ここは『デイリーポータルZ』さんとの共催コーナーなので、何でもアリです(笑)。
イベント運営をやることが、開発業務にも活きる?
多数のTechイベントに運営側として参加する法林氏との対話は、次第に「イベント運営あるある」に
法林 ところで、山口さんも森藤さんも、ニフティに勤める会社員じゃないですか。社員なのに、ここまで大きなイベントの、しかも平日開催のイベントの実行委員をやっていてもいいんですか? 「仕事しろ」とか言われない?
山口 ええ。ウチの会社は、こういう取り組みを人材育成の一環として考えてくれるんですよ。イベントを主催したりする人を支援する制度まであります。
法林 ニフティさん、良い社風だなぁ。そういう場で人脈を作ることが、業務に活きてくることもありますしね。
森藤 僕もそう思います。あとは、前回まで『CROSS』ではニフティを表に出さずに来ましたが、今年から正式にニフティの冠で開催することもあるので、会社は前向きにとらえてくれています。
山口 昨年までは、冠なしの方が他の企業もスポンサーしやすいだろうと思って意図的にニフティの色を消してきたのです。ただ、今回はJAIPAクラウド部会が共催してくださることになったので、一応「会社と共催する形式」にした方がいいだろうと。
法林 今回の会場は横浜ですが、前回は新宿でしたよね?

両側を海に囲まれた会場・横浜港大さん橋ホールの地図はコチラ(Googleマップ)
山口 主催者も実行委員長も変わったので、新しい会場がいいかなと思って、「船出」のイメージの横浜にしました。まぁ、というのは前向きな理由で、実は去年まで利用していた会場が押さえられなかったのも理由です。
法林 前回の参加者が890人、これくらいの規模のスペースって意外とないんですよね。
森藤 そうなんです。『CROSS』はさらに、大きな会場を衝立で区切ってザワザワした中で各セッションを進めたいという狙いがあるので、会場探しは大変です。
法林 200人収容の会議室を5つ借りた方が安いし、設営も楽なんですよね。
山口 でもそういう会場ではやらずに、あえて一体感を出しています。
森藤 イメージしたのはお祭りの夜店です。どうせ行くなら、盛り上がっている店に立ち寄りたくなるじゃないですか。ITイベントも、そういう感じで聞きに行くセッションを選んでもいいはず。
法林 そのたとえはすごく分かりやすいなぁ。
山口 僕は去年、CPUの進化とクラウド事業者に関するセッションに出席していたんですが、その隣の「エンジニアの恋・愛・セックス のDevOps、ホントのところどうしたらいいの」というセッションには、二村ヒトシさんというAV監督の方が登壇していたんですね。すると、二村さんがキワどい話をするたびに、僕のいた会場から人がどんどん減っていきました(笑)。
森藤 そのインタラクティブ性こそが、CROSSの特徴だと思います。
法林 なるほど。それに、インタラクティブという点では、各セッションのモニターにも聴講者のTweetがすぐ流れるようになってたりしますよね。
山口 はい。前方に2つモニターを用意して、片方に資料、片方に参加者のTweetを投影するようにしています。エンジニアって、あんまり手を挙げて質問しないじゃないですか。すごく大切な質問を、懇親会でぼそっと言ったりするので、会場にいるうちにリアルタイムでそれを引っ張りだしたいという狙いです。
森藤 その設営がまた、お金掛かるんですよ。だから前回は、LANケーブルをかしめるところから、法林さんに手伝ってもらいました。
法林 ネットワークの構築は、CONBU(コンファンレンス・ネットワーク・ビルダーズ)の皆さんにも依頼していますよね。
山口 今年は実行委員のメンバーにもなっていただきました。そうやって、一緒にやっていくのが『CROSS』らしさです。
法林 みんなで一緒にイベントを作っていく感じですよね。
森藤 去年は、参加者の方に「CROSSってかっちりしたイベントじゃないけど、あたたかみがあるし、もてなされてる感があって好き」と言ってもらえたのがうれしかったです。
山口 その良さを残しつつ、今回は本では読めないような「進化と淘汰」を追体験できる場にしますよ!
法林 そうですね、29日はがんばりましょう!
>> エンジニアサポート CROSS 2015の詳細情報はコチラ
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取材・文/片瀬京子 撮影/伊藤健吾(編集部)