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アングル:近畿・中部で海外観光客が急増、私鉄株押し上げ 

2014年 12月 3日 17:25 JST
 
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[大阪市 3日 ロイター] - 訪日外国人観光客の大幅な増加が、近畿圏や中部圏の私鉄各社の株価を押し上げている。人気の京都などを目当てに関西地区への海外旅行客の流入が大幅に増加しているためだ。

また、リニア開業による波及効果や大阪市営地下鉄の民営化をめぐる思惑も、追い風になっており、首都圏の私鉄株を引き離す上昇率となっている。

<高まる業績期待>

私鉄・JR各社の9月末から12月3日終値までの株価を比較すると、首都圏では9社中6社が上昇したのに対し、中部以西は8社全てで上昇した。そのうち2桁パーセントの上昇となったのは、首都圏では京成電鉄(9009.T: 株価, ニュース, レポート)、相鉄ホールディングス(9003.T: 株価, ニュース, レポート)の2社。

中部以西では、西日本旅客鉄道(9021.T: 株価, ニュース, レポート)、東海旅客鉄道(9022.T: 株価, ニュース, レポート)、京阪電気鉄道(9045.T: 株価, ニュース, レポート)、西日本鉄道(9031.T: 株価, ニュース, レポート)の4社にのぼった。

11月下旬以降、公募増資や転換社債型新株予約権付社債(CB)の発行を発表した南海電気鉄道(9044.T: 株価, ニュース, レポート)と名鉄(9048.T: 株価, ニュース, レポート)も、発表前の時点で上昇率は2桁の上昇となっていた。「関西の電鉄株はある意味、蚊帳の外に置かれていた感じがあったが、ここに来て出遅れ感から見直されている」(国内証券)という。

買い材料は業績期待だ。9月中間期の決算発表時点で大手私鉄・JR17社中11社が、今期純利益予想を上方修正しているが、うち8社が中部以西の企業だ。

<訪日外国人の絶大な効果>

電鉄業界では、本業の鉄道事業で輸送人員数が底堅く推移しているほか、訪日観光客の増加もホテル事業などの追い風となっている。

また、関西電鉄株には「京都や関空に向かう外国人観光客の増加が(株高の)背景にある」(国内証券)との見方が広がっている。

日本政府観光局がまとめた2014年1月─10月の訪日外国人数は、前年同期比27.1%増の1100万9000人で、年間では過去最高の1300万人に達するハイペース。10月だけで前年同月比37.0%増の127万1700人を記録した。

どの地域に海外からの観光客が流入しているのかという詳しいデータはないが、法務省の発表した出入国管理統計の中の空港別の入国者数をみると、今年10月は国内最大の成田が前年比15.4%増の45万4453人なのに対し、関西は同48.1%増の30万2954人と急伸しているのが目立つ。関西地域に海外からの観光客が吸い込まれるように流入していることがわかるデータだ。

この背景には、関西国際空港がLCC(ローコスト・キャリア)の誘致に積極的という背景もあるようだ。14年冬期に関空に就航するLCC国際線旅客便数は、週174便と前年同期から19便増加。成田空港(102便)を大きく上回った。

日銀大阪支店は10月にまとめたレポートで、近畿地方は他地域に比べ「訪日外国人増加に伴う関連需要の恩恵を強く受けている可能性が高い」と指摘。関空が「日本最大のLCC乗り入れ空港として高い機能度を発揮している」ことも背景にあると分析している。

<大阪市営地下鉄の株式上場案>

また、中部地区の鉄道会社には、リニア新幹線整備による中部経済活性化への期待が出ているほか、九州の西鉄にはアジアへの物流事業の好調さが波及している。

さらに関西では、橋下徹・大阪市長が訴える大阪市営地下鉄の民営化と、新会社の株式上場への期待感も株高の背景となっている。

大阪市交通局の2013年度における地下鉄事業の営業収益は1557億円。関西の私鉄各社と比較すると、大阪と名古屋を結ぶ近畿日本鉄道(9041.T: 株価, ニュース, レポート)の鉄道事業の売上高1583億円に次ぐ規模だ。経常利益は303億円と、京王電鉄の連結全体の302億円と同水準にある。

大阪府市による民営化基本プランの中で、市営地下鉄は市が100%出資する株式会社に衣替えした後、株式上場を目指す案が示されている。市が保有する地下鉄の資産価値は8500億円強に上るとされている。

鉄道事業は初期投資にばく大な費用がかかるとされる。すでに建設済みで、かつ経常ベースで年300億円以上の利益を生み出す地下鉄事業に、民間企業が参画するメリットは少なくない。

検討が続く市営地下鉄の新線「なにわ筋線」が実現すれば、新線と接続するとみられる京阪や、相互乗り入れ運転の実施が期待される南海の輸送人員増に寄与することも見込まれている。

岩井コスモ証券・シニアアナリストの大西等氏は、大阪の鉄道網は首都圏に比べ、鉄道会社同士の相互乗り入れが進んでいない現状があるなか、「橋下氏が市長にとどまれば、地下鉄民営化への期待感も続くこととなる」と指摘。「民営化でコストダウンが進み運賃が下がれば、利用者が拡大するうえ、都市開発も進む」とし、既存の鉄道各社の事業にもプラスになるとみている。

<議会のハードル>

ただ、民営化には議会という大きなハードルがある。11月21日の大阪市議会では地下鉄民営化に向けた関連条例案が反対多数で否決された。直前には市交通局長が公募事業に入札参加資格を持つ民間事業者と飲食をともにしたという不祥事が明るみに出た。

府議会では、自民・公明などの野党が過半以上を占め、すんなりと民営化法案が成立する状況にはない。府市の二重行政解消に向けた「大阪都構想」も実現には流動的な側面がある。

こうしたなか、安倍首相が衆院解散と総選挙を表明。かねてから国政進出への意欲が取りざたされていた橋下市長の去就に注目が集まったものの、11月23日には出馬見送りを表明した。白紙となった地下鉄民営化について、同市長は来年2月の市議会に条例案を再提出する方針という。

(長田善行 編集:伊賀大記)

 
 
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