イスラム国拘束:解放交渉、トルコが鍵

毎日新聞 2015年01月22日 20時54分(最終更新 01月23日 00時40分)

イスラム国の殺害予告を巡る経緯
イスラム国の殺害予告を巡る経緯

 【アンマン大治朋子、パリ宮川裕章、カイロ秋山信一】イスラム過激派組織「イスラム国」とみられるグループが日本政府に対し人質2人の殺害を予告し身代金を要求した事件で、過去に「イスラム国」との交渉で人質の解放に成功した実績があるトルコが交渉でカギを握る有力な国として浮上している。安倍晋三首相は就任以来、トルコを2度訪問し良好な関係を築いており、エルドアン大統領との20日の電話協議で人質解放に向けた協力をとりつけた。交渉期限が23日午後に迫る中、政府は友好国の協力を得ながら人質解放の道を探っている。

 「日本人の人質に関して、あらゆる情報を共有する」。トルコのアナトリア通信によると、エルドアン大統領は20日の安倍首相との電話協議で、人質解放に協力する意思を伝えた。

 「イスラム国」の実効支配地域に隣接するトルコは、「イスラム国」の内情に最も詳しい国の一つとされる。北大西洋条約機構(NATO)加盟国だが「イスラム国」を空爆する有志国連合にトルコ国内の基地利用を原則、認めないなど、米欧とは一線を画し、独自の姿勢を貫いている。

 昨年、トルコと「イスラム国」とのパイプが注目される事件があった。イスラム国が昨年6月にイラク北部に大規模侵攻した際、モスルのトルコ総領事館の領事ら49人を拉致した。その前日には同じ地域で32人のトルコ人のトラック運転手らも拘束。地元メディアによると運転手らが勤めるトルコの会社に500万〜1000万ドル(約6億〜12億円)の身代金を要求したとされる。

 トルコ政府は両事件の人質解放に向けた交渉を開始。運転手らは昨年7月3日、領事らも同9月20日に解放された。交渉の経緯は不明だが、人質解放の交換条件としてトルコ治安当局が拘束していた「イスラム国」の戦闘員ら180人を解放したとの指摘がある。米ニューヨーク・タイムズ紙によると、エルドアン大統領は「金銭的な関係はなかった」と身代金の支払いを否定したうえで、戦闘員との交換について「そういうことはあり得る」と述べ、取引の可能性を示唆した。

 地元メディアによると、トルコ当局に対し、米国は戦闘員を釈放しないよう強く求めていたとされる。また、英ガーディアン紙などによると、英国人2人を含む複数の欧州出身者も解放されたが、各国とも事前に連絡を受けておらず、英外務省がこうした対応に反発しているとの情報もある。

最新写真特集