東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

邦人殺害警告 救出の糸口全力で探れ

 「イスラム国」とみられるグループが日本人二人の身代金を要求し、殺害を警告した。許し難い脅迫だが、人命尊重が第一だ。日本政府は、二人の救出に向けた糸口を、全力で探ってほしい。

 中東訪問中だった安倍晋三首相は予定を早めて帰国し、関係閣僚会議で「あらゆる外交ルートを最大限活用し、二人の解放に手段を尽くすよう」指示した。

 政府は二人が、昨年シリアで拘束された湯川遥菜さんと、取材でシリアに向かった後、行方不明になったフリージャーナリストの後藤健二さんと判断した。

 外務省は、内戦が続き、「イスラム国」が支配地域を広げるシリアに退避を勧告し、渡航を延期するよう危険情報を出していた。

 二人は危険を承知だったのかもしれない。湯川さんが設立した民間軍事会社の業務は「危険地域での情報収集や警備」であり、後藤さんは「何があっても責任は私にある」と語っていたという。

 シリア入りの経緯はそれぞれあるのだろう。しかし、邦人保護は政府の重要な役割だ。不当な要求に屈する必要はないが、救出に力を尽くすのは当然である。

 グループが要求した二億ドル(約二百三十五億円)は、首相が訪問先のエジプトで演説した際に表明した「『イスラム国』がもたらす脅威を少しでも食い止めるため」に拠出する支援額と同額だ。

 しかし、見当違いも甚だしい。

 二億ドルは「人道支援、インフラ整備など非軍事の分野」や「イラク、シリアの難民・避難民支援、トルコ、レバノンへの支援」であり、「イスラム国」側が指摘する「女性や子どもを殺害する」ものでは決してない。

 政府は二億ドルが戦闘を直接支援するものでないことを正確に、かつ粘り強く訴えるしかあるまい。

 日本は戦後、海外で武力の行使をしない「平和主義」に徹し、中東外交では欧米と一線を画してきた。「イスラム国」対象の「十字軍」に参加した事実もない。

 「イスラム国」側は、こうした日本の立場を理解し、二人を速やかに解放すべきである。

 政府は身代金の支払期限を二十三日午後二時五十分とする。不当な要求に応じれば、日本は脅しに弱い国とみなされ、同様の事件が繰り返されかねない。それでは「イスラム国」側の思うつぼだ。

 「イスラム国」相手に手段も時間も限られた難しい交渉だが、二人の解放に向けて、政府はあらゆる可能性を追求すべきである。

 

この記事を印刷する

PR情報





おすすめサイト

ads by adingo