社説:オバマ演説 対テロへの強い指導力を

毎日新聞 2015年01月22日 02時35分

 耳に心地よい言葉は並ぶが、実体には疑問が残る。そんな演説ではなかったか。米議会で一般教書演説を行ったオバマ大統領は、テロリストを追い詰め組織を解体することに強い意欲を表明した。過激派組織「イスラム国」が直前に日本人人質2人の殺害を予告しているだけに、心強く感じた日本人は多いだろう。大統領の意気込みは評価したい。

 だが、演説で強調した「よりスマートな米国の指導力」には疑問もある。中東で新たな地上戦に引き込まれずにアラブ諸国を含めた広範な同盟(有志国連合)を形成し、シリアでは穏健な反体制派を支援している。テロ組織の拠点をたたくため、米国は大規模な軍を送る代わりに北アフリカなどの国々と連携している。大統領はそう説明した。

 やみくもに軍事力を使うのではなく、軍事と外交の力を結合し、粘り強く固い決意のもと、尊大にならずに世界をリードする。それがオバマ政権のやり方なのだという見解は一応、理解できる。

 だが、現実を見れば、米軍のイラクやシリアでの空爆が「イスラム国」の拡大阻止に役立ったとしても、地上軍投入なしに組織を掃討できるとは思えない。シリアの内戦収拾のめども立たない。アフリカではボコ・ハラムのようなイスラム過激派が勢いを増している。そう考えると、演説は国内向けの自画自賛に聞こえかねない。より現実的な分析と実効性のある対策を示すべきだ。

 ブッシュ前政権の「テロとの戦争」路線を修正しつつアフガニスタンやイラクからの米軍撤退を進めてきたオバマ政権の苦労は分かる。だが、いまやテロ組織は世界各地に拡散し、欧州や日本にもテロの脅威は及んだ。新たな国際連携による、新たな対策が必要なことは自明である。その陣頭に立つのは米国しかない。

 どんな対策と国際連携が必要なのか。具体的には米国が2月に開催を予定する国際会議などで話し合うのが適切だろう。日本も国際連携に加わるのは当然だが、路線転換を考える必要はあるまい。日本が中東に独特の地歩を築いてきたのは、平和的な姿勢が中東・イスラム諸国の共感と信頼を勝ち得たからだ。人質の殺害予告によって日本外交が否定されたと考えるのは的外れだし、国際情勢が激動する折、テロ組織に全く敵視されない国があるとも思えない。

 米議会は昨年の中間選挙を受けて野党・共和党が上下両院で多数派になった。任期があと2年のオバマ大統領にはレームダック(死に体)化の危険もつきまとう。だが、米国が政争に明け暮れる影響は重大だ。オバマ政権が世界の懸案に強い指導力を発揮することを期待したい。

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