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<宮崎強姦ビデオ>被害女性が手記「人生終わった恐怖」

毎日新聞 1月21日(水)21時3分配信

 宮崎市のオイルマッサージ店での女性客らに対する強姦(ごうかん)罪などに問われた経営者の男(44)の弁護士が、男が盗撮したビデオの処分を条件に被害者側に告訴取り下げを求めた問題で、被害女性が代理人弁護士を通じて21日、手記を公表した。示談交渉で初めてビデオの存在を知り「人生が終わったような恐怖を覚えた」と訴えている。被害者側弁護士も当時の経緯を文書で正式に発表した。

 被害者側弁護士によると、起訴前の昨年3月に被告側弁護士から「無罪の決定的証拠であるビデオを法廷で上映することになるが、被害者はそれでもいいと考えているのか」などとして、ビデオを処分する代わりに示談金なしで告訴を取り下げるよう求められた。翌日、捜査機関にビデオの複製が提出されたが、その後も「ビデオの原本をどうするか」などと示談を迫られた。

 女性は手記で、被告側から交渉を持ちかけられた当時の気持ちを「脅されたような恐怖でいっぱいでした。私に返して当然のビデオを処分することが私のメリットであるかのような説明も納得できるものではありませんでしたし、(示談金)0円という提案も私を被害者としてすら認めないというように感じられた」としている。

 法廷での証言のため、ビデオを確認しなければならず「自分がレイプされている映像を見て、家に帰りつくと猛烈な頭痛に襲われました。夢に出てきて眠れず、次の日は仕事を休んでしまいました」と2次被害に苦しんだ経験も明らかにした。一方で問題が報道され、インターネット上の励ましの意見を見て「泣きそうになりました。頑張って法廷に立った甲斐(かい)がありました」とつづっている。

 被害者側弁護士などによると、原本はまだ被告側が所持しているとみられる。捜査関係者によると、他の被害者女性も盗撮されており、女性は「一刻も早く盗撮ビデオを私や他の被害者に返してほしい」と訴えている。

 起訴状によると、経営者は2010〜13年、店で20〜40代の女性客らに暴行したなどとして14年2〜7月、強姦と強姦未遂、強制わいせつ罪で起訴された。起訴内容を否認している。被告側弁護士は示談交渉について「被害者の不利益が大きいと考え、選択肢として示した」としている。【菅野蘭】

 ◇弁護士倫理問う声「被害者に2次被害」

 今回の問題に専門家からも弁護士倫理などを問う声があがっている。性犯罪被害者を支援するNPO「レイプクライシスセンターつぼみ」代表の望月晶子弁護士は「いかに罪を軽くするかを目指し、手段を選ばない弁護士もいる。今回の被告側弁護士の交渉も、そうした手法だと思うが被害者に2次被害を与えている」と非難する。

 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)も「ビデオの存在を使って告訴の取り下げや示談金の支払い要求をしないように求めるのは脅迫的な行為。被害者を2重、3重に苦しめている。性犯罪の画像や動画を撮影すること自体を犯罪に問うべき時代になっている」と問題視する。

 また、望月弁護士は「事件当時の映像を見せられ『抵抗できたはず』と質問されるなど、被害を思い出させられ裁判自体も負担だ」と司法での被害者への配慮も求める。【菅野蘭、鈴木一生】

最終更新:1月22日(木)0時46分

毎日新聞

 

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