六 怪力な女事件
タクシードライバーは見るも無残な姿をしていた。両目はパンダのような青あざ、酷く腫れ上がった唇、歯もいくつか折れている。
「タクシーは旧国道に乗り捨ててありました」
勝村警視が言った。
「あなたは昨日、車を盗られたことを会社に報告していません。今日は仕事にも出ておられない。大変お気の毒ですが、昨日何があったのかご説明していただけないでしょうか?」
堂々たる巨漢の若いタクシードライバーは、うつむき加減で、じっと床を見ていた。だが、名探偵織田原と勝村警視二人に、あれやこれやと
問い詰められて、ようやく重い口を開き、彼自身が大怪我した顛末をとても恥ずかしそうに話し始めた。
「M街と四十八丁目通りの境目で、その女を乗せたんだ。かなりかすれ声で、かなり背の高い女だったんだ。俺が後部座席のドアを開けた途端、西ふ頭あたりの住所を言って、突然乗り込んできたんだ」
ちょうど電車道路にさしかかって、レトロな街並みを右折したところで、その女が車を停めろって言ってきたんだよ。もうだいぶ暗くなってたし、あの辺はまったく車の通りが少ない場所だった。女はおやすみベイビー。いい子、いい子にしてれば痛い思いはしなくて済むわ♥って言って
きたんだ。ムカッときた俺は、車から降りて後ろのドアを開けて、「お嬢さん、馬鹿な真似はやめなさい。外に出ろ!って言ってやったんだ。
そしたら「ウフフフ♥どうやら痛い目に逢いたいってわけなのね♥」なんてセクシーな声で言われたんだよね。俺は思わずプッと笑っちゃったんだよね。アクション映画のワンシーンでもあるまいし、ってな感じで。そしたらいきなりガツンガツンだよ!拳で両目を殴られたんだ。たった二発で俺は完全に尻餅をついちゃって。いやしかし、驚いたね。確かにその女は女にしては背が高い方だったけど、俺と比べたらさほど大きいわけでもなかったからさ。さらに追い打ちをかけるように二発、口と腹を蹴られた。まるでプロみたいな素早い動きだったな。気がついたら、財布も車もなけりゃ、歯は二本折れちゃって・・・。あまりのショックな出来事で、仕事に出れる状態じゃなかった。まさか女に殴られて、気を失うとは思わなかったんだ・・・」
「車は見つかりました!」
勝村警視が言った。
「えー、あのーすいませんが、その犯人について、三つだけ質問してよろしいでしょうか?」
織田原がそのタクシードライバーに言った。
「ええ、どうぞ」
「えー手短にお答え下さい。犯人はロングヘヤーで、耳に髪をかける仕草は早かったですか、もしくは遅かったですか?」
「えっと・・・確か早かったな」
「小さいくしゃみなどしませんでしたか?」
「くしゃみなんてしてなかったな・・・」
「ああ、そうですか・・・。それは残念だ。最後に、あなたを殴る直前の会話で、犯人の顔の位置は、どうだったでしょうか?多少なりとも斜めに傾けていましたか?」
「いや、そんな素振り全くなかったな・・・」
「んふっふっふっ。どうもありがとうございます。あなたの財布はもう戻ってこないかもしれませんが、あなたを叩きのめした女は、女装した男だと分かれば、少しは気分が楽になるんじゃないでしょうか・・・・」
「えっ!!」
問六 織田原なぜ犯人が女装した男だとわかったのでしょうか?
(制限時間1分間の推理をして下さい。答えは下記の通り)
正解六 「かなり大きな女」は、耳に髪をかける仕草は早かった、タクシードライバーを殴る直前の会話で、犯人の顔の位置は、まったく斜めに傾けていなかった事により、女装した男だと織田原は推理しました。もし犯人が女性ならば、耳に髪をかける仕草はゆっくりとした動作、セクシーな声で男を挑発する際には、顔をやや斜めに傾ける、女性本来の仕草を織田原は知ってました。くしゃみに関する質問は、どうやら蛇足だったようですが、もし、くしゃみをしていたら女性の90%はハンカチもしくは両手で口を覆い、なるべくくしゃみの際に出る音を小さくするようです。
織田原任三郎でした・・・。
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