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黒の星眷使い ~世界最強の星眷使いの弟子~ 作者:左リュウ

第一章 世界最強の星眷使いの弟子

第十二話 誕生、イヌネコ団

「イヌネコ団(仮)?」

 ドヤ顔で仁王立ちしているイヌミミ少女が放ったその言葉にフェリスは首をひねる。

「そのようなギルドは聞いたことがありませんが……おかしいですね。わたし、ちゃんとギルドのリストは確認したはずなんですけど……」

「当然よ。だってまだ、正式なギルドとして設立されているわけじゃないもの」

 イヌミミ少女ことクラリッサはけろっとした顔でそう言いつつ、ちゃっかりとソウジたちの席にお邪魔した。

「でも、今日で正式なギルドとしてようやく設立することが出来るわ」

「どうしてですか?」

「だって、わたしとチェルシーと、ソレイユ家のアンタと補修野郎とそこのソウジでちょうど五人。設立規定人数は満たすことになるわ」

「オレたちが入るのは確定かよ!? っていうか補修野郎て!」

「なによ。事実じゃない」

「うぎぎぎぎ……言い返せないのが辛いぜ」

 がくりと項垂れるレイド。

「オレが補修野郎なのは事実として一つ質問したいんだけど、お前らさっき自分の事を星眷使いって言ったよな? それって、マジなのか?」

「……疑ってる?」

「そりゃなぁ……」

「いや、こいつらは星眷使いだよ、レイド」

 レイドの疑問にこたえたのはソウジだ。

「わかるのか?」

「一応な。星眷使いでもおかしくないほどの魔力を感じる。それになんとなく、感覚で分かるんだよ」

 レイドがフェリスに視線を移す。するとフェリスも、肯定する形で頷いた。

「へぇ。もうちょっと疑われるかと思ったけど。やるじゃない」

「これぐらいできなきゃあの人の弟子は務まらねぇよ。それはそうと、フェリスやレイドなら分かるけど、どうして俺を誘うんだよ。こんな、黒魔力を持った化け物なんかをさ」

 ソウジは今朝のチェルシーとの一件からそれが不思議で仕方が無かった。そもそもどうして自分のような、学内でも世間的に見ても嫌われているような人間を誘うのか?

「はっ。愚問ね。わたしはそんな魔力の色が黒い如きでアンタみたいな戦力を外すようなマヌケはしないわ」

 クラリッサはソウジをバカにしたような顔つきで即答する。

「アンタの実力はもう既に承知しているわ。この前の魔力測定でもアンタの魔力量は確認したし、それにここ数日アンタのことをチェルシーと一緒に観察してたし」

「ここ数日、感じてた視線はそれか」

「やっぱり気が付いていたのね。ますます気に入ったわ」

 クラリッサがニヤリと笑みを浮かべる。

「むしろ、わたしとしてはアンタをまだどこのギルドもスカウトしていないのが不思議なぐらいよ。あれだけの魔力量を持ち、なおかつ『皇道十二星眷』をも超える力の星眷を有する……即戦力どころか、切り札レベルじゃないのよ」

 つらつらと的確な分析をするクラリッサ。「それで、」と彼女はソウジたちをぐるりと見渡す。

「アンタたち、わたしたちのギルドに入るの? 入らないの? さっさと答えなさい!」

「わかった。入る」

「ふっ。そうよね。断るわよね。でもまあ、わたしは諦めないわよ。こっちにはこっちの事情が……ってええええええええええええええええええええええええ!?」

 ソウジが即答すると、なぜかクラリッサが驚いた。ぱちぱちと何度か瞬きをし、信じられないといったような瞳でソウジを見る。

「マジで?」

「マジで」

「……ウソだったら、エスト金貨五百枚罰金よ」

「それぐらい払えなくもないけど本当だよ」

 どうやらクラリッサは断られると思っていたらしい。何度も念を押すように確認してくる。

「むしろ願ってもない状況だよ。俺は少しでもポイントを稼ぎたかったからギルド戦にも出たかったんだけど、何しろ黒魔力の化け物だからな。絶望的だと思ってた」

「それはこっちのセリフよ。まさかこんな切り札を簡単に確保できるなんて……今日のわたしはちょーらっきーね!」

 いえすっ! とガッツポーズするクラリッサ。元気な彼女が動くたびにイヌミミがぴょこぴょこと動き、見ていて飽きない。

「うーん。これならチェルシーを送り込む必要なかったわね。最初はチェルシーの色仕掛けで籠絡させるつもりだったんだけど」

「やっぱりアレはお前の差し金かよ」

「それはさておき」

 ソウジの抗議をサラリと無視するクラリッサ。

「で、アンタたちはどうするのよ?」

 クラリッサはフェリスとレイドに訊ねる。

「わたしは構いません」

「オレもいいけどよ……でも、オレなんか誘わなくてもいいんじゃないか? そりゃあ、ギルド戦に参加できるのはオレにとってもありがたいが、オレは星眷なんか使えない。足を引っ張っちまう。オレなんか、必要ないんじゃないか?」

 仮にこのギルドに参加することになったとして、レイド以外の四人は全員が星眷使いということになる。そこに星眷が使えないレイドが参加するのは、どうしても気後れするのだろう。自信なさそうにレイドは俯く。そんなレイドに、ソウジは呆れたようにため息をついた。

「あのなぁ、レイド。俺はお前が必要だと思ってるぜ?」

「で、でもよぉ、それってオレに気をつかってるんじゃ……」

「そうじゃない。レイド、俺はお前がそこまでこのギルドに不必要だとは思わない」

「でもオレには、ソウジたちみたいなすげぇ星眷は使えねぇよ……」

「確かに、レイドには星眷が使えない。今はな。でも、レイドは頑張ることが出来る」

「頑張る? そんなこと、誰にだって出来るだろ」

 イライラしてきたのかレイドは吐き捨てるように言った。だがソウジはあくまでも淡々と事実を述べる。

「頑張れることは凄いことだよ、レイド。誰にだってできることじゃない。事実、お前はつい最近も頑張って補修を一発クリアしたじゃないか。周りの奴らを見てみろよ。補修をくらってもなんとかなるって楽観的になって必要な努力をしないやつばかりだ。結果、補修に一発合格したのはレイドだけだ。それにこの前、俺はレイドが騎士になれるって言ったよな? あれは何の根拠もなくいったわけじゃない。補修ひとつにも真面目に、真剣に何度も取り組んで必死に努力することが出来るレイドだからこそ、俺は騎士になれるって思ったんだ」

「ソウジ…………」

「いいか、レイド。俺はお前がこのギルドに必要な人材だって思ってる。確かに今は星眷が使えないし、レイドが一番戦力的に不足しているのかもしれない。でも俺は、レイドなら近いうちに星眷魔法も使えるようになると確信している」

「お、オレが……星眷魔法を!?」

 レイドはびっくりしたように口をあんぐりと開けた。
 何しろソウジがレイドを励まそうとウソをついたかと思ったからだ。だが、ソウジの顔はとてつもなく真剣だった。眼を逸らすことを許してくれないほどに。

「じ、冗談だろ?」

「大真面目だよ。レイド、お前にはそれぐらいの素質がある。努力も出来る。あとはひたすら頑張るだけだ」

 それに、とソウジは言葉を続ける。

「クラリッサだって、そう思ったからこそレイドを誘ったんだろ? お前もポイントに拘っているわけだし、将来性のない奴を誘ったりしないはずだ」

「まあね。それにアンタのことはプルフェリック先生も嬉しそうに話してたわよ。『あんなにも純粋に、まっすぐ頑張れる生徒は久々だ』って。『将来が楽しみだ』ってね。だから誘ったのよ。お荷物をわざわざ入れるほど、いま余裕があるわけじゃないわ。勝てないと意味ないもの」

 クラリッサは自分の考えをソウジに見抜かれて釈然としないといった様子で渋々認める。

「……………………」

「さあ、決めるのはお前だ。レイド」

 ソウジはニヤリとしながら言った。レイドはそんなソウジからぷいっと気恥ずかしそうに眼を逸らしながら、ポツリと言葉を漏らす。

「…………わかったよ。入るよ。入ればいいんだろ畜生!」

「いえすっ! よっし、これで五人ね!」

 クラリッサが大喜びではしゃぎ、ソウジに「さっそくナイスよソウジ!」と上から目線で褒め称えた。

「クラリッサさんは、どうしてそんなにもギルド戦に出たいんですか?」

 フェリスが率直な疑問を口にすると、クラリッサとチェルシーは互いに顔を見合わせて、頷いた。

「……まあ、話しておいてもいいわよね」

 という前置きをして、クラリッサとチェルシーはその理由を語りだした。

「端的に言えば、お金が欲しいのよ」

「……狙いは、ポイント上位者に与えられる『特別支援金』」

「そう。それそれ」

「いや、ちょっと待て。お前らAクラスってことは『太陽街ソル』に住んでるんだろ? だったら金には困ってないはずだ」

 と、レイドが口をはさむ。『下位層アンダー』に住む彼としては考えられない発言だ。

「ところがどっこい、わたしたちはAクラスではあるけれど、『太陽街ソル』には住んでないわ。『下位層アンダー』の出身よ」

「え?」

「……正確には、『下位層アンダー』にある孤児院」

「で、でも、Aクラスじゃないか。お前ら」

「『星眷魔法』が使えるから、特別にAクラスに上がらせてもらったのよ」

「……A、Bクラスは学費が安くなるから」

「そうそう。院長が学校は行っとけってうるさかったしね。けど学費のこともあるからあんまり負担はかけられないし。だから星眷魔法を習得したのよ」

 気軽そうに言うが、それは並大抵の努力ではできなかったはずだ。孤児院に負担をかけまいとして、彼女たちは必死に努力したのだろう。

「そして晴れてAクラス入りしたってわけだけど、それでもやっぱり学費はかかるし、それにわたしたち以外にもあそこには色んな子がいるのよ。当然、その子たちも学校に通うことになるわ。だから、わたしたちにはお金が必要ってワケ。レイド、アンタと事情は同じよ」

 レイドもランキング戦に出るのは第一に家族に仕送りをするためだ。ランキング上位者には特別支援金と呼ばれ特別に定期的に金貨が授与される。もちろん、順位が下がればそれもなくなるが。

「……院長は、半獣人ハーフのわたしたちを受け入れてくれた。あそこにいる子たちは、みんなそう。半獣人ハーフであるわたしたちを受け入れてくれた。だから、少しでも楽させてあげたい」

「だ・け・ど! ここの連中ときたらわたしたちが半獣人ハーフだから悪口言うわ、ギルドに入ってくれないわ、それどころか近寄らないわで散々よ! だからメンバー集めに必死だったの!」

 クラリッサがうがー! と怒ったように吠えた。

「でも、それも今日で終わりよ! ここに晴れて、ギルド『イヌネコ団』が結成できたんだから!」

「イヌネコ団、(仮)がとれたんだな」

「とーぜんよ! なにしろ五人そろったわけだし。これで、孤児院ウチの子たちが一生懸命考えてくれたこのギルド名をちゃんと名乗れるわ!」

 誇らしげに笑みを浮かべるクラリッサに対してソウジは思わず同じように微笑み、頷いた。

「そっか。そりゃ最高だ」

「でしょ?」

「……そーじ、イヌネコ団、気に入ってくれた?」

「気に入った気に入った」

「ふふっ。わたしも気に入りました。いいですね、かわいくて」

 フェリスも微笑みながら肯定する。

「うーん。うちのチビたちとネーミングセンスが似てるな……いいんじゃねぇか。オレも好きだぜ」


 こうして、始業のチャイムと共に食堂の片隅でギルド『イヌネコ団』が誕生したのだった。


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