第8回
“ゾンビ族”の軍門に下らず“アライブ族”で生き抜け
コンサルタント 牛場 靖彦氏
2005年8月23日
企業組織の活性化ということが叫ばれて久しい。私もこのテーマでこれまで数十冊の書を著してきた。
しかし、残念なことに我が国の企業、とりわけ世間から一流の大企業といわれている会社は、小手先の術に終始し、枝葉の改良はできても、根幹の改革には取り組んでいないように見受けられる。これでは木を見て森を観ずになりかねず、真の活性化を計ることなど、言うほどにはなかなか進まないだろう。
組織の肥大化に伴い、官僚主義体制が強化されていくが、この体制の上にアグラをかき、大切な経営資源であるヒト・モノ・カネ・情報を日夜飽くことなくむしばんでいる種族が激増している。私はこういった種族を“ゾンビ族”と命名し、過去二十数年にわたって各企業や諸団体に警鐘を鳴らしてきた。
アウトサイダーこそアライブ族の証
低迷している今日の各企業に渇を入れ、たくましい企業体質を創り出すには、ゾンビとは反対の極にある“アライブ族”の比率をグーンと高める必要がある。
我々の毎日の食卓に欠かせない味噌は、大豆をつき出し、米こうじに塩を交ぜてつくられる。このとき、もし塩の量が不足すると、良質の味噌ができないどころか、たちまちカビがはえて腐ってしまう。
組織もこれと同じだ。ゾンビ族だけが蔓延し、アライブ族がはじき飛ばされてしまっては、好ましい体制は決して築けない。それどころか凋落の一途をたどることになろう。
“村人気質”が骨の髄までしみこんでいる日本社会では、協調性、和の精神といった美名のもとで、ゾンビ族は徒党を組み、みずからの地位の確立と安泰を計り、改革を断行しようとするアライブ族を、ただ単に批判精神の持ち主と一方的に決めつけ、村八分にしてしまう。
むろんゾンビ族なる人種は昔から日本にも存在していた。しかし、ただひたすらカネ、カネ、カネに明け暮れる拝金主義のゾンビ連中は、第一次オイルショック後からその数を増やし始め、バブル経済とその後の失われた10年、そして今日、驚くべき繁殖力で、日本中を覆いつくそうとしているのだ。
最近の大企業では昇進は本人の能力とは無縁のところで決まるケースがあまりにも多い。おそろしいことは、ゾンビ族の首領格である「ゾンビ・マスター」や参謀格の「ゾンビ・ゼネラル」、さらには見張役たる「ゾンビ・センチネル」らににらまれたら最後、敗者復活はない。
だが、現体制内では異端視され、アウトサイダーの烙印を押されているアライブ族こそが次の時代を背負って立つことになると私は確信している。
ゾンビとアライブに関しては、下記に2つの表を用意したので、これらにじっくり目を通していただきたい。
■ゾンビ族の特徴・弊害・生活信条
特徴 | 弊害 | 生活信条 | |
ZANY (ごますり) |
●上にペコペコ下に鬼 ●言動が八方美人 |
●タイコ持ち社員の繁殖 ●金権腐敗体質を助長 ●モラールの低下 |
●保険全面依存型 (大企業に身を置いていることがイコール保険という考え方) |
OSTENTATIOUS (みせびらかし) |
●タテマエ論のキレイ事をいう ●なにかをしているフリをする |
●場当たり主義の蔓延 ●非生産的集団を構築 ●第三者的評論家の発生 |
●フロー・バット・ストック思考型(ノウハウが蓄積されず、フローとして流れてしまう) |
MONOCULAR (単眼思考) |
●前例にとらわれる ●応用動作がきかない |
●創造性の芽をつむ ●マンネリズムの惹起 ●若年性老人症を生む |
●法規制遵守責任回避思思考型(法に違反しなければよいといった固定観念にとらわれた考え方) |
BLOWZY (さもしい) |
●社内遊泳術にあけくれる ●ポストをめぐってヤミ取引 |
●業績の低下 ●業者との癒着 ●機密漏洩 |
●集団的甘え思考型(親方日の丸、長いものには巻かれろ式スタイル) |
INTRIGUING (策略を用いる) |
●がんじからめの人間関係 ●利権に狂奔 |
●人材の死蔵 ●有能な社員の放出 ●秘密主義の横行 |
●新企画拒否思考型 (現体制を死守しようと策動) |
EMOTIONAL (感情的) |
●メリットを追及しすぎ デメリットには目をつぶる ●他人を色メガネでみる |
●八百長体質の強化 ●窓際族の量産 ●放漫経営 |
●事後処理的全社一丸思考型(ドロナワ式) |
(c)YASUHIKO USHIBA
■アライブ族であるための姿勢と信条
特徴 | 弊害 | |
ACTIVE (現実的) |
●長期的視野に立って現在を処する ●予見性・洞察力に優れ、潜在的リスクに的確に対応すべく努める |
●常に自己の進路を求めてやまぬ |
LARGE (度量の広い) |
●他人の立場を尊重して思いやりがある。固定観念や既成概念にとらわれず、自由でのびのびした発想をする | ●自ら潔くして、他の汚れを洗い、清濁併せ容るる量あり |
INTELLIGENT (知的な) |
●生きていく上でも、仕事の上でも知恵があり知識にふりまわされない ●さらに知恵を見識や胆識にまで高めることができる |
●障害にあっても、その勢いを100倍にする |
VIVID (活力ある) |
●心身揃って健康であり絶えず考えたことを積極的に実行に移す。現実に正々堂々と直面し言い訳をしたり、逃げを打ったしない | ●自ら活動して他を動かしむる |
ESSENTIAL (本質的な) |
●ものごとの本質をしっかりとらえている 枝葉もできるだけていねいに見るが、根幹を把握し「木も見て森をも見る」ことができる |
●洋として大海を満たし、発して蒸気となり、雲となり、雪に変じ、霞と化し、氷っては玲鑑となり、しかもその性を失わない |
(c)YASUHIKO USHIBA
この連載のバックナンバー
- 出稽古は畏友を見つける旅 (2006/07/04)
- ライオンに見る“オン”と“オフ”の取り方 (2006/06/27)
- エアロビ提唱者、クーパー博士の助言の意味 (2006/06/20)
- 英語が下手でも好印象を持たれる人の資質 (2006/06/13)
- “あいさつ下手”日本人がみすみす見逃している豊かさ (2006/06/06)