イスラム国邦人人質:「生きて帰って」関係者に祈り

毎日新聞 2015年01月20日 22時39分(最終更新 01月20日 23時24分)

ユーチューブに投稿されたシリアのアレッポで撮影されたとされる湯川遥菜さん
ユーチューブに投稿されたシリアのアレッポで撮影されたとされる湯川遥菜さん

 「身代金を払わなければ72時間以内に殺害する」−−。刃物を手にした男の脇でひざまずく千葉市出身の湯川遥菜さん(42)とジャーナリストの後藤健二さん(47)とみられる2人。シリア入り後、行方不明になっていた2人とみられる映像が20日、インターネットで公開された。「生きて帰って」。関係者の間に祈りが広がった。

 「戦争取材のベテラン。何が危険か助言してくださり、頼りにしていた。こんなことになるとは」。後藤さんと海外で取材をした経験のあるジャーナリストの池上彰さん(64)はショックを隠さない。

 NHKの番組でイラク戦争のリポートをしてもらったのがきっかけで、交流が始まった。だが、今月10日ごろ、シリアのアレッポで連絡が途絶えたという情報を聞いた。「戦争で犠牲になる子どもや女性をよく取材していた。戦争の悲惨さを訴えようと取材していたのだろう。心配です」と気遣った。

 東日本大震災の支援活動を通じ、交流のあった宮城県ユニセフ協会の五十嵐栄子事務局長(61)は20日夜、仙台市で取材に応じ「温かくて熱い人。動画映像は見ていないけど、後藤さんが映っているなら見たくない」と、両手で顔を覆った。

 昨年12月に大阪市で後藤さんも交えたトークライブを企画していた演出家の馬場さくらさん(41)は約3カ月前の9月29日、メールを受け取った。「今夜から中東への取材旅です。とにかく頭と体がいっぱいいっぱいです」と書かれていた。その後、連絡が取れなくなりライブの中止を決めた。ニュースで映像を見たという馬場さんは「毅然(きぜん)とした姿に心が苦しくなった。まだまだ伝えたいことがあるはず。無事をただただ願っている」と話す。【青島顕、近藤綾加、高島博之】

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 湯川さんの拘束情報が明らかになった昨年8月、湯川さんの父正一さん(74)は取材に「一つしかない命。無事に解放されて帰ってくることだけを、ただ願っている」と話していた。20日も千葉市花見川区の自宅前で取材に応じたが、「混乱している。今は(取材に)答えられません」と話し、自宅に入った。

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