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【秘密保護法 言わねばならないこと】

(37)普通の市民でも処罰 演出・劇作家 田中 広喜氏

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 私が脚本を書き、昨年上演したミュージカル「THE SECRET GARDEN〜嘘(うそ)の中にある真実」は、特定秘密保護法施行から数年たって、摘発第一号が出たというストーリー。原発見学に行った市民と引率した職員が秘密取得、秘密漏洩(ろうえい)の容疑で逮捕されるところから始まる。

 物語としては、裁判の展開が中心ですけど、盗んだ秘密の中身は何なんだろうということは、裁判では明らかにされないんですね。

 すごく滑稽な話なんです。証拠である秘密の中身を提示しなくても裁判が進むという、常識では考えられない問題がある。秘密があったことが立証されればいい。その真偽は問わなくていいのかという疑問がある。それが当たり前のように裁判でまかり通ってしまう恐ろしさが、この法律にはある。そこを感じてもらうのが作品の主眼だった。

 秘密を知ることは怖いという雰囲気になっていく世の中が、すごく危険だ。戦前も新劇が取り締まりの対象だったが、そういうことが再現されかねない。

 私はいろんな社会的なテーマで作品を描く。社会の暗部とか、秘密と言われるものにも切り込まなきゃいけないことがある。今のところ、それが直接取り締まりを受けるわけじゃないでしょうけど、触れちゃまずいんじゃないかって思わせる雰囲気になるのが怖い。真綿で首を絞められるように、言いたいことが言えない雰囲気がつくられてしまうのかなと。

 安倍晋三首相もそうですけど、特定秘密は普通の市民には関係ないんだ、皆さんは安心してくださいと言う。でもどんな秘密であろうと、知るきっかけがあるかもしれない。それを知らないと人生や生活で乗り越えられない事態が、普通の市民にも起き、罰則が適用されるかもしれない。

 たなか・こうき 1965年生まれ。東京都内で団体職員を務める傍ら、社会問題を中心に扱う劇団「ミュージカル・ギルドq.」で脚本・演出を手掛ける。

 

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