人口減少の進むなか、文部科学省が小中学校の統廃合をめぐる手引をまとめた。

 これまでの学級数や通学距離に加え、通学時間の目安を示した。約60年ぶりの見直しだ。

 学校の小規模化は多くの自治体が頭を悩ませている。学校は地域の核だけに、統合には反対の声が上がり、こじれやすい。

 文科省の調査だと、学校規模に課題があると考える自治体のうち、検討の予定が立っていないところが半数以上を占める。

 そこで新しい基準を示すことで市町村による統合の議論を後押しするのが文科省の狙いだ。

 少子化は今後も続く。自治体が現実を直視することは、たしかに必要だ。

 ただ、その議論が「統合ありき」であってはならない。手引は、学校存続の選択も尊重されるべきだと述べている。

 行政が性急に統合を進めると地域の反発を生む。そのことは1960年代、ベビーブーム世代の就学期が過ぎ子どもが急減した際、国が経費削減を求めて統合の旗を振り、住民のあつれきを生んだ経験でも明らかだ。

 学校は、まちづくりの拠点でもある。東日本大震災で、避難所など防災施設の役割を果たしたことは記憶に新しい。保護者とともに住民の意見を聞き、反映させることが欠かせない。

 手引が小規模校を残す道を詳しく書いた点も注目したい。

 離島や山間部で学校同士が遠すぎる場合。統合すると子育て世代の流出が進み、集落が消滅しかねない場合。そんな事例を抱える自治体は、国の調査だと2割ある。これらの地域では統合は既に手詰まりだ。

 少人数できめ細かな指導をしつつ、本校と分校をテレビ会議システムで結び合同授業をするなど工夫してほしい。そこからは新たな学校像や教育方法が編み出される可能性がある。

 統廃合はゴールではない。肝心なのは統合後、どんな学校にするかである。

 例えば保護者や住民が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」にする。公民館や福祉施設と一体化し、子どもが様々な人とふれあいやすくする。そんなアイデアを手引はいくつも示している。

 4月から教育委員会改革で自治体の長が「総合教育会議」を設け、教委と話し合う。

 学校のありかたは、予算を握る首長と学校設置者の教委がともに考えるのにふさわしいテーマだ。学校のこれからを考えることは、地域の未来を展望することでもある。活発な議論を期待したい。