ホーム > 埼玉県議会 > 定例会 > 定例会概要 > 平成26年12月定例会 > 平成26年12月定例会 質疑質問者一覧 > 12月9日一般質問 浅野目義英議員 > 幻想百物語埼玉歴史編の62か所の誤りは、なぜ起こったのか
ここから本文です。
掲載日:2014年12月24日
Q 浅野目義英議員(民主・無所属)
この幻想百物語歴史編は、埼玉県が平成24年度に発行したもので、A4判22ページ、無料配布のとても小さな冊子です。2万部作られました。ここにございます。こういったものです。
この冊子は、ある大手旅行会社に埼玉県が平成23年、24年、作成費として約2,300万円の巨費を投じて委託して製作したものです。事業名称は、新たな埼玉の魅力創造推進事業です。しかし、今年の10月31日、県史の秘話やこぼれ話を盛り込んだ県発行の冊子、幻想百物語埼玉歴史編に62の誤り、78の修正する箇所があった。お読みいただいた皆様へおわび申し上げますと、県自身が報道発表しました。ネット上にも、その旨が発表されています。歴史愛好家からの指摘を8月に受けたといいます。この時まで、関係者は誰も誤りなどに気がつかなかったといいます。わずか22ページの、このような小さな冊子に62の誤り、78の修正を必要とする箇所、つまり計140か所、1ページ当たり6か所以上の直しが必要な冊子ということになります。絶句に値する数です。
戊辰戦争で敗れた新撰組局長の近藤勇が新政府軍に出頭した場所について、今の千葉県流山が正しいのに越谷と書かれている間違い、実に適当です。埼玉古墳群の丸墓山古墳の全長が105メートルと書かれてありますが、実は直径が105メートルという間違い、足利晴氏が関東公方と書かれてありますが、実際は古河公方であるという間違い、江戸時代から伝わる秩父夜祭りを紹介する一文では、豪華絢爛な笠鉾と書くべきところをなぜか笹鉾と書いてしまっている間違い、申しわけありません、私も間違えてしまいました。新井豪県議に聞きましたら、恐らくこの笠鉾を引いている関係者に話をしたら、激怒されるだろうとお話しになられていました。見沼溜池の干拓事業を成し遂げ、新田開発といった事業に尽力した江戸時代の治水家、井沢弥惣兵衛為永(いざわやそべえためなが)の記述について、徳川吉宗の幕臣なのに家臣と書いてしまっている間違い、あり得ません。こういった間違いが62か所もございました。
深刻なのは、歴史家の監修を全く受けていないことです。監修者は山口敏太郎氏、彼はオカルト研究家、漫画原作者、UFOの研究をされています。歴史家ではありません。この監修者は、適切な人材であったのか、しっかり仕事をしていたのかと、いぶかしくも感じます。この事業の業務委託企画提案募集要領に、目的趣旨として、知られざる歴史の裏話などに関する情報を収集し、冊子を作成し、埼玉の新たな魅力として県内外に発信することと書かれてあります。これで目的は十分達成できたのでしょうか。
私の知る浦和区在住の歴史作家に、この冊子をお目通しをいただきましたところ、埼玉県の出版物としては、その内容からして空疎で非科学的で地方公共団体の発行する歴史書としてはそぐわないものと言わざるを得ません。史実として歴史的事実、年代表記など、余りにも初歩的な誤りが多く、学術的には批判に耐えられるものではありません。監修者として山口敏太郎氏となっているが、彼はオカルト研究家であり、妖怪、怪談、超常現象など埼玉県の歴史を語るには余りにも常識から外れた作家です。歴史の本筋から離れ過ぎています。例えば、坂上田村麻呂の伝説は史実とかけ離れた怪奇物語となっており、武蔵国や坂東で最も大きな出来事であった平将門などについて触れられていません。この小冊子は単なる税金の無駄遣い、県民に埼玉県の歴史の本筋を見誤らせるリスクの大きい歴史的出版物と言わざるを得ないとのことでした。
仕事を手に入れるのは楽ではありません。この旅行会社は、県発行歴史冊子を作るため、幾つもの難関を突破しています。まず、調べたところ、企画提案は入札公示から企画書提出までの期間がわずか14日、私も前、指摘をさせていただきましたが、相変わらず異常に短く、しかも土・日曜が2回ずつ入っていたので、営業日10日、この10日で仕事を成し遂げたことになります。つまり、いつものように大手しか仕事ができないということです。
大手だから、あっという間にこの冊子の企画書が完成し、提出したということになります。5月23日のことでした。この会社は、最初の難関を突破しています。次にプレゼンテーション、新たな埼玉の魅力創造推進事業業務委託契約先候補者選考委員は5人、県民生活部副部長、広聴広報課長、同課副課長、文化振興課長、観光課長、所要時間15分、質疑応答10分、評定の結果、2社で争われましたが、3ポイントの僅差だったようです。この難関も通過しました。5月30日のことです。次に、契約書の締結、無事難関通過、ほとんど先が見えてきたのは7月2日です。企画提案募集要領には、業務の遂行に当たっては提案内容に基づき、県と調整を図りつつ進めること、本県職員と綿密な打ち合わせを随時行う体制を整備し、その体制を明記することと書かれています。これも月一回ほど行われたということですが、なぜか記録が残っていません。この難関も突破しています。
また、冊子を作るに当たっては、取材の進捗状況を定期的に書面で埼玉県に通知することになっています。報告はされたようです。さらに、冊子の記述の一部を県立さきたま史跡の博物館の学芸員にチェックをさせましたが、誤りに誰も気がつかなかったといいます。この冊子のお披露目イベントは3月20日、大宮ソニックシティなどで自転車見本市「埼玉県サイクリングショー」と同時に行われ、初めて県民の前に配られました。会議、イベント、10か月間順調に推移していたことになっています。いずれにおいても、重大なミスどころか、小さなミスさえも一切指摘されませんでした。県庁は何をやっていたのかと思います。
三点質問します。一つ、なぜこのような62か所もの誤りが生じてしまったのか。つまり、私は一つ一つ「難関」と呼びましたが、それぞれのチェックが甘かったのではないか、部長から答えてほしいと思います。また、全体を見回す監修者、山口敏太郎氏の責任はいかがなものとなるのでしょうか、お答えください。
二つ目、私はかつて24年9月定例会で、ただ漫然と大企業を厚遇優遇し、これで安心だと安穏としていては駄目です。事業の委託をし続けているだけでは、埼玉県観光行政の危機を乗り越えることはできませんと指摘をしました。よもや、埼玉県は悪くない、委託先業者がミスをしただけと思っていませんか。また、大手は任せておけば安心と思ってはいませんでしたか。会社も埼玉県も慢心になってはいませんでしたか。この業務委託の問題がどこであったと考えますか。知事から答えてほしいと思います。
三点目、契約書を読みましたが、第21条において、その責めに帰すべき理由によって埼玉県に損害を与えたときは、その損害を賠償しなければならないと書かれています。正しい内容の冊子を作り直し、12月以降に配布するといいます。作り直せば、損害が賠償されたと言えるのでしょうか。県民に配布するときに、配布できなかった、誤った情報が提供された、これらについて県、県民に賠償はされないのか、改めて三点目、部長の見解を伺います。
A 上田清司知事
まず、「『幻想百物語埼玉歴史編』の62か所の誤りは、なぜ起こったのか」のお尋ねでございます。
この「幻想百物語埼玉歴史編」は、平成24年度に本県のいわゆるサブカルチャーの魅力を県内外に発信することを狙い発行いたしました。県は、受託者を公募によるプロポーザル方式で選定いたしました。
その際、受託者は埼玉県内を紹介する冊子やパンフレット、ホームページの作成の実績と、本県のいわゆるサブカルチャーの魅力を県内外に発信する企画力が評価されました。
県と受託者は、企画の打合せをはじめとして、十数回の打合せを実施しながら冊子の作成に当たったそうであります。
今回、受託者が冊子の一部について、歴史の専門家の監修を受けていなかったということが分かりました。
その大きな原因は、県の契約書の仕様書において、専門家の監修について明確な規定を設けていなかったことにもあります。
大手だから任せておけばいいという鷹揚(おうよう)な気持ちはなかったと思いますが、契約に当たっての肝心要の史実を確認させるという細心の注意が足りませんでした。
今後は、史実についての専門家の監修を受けることや監修結果を県に報告することを仕様書に明記し、県としても監修結果をしっかり確認するようにしたいと思います。
いずれにしても、自分のお金を使うというような意識があれば、仕様書に明記しようが明記しまいが、4人のスタッフラインのうち誰かが原稿の段階で誤りに気付くのではないかと私は思います。
税金ということで、自分のお金でないから、そういう安易な気持ちがどこかにあったのではないかというふうに思います。誠に申し訳ありませんでした。
A 福島勤県民生活部長
「『幻想百物語埼玉歴史編』の62か所の誤りは、なぜ起こったのか」について、お答えを申し上げます。
はじめに、この冊子を入手された方をはじめ県民の皆様に、大変御迷惑をおかけしましたことを発行者として心からお詫び申し上げます。
御質問のチェックが甘かったからではないのかについてでございます。
県は、この冊子を作成した平成24年度当時、取材の進捗状況や内容の確認を行うため、受託者と十数回にわたり打合せを行っております。
こうした中で、受託者は参考文献や取材を基に冊子の原稿を作成し、県はデザインやレイアウトなどの確認をいたしましたが、史実など記述内容の詳細な確認は行っておりませんでした。
今回は、冊子の一部について、歴史の専門家の監修を受けなかったことが誤りにつながったと考えております。
県としては、受託者に歴史の専門家の監修をしっかりと受けさせるべきであったと反省しているところでございます。
次に、監修者の責任についてでございます。
監修者には、冊子の企画や紙面構成、デザイン等のアドバイスを依頼し、史実の監修は依頼していなかったと受託者から聞いておりますので、監修者に責任はないと考えております。
次に、受託者からの賠償についてでございます。
受託者は監修不足を認め、内容を修正した冊子を、同社の費用負担により当初と同じ2万部作成いたします。
また、手元に冊子がある方からの申し出に基づき、新たに作成した冊子を同社の費用負担により送付する予定でございます。
議員御指摘のように、配布できなかった期間があり、また誤った情報が提供された事実はございます。
しかし、受託者に対し賠償請求をすべき明確な損害が発生しているとは言い難いと思っております。
県庁の法務相談においても、顧問弁護士から同様の見解をいただいております。
ただ、県の信用が損なわれたことは事実でございます。
受託者に対し厳しく注意するとともに、冊子の修正に当たっては内容を慎重に確認するよう指導したところでございます。
今後は、委託業務における確認作業を更に徹底し、このようなことのないよう努めてまいります。
上記質問・答弁は速報版です。
・上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください