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水俣の過去、福島の未来へ 差別や摩擦解決策探る

自らの経験を交えて課題との向き合い方を語る緒方さん

 公害の原点とされる水俣病の歴史を学び、東京電力福島第1原発事故後の地域課題について考えるシンポジウム「水俣を知る。そして福島へ」が17日、南相馬市で開かれた。熊本県水俣市の水俣病患者で水俣病資料館語り部の会会長の緒方正実さん(57)らが登壇し、差別や偏見、地域コミュニティーの維持など、公害と原発事故に共通する課題の解決策を探った。
 水俣病は工場廃水のメチル水銀が原因の水銀中毒。公式確認から58年が経過するが、今も補償をめぐる訴訟などが続く。
 緒方さんによると、祖父は地元の網元で、水俣病のため急死。祖父の死後、家を訪ねてくる人が減り、水揚げした魚が競りにかけられないような差別的な仕打ちを受けた。緒方さんも周囲を恨んだ時期があったという。
 緒方さんは「知識がない当時とすれば、周囲の対応は『差別』とは言い切れない」と振り返った上で、「原因者がいるのに住民間で争う状況はいけない。原発事故の矢は、行政や東京電力に向けるべきだ」と語った。
 原発事故後、福島と水俣の住民交流プログラムに関わる熊本大の石原明子准教授(紛争解決学)は「水俣病患者への偏見や補償を受けた人へのやっかみの広がりなど、かつて水俣のコミュニティーで見られた状況は原発事故後の福島と似ている。このままでは、福島ではさらに住民の分断が進む恐れがある」と報告した。
 会場では、水俣を元気にしようと地元で活動するお笑いトリオ「やうちブラザーズ」のショーも披露された。
 シンポジウムを企画した原発震災を語り継ぐ会(南相馬市)の高村美春さん(46)は「過去を学び、未来に備えることが大事。水俣を学ぶことで、一人一人が原発事故の被災地で生きる力を得られればいい」と話した。


2015年01月19日月曜日

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