[事業承継の極意]
「ウルトラマンへの情熱」を継承できなかった一族の無念--円谷英明(円谷プロダクション元社長)
2014年6月12日
「特撮の神様」と呼ばれた故・円谷英二氏が設立し、「ウルトラマン」「ゴジラ」など、数々の名作を世に送り出してきた円谷プロダクション。日本中の子どもたちに夢を与えてきたその裏では経営をめぐる確執が続き、今では創業家一族は円谷プロから完全に追放された形となってしまった。カリスマ創業者を引き継いだ円谷家は、なぜ一族による経営を全うできなかったのだろうか。
円谷英明(つぶらや・ひであき)
1959年東京都生まれ。中央大学理工学部卒業後、バンダイを経て83年円谷プロダクション入社。関連会社勤務の後、2004年円谷プロ社長に就任するも翌年退任。13年、『ウルトラマンが泣いている』(講談社現代新書)を上梓し、長年にわたるお家騒動の内幕を暴露。多くのファンに衝撃を与えた。
「円谷商法」の確立
今回、取材に応じたのは円谷英明氏。円谷英二氏の孫にあたり、円谷プロの6代目社長を務めた人物だ。
東宝の特撮監督だった英二氏が、同社の出資を受けて円谷プロの前身である円谷特技プロダクションを設立したのは1963年。直後にテレビ業界へ進出し、「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」などの作品を手掛け、人気を博した。当時、TBS社員だった息子の一氏がこれらの作品の監督を務め、69年に英二氏が亡くなった後は、一氏が社長として事業を引き継いだ。
その後は「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンA(エース)」など全国ネットのレギュラー番組を多数手掛けるが、一氏は73年に41歳の若さで病死してしまう。長男の昌弘氏はまだ中学生だったため、叔父の円谷皐(のぼる)氏が社長の座を継いだ、これが後の混乱の原因となる。英明氏は言う。
「皐さんが社長になった時、亡くなった父が保有していた自社株は兄の昌弘と私が相続するはずでしたが、皐さんがそれらを引き継いで筆頭株主になりました。当時、祖母は父の後妻と仲が悪く、後妻を家から追い出すための手切れ金をつくるため、われわれの株を皐さんに買ってもらったのです。結局、皐さんが22・5%、残りの株式を東宝が保有する形となり、最終的には皐さんが東宝からも株を一部買い取って、67%を保有するようになったのです」
皐氏の社長としての力量に対して、英明氏は一定の評価をする。最大の功績は、キャラクターグッズなどの著作権料で稼ぐ「円谷商法」と呼ばれるビジネスモデルを確立したことだ。皐氏の社長時代には玩具会社と協力し、著作権管理をしっかりと行うようになった。これが奏功し、やがて円谷プロの収益の柱に育っていく。
だが一方で、著作権料の増加を狙うあまりキャラクターが乱立し、玩具会社主導の作品づくりが進むという弊害も生まれた。
「祖父も父も基本的に職人でしたが、皐さんはフジテレビのプロデューサー出身とはいえ制作サイドの人ではなく、ドライだったことは確かです。皐さんのもとで円谷プロの制作部は何回か解体しました。著作権料である程度の金額が入ってくるので、無理に円谷プロで制作母体を持たなくてもよいという意識もあった。私の父がいた時、スタッフは親子同然の雰囲気でしたが、そこがガラッと変わって去っていく人も多くなりました」
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