当事務部会(事務職員協会)には「そてつ」という広報機関誌があります。その創刊号にはタイトルの由来が次のように書かれています。
「そてつは、蘇鉄の音よみで、蘇はよみがえる意味があって衰弱して枯れそうになった時に鉄くずを与えたり鉄くぎをさすと元気をとりもどすといわれることから来ている。
そのうえ、そてつは琉球や九州南部に自生しているので宮崎県公立学校事務職員協会の機関誌の表題として力強く、ねばり強く、ことにたえるこの植物は我々とあい通ずるものがあると思われるからである。このような考えのもとに“そてつ”を会報のタイトルに決定したのである」。
ホームページを開設するにあたって、同様のタイトル名をつけたらということになりました。そこでいろいろ検討した結果、同じ種類の樹木で宮崎のイメージ(太陽、緑、神話)を象徴するものとして「びろう(檳榔)樹」を選んでみました。
檳榔(びろう)は別名蒲葵(ほき)、コバ、アジマサとも呼ばれ、記紀神話の時代より神木として登場しています。その葉で作られた団扇(うちわ)や笠、牛車や馬の装飾品などは高貴なものとして重宝がられていました。
また山伏修験者も峰入の時にはその団扇を腰にさし、護摩焚きの時には必ずこれを用いるといわれています。沖縄では世の始まりのことを、クバヌファユー(蒲葵の葉世)と言って、そこでは男も女もコバの葉で作った衣を腰にまとっていたと語り伝えられています。
日向灘に浮かぶ青島はその檳榔樹で覆われており、その中心に位置する青島神社には彦火々出見尊が祭られています。
太陽と緑と神話の国、日向を象徴する樹木として「檳榔樹」を選び、このページのタイトル名を「ビローページ」とすることにしました。古(いにしえ)からの風をこのWeb世にも呼びこみ、広く親しまれることを願っています。
「檳榔(びろう):亜熱帯性常緑小高木、雌雄異株の樹木。
九州、沖縄、小笠原島及び、台湾の暖地の島及び海岸に近い森林中に自生する。
幹は高さ3〜10mに達しシュロよりも太く直立し、枝分れせず基部は膨大する。葉は掌状で長い柄は背面の丸い三角柱状で左右に陵がある。葉は白茶けた緑色で円形に近い先の方が垂れ下ったもの多い。この葉で扇を作ったり編んで笠にする。
日本書記では「アジマサ」と言い、沖縄、九州では「クバ」と呼ぶ。春になると葉腋から大きな円錐花序を出し小さな花をたくさんつける。果実は楕円形又は倒卵形、長さ1.5cm、冬、青磁色に熟す。幹は丸太のまま床柱に使用され、また弓、矢にも使用される。
」
(木編百樹より引用)
「私がこの前、日向の青島を訪いましたのは、明治41年の7月ごろのことでありました。当時の東宮様は船で、この島へも御立寄りになりましたので、青島神社の背後、大海に面した東の岸に7,8本の蒲葵の木を伐って平地を作り、蒲葵を柱とし屋根とした、御休息の四阿屋が建てられてありました。島の永遠の眉目として、この樹は
惜しむに足らぬのみならず、なお考えてみれば大昔、出雲国のある海辺に、旅の皇子のために結構せられた檳榔の長穂宮というのも、はるかな年代を隔てて、相似たる国人の心づくしを語るもののごとく思われ、かつ民風の久しく伝わること、かくばかりであるかと驚いたのであります。
都の風流の一つに数えられたいわゆる檳榔毛の車なども後には赤色の簾に錦の縁、下簾は蘇芳の末濃にして帖は繧繝縁、榻に金銅の金物というような花やかなる装飾をもって、淡白なるコバの葉の光りが潤色せられたと言います」
「はじめて漢字を日本に持ち込んだ時代、うっかりと蒲葵の木に、檳榔の字をあててしまったのです。最も最初に、字音をもってこれを呼んだのではなく、別にアジマサという語がありました。たとえば檳榔之長穂宮と書いてアジマサノナガホミヤ、大山下狭井連檳榔と書いてサイノムラジアジマサと唱えていたのでありますが、しだいに漢字に親しくなって牛車の行われるころには、大かたの者がこれをビロウ毛の車と言うようになり、したがってこの木もそう呼ぶようにいたったものとみえます。」
「コバの樹の分布については、ヒヨドリなどよりもはるかに貴くかつ霊ある者が、その運搬および保護に参与していたらしいことであります。(略)南九州の各地においても、今日蒲葵の存在する場所は、若干の人家邸内を除きましては、他はほとんどみな神の社の地であります。(略)日向の青島にも権現の社あり、彦火々出見尊と仰がれています。」
「中世の流行であるにしても、車を蒲葵の葉で葺きまたは飾るという風習は、つきもなく卒然として始まるべきものではありません。これは何か今一つ前の代から、その根ざしになった古い生活の法則があったのではありますまいか。
『古事記』の垂仁天皇御宇の条に本牟智和気御子出雲国にいたり、檳榔の長穂宮に座すとある記事はおよそ三つの場合を想像させます。すなわち当時はあの国の海にも蒲葵島があったか。
そうでなければ大分の遠方から、この葉をたてまつらしめて、とにかく御仮宮にアジマサをもって葺きかつ囲われてあったか。あるいはまたその宮をかく称えるだけの別の理由、たとえば管などをもって白々と美しく清らかに屋根を蔽うて、人をして長くこの植物の名を記憶せしめたのか。
いずれにしてもこの葦原の中つ国に久しく住み着いて後までも、コバはなおわが民族に属した樹木であったのであります。」
ー あぢまさの蔭うつくしき青島を波たちかえりまた見つるかも ー 柳田國男
日南海岸北部の日向灘に浮かぶ周囲900mの小島。対岸とは弥生橋で結ばれ、ビロウ樹などの熱帯、亜熱帯性植物を含め226種の草木が生い茂る。
中でもビロウ樹は幹の高さ6〜9mに及び密林をなしている。黒潮のもたらす高温多湿の島内は北半球最北のヤシ科植物の群生地をつくり、ビロウ樹の自然林約4,300本がここならではの景観を生んでいる。国の特別天然記念物指定。
また、島の周囲には海水の浸食によってできる波状岩がならび、“鬼の洗濯板”と呼ばれている。島中央には朱色も鮮やかな青島神社が建ち、毎年1月には若い男女の裸参りが今でも盛んに行なわれている。
山幸彦が海神宮から帰り着いた時、人々は衣類を整える間もなく裸のままで迎えたという故事にちなんだものだという。遊歩道もあり15分ほどで島を一周できる。また入口には青島亜熱帯植物園がある。
宮崎県地名大辞典(角川書店)を参照
宮崎県門川町に枇榔(びろう)島がある。門川町の沖合い約7Km東に浮かぶ無人島(周囲約1.3km、標高75m)で、ここは国の天然記念物「カンムリウミスズメ」の世界最大の繁殖地として有名。
カンムリウミスズメは日本海のみで繁殖する海鳥で、体長は成鳥で約24cm、頭に冠羽があり頭部は黒色、日本近海付近で人が近づきにくい離島、離礁のみで繁殖、繁殖期は3〜5月。
天然記念物に指定され絶滅の心配もあるが、1995年の合同調査の結果、この島で2,000羽の生息が確認され、その数は日本最多といわれている。アメリカで開催された太平洋海鳥会議(PSG)で発表され一躍注目を浴びた。
日南市春日町のデザイナー戸田礼子さんが地元のビロウの葉とソテツの実を材料で作った土産物用の帽子。
ビロウの葉を一枚一枚張り合わせ、縫いつける。あごひも止めはソテツの実で作られている。
持ち歩くときは、丸めてひもでぶら下げる。稲こづみをイメージし、南国の太陽の輝きから「シャインハット」と命名したという。
戸田さんがかつて、観光キャンペーン用にデザインした製品に改良を加え、北郷町の通所福祉作業所「さくらの里」のボランティアグループ「さくらんぼ」の支援を受けて製作した。土産品店で販売されている。一個2,000円。第41回全国推奨観光土産品審査会の民芸・エ芸品部門で、日本商工会議所会頭努力賞を受賞した。
(平成13年1月12日付朝日新聞地方版記事を参照)
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