「花燃ゆ」感想マンガ第3話「ついてない男」へ松岡修造が一言「運じゃない実力だろ」

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こんばんは、武者震之助です。

ところで皆様、「ポリアンナ症候群」をご存じでしょうか。どんなことにも美点をみつける少女ポリアンナが由来の心的疾患です。

Wikipedia曰く、

一般的には、

 

「直面した問題の中に含まれる(微細な)良い部分だけを見て自己満足し、問題の解決にいたらないこと」

「常に現状より悪い状況を想定して、そうなっていないことに満足し、上を見ようとしないこと」

 

などを指すそうです。

「あなたは揚げ足とりばかりをしていますね」と言われる筆者ではありますが、私も毎回「今回こそはきっとよいことがあるがはずよ!」とポリアンナちゃんのような気分で日曜8時にチャンネルをNHKにあわせております。

でもね、ポリアンナちゃんの心をもってしてもね……美点が見いだせないこともあるのでしょう。ニュースや週刊誌記事でも、例年よりずっと早く袋だたきにするような記事が相次いでおります。

辛いです……大河が好きだから。何度も「視聴率についてはコメントしません」と書いてきましたが、今の心境はむしろ「視聴率については言葉もありません」が素直な気持ちです。

3年前の『平清盛』もきついスタートを切り、似たような気持ちになりました。あの時は大河を変えるという意気込みで投げた渾身の一球が大暴投であったという哀しさがありましたね。今年はむしろ作っている側もどう投げたらよいかわからずに、おずおずと踏み出していて、そして結局うまくいかないという別の哀しさがあります。

 超超超長身の東出版久坂玄瑞さん

前置きはこのあたりにして。さて、今週も見ていきましょう。

アバンでスイーツをもっと食べたいと祈る文ちゃんは、神社でわけありのイケメンに出会います。久坂玄瑞くんっていうのかな。おみくじの結果が気に入らないようです。

一方、先週の文ちゃん必死のプレゼンでまとまった寿姉ちゃんと伊之助の婚礼が始まっています。寅次郎が武士の身分を剥奪されたことは、シャアが今週も親切に説明してくれます。

画面が切り替わると、ついに黒船が来て寅次郎がハッスルしております。どうやらこの件について匿名で誰かが殿に意見を出したようです。

「いきなり匿名アカウントでクソリプとかありえなくね?」

と、伊之助がこのことについて説明をしてくれてとりあえずアバン終わり。

それにしてもこの「黒船が来たらヤバイってことはみんなわかってるよねー!?」という不親切な、ただ無造作にイベントを置いていく年表感……昨年を思い出してまたも悪寒がするのですが。

超時空高速テレボーター吉田松陰(寅次郎)

寅次郎は長崎にいました。萩、江戸、萩、長崎と移動距離がテレポートのようです。ロシア艦隊とすれちがいになったよとだけ説明されますが、なんでテレポートしているかちゃんと説明しましょうよ。

でもそんな暇ないんですよね。新婚の寿姉さんがお料理がんばっているんですもんねえ!(禄高が低い武士の娘でまったく料理できなかったという設定自体無茶苦茶ですがもうつっこむ気力も既にありません)でもがんばって作ったご飯を食べてもらえなくて、「ひどい! 発言小町に書き込みたい!」みたいな顔の寿姉さんです。私も小町に「【駄トピ】今年の大河つまらなくないですか?」ってトピ立てたくなってきました。

一方、文ちゃんはのぞき見スキルで密談するイケメンを発見!

とても厳しい叔父に育てられた武士の娘とは思えないお行儀の悪さですが、イケメンを出すためなら仕方ないですよね。しかもどうやら文だけでなく、ちゃんとした長州藩士のお嬢さんたちがのぞき見チームだったようですが……なんだこの異次元みたいな長州藩は。しかも身分制度が厳格な中、足軽の娘もまじっていたそうです。どうなっているんだよ。

発言小町に質問して炎上してろ!

妹パートの次は姉パート。

「なんで私ともっとラブラブになってくれないの!? 毎日ハグして、愛してるって言って! こんなことなら結婚した意味ないじゃない!」

発言小町の相談役もドン引きというか、「あなたは常識がなさすぎでは?」と相談者が叩かれるトピのようです。何の罰ゲームなんだこれ。

さて、匿名アカで長州藩公式アカウントに誰かがクソリプを送った件ですが、プロバイダに問い合わせたようで犯人がわかったようです。しかしこれにはオチがあったようで、周布政之助さんがなんとかごまかしてくれました。

軍師官兵衛に続いてマイルドヤンキー路線を堅持

間一髪で難を逃れた寅次郎は、ロシア船のプチャーチンへのアポなし突撃が失敗したと文に愚痴りにきました。文は、

「お兄ちゃん、匿名アカだからってクソリプやめなさいよ! 2ちゃんへの書き込みだって特定されて逮捕される時代だよ!」

と兄にツッコミます。すると寅次郎は、

「オレは死んでも構わない。思いが届くならな! 知識だけじゃ意味がない、行いがともなってこそだ。オレ、日本はマジヤバイと思う。だからオレ、なんとかしようと思う。この国を守る!」

とJ-POP的な熱い言葉で語ります。このなんだかわからないし行動にマッチしていないけど、「世界がオレに日本が危ないとささやいている!」的な台詞回し……あ、昨年のマイルドヤンキー路線だ。死んでもいいって熱血のようだけど、彼が罪人になれば一家揃って大迷惑。死んで国を守れるわけでもないし、まるっきり無責任にしか聞こえないんですけれどもね。

せっかくの熱演です。黒船を見て寅次郎がどう感じたか、なぜ焦っているか。そういうのをアバンで適当にすっとばさないでやるべきでした。幕末大河の定番といえば黒船に驚く人物たちですが、毎度同じパターンとはいえそこは外せませんし、外してもよいとは思いません。この大事な部分よりも発言小町のようなだらだら新婚パートを長くとる。その一点が、この大河がどんな作品か象徴しているのではないでしょうか。

寅次郎は「頭が五歳児……」「でも悪い奴じゃないから」みたいな、BGMでごまかしているけど微妙な評価をされつつ見送られ、また旅だって行きました。一体何がしたいんだコイツ、と思えてしまうのがつらいのです。

 

さてその寅次郎を追うように伊之助も江戸に向かいます。新婚なのにそんなに寅次郎が好きなの?と寿姉さんはぷんぷんですが……何か既視感が……あ、これって『ブロークバック・マウンテン』では?(『ブロークバック・マウンテン』は、2005年製作のアメリカ映画です。カウボーイ同士の同性愛を描いてセンセーショナルな話題をかっさらいました。この映画で「釣りに行く」と出かける夫をあやしんだ妻が、「釣りなんて嘘でしょう!」と問い詰める場面があるのです)

 

文ちゃんや、昼間から謎の集会所で話し合うイケメンたちの気になる話題は異国船です。国の一大事がかかっている危機感より、サークル活動とそれを見守る星明子にしか見えないのですが。

文ちゃんはそう、星明子、あるいは完全にマネージャーなんですね。ろくに台詞がなく、たまにあったらオウム返しで、困った顔をしてうなずいているしか出番がありません。歴史の目撃者となるパターンものぞき見や偶然頼りばっかり。これでいいのか?!

江戸では寅次郎と伊之助が密会……ではなく、何かを企画しているようです。「自重しろ!」と梅太郎兄さんも説得します。この梅太郎さんの場面は、数少ないまっとうなドラマになっている貴重なところだと思います。今後は梅兄さんをオアシスにして本作を見るとよいかもしれませんね。

ポチポチボタンを押すだけの乙女ゲームみたい

さて、萩では英傑・久坂玄瑞が「腰抜けどもがー(棒読み)」と真夜中に怒鳴る変な人にされていました。そこに文ちゃんが出てきて「異国船を見に行くなら一緒に行こう」と夜中に二人でデート開始です。

江戸時代に武家の女が、夜中に男と一緒に行動とか(脱力)。

魂も抜けそうな思いでなんとか見ておりますと、気の抜けたBGMがだらだらと流れ続け、久坂玄瑞くんは蛇に驚いたりしています。

「女のくせになんで黒船を見たがるんだ?」

「確かめたいんです。兄がやろうとしていることを自分の目で」

こういう会話をだらだら進める文ちゃんと玄瑞くん。昨年はマウスクリックするとイベントが黙々と進むシミュレーション系ゲームのようでしたが、今年は乙女ゲーのようです。前後のこととかお構いなしに、キュンキュンシチュエーションとイケメン要素だけ詰め込むタイプといいますか。

夜が明ける中、二人は海を見ながら船がいないねと言い合います。そりゃいきなり夜中にいきなり船がいるかもと海に出かけて、いるわけもないでしょうに。満月や蛍を見に行くのとはわけがちがうんですよ。

「オレマジついてねえ。毎日朝の星占いコーナーでもオレの星座、いっつも最下位なんだよ」

的なことを、玄瑞が言い出します。どうやら玄瑞くん、お兄さんが亡くなりそうで家督を継がねばならないことが嫌みたいです。そんな悩みをいきなり文にポエムっぽく語り出すのが本当に思った以上に乙女ゲーです。発言小町と乙女ゲーの二本立て。いやあ豪華だなあ。

そんな弱気でいないでよと文は無言で玄瑞の手を引っ張り、猛烈にダッシュします。

「そんなこと言わないで、もう一回おみくじ引いてみてよ!」

と、文は迫ります。本当に玄瑞さんってアンラッキーだよなあ、こんなふうにドラマで描かれるなんて。もうこのドラマには大凶どころか頭上に死兆星が輝いている気がしてきました。こうして文ちゃんと玄瑞くんのファーストデートはなんだかわからんうちに終わります。気になる玄瑞くんのおみくじは、「大吉」だっだよ、やったね! 文ちゃん、この人は運命の人だってシャアが告げているよ、やったね!……どうでもいいわー、心底どうでもいいわー。

このデートも文ちゃん10歳、玄瑞くん13歳だと思えば微笑ましいかもしれません。せめて子役が演じていれば。「男女七歳にして席を同じゅうせず」(礼記より)が江戸の武家ですから、それでも倫理と考証では駄目です。それでも絵的にはまだマシだったのでは。

ところで寅次郎はどうなっているのでしょう。あ、やっと出てきました。出てきたと思ったらビーチです。小田村家の漬け物とか、寿の妊娠とかどうでもいいので、寅次郎が何をしたのか知りたいのですが。ビーチで何が!?

寅次郎の行動は、またも書状を読んだ家族がショックを受けることで説明されます。

「寅次郎が黒船に乗り込んだ!」

おせーよ! この時点であと数分じゃねーか! って、ここで今回終わり。次週は「生きてつかあさい」です。こちらの気分は「勘弁してつかあさい」ですが。

さて。蛇足ながらもう少しつらつら書いてみます。

まずタイトルですが、「ついてない男」はどうでしょうねえ。その後の展開を考えると、久坂玄瑞を「ついてない」と形容するのはどうかと思うのですけれども。非業の死を遂げたうえに、百数十年後にわけわからんドラマでスイーツ要員にされ、挙げ句膝枕ポスターにされるあたり、久坂玄瑞さんって確かにとことんついてませんよね、としか。

いや、そんな意地の悪いつっこみではなく指摘します。本作はイケメン大河らしく「ナントカな男」シリーズが多いようですが、サブタイトルから歴史イベントがわからない構造はマイナス要素です。どんな大河でも有名なイベントの回だとわかると、それだけでも見てみようかと思う心理が働くものです。このあたり、昨年は「本能寺」などのタイミングで使ってきましたからね。

そんなことはまあ、スタッフも承知の上かもしれません。メインターゲットである女性は歴史イベントだと難しそうで敬遠しそうとか、そんな理由かもしれません。でもね、歴史ドラマを見る層って男女問わずそういうイベントを大事にするタイプじゃありませんか? 来週のサブタイトルにかけて言いますけどこういうことは「やめてつかあさい」。

花燃ゆのライフは3話でもうゼロよ!秋の新朝ドラがとどめを刺す?

今年(2015年9月)の秋スタートの朝ドラが、史上初の幕末スタートの『あさが来た』になると発表されました。既に『八重の桜』後半、本作は「朝ドラ大河」という揶揄があります。明治以降が舞台という朝ドラルールが幕末でも可となったとなると、ますます大河と朝ドラというNHK二枚看板の壁が薄くなったと言えるでしょう。現在放映中の『マッサン』で、『八重の桜』で会津藩重臣を演じた二人が出てきて片方が長州への恨みつらみを語り、さらに『あさが来た』がまるで「朝ドラでも幕末くらいできるんやで!」と言わんばかりの題材を選ぶとなると、まるでNHK大阪が援護射撃どころか背後から撃ってきているようですが…………気のせいでしょう。

と思っていたら、本件でこんなニュースが。

 

NHK大河「花燃ゆ」のリベンジ? 朝ドラ史上初の幕末もの

 

やめたげてよお! リベンジとか、この時点でもう『花燃ゆ』が無念の最期を遂げたみたいなこと言わないでよお!……と、よく考えてみますと私も放映前から「見える! 『花燃ゆ』の頭上に死兆星が!」と言っていたので人のことを言えませんが、一月の時点でこんなことを書かれるとは……もうやめて、『花燃ゆ』のライフはもうゼロよ!

これはどういうことかは、まだ現時点では何とも言えません。朝ドラとの差別化が強まり、明治が舞台となる大河ドラマはなくなるのか。そうとは言い切れないと思います。

今期の朝ドラは、既に珍しい男性主人公、どちらかと言えば男性の愛好家が多いウイスキーがテーマ、男性脚本家と、女性のものである朝ドラにしては異色であると言えます。逆に大河ドラマはここ数年隔年で女性主人公であり、また女性脚本家の起用も増えており、男性のものである大河が変容していることは言うまでもないでしょう。

しかしこれは健全な流れであると言えます。女性が少年漫画を読み、男性が少女向けアニメを楽しむことが今では常識になりました。男女の嗜好がまるで違うと思い込むことの方が、時代錯誤でおかしいのです。男女の嗜好に偏らず、どの性別が見てもおもしろい高いクオリティを目指すと考える方が健全なのです。そうした考えに基づけば、「スイーツでベタ甘にすれば女子爆釣れw」と勘違いした本作のような根本的大失敗は防げるはずなのです。

 

大河『花燃ゆ』 女性に見てほしいとイケメンをキャスティング│NEWSポストセブン

 

こんなふうにイケメンとスイーツで、女ども爆釣れ!と取らぬ狸の皮算用をするとき、女性という世界の半分を獲得できるのだからぼろ儲けという発想があるのだと思います。しかし当然のことながら全ての女性がスイーツ好きなわけではありません。

女性の半分が好きだと仮定しましょう。25パーセントです。それなのに「女性が連れるから50パーセントはイケる!」と誤解しているとしますと、倍も高く見積もっているわけです。杜撰なザル勘定、楽観にもほどがあります。そもそも女性に一番人気の男性とアンケートとっても、一位の人が得票率半分になるわけがありませんよね? 百人いたら百通りとまではいかなくとも、何十通りの好みの男性がいて当然ですよね? イケメンだけで女どもがホイホイ引っかかるとか、甘すぎませんか。

また見る側の心構えとしても、女性主人公だとか女性脚本家という時点で思考停止して大河としては駄目だと決めつけるのではなく、内容を見てみようとワンクッション置くことが必要となるでしょう。また、視聴率で一喜一憂しないことも大事だと言えるでしょう。

無茶なテコ入れと無理な主人公推しはさけるべし 

もう2点変えるべき思い込みがあります。

一つ目は視聴率のみにとらわれて無茶なテコ入れをして、『八重の桜』後半のような失敗をしないこと。『八重の桜』の失敗例を振り返りますと、視聴率がふるわないからと無理にテコ入れしてホームドラマに方針転換したところで、前半で離れた視聴者が戻って来ないどころか、かえって後半までついて来られた層を振りおろして逆効果になっていたのです(テコ入れではなく、前半で気力が尽きた可能性もありますが)。

二つ目は、主人公を何が何でも目立たせなくともよいということ。
女性が主役のお留守番大河と揶揄された『八重の桜』ですが、冷静になって考えて見れば『平清盛』の朝廷や源氏パート、『軍師官兵衛』の若き日の信長パートや茶々とおねの対立パートのように、主人公があまり出てない場面は男性主人公でもあるのです。

宣伝などの便宜上、主人公設定は必要ですが、割り切って群像劇にだと思えば必ずしもずっと主役が出ずっぱりでなくともよいはずです。
主人公より脇役の人気が高いとか、主人公の出番が途中で一時的に消えてしまってもおもしろい作品は、大河だけではなく多数あります。

むしろ『江』や今回のような作品の場合、主人公の出番を増やせば増やすほど歴史の流れを追えなくて逆効果です。知名度が低い女性主人公は、お留守番大河の『八重』批判か、あまりのファンタジーっぷりにドン引きの『江』批判かの、二択が必ずつきまといます。
前者の批判はまともに取り合わない方がよいのです、無視しましょう!

『義経千本桜』の「渡海屋」や「鮨屋」を見て義経の出番がないぞと言うような人は、はっきり言ってもうモンスタークレーマーの一種です。

このことに関しましては『八重の時』、主役の出番が少ないという批判を読んで、私は「正気なのか!?そんなことを言うとまた『江』になるぞ!」と思っておりました。その嫌な予感ははからずも『八重』の2年後の今に当たってしまっているわけです。

今、大河ドラマは痛みを伴う変革、試練のときを迎えているのです。昔のように重厚な役者がいない、原作がない。それも一因でしょう。録画率があがった、インターネットなど娯楽が増えた。それも一因でしょう。確かなのはここで踏みとどまれるか、変わることができるかなのです。

こうした危機感があらわれているニュースがこちらです。

 

「NHK大河ドラマ『花燃ゆ』に日本語学者がツッコミ「幕末の書物にパソコンの明朝体フォント?」

 

 

こうしたニュースがあると、大河なんてもう駄目だ、続ける意義がないわけではないと思います。

むしろ逆です。

このニュースからわかることは、時代劇を作ることができるスタッフがどんどん減っているということです。時代劇最後の砦である大河を、視聴率で伸び悩んでいるからとやめてしまっては、本当に時代劇は滅んでしまいます。文楽などの伝統芸能と同じような、採算度外視伝統継承コンテンツとして、大河は残さなければならないと強く思います。

武者震之助・記

霜月けい・絵

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