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直下地震で超高層ビル倒壊のおそれ
1月18日 18時49分

直下地震で超高層ビル倒壊のおそれ
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大阪の直下で大地震が発生した場合に超高層ビルがどの程度の揺れに耐えられるかを大手建設会社が解析した結果、国などの調査結果でごくまれに発生するとされる長周期の大きな揺れで倒壊するおそれがあることが分かりました。
大手建設会社は、耐震性がより高い超高層ビルの設計の研究を進めることにしています。

大手建設会社の大林組は、大阪直下の上町断層帯と呼ばれる活断層で大地震が起きたときに、超高層ビルがどこまで耐えられるかを解析しました。
鉄骨造り25階建て、高さ100メートルの、一般的なオフィスビルの設計データを使ってシミュレーションした結果、国が超高層ビルの設計の基準としている揺れの3.2倍の強さで、倒壊するおそれがあることが分かりました。
この揺れは、国などが上町断層帯で行った調査でごくまれに発生するとされる長周期の大きな揺れに相当します。
シミュレーションによりますと、ビルは小刻みな揺れが始まってから3秒後に大きな揺れに襲われ、ビル全体が揺さぶられて高層階が低層階の動きについてこられなくなり、特に7階以下の低層階に負荷が集中します。
そして揺れ始めてから6秒後に、まず6階の「はり」が破断し、僅か13秒後、ビルの1階と最上階の25階が3メートル余りずれるように変形した時点で、低層階の柱や「はり」が次々と破断し倒壊しました。
大林組大阪本店の西村勝尚構造設計部長は「今回初めて、どの程度の揺れで超高層ビルが倒れるのかが分かったので、今後、耐震性能を上げるためにこの研究結果を使いたい」と話しています。

上町断層帯と被害想定

上町断層帯は大阪の中心部の直下にのびる、南北40キロ以上ある活断層です。
国が7年前にまとめた想定では、最悪の場合、大阪市や堺市などの一部が震度7の激しい揺れに襲われ、木造住宅を中心に97万棟の建物が全壊または全焼し、死者は4万2000人に上るおそれがあるとしています。
ただ、過去の大地震で倒壊していない超高層ビルについては、被害想定は行われていません。

大阪では対策始まる

超高層ビルを襲う可能性がある上町断層帯の地震の揺れに対応するため、大阪では大手建設会社や設計会社などが研究会を立ち上げ、独自の耐震基準を作る取り組みを進めています。
この研究会は、関西の65の企業で建物の構造を設計する構造技術者や京都大学の研究者など15人からなり、超高層ビルの耐震設計などの検討を行っています。
上町断層帯の大地震でごくまれに発生する長周期の大きな揺れに対応できるよう、近く、国の耐震基準より厳しい3種類の基準を作成し、ビルの建設に生かすことにしています。
先行してこの基準を使った超高層ビルも建設されていて、3月には、研究会に参加する大手建設会社が大阪・西区に建設した高さ180メートルの超高層マンションが完成予定です。
このマンションは、ビルの中心となる場所を揺れに強い構造にしたうえで、長周期の大きな揺れで負荷が大きくかかる中低層の階に、96か所、制震ダンパーと呼ばれる揺れを吸収する装置を設置しています。
建築コストは通常より3%ほどかかりますが、874戸が完売したということです。
大林組大阪本店の西村勝尚構造設計部長は「阪神・淡路大震災の教訓を生かして、想定される地震に対しては、安全な設計をするのが責務だと考えている」と話しています。
こうした取り組みが行われているのは、大阪など一部にとどまるということです。

「基準超える揺れも想定した対策を」

国土交通省によりますと、高さ60メートル以上の超高層ビルは全国に2500棟以上あるということです。
超高層ビルが倒壊するという研究について、耐震構造に詳しい京都大学の林康裕教授は、阪神・淡路大震災で安全とされた建物や構造物が次々と倒壊したことを踏まえ、国の耐震基準を超える揺れに襲われることも想定した対策を進める必要があると指摘しています。
林教授は「超高層ビルは、1棟でも倒壊すれば周りの建物を巻き込み、非常に大きな被害につながるので、今まで経験していないことが起こる可能性があると考えて対策をすることが重要だ」と話しています。

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