親と離れて児童養護施設で暮らす子どもの六割近くが、入所前に両親らに虐待された経験があることが厚生労働省の児童養護施設入所児童等調査で分かった。施設への入所理由で最も多いのも虐待で、過去最高の37・9%に上った。
同省が五年ごとに行う調査。二〇一三年二月一日現在、施設入所や里親委託など社会的養護のもとで暮らす児童は、全国で計約四万八千人で、前回調査の〇八年二月時と同水準だった。
児童養護施設で暮らす児童約三万人のうち、59・5%の約一万八千人に虐待された経験があった。里親や、養育者の家庭で五〜六人が一緒に暮らすファミリーホームなど他の施設も含めた全体では、虐待経験のある子どもは約二万六千人いた。
また、養護施設入所児の28・5%が障害のある子どもだった。同省は「発達障害などで、家庭で養育が難しいとして施設に入る子どもが増えている」とみている。
虐待を受けた子どもの増加に対応するとして、国は来年度、児童養護施設の職員一人あたりの児童数を現行の五・五人から四人に引き下げる方針だ。
明治学院大の松原康雄教授(児童福祉論)は「虐待を受けた子や障害のある子に対しては、安定した日常生活を送れるようにするとともに、適切な治療や療育が受けられることが必要。専門的知識を持った心理担当職員の確保が課題だ」と指摘している。
この記事を印刷する