米大統領:富裕層増税を提案へ、中間層支援-一般教書演説で
(ブルームバーグ):オバマ米大統領は同国の最富裕層を対象とした増税案を打ち出す。投資からの利益を制限するとともに、死亡時の資産相続を現行税制よりも困難にする。
大統領が20日に議会で行う一般教書演説で提示するもので、10年間で見込まれる3200億ドル(約38兆円)の新たな歳入の多くを高等教育や育児のための税額控除拡大、共働き夫婦向けの新たな減税措置の導入に充てる。ホワイトハウスが17日に計画の詳細を公表した。
与党民主党系のシンクタンク、センター・フォー・アメリカン・プログレス(CAP)の財政政策ディレクター、ハリー・スタイン氏は「ここで示されているのは、中間層の賃金の伸び悩みの問題に取り組むための真の同層向け減税措置だ」との分析を示した。
大統領の税制改革案が、野党共和党が上下両院で多数派の議会で反対に直面するのは必至。同党議員らは新たな減税を求める一方、的を絞った税優遇措置を減らしたい考えだ。民主・共和両党は法人税制の改革ではより一致点が多いが、この問題でも妥結には近づいていない。
上院財政委員会のハッチ委員長(共和、ユタ州)は17日の声明で、「米国の中小企業と貯蓄者、投資家に対するさらなる増税は、景気拡大と貯蓄促進、雇用創出を支援するのに効果を発揮してきた租税政策の利益を否定するだけだ」と指摘した。
同委員長はその上で「大統領は、是が非でも増税したいリベラル派の同調者に耳を傾けるのをやめ、破綻した税制を是正するために議会との協力関係に入る必要がある」と指摘した。
残り2年の任期の課題オバマ大統領の今年の一般教書演説は、残り2年となった任期の政策課題を国民に提示するとともに、リセッション(景気後退)からの回復が進む中で引き続き「負け組」となっている低・中所得層の有権者にアピールできる政策の「レガシー(遺産)」を残し、2016年の大統領選でも民主党候補が勝利できるよう手助けするのが狙いだ。
具体的には、キャピタルゲインと株式配当に対する最高税率を現行の23.8%から28%に引き上げるとしている。オバマ大統領の09年の就任時の同税率は15%だったため、2期(8年)の間にほぼ倍に引き上げることになる。
大統領はまた、死亡時の資産譲渡に対するキャピタルゲイン課税を導入し、ホワイトハウスが「キャピタルゲインの最も大きな抜け穴」と呼ぶ現状に終止符を打つ意向だ。現行税法では、死亡時まで保有の資産は同課税の対象ではなく、富裕層が資産を持ち続ける誘因となっている。相続人が課税されるのは資産の売却時だけで、被相続人の死亡時の資産価値を上回った部分だけが課税の対象とされている。
オバマ大統領は過去10日間にわたって全米各地で遊説し、一般教書演説に盛り込む政策案の一部を事前に披露してきた。大統領はこのほか、労働者に年間7日間の有給病気休暇を認めることや、数百万人もの学生のコミュニティカレッジの学費無償化などの立法化を議会に訴える。
オバマ大統領は富裕層増税と中間層世帯への減税を一貫して呼び掛けてきたが、17日に公表された計画によれば、今年の一般教書演説では、このような増減税の規模を一段と拡大する。議会がこれまで無視するか拒絶してきた提案に上積みする形だ。
共和党のベイナー下院議長(オハイオ州)とマコネル上院院内総務(ケンタッキー州)の報道官はいずれも、ホワイトハウスが公表した同計画を批判した。
原題:Obama Proposes Tax Increases on Wealthy to Aid Middle Class (2)(抜粋)
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更新日時: 2015/01/19 07:44 JST