再送-〔アングル〕エレキ再生に自信示すソニー社長、スマホ・TVには厳しい決断も
(この記事は10日午後8時59分に配信しました)
[ラスベガス/東京 10日 ロイター] - ソニー は、今年3月までに開催する経営方針説明会で、2015年度から3カ年の中期経営計画を公表し、数千億円規模の営業利益見通しを示す可能性がある。14年度に構造改革を進めてきた平井一夫社長は、米ラスベガスで記者団に対し「新たなフェーズに持っていくところまできた」と述べ、エレクトロニクス再生に自信をのぞかせた。ただ、不採算のスマートフォン事業とテレビ事業に関しては、自力再建の限界を指摘する声もあり、近く厳しい決断を迫られる可能性がある。
<CESでゲームとセンサーを強調>
「I'm likin' those numbers(いいね、この台数)」──。米ネバダ州ラスベガスで開かれたコンシューマ・エレクトロニクス・ショー(CES)で、ソニーが5日に開いた記者説明会の壇上、平井社長は、ゲーム機「プレイステーション(PS)4」の累計販売が1850万台を突破したニュースに、はやりのフレーズで調子よくコメントしてみせた。
ゲーム子会社は、このイベントのタイミングに合わせてぎりぎりまで数字を集計し、満を持しての公表だった。これによりマイクロソフト と任天堂 の競合ゲーム機をしのぐナンバー1の座を一段と固めたのは確実で、平井社長は会場から拍手喝さいを浴びた。
イベントの冒頭で平井社長が口にしたのは、映画子会社ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(SPE)のサイバー攻撃問題に対する釈明。だが、事業として最初に言及したのが、ゲーム機を通じたテレビ放送「プレイステーション・ヴュー(PS Vue)」だ。続いて紹介したのが、ソニーのイメージセンサー技術で、自動車市場への参入方針を表明した。
サイバー攻撃問題に触れることは避けられなかったが、ゲームとイメージセンサーを進んでアピールする平井社長のプレゼンテーションは、ソニーを取り巻く現状をそのまま投影した格好だ。モルガン・スタンレーMUFG証券・アナリストの小野雅弘氏は「これからのソニーの優先順位を確認できたようなプレゼンだった」と評した。昨年11月に開いた事業別の投資家説明会では、ゲームとイメージセンサーの成長見通しが目立ったが、今後、この2事業がエレクトロニクスをけん引する路線が鮮明になりつつある。
<来期以降の続投に意欲>
2012年4月の就任からまもなく3年が経つ平井社長は、2012─2014年度の「第1次中期経営計画」は達成できずに終わる。だが、3年目となる今期の1年を振り返れば、自身を補佐するナンバー2に吉田憲一郎最高財務責任者(CFO)を任命し、パソコン事業の売却や、テレビ事業の分社化など、強力に構造改革を進めてきた自負がある。
平井社長は、CES開催初日の6日、日本人記者団に対し「いよいよ会社をターンアラウンド(再生)して、これからが成長で、新たなフェーズに持っていくところまできた。本当にソニーらしくなるステージにまでエレクロトニクス事業は来ている」と述べ、来期以降の復活に自信を示した。
さらに「ターンアラウンドの完遂は大事だが、それで終わりではない」と続投に強い意欲を示し、年度内に公表する「第2次中期経営計画」で強気の方針を打ち出す姿勢をにじませた。
すでにソニーは、昨年11月の投資家説明会で、モバイルを除くエレクトロニクスと、映画・音楽のエンターテインメントについて、事業別に2017年度営業利益計画を公表済みで、数千億円レベルの連結営業利益がみえている。これをベースに、金融事業を加えた市場の試算では「17年度の連結営業利益は5000億円の計画が出てくる可能性がある」(シティグループ証券・アナリストの江沢厚太氏)との見方が出ており、経営方針説明会への期待は高まっている。仮にそうなれば、今期の連結営業赤字400億円の予想に対して大躍進の計画となる。
<事業撤退・売却「普通にあり得る」>
一方で、平井社長は記者団に「この3年で、できたところとできなかったところがある」と認めた。具体的には言及しなかったが、今期2000億円以上の赤字を計上するスマホ事業と、前期まで10年連続赤字のテレビ事業が、重い課題として続いていることは明白だ。
テレビ事業の将来については、パナソニック の津賀一宏社長が危機感を隠さなかった。CESでは記者団に「もはやテレビは誰でも作れる。これでは中長期のあるべき姿が描けない」と語った。パナソニックは、すでに個人向けスマホから撤退しているが、津賀社長は「この問題は、テレビだけでなく、スマホでもそう。中国の新興メーカーに追い上げられて逆転されることが起きる領域だ」と述べ、コモデティ化の宿命を負うエレクトロニクス製品の弱点をずばり突いてみせた。
シティグループの江沢氏は「ソニーのスマホとテレビは、抜本処理が必要なことで課題は共通。合弁や提携などの抜本策がなければ、3年経っても赤字は残り続けるだろう。コスト削減だけでは不十分。完全撤退も選択肢になる」との見方を示す。
これまでのところソニーは、スマホ事業とテレビ事業は、ともに継続することを前提に中期経営計画を立てている。だが、あるソニー幹部は「あらゆる事業は永続しない。事業の撤退や売却は、ソニーでも普通にあり得ることは理解しなければならない」と述べ、グループ内に漂う緊張感を指摘している。
昨年7月のPC事業の売却は、構造改革が遅れていた社内にある種の「ショック療法」の効果をもたらしたという。近い将来、平井社長が厳しい最終判断を求められる可能性もありそうだ。 (安藤律子 村井令二 編集:田巻一彦)
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