きのうの民主党代表選で、決選投票の末、岡田克也氏が新しい代表に選ばれた。民主党政権で外相、副総理を務めたベテランの再登板である。

 すぐに政権交代を実現できる情勢にはない。まずは党の再建に注力すべき時だ。熟議を経て最後はリーダーの決定に従う。そんな政党文化をつくらなければ信頼回復は望めない。

 そのうえで、安倍政権が進める政策に明確な対案を打ち出さなければならない。

 決選投票を前に、岡田氏が「新しい民主党の大きな旗にしよう」と呼びかけたのは、格差問題への取り組みだった。

 アベノミクスの問題点を指摘し、修正を促しつつ、不平等を是正する。男女の格差、将来世代の負担、働く環境の改善や、子育て・教育政策の拡充など人への投資――。これらの課題は党が一丸となって取り組むテーマとなり得る。

 「2030年代原発稼働ゼロに向け、あらゆる政策資源を投入する」と岡田氏が訴えた原発再稼働の問題でも、説得力ある道筋を早急に示すべきだ。

 個々の政策の土台となる明確な理念を示す必要もある。

 その点、今回の代表選ではっきり見えたのは、3人の候補者の違い以上に、共有する価値観のありようではなかったか。

 昨年、民主党は「穏健中道」の理念を掲げる報告書をまとめた。「分極化」が指摘される今の日本の政治地図を広げれば、真ん中に空いているのが、穏健中道のスペースだといえる。

 その実現を目指すなら、戦後70年の歩みのうえに日本の将来像を描くことだ。歴史認識の問題では、アジアの人々に「痛切な反省とおわび」を表明した村山談話を堅持し、国際社会との協調を示すべきである。

 もうひとつのカギは、立憲主義という基本ではないか。権力は憲法によって縛られる、という政治家が従うべき大原則だ。多様性をもつ寛容な社会を守るためにも、憲法の精神を生かさなければならない。

 安全保障問題で民主党は、集団的自衛権をめぐる閣議決定について「立憲主義に反するため、撤回を求める」と公約した。議論を深め、穏健な安保政策を追求してほしい。

 衆院選では安倍政権に対抗する力強さに欠け、党勢回復にはほど遠い結果となった。だが、民主党の再起は日本政治にとって重要だ。自民党の目が届かない人々への心配りを大切に、投票先を見失った有権者の受け皿づくりを進めることが岡田新体制の使命となる。