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 大阪府南部の泉南地域のアスベスト(石綿)工場で健康被害を受けた元労働者らに国が総額約6億円を賠償することで終結した集団訴訟で、塩崎恭久(やすひさ)厚生労働相が18日、大阪府内を訪れて原告らに面会した。「国の至らなさを改めて認めるとともに、心からおわび申し上げる」と謝罪した。

 石綿被害を巡り、厚労相が泉南地域を訪れたのは初めて。訴訟は2006年から1陣と2陣で元労働者と遺族ら計約90人が提訴。昨年10月の最高裁判決は「石綿粉じんを取り除く排気装置の設置の義務づけが遅れた」と国の責任を認めた。二審で原告側が敗訴していた1陣は大阪高裁に差し戻され、同12月に和解が成立。原告側が求めていた現地訪問が実現した。

 塩崎氏はこの日、肺がんを患っていた元労働者の松本幸子さんに面会予定だったが、松本さんは3日前の15日に77歳で亡くなった。大阪府阪南市の自宅を訪問した塩崎氏は「国の責任が認められたことについておわび申し上げる」と遺族に謝罪したという。原告共同代表の岡田陽子さん(58)宅も訪ね、泉南市内では原告ら約30人と面会した。

 塩崎氏は石綿による疾患について、厚労省が新年度から合併症の予防や苦痛の緩和につなげる研究を始める方針を明らかにした。(太田航、末崎毅)