祖業との訣別を決めたパイオニアの覚悟
小谷進社長に聞く勝ち残りのシナリオ
――音響機器とDJ機器事業を手放す決断をした理由は何ですか。
カーエレクトロニクス(車載機器)の事業環境の急速な変化が背景にある。2009年にプラズマテレビから撤退し、残った車載機器とホームAV(音響機器)、光ディスク、DJ機器を成長させていこうとした。
ホームAVは大幅な赤字だったが、黒字まであと一歩のところまで改善した。しかし、市場はすでに成熟している。DJ機器も世界シェアが約6割、利益率2割の事業にまで成長したものの、これ以上シェアを伸ばすのは難しい。さらなる成長には、クラブ向けの業務用機器など新たな投資が必要だ。また光ディスクもシャープとの合弁で育てようとしたが、市場自体が収縮してきた。
力を分散していたら勝ち残れない
一方で、カーエレの事業環境がものすごく変化してきた。通信の高速化や大容量化で、今まではカーナビがスタンドアローンとして存在していたが、クルマの中にディスプレイだけあり、情報はすべて外から持ってくる時代に変わってきている。そうなると、競争相手も従来のようなカーナビのハードメーカーだけでなく、通信、ITといった分野の我々の数倍も大きい企業に広がってきている。
そこで勝ち残るには、力を分散させていてはダメだ。カーエレにリソースを集中させるというのが、今ある選択肢としては最善だと判断した。
――音響機器事業は今年3月にオンキョーに売却するが、パイオニア製品とは価格帯、ラインナップなどで重複する部分が多い。
確かにオンキヨーとは製品でバッティングする部分もある。そのため、まず2社でやることは開発、生産、間接部門の徹底した効率化だ。そしてハイレゾ音源などの新市場にチャレンジすれば、ビジネスとしては十分やっていけると思う。
――祖業の音響機器事業を手放す心境は?
忸怩たる思いだ。プラズマテレビから撤退するときもそうだった。だが、重要なことは、われわれはパイオニアのDNAである「音」へのこだわりは継続させるということ。そのためにオンキヨーにも15%出資し、一定のオーナーシップを持たせていただく。