清水理史の「イニシャルB」

駅に着いたら自宅のエアコンとテレビを自動でON! カシコイ据置型学習リモコン「iRemocon Wi-Fi」

 グラモから発売された「iRemocon Wi-Fi」は、スマートフォンからの遠隔操作やGPS連動、マクロ機能などを備えた据置型の学習リモコンだ。赤外線で操作できるデバイスを遠隔、もしくは自動操作することで、ちょっとしたスマートハウス気分を味わうことができる。

自宅が"プチ"スマートハウスに

 最寄り駅に着いたら設定した温度でエアコンを自動でオン。照明をつけると同時にテレビもオン。「リビング、音楽」と声に出せばオーディオからお気に入りの音楽が流れ出す−。

 グラモから発売された「iRemocon Wi-Fi(以下、iRemocon)」は、まるで未来のスマートハウスのような生活を、すっかり見慣れた、今の自宅でも手軽に実現できるデバイスだ。

グラモの「iRemocon Wi-Fi」。据置型のWi-Fi対応学習リモコン

 もちろん、できることに限りはある。iRemoconの正体は据置型の学習リモコンだ。円筒の本体から360度すべての方向に照射できる赤外線で家電をコントロールするため、その対象は赤外線方式のリモコンで制御可能な家電に限られる。

 学習リモコンと言えば、AVの世界ではすでにおなじみの存在だが、このiRemoconが面白いのは、インターネットにつながること。本体に内蔵されたIEEE 802.11nの無線LAN、もしくは底面の有線LANポートを利用してインターネットに接続すれば、外出先からスマートフォンでテレビをオン・オフしたり、スマートフォンのGPS機能を利用して自宅から出たら照明をオフにしたり、内蔵のセンサーで室温をチェックしてエアコンを制御したりできる。

 IoTに注目が集まる今、「寝る」なんて、ひと言で、照明どころか、戸締まりをチェックして、明日の目覚ましをセットするなんて世界も、そう遠くはなさそうだが、取りあえず今の住宅、今の家電、今のインフラだけで、スマートハウス的な世界を体験できるのが、このiRemoconというわけだ。

スマートフォンのみで設定可能

 では、製品を見ていこう。前述したように、iRemocon Wi-Fi(IRM-03WLA)は、Wi-Fiに対応した据置型の学習リモコンだ。

 円筒を斜めにスパッと切り取ったようなデザインの本体は、まるで卓上用のロボット掃除機のようなイメージで、サイズも直径105mm×高さ37mmと若干大きめ。上の黒い部分に360度照射に対応した広角高出力赤外線LEDを搭載し、本体裏側、白い部分の底面にLANポート×2、USBポート、IRポート(延長用)、電源、モード切り替えやWPS用のスイッチなどを搭載している。

斜めからスパッと切り取ったような円筒形のスタイル
正面
背面
底面

 設置する際は、まず背面のスイッチで、「SETTING」、「CONVERTER」、「REPEATER」の3つから利用するモードを選択する。

 というのも、本製品のメインの用途は学習リモコンだが、機能的にはルーター機能を含まない無線LANアクセスポイントとなっており、無線LANの親機や中継機、有線機器を無線化するためのコンバーターなどとしても利用可能となっているためだ。

・SETTINGモード
 SETTINGは文字通り本体設定用のモードだ。このモードにすると、設定専用のSSIDと暗号キーの設定に切り替わり、本体のDHCPサーバーも有効になる。有線LAN、もしくは設定用のSSIDで接続することで、PCなどから設定ページにアクセス可能となり、既存の無線LANへの接続などの設定などを実行できる。

 ただし、有線LANで接続する場合やWPSで既存の無線LANに接続する場合は、設定画面を使わなくても利用できるため、通常、このモードは利用しない。

・CONVERTERモード
 CONVERTERは、有線LANにしか対応しない機器を無線LANに対応させるためのモードだ。本製品を既存の無線LANルーターにクライアントとして接続後、有線LANにしか対応しないテレビやレコーダーなどを底面のLANポートに接続すると、これらの機器を無線LANで通信させることができる。

・REPEATERモード
 REPEATERは、本製品を無線LANの親機、もしくは中継機として動作させるモードだ。有線LANで既存のルーターに接続して無線LANの親機として動作させたり、無線LANで既存の無線LANルーターに接続すると同時に、自らも他の機器からの無線LAN接続を受け付ける中継機として動作させることができる。

底面のスイッチで動作モードを切り替え。ほとんどの場合、REPEATERモードで利用する。無線LAN接続はWPSによるボタン設定が可能

 学習リモコンとして使いたいだけなのに、無線LANのモードを意識しなければならないのは面倒だが、ほとんどの場合はREPEATERで使うことになるので、サッとスイッチを切り替え、底面のLANポートで既存のルーターと接続するか、WPSボタンを使って既存の無線LANと接続してしまえばいい。

 肝心の学習リモコンとしての設定は、ほぼスマートフォンから実行可能だ。iRemoconと同じ無線LANにスマートフォン(iOS/Androidどちらにも対応)を接続後、無料で提供されているアプリ「iRemocon Wi-Fi」をダウンロードして実行すると、ネットワーク上のiRemoconが検出される。

設定やコントロールには無料の「iRemocon Wi-Fi」アプリを利用

 その後、iRemoconに名前を付け、リモコンのデザインを選択し、リモコンデータを登録する。プリセットで、エアコン、テレビ、レコーダー、照明は、主要メーカーのデータが登録されており、ここから自宅の環境で利用している製品に対応したものを選ぶだけで利用できる。

 ここまでの設定で、自宅内、つまりスマートフォンを自宅の無線LANに接続している環境であれば、スマートフォン上のリモコンボタンをタップして、照明をオン・オフしたり、テレビを付けてチャンネルを切り替えたり、エアコンの温度を調節するといったことが可能になる。

スマートフォンを無線LANに接続すると自動的に本体を検出
リモコンのデザイン変更や有料サービスの外出先からの操作にはユーザー登録が必要
リモコンはプリセットされたデータから選択することで設定可能
テレビのリモコン
照明のリモコン

 実際に使ってみると、通常のリモコンとまったく変わらないスピーディな反応で快適に操作できた。筆者の仕事場では、デスクに座ったときの方向とエアコンの設置場所の関係が悪いせいか、これまでリモコンでエアコンをオンにするために、特定の方向に向けて、何度かリモコンのボタンを押さないと反応しなかった。しかし、iRemoconの場合、見通しのいい場所に設置したこともあり、方向などを意識せずに一発で電源をオンにできるようになった。

 設置場所の問題などでリモコンの反応の悪さに困っている人も導入する価値がありそうだ。

 なお、プリセットされていないリモコンについても学習機能を使って登録することができるうえ、リモコンのデザインもWebサービスとして提供されている「UIデザイナー」によって変更することができる。

 UIデザイナーでは、マクロの登録も可能になっており、操作したいリモコンのボタンを順番に登録しておくことで、外出するときに照明やテレビ、エアコンなどを一斉にオフにするといったように、複数の操作を1ボタンで実行することも可能だ。

UIデザイナーでボタンの配置や名前を変更可能
マクロを利用すると、複数の操作を1ボタンに割り当てられる

外出先からの利用は有料

 このようにスマートフォンを手軽に高機能リモコンとして使えるようになるiRemoconだが、一部の機能は月額300円(税別)の有料となっている。アプリ内課金でプレミアム会員になると、外出先からのリモコン操作、音声によるリモコン操作、GPS連動によるリモコン操作の3つの機能が有効になる。

 外出先からのリモコン操作は、ルーターのポート開放などの操作は必要なく、課金後、機器のシリアルナンバーを登録するだけで、すぐに利用可能だ。

一部の機能は月額300円(税別)の有料。アプリ内課金によって有効化できる

 試しに、スマートフォンの無線LAN接続をオフにし、LTEで接続した状態でボタンを操作してみたが、無線LANに接続しているときと同様にスピーディに各機器を操作することができた。

 本製品では、本体に内蔵されたセンサーによって、設置場所の温度、湿度、照度を検出できるようになっている。このため、帰宅時の電車内から部屋の温度を確認してエアコンをオンにするといった使い方も可能だ。

 また、照度を参照することによって、部屋の照明が付いているのか、消えているのかも確認できる。リモコンで照明をオフにすれば「0 lx」と表示され、付ければ「284 lx」などと表示されるので、外出先からオンオフの状態を確認することもできる。

センサーを内蔵し、部屋の状態を把握可能。照明のオンオフ状態も照度から判断できる

 音声操作もなかなか便利だ。「しごとば」など、あらかじめiRemoconを設置した場所用の音声コマンド起動用のキーワードと、「テレビつけて」などのリモコンのボタンに対応するキーワード(いくつかはプリセット済み)を設定しておくと、「しごとば、テレビつけて」などと、スマートフォンに向かって話すだけで、テレビがオンになる。

 最初は、どれくらいの話し方や声の大きさで反応するのかを探る必要があるうえ、起動用キーワードとコマンドの間に時間を空けないと反応しないことがあるが、これができると、かなり未来的な感覚が味わえる。

音声での操作も可能。ちょっとした未来気分を味わえる

 最後のGPS連動は、普段の生活を自動化できる機能だ。例えば、アプリでGPS連動を有効化後、表示された地図で自宅からの最寄り駅を中心としたエリアを設定する。そして、動作の基準として「エリア外→内」を選択し、この動作に割り当てるリモコンのボタンとしてエアコンオンを登録しておく。

 すると、会社や学校からの帰路、自宅近くの駅に到着すると、アプリがこれを検知して、エアコンの電源を自動的にオンにしてくれる。駅から自宅まで歩いて帰る間に、部屋が適温になっているというわけだ。

 こうなると、帰宅までにお風呂も沸かしておいてほしいし、外出するときに戸締まりまでしてほしくなるが、今の環境のままでも、特定の生活パターンを自動化できるのは、大きなメリットと言えそうだ。

地点や動作の基準、動作を設定すると自分のいる位置によって自動的に自宅内の家電を操作できる

NTT西日本やニフティのサービスも

 以上、グラモの「iRemocon Wi-Fi」を実際に使ってみたが、なかなか面白い製品と言えそうだ。実際に生活が豊かになるかどうかは、身近に赤外線でコントロールできる機器がどれくらいあるかがポイントになるが、少なくとも、照明とテレビ、エアコンはコントロールできるので、普段のリモコンの代わりとして活用するだけでも十分にメリットがある。

 なお、本製品は、NTT西日本の「iRemocon for フレッツ(月額300円・税別)」やニフティの「おへやプラス(初期費用5000円・税別、月額980円・税別。スマートサーブユーザーは割引あり)」としても提供されている。これらのサービスでは、サービス料金のみで前述した有料機能も使えるので、こうしたサービスの利用も検討するといいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。