「報道の自由」は世界共通のルールなのか
世界新聞・ニュース発行者協会の幹部に聞く
1月7日から9日にかけて、フランスは史上最悪ともいえる連続テロ事件に遭遇した。あらゆる事物を風刺の対象とするフランスの週刊紙「シャルリ・エブド」 のパリ本社で、風刺画家、編集者、記者など12人が武装姿の男性たちに銃殺された。これを起点にさらにテロ事件が起き、人質となったユダヤ人を含め、合計17人が命を落とした。実行犯はイスラム教過激主義者と見られる男性3人だ。
同紙はイスラム教の預言者ムハンマドを風刺画として描いたことで4年前に編集室に火炎瓶を投げ込まれた過去がある。フランス国民にとって、言論の自由を暴力で封じ込められたことへの衝撃はとてつもなく大きい。政治家がテロ防止策に力を入れる中、国内のイスラム教徒(ムスリム)が反ムスリム感情の対象にならないかと懸念が出る。
テロ事件から1週間後、まだ衝撃が醒めやらぬパリを訪ね、事件の影響や報道の自由の行方について識者に聞いた。
まずは、世界新聞・ニュース発行者協会(WAN-IFRA)の「報道の自由」部門ディレクター、アンドリュー・へスロップ氏に今回の事件の意味と今後について聞いた。WAN-IFRAは世界の新聞社とニュース発行者の国際的団体で、120を超える国の3000以上のメディア企業、1万5000のサイトから約1万8000の発行者が参加する。本部はパリと独ダルムシュタットに置かれている。
報道の自由を守ることが活動の核
――報道の自由(プレス・フリーダム)部門では、どんな業務を行っているのか。
WAN-IFRAが創立されたのは1948年だ。当時から、報道の自由の原則を守ることを活動の核としてきた。加盟する新聞やニュースメディアはすべてこの原則を実行することになっている。
私の担当部門では加盟会員のために報道の自由を巡る質問に答えたり、声明文を発表したり、会員のために情報を発信する。会員同士の情報交換を促進し、取材中の記者の安全が確保されるよう、現地に調査団を派遣したり、報告書をまとめ、状況の改善を促すこともしている。また毎年、報道の自由のために戦った人物・組織には「報道の自由のための金のペン賞」を授与している。