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山田修「展望!ビジネス戦略」(1月19日)

パナソニック、負け組から完全復活 剛腕・津賀社長の“称賛に値する”経営&大改革

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パナソニックのロゴ
 パナソニックが新年早々に、海外生産の大きな部分を今春から順次国内生産に切り替えることを発表した。まず縦型洗濯機や電子レンジを、続いて家庭用エアコンも中国生産から国内生産に戻すとしている。

 これはもちろん最近の円安に対応した措置である。パナソニックは家電製品の約4割を海外生産しており、1円円安が進むと年換算で約18億円の利益減少になるという。1ドル120円の為替相場では大幅な減益が出てしまうことになる。

 中国やアジアなどの生産拠点各国での人件費高騰もあり、国内生産回帰の動きはダイキン工業やキヤノンでも見られていたが、大手が国内で生産を再立ち上げするのは、実は容易ではない。部品部材などの供給メーカーにまで海外進出をお願いした揚げ句、旧来の自社工場は空洞化していたりする。また、為替相場も2~3年ベースで考えればどう動くかは不透明で、国内回帰を成し遂げたと思ったら1ドル100円を下回る円高が戻ってきたりする可能性も否定しきれない。

 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』(山田修/ぱる出版)
「それにもかかわらず」のパナソニックの意思決定は評価されるべきである。企業経営とは「状況対応業」だからだ。円安が進んでしまった、それではどうする? という状況に対してパナソニックは動いたのだ。パナソニックのアジリティ(機敏)のある動きに対して、例えば競合のシャープ幹部は「生産ラインを復活させるには、かなりのコストがかかる」(1月5日付読売新聞記事より)としているが、「勝ち組」とされるパナソニックに対してシャープが「負け組」といわれる理由が透けてみえる。

●「パナソニックは負け組」発言の真意


 津賀一宏氏が2012年6月にパナソニック社長に就任した時、筆者は自身のブログで「パナソニック社長交代、津賀一宏社長の再生戦略は『家まるごと』だ」と書いてエールを送った。パナソニックはその後、自動車関連に加えB to B分野に軸足を移し業容を拡大させ、業績回復を果たした。テレビ部門出身の津賀氏が果断にプラズマテレビ事業を閉鎖した意思決定は賞賛に値するし、12年10月には約7000人いた旧本社部門を再編し、150人程度のコーポレート戦略本社に削減した豪腕には肝を潰した。

 代わりに設立した、備品管理など社内総務関連の間接業務を請け負う子会社パナソニックビジネスサービス(PBS)も3月までには売却するという。社員数が約900人のPBS売却で、間接業務を担うグループ企業の再編にほぼメドがつく。