【サザン謝罪問題】 ネット反応が表現に影響も 批判高まり沈静化図る
人気バンド「サザンオールスターズ」のボーカル 桑田佳祐 (くわた・けいすけ) さんと所属事務所アミューズが、ライブで十分な配慮をせずに紫綬褒章を取り扱ったとして謝罪した。インターネットなどで高まる批判を沈静化させる狙いがあるとみられ、識者は「ネットの反応が表現活動にも影響を与える時代になっている」と指摘する。
▽抗議
問題となったのは、横浜市の横浜アリーナで開かれた年越しライブ「ひつじだよ!全員集合!」。桑田さんは昨年秋に受章した紫綬褒章をポケットから取り出し、観客に対してオークションに掛けるようなパフォーマンスをしたという。
ツイッターなどに「嫌なら辞退すべきだった」「失礼だ」などと批判する意見が出たほか、東京・渋谷の事務所前では抗議行動も。動画サイト「ユーチューブ」には「桑田佳祐は国民に対して謝罪しろ」などと声を上げる様子が投稿された。
NHK紅白歌合戦でのパフォーマンスも批判を高めた。ライブ会場から生中継で出演した桑田さんは付けひげ姿。ネットでは「ヒトラーのまね」と話題になったほか、「ピースとハイライト」の歌詞を政権批判と読み解く意見も。
桑田さんらは15日、紫綬褒章について「感謝の表現方法に十分な配慮が足りなかった」と謝罪のコメントを発表。紅白に関しても「お客さまに楽しんでいただければという意図で他意はない」と説明する事態となった。 17日に出演した民放のラジオ番組でも「(紫綬褒章を)結果的にぞんざいに扱ってしまった。心より心よりおわびしたい」とあらためて謝罪した。
▽時代
サザンは3月31日、アルバムを発売する予定。ベテランのレコード会社関係者は、桑田さんサイドが早急な火消しに走った理由として、ビジネス面の判断とフランス週刊紙銃撃事件の影響を挙げる。「抗議行動がエスカレートして何か事件が起きるかもしれない。今の時代の雰囲気を反映している」
「ネットで膨らんだ批判や抗議に対して、表現者たちはうまい対処法を見つけられていない」と指摘するのは、ネット社会に詳しい評論家の 藤田直哉 (ふじた・なおや) さん。最近はネットの存在感が増し、一般の人たちが個人の表現の自由に圧力をかける側に回るようになったとみる。
「表現者には生きづらい時代。今回、大アーティストのサザンが圧力に屈したような印象を与えたことは、表現活動に影響を与えるとの懸念を持っている」と藤田さん。
近年、桑田さんは社会的なメッセージがこもった歌を歌ってきた。サザンの新曲のタイトルは「平和の鐘が鳴る」だ。
ある音楽ライターは「日本ではフォークロックが廃れてから政治的なことを歌うミュージシャンが少なくなった。だからこそ桑田さんには、平和や政治的なことを歌うトーンを下げてほしくない」と強調した。
(共同通信)