(2015年1月16日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が2011年9月に自国通貨の対ユーロ相場に1ユーロ=1.20スイスフランの上限を設定することを決めた時、その動きは近代の中央銀行の流儀から少しかけ離れているように見えた。
欧州為替相場メカニズム(ERM)が1992年に崩壊してから、最も進んだ先進国は、自国通貨を自由に変動させるか、通貨同盟に加わることを選んだ。
1970年代にアジャスタブル・ペッグのブレトンウッズ体制が崩壊するまで支配的だった「管理された為替相場」は過去の遺物と見なされていた。そうした相場制度は投機筋の攻撃に対して脆弱すぎると政策立案者が考えていたからだ。
ユーロ圏の債務危機に怯えていた投資家たちにとって安全な避難先になっていたスイスフランの急騰を防ごうとして、SNBは為替相場に上限を設定するという手段に出た。
2011年7月上旬から8月上旬にかけて、スイスフランは貿易加重ベースで約20%跳ね上がり、通貨高が国内輸出業者に打撃を与え、スイスを長期のデフレに陥れる恐れがあった。
上限設定措置がなければ、事態はもっと深刻だった
上限(正式には最低為替レートとして知られる措置)は、スイスのインフレ率を2%未満というSNBの目標近くまで押し上げる役には立たなかった。だが、多くのアナリストは、この措置がなければデフレは実際よりはるかにひどくなっていたという見方で一致している。
また、中央銀行の発表は、為替トレーダーからも一般に信頼できるものと見なされ、SNBはそのおかげで、為替相場制につきものの大規模な介入を免れた。
SNBが上限を防衛するために外貨資産を購入すると、2011年から2012年にかけてSNBの外貨準備高は2580億スイスフランから4320億スイスフランまで急増したが、昨年11月末時点では4950億スイスフランと、伸びが緩やかになっていた。
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