寝台特急乗車記:大雪16時間遅れ「完走」 まさかの2泊
毎日新聞 2015年01月18日 10時08分(最終更新 01月18日 17時35分)
◇3月12日運行終了 大阪−札幌「トワイライトエクスプレス」
大阪−札幌間の1495.7キロメートルを約22時間かけて結ぶ寝台特急「トワイライトエクスプレス」。JR西日本は3月12日に運行を終了することにしていることもあり、改めて注目を集めている。1月6日午後に運行された札幌発大阪行きは、発達した低気圧による大雪などの影響で約16時間(954分)も遅れて、60人の乗客とともに大阪に到着した。「完走」の背景には乗客と運行スタッフの熱い思いがあった。【米田堅持】
◇食料配布と買い物停車
1号車に乗車した写真家の吉永陽一さん(37)は「(6日は)特に遅れることもなく出発し、当初は快調だった」という。しかし、本州へ入ると状況は一変する。「夜が明けると象潟駅(秋田県にかほ市)付近は数十メートル先さえ見えないほどの雪だった」と振り返る。
雪の勢いは弱まらず、秋田駅で2時間半ほど停車するなど、遅れが目立ち始めた。村上駅(新潟県村上市)到着時には11時間20分遅れとなり、パンと水130個を乗客に配布した。7日午後7時過ぎに到着した直江津駅(新潟県上越市)では乗客がコンビニで買い物をする時間をもうけたこともあり、出発時には遅れが15時間を超えた。
「携帯ポットで湯を沸かすことができると言いながらカップめんを買おうとする人をみて、他の車両でもいろんなドラマがありそうだと感じた」と話す。その後、車内では車掌が乗客の最終目的地を確認した。
JR西日本によると、食料や買い物をするタイミングは、車掌が昼食や朝食時間を考慮して調整を要請しており、過去には秋田、酒田、新津、長岡、直江津で食料の手配を行ったことがある。電源車の燃料は、大阪から札幌へ向かうときに72時間分を搭載しているが、食堂車に予備の食材を積む余裕がないため、乗客やクルーの食料は途中で補充せざるを得ないという。
◇特別な使命
なぜ「完走」にこだわったのか。
JR西日本の運行スタッフにとって「トワイライトエクスプレス」は「特別な使命を持った列車」だという。運行中止となった場合でも、車両のやりくりのため大阪まで回送せざるを得ないことや、遅れても安全運行は可能という判断もあり「完走」させることにした。急ぎの乗客のために特例として長岡駅から新幹線へ乗り換えを認める措置を取ったものの、ほとんどの乗客は、そのまま乗り続けることを選択した。