【製品レビュー】ワープロ時代を思い出す?ASUSのChromebookはコスパ最強の文書作成マシンか
2014年の前半までは、出たら絶対買おうと決めていたChromebookだが、いざ日本に投入されると少し興味を失ってしまった。最大の理由はその価格。円安の影響もあってか、登場当初は4万円台のマシンがほとんどで、PCとあまり変わらないのが納得いかなかったのだ(最近は3万円前後のモデルが増えてきている)。だが、躊躇したものの結局、ASUSの『ASUS Chromebook C300MA(バレンシアオレンジ)』を購入。このモデルを選択した理由は単純で、一番安かったから(税込3万2184円)。
数週間使ってきて、実感しているのは文書作成マシンとしてはかなり実用度が高いこと。Chrome OSがどの程度WindowsやMacに近く使えるかは人によって評価に差があるところだが、メールや文書作成、ブログの執筆などでは(テキスト作成を生業にしている人間から見ても)かなり使える。その理由を7つにまとめてみた。
1.起動が速い
Chromebookは起動が速く、ディスプレイを開いてすぐに使うことができる。起動やスリープ状態からの復帰が遅かったWindowsも最近は開いてすぐに使えるが、購入してから年月が経つと段々遅くなってしまう。Chrome OSでは、原理上この現象が起こらない。さらに、OSなどの頻繁なアップデートやウィルススキャンで無駄な時間を食うこともない。思いついたらすぐに書き始められる。
2.家マシン、ゴロ寝マシンとして適度なサイズ
ASUSのChromebookは、ディスプレイサイズが13.3インチと、11.6インチを採用したDELLやAcerのChromebookよりも少し大きい。本体の厚みは20.3mm、質量は約1.4kgと、最先端のモバイルPCに比べると携帯性に欠けるが、持ち運びに苦労するほどでもない。
このサイズは、デスク上はもちろん、リビングルームやソファー、ベッドなど自宅内の好きな場所でリラックスしながら使うのに向いている。リラックスして使うならタブレットでいいじゃないかという意見もあるだろう。確かに、SNSのチェックや映像コンテンツを楽しむのであれば、片手で持てるタブレットが楽だが、こんなことはないだろうか?
スマホやタブレットでメールをチェックしたはいいが、返信が長文になりそうなので別の部屋に行ってパソコンを起動する。もしくは後回しにしてしまう。キーボード付きのマシンであれば、1台で完結させることができるのだ。
3.しっかり打てるキーボード
キーボードの形状は一般的なアイソレーションタイプ。キーピッチ(キーの中心から隣のキーの中心までの距離)は19mmとフルサイズで、しっかりした打鍵感がある。英語キーボードはスペースキーやEnterキー、Backspaceキーの横幅が日本語キーボードよりも広くなっている。筆者は普段から英語キーボードを使用しているので違和感はない。英語キーボードでよく質問されるのが、日本語と英語入力の切り替えだが、「ctrl」+「スペース」キーで切り替えられる。また、ファンクションキー(F1〜)の表示はないが、日本語変換などでは最上段のキーがその役割を果たす(「←」のF1から始まり、「音量大」がF10)。タッチパッドも広くて操作しやすい。
4.鮮やかさはないが目に優しいディスプレイ
ディスプレイは正直に言って、美しくはない。本体にはSDカードスロットが搭載され、デジカメで撮影した写真の確認もできるが、色合いなどをチェックするには向いていない。映画など映像を鑑賞するなら、HDMIケーブルでテレビなどに映し出すことをおすすめする。
ただ、光沢のないノングレア液晶なので、外光の映り込みがほとんどなく、Webの閲覧や文書作成など、テキスト中心の作業では目の負担は少ない。最近のパソコンは光沢液晶ばかりとお嘆きの皆さんは一考に値するのではないだろうか。
本体カラーはスカイブルー、バレンシアオレンジ、ハニーイエローの3種類。日本語キーボードを搭載した上位モデル(3万9744円)はブラックとホワイト。
底面も同色。このポップな色合いが低価格なChromebookにはマッチすると思う。
シンプルな英語キーボード。日本語の入力には特に問題はないが、日本語キーボードが欲しければ、上位モデルを選ぶと良いだろう。
5.静かで熱くならない
使用しているのが冬の季節だということもあるかもしれないが、長時間使用しても本体はほとんど熱くならない。PCのようにうるさくファンが回ることもなく、作業に集中しやすい。ディスプレイと共に、昔のワープロ専用機を思い出させる要素だ。
6.電源のことをほとんど気にしなくて済む
バッテリー駆動時間は約10時間。文書作成に使用している限りほとんど減らない。作業を始めるときに電源の確保を気にしなくて済むし、使う場所も選ばない。
本体左側面には、HDMI、USB(右側面にもう1基)、SDカードスロットなどを備える。写真や映画など、映像を見るなら、テレビなどに出力するのが吉。
付属のACアダプターの重量は120g程度。バッテリー駆動時間が約10時間あるのでモバイル用途に使っても毎日持ち歩く必要はないだろう。
Chromebookのデスクトップ画面。左下のボタン(シェルフアイコン)をクリックすると、アプリ一覧や検索窓が表示される。バッテリーやWi-Fiなどの状態確認や各種設定は右下のステータス領域でおこなう。古くからのWindowsユーザーならWindows 8.1より使いやすいかも。
アプリは「Chrome ウェブストア」からインストールする。ゲームなどエンタメ系アプリは意外に充実。ビジネス系のアプリはこれからの印象だ。
7.Officeはオンラインが使える
日本語入力は、OSに搭載された「Google 日本語入力」を使用することになる。キー設定は、「ATOK」や「MS-IME」「ことえり」に変更できるので、入力そのもので困ることはないだろう。辞書のインポートにも対応しているので、Google 日本語入力のユーザーならいつもの日本語入力環境が手に入る。個人的にはATOKユーザーなので、ATOKそのものを使いたい気持ちにはなるが、パソコンでATOKの辞書をGoogle 日本語入力に移してからインポートする方法もあるので、とりあえずそれで凌ごうと思う。
Microsoft Officeのファイルを編集するには、2通りの方法(Webアプリ)がある。ひとつは、「Googleドキュメント」。Gmailに添付されてきたファイルをダウンロードすることなく編集できるのがメリットだ。ただし、複雑なファイルは正確に再現できないこともある。
もうひとつの方法は、マイクロソフトの「Office Online」。OSを問わずWebブラウザ内でOfficeファイルが扱えるサービスで、パソコン版のOfficeと変わらない作業環境が確保できる。しかも利用は無料。ただし、Chromebook内のWordファイルを直接開くことはできず、いったん「One Driveにアップロードしておく必要がある。普段からOfficeファイルをOne Driveに保存しているなら良いが、Dropboxなど別のクラウドサービスで共有しているユーザーには少し手間がかかる。だが、Officeファイルが追加コストなしで扱えるのは非常に助かるのではないだろうか。
●買って幸せになれる人・後悔しそうな人
以上、文書作成マシンとしてのChromebookのメリットを並べてきたが、以下のような人には向いていない。
・常にネット環境が確保できない人
Chromebookの使用はインターネットへの接続が前提になる。アプリによってはオフラインでもできる作業もあるが、かなり限定的だ。移動中に使いたいが、モバイルルーターやテザリングできるスマホを持っていないなど、ネット環境を持たない人には向いていない。飛行機などネット接続が制限されている場所でも使用に難があるだろう。
また、パソコンに比べると内蔵ストレージが少ない(ASUS Chromebookでは16GB)こともあり、ファイルの共有にクラウドサービスを使用することになる。クラウドサービスの利用に抵抗がある人は不便さを感じるはずだ。
・完全にパソコンに置き換えようとする人
これまでWindowsやMacでおこなってきたすべての作業をChromebookに移行させるのは無理があるかもしれない。パソコンでメジャーなアプリ(たとえばPhotoshop)でChrome OSに対応していないものはいくつもあるからだ。また、パソコンで使っていたプリンターなど周辺機器が使えないケースがある。
逆に、サブマシンとして利用するならChromebookはコスト面で賢い選択になり得る。文書作成やWebでの作業がメインならば、仕事用のマシンとしても実用的だ。
また海外では、Chromebookが学校など教育機関へ多く導入されている。ここ日本では、スマホばかりの子どもにキーボード入力の操作を覚えさせるマシンとしても役立ちそうだ。
日本語入力の設定には、ATOKの方式も用意されている。辞書数や変換効率はともかく、入力の作法で困ることはない。
「Google ドキュメント」でWordファイルを開いたところ。凝ったデザインのファイルでなければ普通に使える。着信メールから直接開け、編集したファイルをそのまま添付できるなど、Gmailとの相性も良い。
「Word Online(Office Online)」で開いたところ。ツールバーなどの配置はパソコン用とほぼ同じ。編集後のファイルはOne Driveはもちろんローカルにも保存できるので、メールなど他のアプリでも可能だ。
文/小口 覚