- 2015/1/18 05:00:58
甘塩=新巻鮭、辛塩=塩引鮭、南部新巻鮭≒村上塩引鮭
羆(ヒグマ)は鮭が大好きです。冬眠を控え、この上ないご馳走であることは間違いありません。絶滅危惧が叫ばれる「木彫りの熊)」は、鮭を咥えているか!担いでいました?ヒグマでは、まさに一子相伝(クマの場合は二仔)、サケの獲り方や食べ方で、そのクマの母親が判るという研究報告があります。
北洋、つまり北太平洋に生息するサケの仲間は、ニジマス(スチールヘッド)、サクラマス、マスノスケ、ベニザケ、ギンザケ、カラフトマス、シロザケです。ヒグマが秋に食べるサケ達は、シロザケ、カラフトマス、ギンザケです。これは、他のサケ達は春に河を遡上し、河口よりはるか上流域で産卵するからです。また、シロザケとカラフトマスは秋になると産卵のために河口に集群します。
昭和世代は「シャケ弁」に郷愁を感じるのではないでしょうか!生鮭は水分が多く、身から旨味が流れでてしまうことから、旨味をなくさず保存する生活の知恵で、塩鮭ができたといえます。塩鮭は甘塩派、塩がふくような辛塩派のどちらでしょう。甘辛の効き方は塩の多さと思われますが、使われる塩の量は同じです。細胞の浸透圧が関与し、辛塩は更に身に塩分を浸透させる(効かせる)ために、圧力(重石)をかけます。浅漬を作るのと同じです。
新巻鮭(アラマキザケ)は、甘塩鮭とされ、主に北海道産のものを指しています。近現代の日本では、アラマキザケは主に歳暮や正月の贈答品とされるようになりました。
サケは、北海道だけが産地ではなく、独立した2集団が本州の日本海と太平洋に回遊します。日本海では新潟県「村上の塩引鮭」、太平洋では岩手県「南部鼻曲りの新巻鮭」は有名です。北海道物であれば、塩引鮭は塩をふく辛口の塩鮭で、新巻鮭は甘口の塩鮭となります。ところが村上の塩引鮭≒南部鼻曲りの新巻鮭で、北海道の塩鮭とまったく別物です。まず、生鮭の良し悪し(鮮度、大きさ、婚姻色の程度)の選別を行います。面白いことに、南部鼻曲りと形容されるように、オスの鮭が使われることです。村上も同様です。これは、メスは抱卵し肉に旨味がなくなっていることからです。体表のヌメリや汚れを丁寧に取り去り、鰓と内臓を取り出します。平置きで3日間塩蔵後、表裏を返して更に3日間塩蔵します。塩を取り除き、大量の真水で10時間から15時間かけて塩抜きをします。再び、ヌメリや汚れを丁寧にこそげ落とし、吊るし下げて、7日から10日間をかけて寒風干し。湿度や温度が高いと乾燥せずに腐敗させてしまいます。気候や風土が美味しい塩引鮭と新巻鮭を醸し出すと言っても過言ではありません。村上の塩引鮭と南部鼻曲り新巻鮭を、一見し見分けることができません。腹の切り口と、首掛けか尾掛けで干すという地域の特徴があります。
日本人では、塩鮭の甘辛か、村上の塩引鮭、南部鼻曲りの新巻鮭といった拘り方で出身地を特定できるかもしれません。