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【日本の議論】
「10代少女と遊びたいなら長野。捕まらないから」建前論では性被害食い止められぬ…“淫行処罰規定”なし、長野県が上げた重い腰
26年9月定例県議会で、山崎晃義(てるよし)県警本部長は、県警が25年1月から26年10月末の間に子供の性被害16件19人を認知したにもかかわらず、現行法では検挙できなかったため、「行為者に対して道徳的な観点からの指導、説諭にとどめざるを得なかった」と明かした。
インターネット上ではいま、「10代の女の子と遊びたいなら、長野へ行けばいい。警察に捕まらないから」という趣旨の書き込みが横行しているという。「条例は未成年の真摯な恋愛に公権力が介入することを許す」という信濃毎日新聞や県弁護士会などの主張は、大人による子供の性被害が急増している実態から目を背けた議論としか言いようがない。「権力は法律を使って常に人民を抑圧する」という時代錯誤的な思考が、その根底にあるのではないだろうか。
さらに、「恋愛なら子供の性行為も許される」という考え方も注意が必要だ。狡猾(こうかつ)な大人が精神的に未成熟な子供に「性行為のないところに恋愛はない」と言い聞かせて、新たな性被害を生みかねない危険性をはらんでいるからだ。
刑法や児童買春・ポルノ禁止法、児童福祉法といった現行法だけで処罰するには、(1)行為者自身が被害者の年齢が18歳未満であることを知っている(2)性行為などを行う前に金品のやり取りやその約束をしている(3)行為者が親、教員、会社の上司など被害者に対して事実上の影響力(支配性)がある-という要件が立証されなければならない。