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【日本の議論】
「10代少女と遊びたいなら長野。捕まらないから」建前論では性被害食い止められぬ…“淫行処罰規定”なし、長野県が上げた重い腰
県弁護士会の主張も基本的には同紙と同じだ。専門委が開いた公聴会で、県弁護士会子どもの権利委員会の上條剛弁護士は「(法規制は)児童買春禁止法や児童福祉法などで十分だ。淫行処罰の規定は曖昧で、捜査する警察のさじ加減一つで冤罪(えんざい)も生まれる」と意見陳述し、条例制定に反対した。
■建前だけでは防げない
専門委は26年3月、検討を行ってきた結果として、「淫行処罰に限った限定的な条例が必要」とする報告書を阿部知事に提出した。その中で、専門委は判断能力が成熟していない子供への真摯(しんし)な恋愛ではない大人の性行為は「許されざる行為」と断じた。
また、青少年健全育成運動を中心になって進めてきた「県青少年育成県民会議」も同年4月、内部に検討チームを設置して運動の抜本的見直しに着手した。設立から40年余りがたつ中で子供を取り巻く環境が大きく変化し、運動の形骸化が指摘されてきたためだ。約4カ月間の議論の末、検討チームも子供を大人による性被害から守るためには「(新しい県民運動と)条例との両輪の上に、県民の自主的な活動や行政的な対応が必要」として、淫行処罰規定を含む条例の制定を求める報告書を阿部知事に提出した。
今は携帯電話やゲーム機など保護者の目が届かないところで、子供が簡単にインターネットに接続することができる時代だ。大人が悪意を隠して近づき、好奇心をくすぐって子供を思うように操ることは難しいことではない。専門委も県民会議もその現実を目の当たりにし、大人のゆがんだ欲望から無防備の子供たちを守るには、建前だけの運動では不可能なことを感じ始めたわけだ。
■大人の欲望に無防備な子供たち