記事詳細
【日本の議論】
「10代少女と遊びたいなら長野。捕まらないから」建前論では性被害食い止められぬ…“淫行処罰規定”なし、長野県が上げた重い腰
風向きが変わったのは、県内77市町村で唯一、淫行処罰規定を含む青少年健全育成条例を制定した東御(とうみ)市で平成24年、男性教諭2人が相次いで同条例違反(みだらな性行為などの禁止)容疑で逮捕される事件が起こってからだ。県警が「条例がなければ現行法だけでは摘発できなかった」との見解を示したことから、県も同様の条例を制定すべきだとの議論が巻き起こった。それまで条例制定に慎重な姿勢を示していた阿部知事も、子供を取り巻く環境の変化という現実を突きつけられ、「今の対応だけで本当にいいのか考えていく必要がある」と、条例制定も含めた対策を検討する考えを表明した。
そして、阿部知事は25年5月、法律やインターネット、子供の成長に関わる専門家らで構成する「子どもを性被害等から守る専門委員会」(委員長・平野吉直信州大教育学部長)を設置。子供を性被害から守るための施策の検討が始まった。
■条例制定に傾いた専門委
あえて白紙の状態からスタートした専門委の議論は当初、条例制定に慎重な意見が多かった。しかし、県内で過去15年間に18歳未満人口当たりの性被害にかかわる摘発者数が3・8倍も増加し、全国平均(1・6倍強)より深刻さが際立つ実態が報告されたことや、子供たちを取り巻く現状について各種団体などから聞き取り調査を行ったことで、議論の風向きは変わっていった。