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【日本の議論】
「10代少女と遊びたいなら長野。捕まらないから」建前論では性被害食い止められぬ…“淫行処罰規定”なし、長野県が上げた重い腰
全国の都道府県で唯一、淫行処罰規定を含む青少年健全育成条例を制定せずに子供たちの健全育成に取り組んできた長野県が、条例制定をめぐる議論で今、揺れに揺れている。インターネットが急速に普及し、子供たちが出会い系サイトやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にアクセスすることが日常化し、大人からの性被害に遭うケースが急増しているためだ。これに危機感を抱いた同県の阿部守一知事は、条例のモデルを作成したうえで、議論を前に進めたい考えだ。一方、従来通り条例には頼らずに健全育成運動で対応すべきだとする地元紙・信濃毎日新聞や県弁護士会などは、条例制定反対を主張。一般の県民の間でも意見は賛否両論真っ二つに割れている。
■条例拒み続けた風土
長野県が青少年健全育成条例を制定してこなかったのは、県民総ぐるみの運動で子供たちの健やかな成長を見守るとしてきた伝統があるからだ。「脱ダム宣言」などで県政を混乱させた田中康夫元知事も含め、歴代知事は「青少年健全育成条例は制定しない」と明言してきた。こうした気風は、警察権力の拡大に反対する共産党県議団などにとどまらず、保守的立場をとる自民党県議団の県議の間にも根強い。条例がないことを、県政界があたかも長野県の「美徳」や「誇り」にしているかのようだ。