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【社会】

「女の平和」 赤く国会囲む 人間の鎖

赤い色を身に着けて手をつなぎ、国会議事堂(後方)を囲む女性たち=17日午後2時26分、東京・永田町で(川上智世撮影、魚眼レンズ使用)

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 集団的自衛権の行使容認や改憲に反対する女性たちが、赤のファッションを身に着けて国会を囲む「『女の平和』ヒューマンチェーン(人間の鎖)」が、17日に行われた。国会の周囲約2キロを約7000人(主催者発表)が手をつなぎ、「誰一人、戦争に行かせません」と声を上げた。 

 「女の平和」は北欧・アイスランドの女性たちが1970年代、地位向上を求めて赤いストッキングをはいた運動がモデル。アイスランドでは80年に女性大統領を誕生させるなどの成果を挙げた。

 この日の実行委員で、元中央大教授の横湯園子(よこゆそのこ)さん(75)は、赤いベレー帽をかぶって国会正門前のステージに登壇。「怒りの赤、情熱の赤、エネルギーの源となる赤で、全国の女性が安倍政権に『ノー』と示そうではありませんか」と呼び掛けた。

 参加者は赤いコートやマフラー、手袋などを身に着け、幼い子供を連れた母親の姿も。約2時間のイベントで「人間の鎖」を4回つくった。「女たちは人を殺し合うのは嫌です」「憎しみと戦いを拡大させません」と、つないだ手を振り上げた。

 東京都文京区、自営業酒井蘭子さん(26) これまで、フェイスブックで集団的自衛権反対の情報を共有するぐらいで、行動はしなかった。衆院選の結果に不安を感じ、意思表示をと思った。このままでは法律がどんどんできてしまう。声を上げて止めたい。

 長崎市、無職井形和子さん(77) 父親は原爆投下の前日に仕事で長崎を離れ、命拾いした。ちょっとの差で、救われるかどうかが分かれる。戦争は「国民を守るため」と始められるが、国民は切り捨てられる。戦争がどういうものかを、被爆地から訴えていく。

 横浜市港南区、主婦木村佐保子さん(66) 原発事故の後、政治の動きに無関心ではいられないという気持ちが強まり、官邸前の抗議行動に参加するようになった。一人の百歩より百人の一歩の方が大事。私もこの輪に入り、一歩を踏み出せたことがうれしい。

 東京都杉並区、フラダンス講師渡辺悠美子(ゆみこ)さん(71) フラは自然と調和し、人とのつながりを大切にする群舞。ハワイの人は争いごとが嫌い。原発を再稼働したり、武力で強い国を目指すなんて理解できない。安倍首相にフラの愛の精神を教えたい。

 東京都武蔵野市、介護職永田三枝子さん(64) 介護の現場は報酬が下げられ、さらに疲弊する。受益者負担も強まり、お金がないとサービスを受けられない。それなのに、安倍政権は防衛費を増やし、軍事に力を入れている。弱者の立場を考えてほしい。

 東京都西東京市、団体職員池田亮子さん(36) 四歳の息子を連れてきた。衆院選後、改憲を意欲的に語る安倍首相を見て、二十年後、三十年後に本当に戦争をする国になると思った。もしそうなっても、わが子のため声を張り上げた母の姿を覚えていてほしい。

 東京都板橋区、無職中尾栄代(さかよ)さん(71) 父は太平洋戦争中、ビルマ(現ミャンマー)で戦死した。幼いころは遺影を見てよく泣いた。今、戦争を美化する風潮がある。肉親を奪われた悲しみを知る人間として、今日は「戦争は絶対に嫌だ」と心から叫んだ。

 群馬県渋川市、会社員山田知弘(ちひろ)さん(36) ヒューマンチェーンには初めて参加した。実家の親に頼み、昔かぶっていた赤いベレー帽を見つけてもらった。ヘイトスピーチをなくしたいし、貧困の広がりも気掛かり。その思いを表すことができた。

 東京都東村山市、高校一年稲垣真奈さん(16) 母と一緒に来た。集団的自衛権の行使容認など政治の動きの話を母から聞き、戦争に近づくのは嫌だなと感じる。でも、思っているだけでなく、行動しなければ変わらない。今日の思いが政府に伝わってほしい。

 東京都足立区、無職丸岡玲子さん(84) 戦時中、鹿児島で空襲を受けた。風呂屋に行っていた弟は行方不明になり、捜し回った。街は体の一部を失った人であふれていた。弟は背中に大けがをしたが、幸い助かった。戦争体験者として、憲法を守らないと。

 埼玉県ふじみ野市、保育士西原瞳美(ひとみ)さん(25) 勤務している保育園では、保育料の支払いに困っている家庭もある。福祉を充実させるべきなのに、防衛に力を入れるなんて。今日は園児を思いながら手をつないだ。子どもの笑顔が絶えない国にしないといけない。

 東京都東村山市、NPO理事佐藤直子さん(57) 母の影響で、着物をよく着るようになった。その母の介護経験から、介護保険が使えない家事援助サービスを提供するNPOをやっている。軍事予算に五兆円もつける一方で、福祉を切り捨てる政権はおかしい。

 千葉県流山市、主婦富田麻美さん(26) 三歳の息子がいるので、反対したいと思って来た。戦争になれば、自分の子どもが戦地に行くかもしれない。国内でテロも起き、安全で平和な国でなくなる。何もしなければ、そのままになってしまうので、声だけでも。

 東京都板橋区、無職松本久美子さん(66) 派手すぎて何十年も巻いてなかった赤のマフラーを、タンスから引っ張り出してきた。反戦や平和など、言いたいことが言いづらくなっている今だからこそ、「戦争反対」の強い気持ちを赤色に託して訴えた。

 

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