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ゼロが使い魔 作者:GGパンダ

使い魔召喚の儀

 ――人類は三つの異なる進化を遂げたとされる。

 高い身体能力を持つニクロ。
 精霊を巧みに使役するメイジ。
 高度な科学技術を用いるピュープル。

 東歴1945年。第三次世界大戦の末に、この三種族の陣営はそれぞれがほぼ同等の力を持つようになった。横やりによる漁夫の利を恐れた各陣は、終戦を決意。三すくみ、三つがそれぞれ他の二つをけん制し合う、仮初の平和が訪れた――。

 ここは夢の世界。頭の中に入ってくる謎の情報。謎の風景。
 色鮮やかな髪をした人間達が、魔法や銃で戦っている。かと思えば、場面が変わって一面の瓦礫。その上にポツンと立つ、ボロボロの少年。目下には息絶えた少女。
 わけが分からないが、夢だからこんなものだ。俺は夢を夢だと気付ける人間だが、だからと言って夢の全てを思い通りに動かせるわけではない。瞬間移動やらカ〇ハメ波やら、多少魔法の真似事が出来る程度だ。わけの分からない映像の奔流をどうにかする力は無い。

「我が名はマリカ・エリカ・リリカ。ネア王の子孫にして、月の加護を得た正当なるメイジ。主たる聖霊よ、古の契により我が求めに応じたまえ」

 なんか女の子のかっこいい声が聞こえてきた。俺を呼んでいる気がする。
 たぶんこれ、トリップ小説を読んだ記憶から来ている。だから相手は美少女だと思う。

「ええよー」

 こんなチャンスを逃すわけがないだろう。眠いからのほほんと応えてしまったが。

 しかしその瞬間、ガクンと体が揺れた。次の瞬間には浮遊感。落下の恐怖。

「え?」

 驚いて目覚めた。
 目に映るは天井ではなく、青空。

「うわっ、あっ」

 浮遊感に耐え切れずじたばた動こうとすると、背中が地面に当たった。ふさ、と草に包まれる感じ。
 しかしそんなことよりも、まずは状況判断だ。

 ここはどこだ? あの浮遊感は、あの声はなんだったんだ?

 なんて思っている間にも、視界の下の方に少女が映る。アニメのようなピンク髪。染めているにしてはつややかでさらさらなそれを、短く揃えている。
 しかし何より、顔。びっくりするぐらい整ってる。それも、俺好みのさわやかなスポーツ系。17歳くらいだろうか? 肌つやもいい。背は、170をちょっと超えるくらいだろうか。女にしてはデカいが、西洋基準だとふつうかもしれない。でも顔はアジア系っぽいから、もしかしたらハーフかもしれない。
 の前に、なぜ俺がこんなところにいるかを聞かないと。

「おい! マリカが人間を召喚したぞ!」
「バカを言え! あの天才がそんなミスをするはずがないだろう!」
「しかしだな」
「人間に擬態できる高位の精霊なんだよ」
「もしくは、精霊に準ずるような伝説的な人間。いや、これだな。間違いない」
「精霊に準ずる人間ってなんだよ……」

 マリカ? という名らしいピンク髪の少女の周辺で、同様に17、8くらいの男女が騒ぐ。髪はやっぱりアニメみたいな赤や青。
 なんかこれ、既視感がある。というか、アニメで見たことあんだけど。なんつったかなあ、なんとかフランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールさんの名前。長いから忘れちゃったなあ。メジャーからカープに来てまたメジャーに帰ったピッチャーの名前に似ていた気がするなあ。
 さておき、マリカは少し呆けたような顔をしている。薄ピンクのみずみずしい唇をポカンと開けて。かわいらしい。
 が、俺が見ていることに気付くと、すぐ表情を作りかえた。見事な営業スマイル、もとい柔らかい笑みだ。どきっとしちゃう。

「召喚に応じていただき、ありがとうございます。マリカ・エリカ・リリカです。マスター」

 変な名前だな。覚えにくい。いや、覚えやすそうだな。
 んで、マスターってことは、やっぱゼロ魔的な召喚なのか? 俺はオリ主ポジなのか? ドッキリの可能性は? だとしてもメルアド交換に持ち込める可能性は?
 まあいい。とかく初めは肝心だ。上手くやらないとな。せっかくファンタジーな小説を読んで、転生から無双まで、ばっちりシミュレーションを積んでるわけだからな。やれるはず。
 でも、緊張する。みんな見てるし、しかも知らない外国人だから。
 ああ。考えると余計緊張してきた。下手こいて苛められたらどうしよう? 怖い。
 魔法で苛められたらやばいよなあ。日本でも苛めはあったけど、それでも日本ほど平和な国はないって聞いたしなあ。魔法世界で無能に対する苛めってどんなだよ。
 どうすればいいんだ? どういう人間が好かれるんだ? 当たり障りなくいきたい。やっぱ営業スマイルがいいのか?
 というか、あんまり待たせると失礼じゃん。怒ってるかも。やばい。
 ええい、ままよ!

「こちら、クロダ・ヤマトと申します。不肖ながらあなたの声に応じてしまいました。しかし、やる気はあります。力不足かもしれませんが、精一杯、あなたのために尽くします!」

 よし。声は震えさせずに言い切れた。それに体育会系っぽく腹から声を出せた。自分を褒めてあげたい。
 だけど、ちょっと待てよ。考えてみるとやばいかも。言い過ぎたかも。
 就職の面接のつもりで、腰を低くし過ぎた。物語通りなら実際に就職活動みたいなもんだけど、これじゃあ「奴隷扱いしていい」と言っているようなものじゃないか。

「マ、マスター……」

 クソ、日本企業め。奴隷アピールを評価する風潮のせいだぞ。俺が異世界で奴隷扱いされたらどうしてくれる?
 なんて思っていると、マリカが困った風な顔で近づいてきた。なんか相手の腰が低い気がするんだが、気のせいだろうか? 某フランソワーズさんなら、逆のはずなんだが。
 というか、マスターって主人の意味だよな? 某アーサー女王様みたいに、マリカさんは俺がマスターみたいな言い方してるんだけど、どういうこと? これはまさかFate? 逆? 俺が彼女を召喚? そんなはずはないだろう。

 なんて思っている間に、マリカさんが息の聞こえるくらい近づいてきた。あと少しで接吻。さすが西洋人は大胆ってことか? それとも契約だから無理をして? 役得ですね。

「落ち着いてください。それと、あの、失礼ですが……」

 マリカは少し頭を垂れて、嘆願するように俺をのぞき見る。

「は、はいっ」

 すっごい緊張して声が上ずっちゃった。でも、やっぱりキスなのかな。雰囲気がそれっぽい。

「あ、いえ。すいません。なんでもありません」

 な、なんでもないの? どういうこと?

「あの、今は」

 マリカさんはそう言って、俺の両肩にそっと両手を乗せてくる。
 そして、その済んだ瞳で、じっと両目を見つめてくる。

「私に合わせてください」
「は、はいっ」

 な、何を合わせるんだろう? やっぱあれなのかな? なんか色っぽいんだけど。
 目を閉じるマリカさん。やっぱそうなんだ。
 緊張してきた。相手も緊張しているのか、ごくんと喉が鳴る。そして、唇が軽く前に出される。そのまま、ゆっくりと、きれいな顔が近づいてくる。
 も、もうするのか。心の準備が。
 俺も、目をつぶった方がいいのかな? たぶんそうだよね?

 真っ暗な視界。両肩に柔らかい手。
 程なく、胸にやわらくて大きなものが当たる。ああ、肉房だろうね。某フランソワーズさんと違って大きいんだね。
 なんて感動している間に、唇にもやわらかい感触が。

 これが、女性の唇。ふにゅふにゅっとして、それに、いい香り。

「あっ」

 ピシッ、と頭に痛みが走った。
 驚いて変な声を出しちゃったよ。もう治まったけど。

「ううっ」

 マリカさんの方は、胸を押さえてる。ルーンが刻まれているのかな? 俺より痛そう。

「はあ、はあ」

 もう治まったみたいだけど。
 とかく、これで俺も使い魔か。まあどうせろくな企業に就職できなかったし、キャンパスライフもつまらなかったし、こんな人生もありかな。両親や中高の友人にはちょっと申し訳ないけど。
 でも、俺だって男だ。武井〇さんみたいに、1人でサバンナを生きていくくらいの覚悟は持っていたいよね。なんだかんだ中高と体育系の部活をやってたしね。

「マ、マスター。これからよろしくお願いします」
「あ、はい」

 というか、やっぱ俺がマスターなの? なぜに?

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