日本の話芸 落語「二人ぐせ」 2014.12.27


どうも今日のお話大変ありがとうございました。

(テーマ音楽)
(出囃子)
(拍手)
(笑福亭福笑)ようこそのお運びでありがとうございます。
こちらのほうも一席聞いて頂きましておつきあい頂きますけども。
ね〜ええ雰囲気ですね何か知らんけどねフワ〜ッとした感じで。
ええ。
私のほうは「二人ぐせ」という今日は古典落語を聞いてもらいます。
癖のお噺なんですけれども。
まぁまぁいろいろ皆さん癖があるけど年寄りになるとやっぱりどうしても「今どきの若い連中は」っちゅうのこれはやっぱり口癖になるみたいでね。
しかし考えてみたらもう回り持ちでして今の年寄りも若い時分にはその当時の年寄りから「今どきの若い連中は若い者は」ってな事言われてた。
いつの時代にも言われる言葉ですね。
ええ。
もうこの「今どきの若い連中は」言いだしたら自分が年取ったいう証拠でしてねええ。
それだけどんどんどんどん時代も変わっていってる価値観も変わっていってるんでしょう。
女の人の女の人の口癖でね結構嫌がられるのが自分のことを「私」と言わんと名前で呼ぶ人ね。
「真理子そういうんあんまり好きじゃないの」。
(笑い)「真理子もっとロマンチックなほうがいいの」。
口ひねったろか思いまっしゃろ?
(笑い)ね〜?やっぱりねあんまり男の人は好きやない。
それから「どっちでもええよ」とか「構へんよ」これもやっぱり評判悪いんです。
そういう事言う人間に限ってあとで「ほんまはあっちのほうがよかった」。
(笑い)癖悪い。
それからそうですね「基本的に」とかね「何々せざるをえない」とかこういうの言う人連発する人いてますね。
「基本的に」なんか本当連発するんですけれどもあれはつまりあとで間違いをただされた時にでも「せやさかい基本的と言うてたがな」というまぁ言い訳も入ってるんやなかろうか思います。
「何々せざるをえない」これは「自分はそうじゃないけれども世間の流れからしてしかたがないじゃないか」という責任逃れというところもあるみたいでして大体が政治家用語みたいなとこあったんですけどそれがもう広く蔓延しましてええ今はもう皆使います。
「何々せざるをえない」これチョイチョイ「何々せざるをおえない」と言う人がいてまして難しい言葉を選んで間違うとる。
もう手に負えない本当に。
もうあるんです結構ね。
男の人の癖で評判の悪いのがやっぱり貧乏揺すりというやつで。
こういう所でもあるんです。
あれね困るんです。
隣だけやないもうその椅子につながってる連動してる横一列皆こないなる。
(笑い)いやほんまにね。
もう携帯とね貧乏揺すりは気ぃ付けてもらわないかん。
もう体にはええらしいですよあれね。
血行促進ウオーキング効果ああ。
貧乏揺すりをしてストレス発散。
お前はええわい。
お前はええけど周り大変な迷惑ストレス溜まるわ。
震災以来もう揺れには皆ごっつ敏感になってますから。
本当ですよ。
電車に乗ったらあの貧乏揺すり両脚でやってる奴いてましてね両脚立ててこれ。
ものすごうしんどいやろ思うんですけども。
駅着いた途端にダ〜ッ飛び降りて階段走って行きよったけどもどうやらトイレ辛抱してたみたいでして。
(笑い)うん。
まぁまぁいろいろありますわね。
しかし本当貧乏揺すり困る。
一遍貧乏揺すりで隣のおっさんが切れて何や金を脅し取ったいう話がありまして。
「おいこらっ揺するのやったら強請るぞ」ってもう訳分からん。
(笑い)まぁまぁいろいろあります。
「二人ぐせ」というお噺でして。
「どないや?何ぞお前一杯飲めるような面白い話ないんかい?」。
「うん?一杯飲めるような話ないか?ないな。
何もない。
もうつまらん。
つまらん話ばっかりや」。
「つまらん話ちゅうと?」。
「いや〜違うねん最前もそこの川でなお繁婆さんが芋を洗うてたんや。
ほなそこに猪親子の猪が出てきよってどうやらその芋が欲しいみたいやねん。
ああお繁婆さん気ぃ利かせて芋1つポ〜ンと放ってやった。
ほな子供の猪ダ〜ッ走ってきてムシャムシャ食べだした。
よっぽど腹へってたんやろな。
親猪が『おおけありがとう』頭ペコペコ下げるような真似するもんやさかい『仕草が面白い』もう1つポ〜ンと放ってやった。
ほな今度は親猪がダ〜ッ走ってきてまたスポッと食うてしまいよったペロッと。
あっちゅう間に食うてしもた。
しゃあないがなまた子供の猪にポ〜ンまた親にポ〜ン代わりべったんやってたらあっちゅう間に芋無うなってもうた。
『まぁええわい。
まぁこんな事もあるわいな。
まぁ爺さんに言うて今晩は漬物で茶漬けじゃ』。
まぁそんなお繁婆さんやけどもな子供にも恵まれて幸せな毎日を送ってるけどもな決して今まで全てうまいこといった訳やない。
ああいろいろあった。
10年ほど前やったかなあれな。
65の時やったんかな。
ああ〜立ちくらみや突然バタ〜ッと倒れてそのままや動く事がでけんねや。
もういろんなお医者はんに診てもうた。
いろいろまぁ薬もなにしたやけど一向に治らん。
どないにもならん。
ああ〜もう食も細なって痩せる一方や。
『ハア〜もうあかんのかいな。
これが寿命っちゅうやつかいな』。
途方に暮れてたんや。
そんな時に出会うたんがこのしじみ汁のエキスや」。
(笑い)「さあ〜これを飲んでからというもの今までの病気が嘘みたいや。
体がシャキ〜ッとしてそらぁ元気いっぱい幸せいっぱい。
『あなたも私もしじみ汁』」。
(笑い)「もうええわ」。
(笑い)「誰がここでしじみ汁のコマーシャルやれ言うとんの。
お前ここどこや思うとんねお前分かっとんのか。
阿呆かどうも話がおかしいな思てたんや。
何を言うねや。
お前つまらん事言うな」。
「いやせやからつまらん話や言うてる」。
(笑い)「いや。
つまらんすぎんねや。
もっと一杯飲めるような陽気な話ないんかい?」。
「あ〜それやったらな大体ここら辺りその昔はな何やえらいいたずら好きの狐がおったんやああ。
漁師が取ってきた魚みんな逃がしてまいよった。
あとで聞いたら病気の婆さんに食べさせる鰻やったらしい。
狐えらい後悔しよってなそれからというものは山でなもう何じゃかんじゃ取ってはもう茸やら栗を拾ってきては兵十の家持って帰ってきてたんじゃがある日の事じゃ…」。
「それ『ごん狐』やろ?お前」。
(笑い)「それどこが陽気やねん?結末ものすごいやりきれんぞあの話はお前。
誰がここで『日本昔ばなし』やれ言うとんねん。
一杯飲めるような話やつまらん話すな言うてる」。
「さぁせやさかいつまらん話しかない言うてる。
あ〜つまらん」。
「ほんまにつまらんわ。
あのなお前つまらんつまらん言うもんやないほんまにつまらんようになってくんねもっと楽しい事を考えんねほな心がうきうきして一杯飲めるってなもんやがな。
つまらんつまらん言うなお前悪い口癖や」。
「そない言うけどお前かて何や言うたらよう『一杯飲める』っちゅうがな」。
「俺そんなん言うか?俺そんな口癖やった?知らなんだ。
ヘエ〜『一杯飲める』?よしほなそれ肴に一杯飲もか?」。
(笑い)「どないやっちゅうの。
ほなこないしようか。
ひとつ今からな?お互い癖の直し合いしよう癖の直し合い。
そうやがな。
お前はな『一杯飲める』俺は『つまらん』これを言うたら1,000円の罰金相手に払う」。
「おい。
1,000円はきついぞおい。
せやけど貯まったら一杯飲めるな〜」。
「1,000円」。
「あかんあかん」。
(笑い)「ちょっと待ってくれまだやまだ始まってない。
まだ始まってないな?これからやこれから。
よ〜しここにほな湯呑みな?これをパチンと割ったら始める。
ええか?放るからな。
それっ。
パチンと。
始めよう」。
「お前無茶すんなよお前。
お前他人の家の湯呑みお前そない平気で割るな。
何をすんねんつま〜…」。
「1,000円」。
「まだ言うてへんまだ言うてへん。
妻〜が怒るじゃないかいな」。
「何じゃ?それ」。
(笑い)「そりぁそうとお前本町の伯母はん死んでえらいぎょうさん遺産が入ったっちゅうのあれほんまか?」。
「阿呆言え。
本町の伯母はん今でも達者や。
ピンピンしてるがな。
第一あの世知弁婆死んで俺に金なんか残したりするかい」。
「いや。
残したらの話」。
「残したら一杯飲めるわい」。
「1,000円」。
(笑い)「ハア〜?」。
「ハア〜やあらへん今お前言うたや『一杯飲める』言うた。
1,000円」。
「言うたな〜。
今の計略かい?引っ掛けかい?。
ほんに結構私ゃ言うんや。
えらい…。
まぁまぁ1,000円」。
「よ〜し。
そりゃそうとあの猪飼野のおっさんとこの還暦祝どないすんねん?」。
「いやあれ今日やったんか。
一杯飲める」。
「1,000円」。
(笑い)「俺阿呆やな」。
(笑い)「やっぱそうやわ言うてんねや。
気が付かんな。
1,000円」。
「そりゃそうと鶴橋の叔父貴…」。
「もうええわ。
そないに引っ掛かれへんぞ。
何や言うてるうちにもう2,000円もいかれてもうた。
また来るわ。
ここへいとったらなんぼ取られるや分からん。
阿呆らしいなってきたほんまに。
もう2,000円やて腹立つな〜。
すんまへ〜ん甚兵衛はんいたはりまっか?」。
「お〜誰かと思たらお前はんか。
久しぶりや。
まぁこっち上がっといで」。
「いえ今日寄せてもうたっちゅうのは他やおまへんねやあんた何でも物知ってなはる物知りや。
そこであんたにねちょっとね教えてもらおう思て寄せてもらいました」。
「ほう私にな教えてもらいたい事どないした?」。
「あの〜私のね友達にね辰っつぁんという男がいてまんね。
この辰っつぁんが…」。
「ふんふんふん。
アハハハハハほたらなにかい?お前はん辰っつぁんに『一杯飲める』言うて2,000円取られた?阿呆や」。
「なんとか取り返したい。
辰っつぁんが『つまらん』言う方法何ぞおまへんやろか?」。
「えらい奴が入ってきた。
そうやな〜『つまらん』言わす手だてまぁない事はない」。
「おまっか?」。
「うん。
着物も何もかもな米糠だらけ糠だらけにしとくん。
『田舎の親戚から大根100本今送ってきたんや。
1人ではとてもやないけど食い切れん。
漬物にしよう思うねやけども家ん中探したら2斗樽の空いたんが1つ出てきた。
2斗樽に大根100本詰まろかな?』とこない言うたってみいそりゃ誰かて『そらぁ詰まらん』と」。
「ハア〜ッ『2斗樽に大根100本詰まろかな?』『あ〜そら詰まらん』アッハッハ。
一杯飲めるな」。
「あかんぞお前」。
(笑い)「それ言うなよそれ。
言うたらまた1,000円戻るぞそれは。
あかん」。
「なるほどね。
まぁせやけどあんたずる賢い」。
「ずる賢いっちゅう奴あるかいつまらん事言うな」。
「1,000円」。
「私から取るな阿呆。
辰っつぁんから取れ。
教えてもうた私から取る思うなど厚かましい。
トントンといかなあかんトントンと。
ええか?な?考えたりモタモタしたらあかんトントンと」。
「トントンといきます。
え〜糠だらけにして。
よし。
ほな行てきます今から行てきます」。
「まぁ待ちなはれお茶いれたんやお茶ぐらい飲んでいきなはれ」。
「結構ですはい。
あの〜金取り戻したら羊羹買てきます。
上等の羊羹。
もうちょっとええお茶いれときなはれ」。
「ほっときなはれ。
何を言うねん。
早行けつまらん事言うな」。
「1,000円」。
「黙れ。
早行け」。
(笑い)「早行け」。
「辰っつぁん辰っつぁんいてるか?」。
「オ〜オ〜誰かと思たら。
何や?お前どないしたんや?お前着物も皆糠だらけ」。
「そうや糠だらけや。
トントンといくぞ。
ええか?」。
「何がトントンといく?」。
「何でもないこっちのこっちゃ。
落ち着け」。
「お前が落ち着け」。
「あの〜田舎の親戚からな今な大根100本送ってきたんや」。
「何を?」。
「田舎の親戚から大根100本送ってきたんや」。
「お前とこ確か田舎に親戚ない言うてたやろ」。
(笑い)「ええ?」。
「田舎に親戚ない言うてた」。
「そんなん言うた?」。
「言うたがな。
『俺とこ田舎親戚ないから何も送ってきてもらわれへん。
羨ましい』言うてた」。
「いや。
あったんや忘れてた。
あったあった実は田舎に親戚あった」。
「どこや?」。
(笑い)「ハア〜ッ?」。
「どこや?」。
「どこでもええ事ない。
どこや…どこてあの〜沖縄沖縄県沖縄です」。
「お前沖縄で大根取れるのかい?おい」。
(笑い)「大根取れるわ沖縄。
鹿児島桜島大根あんねんぞ。
沖縄は西表大根や」。
(笑い)「何を?」。
「西表大根天然記念物や」。
「天然記念物?そんなん100本も抜いてええんか?」。
(笑い)「ええねん特別や特別天然記念物や。
あの〜もともとはハブが食うとったんや」。
(笑い)「お前無茶苦茶言うてないか?お前。
ハブ?あの蛇のハブが大根巻きついて『ちょっと辛うおまんな』て言うかい?」。
「言うねん。
それ一緒に捕まえて俺一緒に炊くんやあの〜ハブ大根」。
(笑い)「それブリ大根と違うか?嘘つくな」。
(笑い)「ほら吹き大根」。
「ふろふき大根や」。
(笑い)「お前皆無茶苦茶や」。
「何でもええねん。
黙って聞け。
田舎の親戚から大根100本送ってきたんや」。
「ぎょうさん送ってきたやん私にちょっとくれ」。
「もう余計な事言いなはんな」。
(笑い)「トントンといかせて。
お願いやからな。
とてもやないけど1人じゃ食えん」。
「そやから私にくれ言うてんね」。
(笑い)「黙ってえ阿呆」。
(笑い)「そないに1,000円取られるのが悔しいんか?阿呆。
トントンといかせ。
もともと俺の銭や。
すっ込め!黙って静かにせえ!」。
「お前何を怒ってんねや?お前。
どないしたん?」。
「いや違う黙って聞いて。
な?それで漬物にしよう思うねやけどもな家ん中探したら2斗樽の空いたんが1つ出てきた」。
「おい。
そりゃあかん2斗樽1つでは足らんわ。
そりゃまぁ3ついや4つぐらい要るのと違うか」。
「何でそない先先言うの?」。
(笑い)「話が違うん。
お願いここ一番大事なとこやねん。
な?俺今から質問するさかいそれから答えて。
頼むわ。
ええか?よう聞きや。
2斗樽に大根100本詰まろかな?はい答えなさい」。
(笑い)「何やそれどこかで聞いたような科白やな。
何やて?」。
「2斗樽に大根100本詰まろかな?」。
「阿呆言え。
大根100本いうたらすごい量やど。
そんなもんお前とてもやないけどつま〜…」。
「1,000円」。
「つま〜…」。
「あ〜?」。
「『詰まろかな?』。
入り切らん」。
(笑い)「入り切らん?無理から詰めたら?」。
「底抜ける」。
「『つまらん』言わん?」。
「当たり前や誰が言うかい。
危ないもうちょっとやないかい。
危ないとこや。
それどころやないね俺ちょっと今から家出やなあかんね。
嬶。
早うお前羽織持ってこんかい」。
「羽織持ってどこ行くねん?」。
「いや兄貴の所や。
言うてたやろ兄貴家建て増ししてるちゅうて。
今日は増築祝」。
「増築祝?一杯飲める」。
「1,000円」。
(笑い)「俺阿呆やな」。
(笑い)「お前他人に言わすのはあかんけど自分で言うのはものすごうあっさり言うな〜。
1,000円」。
「はいこれ1,000円。
お前これだけあったら居酒屋へ行けるぞ。
居酒屋へ行ったら一杯飲める」。
「もうええわ。
お前もうやけくそになってるやろ?お前今1,000円出しながら『一杯飲める』言うたぞ」。
(笑い)「あの〜田舎の親戚からね…」。
「もうええねんそれは。
もうええ。
帰れ」。
「甚兵衛は〜ん」。
「あ〜どないやった?あ〜新しい上等のお茶買うといた」。
「ついでに羊羹も買うてもらえまへんやろか?」。
「何でや?どないしたん?うんうんうん。
アハハハ阿呆やなそらぁあかんわ。
その辰っつぁんちゅう人なかなか達者やうん。
お前はんよりも役者が一枚上やわ。
お前はんもうこの遊びやめたほうがええ。
もうなんぼでも負ける。
金なんぼあっても足らん」。
「そんな事言いなはんな。
もう意地になってまんね。
金構しまへん悔しい腹が立つ。
もうなんとか辰っつぁんに『つまらん』言わしたい。
命懸けです。
もう一遍だけもう一遍だけ。
あんたが頼り。
もう一遍だけ何かええ考え『つまらん』言う方法教えとくれやす」。
「ウ〜ンまぁまぁせやなもう一遍だけ…。
まぁな人間昔からな『好きなもんには心を奪われる』っちゅうねん。
あ〜辰っつぁんの好きなもんは何や?」。
「私騙して1,000円取る事だんねん」。
(笑い)「それは分かってる。
それは分かってるけど他に何ぞこの趣味とかそういうもんで無いか?」。
「それやったらねあの男ね将棋が好きです将棋。
そうだんねん好きなだけに強い。
もう私は両桂馬抜きでも飛車角落ちでも辰っつぁんに負けます」。
「お〜そらぁええな。
辰っつぁんお前はん所の家行く事あるか?」。
「毎晩毎日来ます。
夕景になったらええ。
近所の風呂誘いに毎日来ます」。
「そらぁ好都合や。
あのなええか?詰め将棋やねん詰め将棋」。
「詰め将棋?」。
「そうや。
ちょっと変わった詰め将棋でな将棋盤真ん中にな王さんが1つ他何もあらへん王さんだけや。
手にはな角と金と歩が3つや。
これな詰みそうで詰まん。
どうしてもこれ詰まんねや。
あ〜それなお前はん考えてるふりしてる。
辰っつぁん来るな?『おい。
何してんねや?』『いや考え事してる。
詰め将棋』。
さあ〜将棋好きやがな将棋と聞かされたらほっとけん。
『どれどれ俺が見てやるわい』と来よるわい。
あれやこれや考えるけども最前も言うたようにこれは絶対どないしても詰まんねや。
『ハア〜ッこれはあかんな〜』と思う頃に『どうや詰まるかな?』聞いたってみい」。
(笑い)「必ず『ハア〜ッこらぁ詰まらん』とこうなる」。
「なるほど。
『こらぁ詰まろかな?』『こらぁ詰まらん』。
あんた汚いな〜」。
(笑い)「ほっとけやほんまに。
お前のために言うてんねや」。
「よう分かりました。
せやけど今のこれ難しそうやわ。
すんまへんけどねあんた私とこ来てやってもらえまへんやろかね?それで辰っつぁんが『詰まらん』そこでサッと1,000円もらう」。
「そんな厚かましい。
そんな勝手な事はでけへん。
自分でやんなはれ段取りして」。
「ほなら今から段取りしてきま。
必ず今度は羊羹もええ買うてきますさかい楽しみにしといておくれやす」。
「いや〜正直言うて私あんまり楽しみにしてない。
まず無理やろ思う」。
「あんたが言いなはんな。
内輪から火出しなはんな。
阿呆らしいもない。
行てきます」。
「お〜い。
ボチボチ風呂行こか?」。
「ほ〜ら来よった辰っつぁん来よったがな。
風呂誘いに来よった。
よ〜しまずここは一番考え事を」。
「おい。
何してんねや?お前そんな将棋盤の前でどうしたい?」。
「いやちょっとなこの詰め将棋が分からん」。
「詰め将棋?おいハハハ阿呆な素人が何を言うとんねん。
詰め将棋いうたら俺に任せとけ。
どれどれこっち貸してみいどれ。
ええ?あっこれか。
けったいな将棋やなこれ。
何?ええ?将棋盤の真ん中に王さんが1つや。
周り何もあらへんね。
手が何や?え〜角金歩か歩が3つな。
ウ〜ンどういく?これ」。
「どや?詰まろかな?」。
「やかましいまだこれからやこれから考えんねん。
エ〜トこう打つとこの角を王手で王あっちに逃げて王さんこう金頭で…。
あっどういうこっちゃこれいやこれはあかんか」。
「どや?詰まろかな?」。
「黙ってえ。
やかましい言うな。
エ〜トこっちから裏から入って王さんこっち来させてそれから…。
あっこっ…。
あっあかんわこれ。
ア〜ッアア〜ッあっあかんな〜」。
「ウウッどや?つ詰まろかな?」。
「アア〜ッこらぁつま〜…」。
「つ詰まろかな?」。
「つまんであげたいあなたの乳首」。
「何を言うてんねん」。
(笑い)「言わへんのか?」。
「危なもうちょっとや危ない引っ掛け危ないとこやがな。
俺もうそんなんしてる場合やないんやわ。
今日は忙しい。
一人で風呂行ってくるわ。
弟家来よんねん」。
「何で弟家来んねん?」。
「いや俺今日誕生日や。
弟が祝いの酒持って家来よんねん」。
「祝いの酒?一杯飲める」。
「1,000円」。
(笑い)「もう自分が嫌になってきたわ」。
(笑い)「ひょっとしたらその誕生日いうのも嘘違うか?」。
「お前先月俺の誕生日やいうて祝いの酒持って家来たやろが」。
「お前とこ毎月誕生日やってんのか?」。
(笑い)「ほんまにもう情けない。
もうええわ。
もう1,000円はいどうぞ。
なんぼでもやる」。
「もうそない落ち込むなお前。
金が何やねんお前。
金より世の中なんぼでも大事なもんがあるわ。
金なんかどっちゃでもええ」。
「どっちゃでもよかったら返してくれや返せ」。
「いや。
金は返さへん」。
「ほな言うな。
金返す気もないのにきれい事言うな」。
「せやからまぁ怒るな。
実はなお前な見てたらあんまりかわいそうやからな羊羹買うてきたったんや。
羊羹食べなさい」。
「羊羹?」。
「そうやがな。
お前見てたらなもうかわいそうなってくんねん私あまりにも悪い事してるような気になったの。
はい羊羹食べなさい食べなさい」。
「考えてみたらこの羊羹も何や俺の金で買うた羊羹や」。
(笑い)「自分で買うたやと一緒やないかい食うわい」。
「早食え」。
「食わいでかい。
誰が遠慮するかなんぼでも食うたらぁ」。
「おい。
あのな節分の恵方巻きと違うねん。
丸っぽ食うな行儀の悪い。
誰も食わへんわ。
切って食え切って喉詰めるぞ」。
「ほっとけ俺の羊羹や。
どない食おうが俺の勝手や!」。
「喉詰めるから言う。
泣くな。
泣かんと食え。
ビ〜ビ〜泣くな」。
「おお前笑てるや」。
「それは笑うわい。
早う食え。
いやあかんあかん慌てたらあかん慌てたらあかん落ち着けほんまに喉詰める。
あかんっちゅうのに。
喉詰めるぞ」。
「ウ〜ッウ〜ッウ〜ッ」。
「言わんこっちゃない。
喉詰めてんねん。
焼けぐそ食いするからや。
出せ出せ。
構へん出せもったいのうない。
またあとで食うたらええねんからもう」。
(笑い)「牛と一緒やもう出せ早う。
もうそない慌てて…。
お前不細工な奴っちゃで」。
「ウ〜ンもう…。
オッホッエ〜ッオッホッお前も喉詰まる事あ…。
ウウ〜エ〜ッ」。
(笑い)「何言うてるや分からん。
どう?」。
「お前も喉詰まる事あるやろ?」。
「阿呆言え。
俺はそんなん詰まらんわい」。
(笑い)「ハア〜ッ言うた」。
「言うた言うた。
言うた。
お前言うた。
1,000円1,000円せん…。
アア〜ッウエ〜ッガク〜ン!」。
1,000円もうて死によった。
(笑い)
(拍手)え〜「二人ぐせ」最後まで聞いてくれはりましてありがとうございます。
笑福亭福笑です。
本当にありがとうございました。
あのねこれは癖と言えるかどうか分かりませんけど落語家でもね「上下」ちゅうてありますやろ?こうこっち見たりこっち向いたりね。
あれがね極端な人とあんまりせえへん人といたはります。
私は「ほとんど上下のない落語家」とよう言われるんですけどこれはね登場人物が2人だけ相対してる時は確かに上下はないんですがもう3人以上になりますとね結構ね私上下があるんです。
極端なほうでして。
例えばね…。
「お前何おかしな事言うとんねん。
親父さん。
ちょっとこいつおかしいでっせ」。
「ちょっと待て。
誰がおかしい?誰がおかしい?」。
「誰がおかしいてお前おかしい言うてんねん」。
「ちょっとおいお前ら二人とも喧嘩すな」。
「そうかて親父さん。
大体こいつね…」というふうに結構ねこうあっちゃこっちゃへ顔やるんですけれどもね。
というのはね斜め45度でやってしまうとねどこに誰がいてるや分からん時がある。
落語っちゅうのはよう言われます「想像の芸や」いうてね。
お芝居やら映画みたいに背景も何もありませんので皆さんの頭の中で構築してもらわないかん。
そういうところがあります。
今日の「二人ぐせ」もテレビの前の皆さんそれぞれがそれぞれの「二人ぐせ」を楽しまはったという事になるんですけども実を言いますとね私この噺今日初めてやりましてん。
ええ。
ぎょうさん反省するところあります。
一番反省せないかんのは時間がちょっと短かったんです。
ほいで今こないして喋ってまんねん。
えらいすんまへん。
もう大丈夫?さよか。
なんとか時間のほうもなったようです。
えらいすんまへん。
そしてありがとうございました。
2014/12/27(土) 04:30〜05:00
NHK総合1・神戸
日本の話芸 落語「二人ぐせ」[解][字][再]

9月にNHK大阪ホールで収録した第344回NHK上方落語の会から笑福亭福笑さんの「二人ぐせ」をお送りします。

詳細情報
番組内容
9月にNHK大阪ホールで収録した第344回NHK上方落語の会から笑福亭福笑さんの「二人ぐせ」をお送りします。【あらすじ】ことばに癖のある二人。一方は「一杯飲める」と言うのが口癖で、一方はすぐに「つまらん」と言う。お互い良い癖ではないので直そうと、その言葉を1回言ったら罰金を払うという懸けをする。お互いその禁句を言わして銭もうけをしようとするが…(9月4日(木)NHK大阪ホールで収録)
出演者
【出演】笑福亭福笑,花登益子,桂米輔,桂米平,桂そうば,増岡恵美

ジャンル :
劇場/公演 – 落語・演芸

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
サンプリングレート : 48kHz

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