(十津川警部)おお!
(村井貴子)おじ様。
お久しぶりです。
おおみんな紹介しよう。
私と同期だった村井警部の娘さんで貴子さんだ。
貴子さん今東京地検の公判部で検事をしてる。
村井貴子です。
今度皆さんが逮捕された戸川雅夫の裁判で検察官として初めて法廷に立つ事になっています。
(西本刑事)そうでしたか。
東京地検の検事さん。
(亀井刑事)おじ様なんて言われるから私はてっきり警部の姪御さんかと思いました。
ハハハハ。
私は十津川さんを本当のおじのように思ってます。
父が亡くなったあとも何かと気にかけていただいて。
いよいよ裁判だね。
で今日はどうしたの?お伺いしたのは他でもありません。
その戸川雅夫の事案で妙な事が出てきたもので。
妙な事?昨日事務官がこんなものを見つけたんです。
小島俊介という人のブログなんですが。
小島俊介って…有名な旅行作家ですよね?
(松山刑事)このブログがどうかしたんですか?ここを見てください。
(貴子)3月23日の日記に戸川雅夫の事が書かれてるんです。
「3月23日仕事を兼ねて秩父鉄道のSLパレオエクスプレスに乗る」「詳細は来週発売される週刊文潮を見ていただくとして」「この旅でちょっとしたサプライズがあった」「偶然知っている顔を見かけた」「イラストレーターの戸川雅夫君だ」「女性と一緒だったのでデートの邪魔をしては悪いと思い声をかけなかったがまさか戸川君に会うと思わなかった」戸川雅夫が秩父鉄道のSLに3月23日に乗っていた?パレオエクスプレスは午前10時10分に熊谷駅を出発。
(貴子)終点の三峰口駅には午後0時50分に到着します。
そんなバカな。
それじゃ戸川雅夫は犯人じゃないというんですか?
今からふた月前の3月23日
練馬区石神井の住宅街で男性が殺害される事件が起きた
(パトカーのサイレン)
(松山)ご苦労さまです。
ああ。
刺し傷は背中と腹部の2か所か。
(松山)はい。
凶器は見当たりませんね。
警部ガイシャはですね出版社社長秋山博之57歳です。
発見なさったのが奥さんの裕子さんです。
(秋山裕子)午後2時頃スポーツジムから帰宅しました。
玄関の鍵がかかってなくて家に入ると主人が…。
今日どなたか秋山さんを訪ねてくる予定は?いいえ。
犯人に心当たりありませんか?秋山さんは誰かに恨まれていたとか。
わかりません。
妻裕子の話によると夫の秋山博之は以前埼玉県川越市に住みローン会社を経営していた
7年前貸金業規正法が強化されたのを機に会社を閉め東京に転居
かねてからの夢だった出版社を都内に立ち上げたという
警部!強盗の線もありますね。
ホシは金庫を開けさせようと侵入し抵抗されて秋山さんを殺害した。
あの金庫の中には何が?さあ。
私は金庫の開け方を聞いてませんし。
開きました。
ああ。
借用書にSDカード。
借用書はローン会社時代のものではありませんね。
すいません。
この島崎良治って方は?私の弟です。
(島崎良治)お義兄さんから個人的に借金をしていたのは確かです。
でも僕は事件には関係ありませんよ。
今日の午前中どちらにいらっしゃいました?自宅にいました。
え?これは…ラブホテルで撮ったものですね。
もしかしたら秋山援助交際でもしてたんじゃないですかね?多分そうだろう。
秋山は関係のあった女性を写真に収める趣味があったらしい。
ホシの狙いがこのSDカードだったとしたら写ってる女全員疑わなきゃいけませんね。
(北条刑事)でも日付が古いですしこの写真だけから身元を割り出す事は…。
金庫にあった借用書とSDカードは気になったがホシの手がかりは別のところから出た
犯行現場の室内から傷害の前科がある男の指紋が出たのだ
容疑者として浮上したのはイラストレーターの戸川雅夫だった
あなたは半年ほど前から秋山さんが経営してた天地出版でイラストの仕事を受けていた。
ところが秋山さんは正当なギャラを払わなかった。
その事であなたと秋山さんは随分もめていたそうですね。
(戸川雅夫)私は秋山さんを殺したりしません。
現場からあなたの指紋が出たんですよ。
以前ギャラの件で秋山さんの家を訪ねた事があります。
ですから指紋が出ても不思議はないでしょう。
指紋は床から出たんですよ?
ただ動機が引っかかった
ギャラのトラブルだけで秋山を殺すだろうか?
ああ警部!わかりましたよ戸川の本当の動機が。
戸川は秋山と同じ埼玉県川越市の出身です。
高校3年の時まで戸川は父親と2人で川越に住んでいました。
今から12年前当時戸川の父親は町工場を経営していたんですが資金繰りに困り街金から借金をして…。
で結果自殺してるんですよ!お父さん…。
その街金っていうのは…。
以前秋山が経営していたローン会社です。
父親を自殺に追い込んだ秋山を許せなかったんじゃないのか?申し訳ありません。
私が秋山を殺しました。
凶器のナイフはどこに捨てた?
(戸川)石神井公園に。
すぐさま捜索を行ったが誰かが持ち去ったのかナイフを発見する事は出来なかった
ではナイフで秋山さんの体のどこを刺した?腹を刺したあと逃げようとしたので背中を刺しました。
死体の場所は?
(戸川)机の脇にうつぶせに倒れました。
これらの詳しい情報はマスコミには公表していない
犯人しか知りえない秘密の暴露だ
自供を得て3月29日戸川を逮捕
地検の取り調べにも素直に容疑を認めた事から4月10日検察は戸川雅夫を起訴した
あとは裁判を待つだけの我々にすれば終わったはずの事件だった
裁判は2週間後6月5日から始まる
なのに今頃になって…
SLパレオエクスプレスは秩父本線熊谷駅と三峰口駅の間を運行する
蒸気機関車牽引の臨時SL列車である
東京から一番近いSLとして鉄道ファンはもとより小旅行を楽しむ家族連れに人気を博している
運行日は3月下旬から12月初旬の主に土日祝日
1日に1往復する
午前10時10分熊谷駅を出発すると武川寄居長瀞皆野秩父御花畑駅に停車
終点三峰口駅には午後0時50分に到着する
(松山)パレオエクスプレスの運行時間と秋山の死亡推定時刻は見事に一致します。
もし仮に事件当日3月23日戸川雅夫がパレオエクスプレスに乗っていたのなら戸川に秋山を殺害する事は出来ない。
うーん…。
警部!小島俊介のこのブログ。
これもしかして戸川が頼み込んで書かせたでっちあげのブログなんじゃないですかね?あるいは小島俊介の記憶違いか。
間違いに決まってます。
ありえませんよ。
(刑務官)206番昼食だ。
いただきます。
小島俊介さんにお話を伺おうと思って来たんですが。
今小島さんは海外に行っておられるとか。
(水谷)ええ。
取材旅行でイギリスに行かれてましてね。
まあどうぞ。
おかけください。
失礼します。
えーっとこれです。
3月29日に発売したものですが。
するとこのエッセイを書くために小島さんはSLパレオエクスプレスに乗車されたんですか?ええ。
そうです。
小島さんがパレオエクスプレスに乗られたのは3月23日で間違いありませんか?ええ…原稿をもらったのが翌日の3月24日ですから間違いありません。
その2日後に小島さんはイギリスへ発ってこの2か月はもう行ったきりですよ。
帰国するのはあさってだと聞いてます。
小島さんと戸川さんとはどういう間柄なんでしょう?戸川君はイラストレーターとしてはまだ駆け出しなんですが小島さんはその戸川君の腕を買っていてこれまでにももう何度か一緒に仕事をして親しくしていました。
小島俊介さんですね?朝早くから申し訳ありません。
(小島俊介)戸川君が殺人を?事件の事は?知りませんでした。
この2か月イギリスにいたもので。
それでブログの件ですが3月23日戸川さんを見た時の事を詳しく話していただけますか?最初に見たのは熊谷駅のホームです。
(小島の声)発車前の午前10時頃ホームへ行くと戸川君が女性と一緒に写真を撮っていました。
声をかけようと思ったんですがデートの邪魔をするのもなんですし私は指定席の切符を買っていたので違う車両に。
(汽笛)すると車内では戸川さんを見なかったんですね?ええ。
失礼ですがホームで見た男性は戸川さんに間違いありませんか?見間違いという事は…?まさか。
それに終点の三峰口駅でも見ましたから。
(小島の声)午後0時50分。
パレオエクスプレスが三峰口駅に到着したあと私は転車台を見たり駅の近くを散策して午後2時頃三峰口駅に戻りました。
その時また戸川君を見かけました。
駅員と何やら話し込んでいたので結局その時も声をかけないまま私は電車に乗って東京に帰りました。
その一緒にいた女性ですがどんな女性でした?年齢は?黒いつばの広い帽子を被っていたので顔は見てないんですよ。
嘘をついているようには見えませんでしたね。
残念な事にブログも戸川に頼まれて書いたとは思えません。
三峰口駅へ行って駅員に確認してみようか。
そうですね。
今日は土曜日ですし今から行けばパレオエクスプレスに間に合います。
うん。
小島の証言によると3月23日戸川雅夫はこの場所で写真を撮っていた。
ええ。
ですが戸川雅夫のアパートを家宅捜索した時カメラは出てきませんでした。
一緒にいた女性のカメラで撮影したのかな?おお…。
ん?
(汽笛)
(汽笛)
(車内アナウンス)「C58形のSLは昭和13年から…」
(汽笛)民家が近いんだね。
本当ですね。
洗濯物がはっきり見えますよ。
沿線に住む人たちがSLに手を振る。
乗客がそれに応えるように手を振ってる。
こんなのどかな光景が東京からすぐ近くにあったんですね。
この方なんですが。
ああこの方なら覚えてます。
3月23日だったかはわかりませんが確かパレオエクスプレスが到着してしばらくした午後2時頃だったと思います。
手帳をどこかで落としてしまって。
ええ。
パレオエクスプレスに乗っていた時に車内で落としたのかもしれません。
(仲野)届出があったのは3月23日で間違いありませんね。
戸川さんと一緒にいた黒いつばの広い帽子を被った女性覚えてませんか?あなたは顔を見てますよね?ええ。
ですが女性の方はよく覚えていません。
(仲野)もう一度見れば思い出すかもしれませんが。
面倒な事になったな。
小島俊介に加えて駅員の証言もあったんじゃ見間違いでは通らない。
(ため息)どうなってるんだ?3月23日戸川雅夫がパレオエクスプレスに乗っていたのなら…。
そうと決まったわけではありません。
戸川雅夫が目撃されたのは熊谷駅のホームと三峰口駅の構内です。
パレオエクスプレスにずっと乗っていたとは限りません。
例えば午前10時発車前のパレオエクスプレスに乗車したと見せてすぐに列車を降り熊谷駅から犯行現場である練馬区石神井へ行き秋山を殺害。
午後2時に三峰口駅へ戻ったという事も考えられます。
アリバイの偽装工作。
車を使えば距離的には不可能ではない。
それが可能かどうかは明日検証してみます。
(須崎)でも戸川はなぜ取り調べの時何も言わなかったんだ?仮に偽装行為を行ったのならなおの事アリバイを主張して当然だ。
そうですよね。
仮に小島俊介に目撃された事に気がつかなかったとしてもちゃんと女性と一緒にいたんですもんね。
戸川はどうしてアリバイを主張しなかったのか。
それはこういう事じゃないでしょうか。
戸川は最初秋山を殺しても逮捕されないよう計画を立てた。
知り合いの女性に頼んで事件当日パレオエクスプレスに乗っていたかのようなアリバイ工作をした。
ところが取り調べで指紋と父親の自殺の件を言われもう逃れられないと観念した。
そしてその女性に偽証罪で迷惑をかけるのも気が引け翻意して自供した…。
だから戸川はアリバイを主張しなかった。
女性の方もアリバイ作りに加担したからこそ名乗り出る事をしないんだろう。
それならありえますね。
いずれにしても戸川は容疑を認めています。
今回の裁判は明白な自白事件です。
戸川の弁護人もこれまで行った公判前整理手続きで犯行の有無は争わないと言っていますし。
甘いな。
裁判が始まった途端戸川が一転して容疑を否認し弁護人が無罪を主張しないとも限らない。
なんといっても今回法廷で争うのはあの梅木弁護士だ。
梅木弁護士ってあのよく冤罪事件引っくり返してる…。
(松山)あの人権派弁護士で有名な梅木弁護士ですか?体の調子はどう?ゆうべは少し寒かったが。
ああ大丈夫です。
裁判まであと10日だ。
くれぐれも体調を壊さないように。
はい。
色々差し入れしていただいてすいません。
立派なスーツまでいただいて。
裁判員裁判は見た目の印象も大事だからね。
すいません。
戸川雅夫さんに面会したいんですけど。
それではこちらに記入をお願いします。
すいません。
私弁護士の梅木といいます。
3月23日戸川はパレオエクスプレスに乗ったあとすぐ電車を降りた。
午前10時に熊谷駅で目撃された戸川雅夫に犯行が可能かどうか。
はい!流れはいいな。
はい。
よし!11時30分だ。
犯行にかかった時間を20分とみて…。
(汽笛)よし!あとは…。
次に戸川が目撃された三峰口駅だ。
96.5キロ。
午後2時までに間に合うかですね。
よし行こう!もうすぐです。
ああ。
(電話)はい。
おお。
どうだ?そうか間に合ったか!わかったご苦労さん。
間に合ったんなら旅行作家の小島や駅員の証言があっても戸川が秋山を殺害する事は可能です。
よかった。
ただ1つ問題がある。
戸川雅夫は車の免許を持っていない。
3月23日熊谷駅周辺で戸川がタクシーを利用しなかったか至急調べてくれ。
(2人)はい!
(須崎)事件当日君を秩父鉄道で見たとの目撃証言が出てね。
なぜその事を話さなかったんだ?一緒にいた女性は誰だ?もっとも君はパレオエクスプレスにずっと乗っていたんじゃないだろう。
なぜ黙ってるんだ?
(須崎)君は容疑を認め自供した。
話してくれていいだろう。
(刺す音)うっ!
(刺す音)
(裕子)うっ!
(パトカーのサイレン)秋山裕子…。
物取りの犯行ではないみたいですね。
背中と腹部。
刺し傷の具合は夫の秋山博之と似ていますね。
(松山)手口も同じです。
しかし秋山が殺されてたった2か月で今度は妻の裕子がって…。
どういう事なんでしょう?姉さん…。
(すすり泣き)これから司法解剖を行いますがお姉さんが事件に遭われたのは昨夜遅くとみられます。
どちらに出かけていたのかご存じありませんか?知りません。
いやどんな事でも結構です。
なんか知ってらっしゃる事があったら話していただけませんか?ホストクラブじゃないですか?姉は夫婦仲がうまくいってなかったんですよ。
生前秋山さんの浮気癖があって以前からよくもめてました。
だったら私もって姉も派手に遊ぶようになって…。
今回の事件に関して何か心当たりは…。
姉も秋山さんと同じように誰かに恨まれていたのかもしれません。
えっどういう事ですか?秋山さんが川越でローン会社をやっていた時姉もそこで働いてたんですよ。
秋山さんが社長で姉が専務。
あくどい事をしていたのは姉も同じですから。
(男性)あっ所長。
おかえりなさい。
(女性)おかえりなさい。
現場付近を聞き込みましたが今のところ目撃情報は得られませんでした。
そうか…。
(梅木)失礼します。
戸川雅夫の弁護人で梅木といいます。
十津川です。
どうぞ。
ご用件は?捜査状況をお聞きするため伺いました。
昨日拘置所で旅行作家の小島俊介さんと会いましてね話を聞きました。
これまでは戸川雅夫本人が罪を認めている事から裁判では情状酌量に絞って弁護を行うつもりでしたが…。
3月23日パレオエクスプレスに乗っていた戸川雅夫に秋山を殺す事は出来ません。
それは…。
小島さんから話を聞いて私は戸川君に確認しました。
本当は秋山を殺していないのではないか?戸川君は黙ったままでしたが話さないのは何か事情があるのかもしれません。
何より…。
秋山の奥さんが殺されたのは偶然ではないでしょう。
同一犯の犯行と見るべきです。
つまり秋山と妻の裕子に恨みを持つ人間が2人を殺害した。
(梅木)秋山を殺したのは戸川君ではない。
彼は無実です。
お言葉ですが私は戸川雅夫を取り調べた警察官として秋山さんを殺害したのはあくまで戸川であると思っています。
十津川さんは裁判では証言台に立たれるんでしたね。
どのような取り調べを行ったのかは法廷で聞かせていただきます。
小島俊介氏の証人尋問を申請します。
小島氏は3月23日パレオエクスプレスで被告人戸川雅夫を見た。
重要な目撃証人です。
結構です。
同意します。
弁護人は被告人戸川雅夫の無罪を主張するというんですね。
秋山を殺したのは戸川雅夫ではありません。
梅木弁護士が小島の目撃証言で戸川の無罪を主張するのなら我々は戸川が行ったアリバイ工作を証明しなければならない
それを証言出来るのは3月23日戸川と一緒にいた謎の女性だ
その女性が誰なのか?
戸川に関してある事がわかりました。
秋山の事件が起きるひと月ほど前から戸川は錦糸町にあるクラブによく通っていたという事です。
なんでもお店のママに惚れ込んでいたという事で。
よしわかった。
その店は私があたろう。
(店内の音楽)
(菅原真美)いらっしゃいませ。
いらっしゃいませ。
どうぞ。
あれ?ママは?タバコを買いに…。
すぐに戻ります。
この間ママと似た人を見かけたんだよ。
つばの広い黒い帽子被っててさ…。
だったらママじゃないですか?ママは日焼けするのが嫌だってつば広帽子をいくつも持ってますから。
ああ…。
(篠田理恵)いらっしゃいませ。
ママ!篠田理恵さんですね?ちょっとお話伺いたいんですが。
あなた何話したの?いえ何も…。
戸川雅夫さんご存じですよね?こちらの店によくいらしていた。
ええ…。
単刀直入にお伺いします。
3月23日戸川さんと一緒にパレオエクスプレスに乗ってらっしゃいませんでした?パレオエクスプレス?ええ。
秩父鉄道を走っているSLです。
戸川さんその日女性と一緒だったそうなんですが…。
私ではありません。
私は戸川さんにもSLにも興味はありませんから。
あなた黒いつばの広い帽子をお持ちでしたよね?では3月23日午前10時頃あなたはどちらにいらっしゃいました?覚えていません。
ただいま。
(一同)おかえりなさい。
戸川と一緒にパレオエクスプレスにいたのは篠田理恵と思うんだがアリバイ作りに協力した後ろめたさからか認めようとしない。
警察には頑として口を割らない気だ。
そうですか…。
あの…。
お店には従業員募集の貼り紙があったんですよね?
(客の笑い声)いらっしゃいませ。
おお〜…。
君名前なんていうの?千秋です。
出身はどこ?モンゴルです。
モンゴル…?嘘ですよ。
東京です。
(一同の笑い声)
(客)ママ面白い子入ったじゃないの。
でしょ?千秋ちゃんよ。
よろしくね。
(客)よろしくね。
(久保田)よろしくお願いします。
お疲れさまでーす。
お疲れさまです。
(理恵)お疲れさま。
千秋ちゃんちょっと。
(久保田)はい。
あのさ昨日ママから刑事さんには何も言わないようにって言われましたけどあれはどういう…?それはねうちに来てた戸川さんってお客さんが事件起こして逮捕されたの。
その事で刑事が来てママに事件があった日戸川さんと一緒にいなかったか?って。
それで?ママはお金持ちの人としか付き合わないから違うと思うんだけど…。
その戸川さんって人に恋人は?いないでしょ。
いつか聞いた事があるの。
恋人はいらっしゃらないの?高校の時に同級生に好きな子がいたけど告白出来なかった。
そうなんだ。
その子今や売れっ子のモデルになっててさ…。
(真美の声)自分とはえらい違いだってぼやいてたわ。
じゃあその戸川さんと一緒にいた女性は…。
本当言うとねひょっとしたらママかもしれないの。
えっ!?
(アナウンス)「パレオエクスプレスで使われているC58形のSLは東北地方の旧国鉄などで活躍していました」「現役を引退したあとは…」あっ警部ちょっとすいません。
すいませんこれいただけますか?このSL。
カメさんも男の子だね。
ちょっと気になったもんで…。
(汽笛)今日もいい天気だね。
ええ最高ですね。
(汽笛)3月23日戸川さんと一緒にいたのはこの女性じゃないですか?
(仲野)ああそうです。
この人です。
篠田理恵さん。
三峰口駅の駅員があなたの事を覚えてましたよ。
あの日午前10時に熊谷駅のホームで待ち合わせしました。
戸川さんが写真を撮ろうというので私の持っていたカメラで1枚だけ撮影してパレオエクスプレスに乗りました。
ところが乗ってすぐに…。
「これから人と会わなければならない」「誘っておいて悪いけど午後2時に三峰口駅で待っていてくれないか」戸川さんそう言って電車を降りたんです。
私は呆れました。
でもせっかく来たんだし…。
(理恵の声)私は1人で終点の三峰口駅まで行きました。
午後2時戸川さんが来ました。
すると今度は…。
あっお待たせ。
ごめんね。
ちょっと待ってて。
あの…手帳をどこかで落としてしまって…。
(理恵の声)パレオエクスプレスの車内で落としたというんです。
熊谷駅ですぐに降りたのにどうしてそんな事を言うんだろうと不思議に思いました。
(須崎の声)戸川から事件の事は何も聞いていなかった?
(理恵の声)はい。
その日の夜ニュースで秋山さんの事件を知って嫌な予感がしました。
以前お店で戸川さんから聞いた事があるんです。
出版社の社長がギャラを払ってくれない。
秋山の野郎は許さないって。
ひょっとして秋山さんを殺したのは戸川さんじゃないのか…。
数日後戸川さんが逮捕されたと知ってその時やっとわかりました。
パレオエクスプレスに私を誘ったのはアリバイ作りのためだったのだと。
この調書を裁判に提出します。
もし弁護人が同意しなかった時は今話した事を法廷で証言していただけますか?わかりました。
失礼します。
よし…。
これで裁判には100パーセント勝てます。
いや〜お手柄だったね。
本当に。
役目果たしたんだからいい加減クラブ勤めやめりゃいいじゃねえかって言ったんですけどね…。
いえ裁判が終わるまでは続けます。
偉い。
他に何か情報がつかめるかもしれませんし。
偉い子だねぇ。
そんな子だったんだ。
びっくりだよ。
でもおかげで僕らも裁判の事気にせずあの秋山裕子の事件に集中出来ますね。
裕子を殺したホシを挙げるのはもちろんだがもう1つ例の謎が残ったままだ。
3月23日戸川を熊谷駅から車で運んだ協力者…。
戸川と同じようによほど秋山に恨みを持つ人物でなければ協力はしないだろう。
うーん戸川の知り合いで秋山を恨んでる人物…。
そいつが一体誰か。
(店員)いらっしゃいませ。
私オロチョンラーメン1つください。
私も。
午前の会議長くてね…。
あっちょっとすいません。
はい。
北条君これ。
はい。
ああこのモデル今売れっ子の武井美由紀ですがこの子がどうかしました?秋山の家の金庫の中にあったSDカード。
これだ。
2001年か…。
今から12年前ですね。
戸川は高校時代の同級生が売れっ子のモデルになっているそう言ったんだよね?
(久保田)はい。
(カメラマン)後ろから回ってきて…はい。
おっいいね〜。
そうそうそう後ろからゆっくり前を向いて…。
よしよし…そうそうそう。
はい下から冷たい目線で…。
いいよいいよ。
(北条)この写真に写ってるのは武井美由紀さんあなたですね?この画像データは3月23日に殺された秋山博之さんが持っていました。
(武井美由紀)確かにこの写真は私です。
まさか今頃になってこの写真で強請られるとは…。
(秋山博之)懐かしいねぇ。
とりあえず500万払っていただけますか。
今のあんたならそれぐらいの金どうって事ないでしょ。
出版社の経営がうまくいってないんですよ。
払う気はありません。
公表するならすればいい。
秋山の脅しには応じなかった。
そうです。
あなたは埼玉県川越市の出身で戸川雅夫さんとは高校時代同級生だった。
最近お会いになった事は?いえ高校を出てからは一度も会った事はありません。
あなた車をお持ちですよね?3月23日午前10時頃武井さんはどちらに?その日なら…。
前の日に夜遅くまで撮影があったんで午前中は自宅で寝ていたと思います。
(松山)戸川の協力者は武井美由紀だと思うんです。
武井美由紀が戸川を車で運んでいたのなら3月23日関越自動車道を通っているはずなんです。
関越に設置されたNシステムに美由紀の車が映っていないか今照会を行ってもらっています。
警部ひょっとしたらこの武井美由紀が妻の裕子を殺したんじゃないでしょうか。
はい捜査一課。
はい照会の結果は…?わかりました。
ありがとうございました。
警部Nシステムに武井美由紀の車はヒットしなかったそうです。
じゃあレンタカーだ。
よしレンタカーをあたろう。
(一同)はい。
今のところ武井美由紀がレンタカーを借りた形跡はなしか。
必ず出てくると思うんです。
あっありがとう。
彼女以外戸川の協力者は考えられないんです。
戸川の裁判はいよいよ明日ですね…。
裁判は大丈夫だよ。
戸川がパレオエクスプレスを中抜けしたのは間違いないんだ。
(電話)はい捜査一課。
変死体…?現場は?身元は?えっなんですって!?間違いありませんか?わかりました!カメさんどうした?ご苦労さまです。
こちらです。
篠田理恵がどうして…!?発見者は?えー梅木浩三という弁護士です。
えっ!?外で待機してもらってます。
一番驚いてるのは私ですよ。
篠田理恵さんを訪ねたのはどんな用件で?彼女の供述調書を見てとても信じる事は出来ない。
裁判が始まる前に会って話をしたいと思いましてね。
住所はどうしてわかったんですか?弁護士だって調査はしますよ。
戸川君がクラブに通っていたと知って昨日店に電話を入れました。
話をしたいと言うと「店に来られても困る」。
「今日の午前9時にマンションに来てほしい」と言われて…。
訪ねた時玄関の施錠は?かかってませんでした。
妙だなと思って声をかけながら室内に入って死体を発見しました。
ああ申し訳ありませんが今日これから別件のクライアントと会う予定があるもんで詳しい話は後ほどにしてもらえませんか。
わかりました。
あっ警部。
状況的には自殺なんですけどねどこにも遺書らしきものが見当たらないんです。
(松山)カメラがありました。
このビデオカメラにもパレオエクスプレスから撮ったと思われる映像が残っています。
あっこれも日付が3月23日だ。
このナイフの形状から見て秋山と裕子の事件の時に用いられたナイフのようにも思えますが。
(貴子)すいません!失礼します。
明日の裁判に出てくれるはずだったのにどうして…。
篠田理恵がどうして死ななければいけないんです?昨日篠田理恵に何か変わった様子は?いいえ。
弁護士の梅木さんが店に電話をかけたというんだが。
そういえばそれらしい電話がありました。
でも詳しい事は…。
そうか…。
どうぞ。
どうも。
わざわざ来ていただいてすいません。
こりゃ立派な事務所ですね。
いやいや…。
あれ?これひょっとして熊谷駅で売ってる…。
(梅木)ええ。
小島さんが戸川君をパレオエクスプレスで見たと聞いてどんな列車なのかと熊谷駅へ見に行ったんですよ。
その時ホームの売店で。
ああそうですか。
ここじゃあなんですから。
ああ…そうですね。
篠田理恵を訪ねた事情をもう少し詳しくお聞きしたいと思いまして。
ええ。
彼女の供述調書を見て会って話したいと言われましたが。
篠田理恵に偽証罪の重さを伝えたかったんです。
彼女の供述が偽証だとおっしゃるその根拠はなんですか?熊谷駅で戸川君はパレオエクスプレスをすぐに降りた。
そう証言をしてるのは篠田理恵1人だからです。
一方で小島さんと三峰口駅の駅員複数の目撃証言があるんだ。
戸川君はパレオエクスプレスにずっと乗っていた。
そう見るのが自然でしょう。
彼女の供述は作り話だと?そうです。
しかし戸川雅夫は秋山を殺したと罪を認めてますよ。
それはね…事情があったんですよ。
実は先ほど拘置所へ行って戸川君と会ってきました。
篠田理恵が自殺したと言うと戸川君は驚いて…ようやく真実を話してくれました。
真実?どういう事です?ここから先は明日法廷で明らかにします。
他に何かご質問は?失礼ですが梅木さんご家族は?あいや…先ほどパレオエクスプレスの玩具を見て息子さんかお孫さんがおありなのかなと。
子供はいません。
十津川さんは私と年齢が近いからおわかりいただけると思いますが仕事しか能のない人間は家族を養うために働き続ける。
でも…理解されない。
フフッ夫婦は『六法全書』より難しい。
私に家族はいません。
妻とは12年前に離婚しました。
裁判では私は被告人を守るために全力を尽くします。
覚悟しといてください。
失礼します。
どうした?ああどうもいや…。
篠田理恵の解剖の結果と鑑定結果が出ました。
これが解剖報告です。
死亡推定時刻は本日6月4日午前6時から8時の間。
自殺か他殺かは…。
不詳か。
問題はナイフに付着していた血液の鑑定結果なんです。
ナイフには篠田理恵の他に別人2人の血が付着してました。
DNAを照合したところ秋山と妻裕子の血と合致しました。
それではこれより本年3月23日練馬区石神井で発生した殺害容疑事件の裁判を開始します。
「被告人はイラストの制作報酬を搾取する秋山博之氏に以前から怒りを覚えていました」「さらに同氏がかつて自分の父親を自殺に追い込んだローン会社を経営していたと知って殺意を抱き…」証人が被告人戸川雅夫さんを逮捕するに至ったのは現場の床にあった指紋と動機自供からだとおっしゃるんですね?そうです。
まず指紋ですが戸川さんは事件が起きる数日前ギャラの件で苦情を言うため秋山さんの家を訪ねています。
酒を飲んで酔った勢いで訪ねたという事です。
酔って足がふらつく状態で訪ねたのなら…。
その時床に手をついた!
(梅木)指紋が床から出ても不思議はないでしょう。
取り調べでは被告人は訪ねた時酔っていたとは言っておりません。
次に動機ですがローン会社時代にさかのぼれば秋山さんに恨みを持つ人間は他にもいる。
被告人だけが秋山さんを恨んでいたわけではありません。
そして自供です。
証人はまるで犯人しか知りえない秘密の暴露を得たかのようにおっしゃっておりますが本当は…。
刺したのは腹と背中じゃないのか?死体の位置はここじゃあないのか?と…。
意義あり!自供は断じて誘導によるものではありません。
被告人が自ら…。
凶器のナイフは発見されませんでしたね。
…はい。
実は秋山さんの殺害に用いられた凶器のナイフが昨日発生した女性変死事件の現場から発見されました。
これがそのナイフです。
(梅木)このナイフを手に死亡していたのは本法廷に証人として出廷するはずだった篠田理恵さんです。
篠田理恵さんは秋山さんが殺害された事件当日被告人と秩父鉄道のSLパレオエクスプレスに乗り被告人のアリバイ工作に利用されたとそう証言する予定でした。
ですがこれは事実ではありません。
アリバイ作りに利用されたのは被告人だったのです。
(どよめき)
(梅木)裁判長!審理を迅速に進行するためにも異例ですがここで被告人質問を行いたいと思います。
真実を語れるのは被告人しかいないのです。
(どよめき)3月23日秩父鉄道のパレオエクスプレスであった事を話してください。
はい。
えー…パレオエクスプレスに乗ったのは前の日篠田理恵さんから誘われたからです。
私は理恵さんの事が好きでしたし喜んでデートに応じました。
ところが熊谷駅で乗車すると…。
ごめんなさい急用が出来たの。
悪いんだけど…。
(戸川の声)午後2時に三峰口駅で待っていてほしいと言われました。
そしてビデオを渡されて少しでいいから窓の外の風景を撮っておいてと言われました。
午後2時に理恵さんは三峰口駅へやって来ました。
その時私は手帳をなくしている事に気がついて遺失物預かり所へ行ったあと理恵さんと近くで食事をして東京へ帰りました。
夕方ニュースで秋山の事件を知って理恵さんの事が気になりました。
以前私が店で秋山の話をした時理恵さんは「私その秋山と付き合っていたのよ」と秋山を恨んでいるような事を言っていたからです。
理恵さんと秋山さんの関係は…?
(森本早苗)もう10年以上になるかしら。
お店のお金を出したのは秋山さんだしまあパトロンと言えばそれまでですけど。
理恵さんは秋山さんを本気で愛していました。
でも…。
あっ!ああっ…!産ませないわよ。
(早苗)理恵さんは赤ちゃんを流産しました。
篠田理恵は秋山と妻の裕子2人を恨んでいた。
事件の翌日店へ行くと理恵さんから警察に何か聞かれたら「3月23日はずっと一緒にパレオエクスプレスに乗っていた事にしてほしい」と言われました。
その時私は理恵さんのアリバイ作りに利用されたのだとわかりました。
(戸川)警察は私を疑いました。
取り調べを受けるうちに理恵さんを救いたいと思いました。
理恵さんがやらなければ私が秋山を殺していたでしょう。
理恵さんの事が好きでしたし理恵さんを庇うために嘘の自供をしました。
でも昨日理恵さんが自殺したと聞いて本当の事を言うしかないと。
これまで嘘をついて申し訳ありませんでした。
被告人の今の証言が事実である事は篠田理恵の自殺現場にあったナイフに付着した血液が証明しています。
秋山さんを殺したのは被告人ではない。
篠田理恵だったのです!
(どよめき)理恵の供述と真逆の話になっちまいましたよ。
静粛に!静粛に!ああただいま。
久保田君が新たな情報をつかんできました。
お店の常連客の佐々木雄三さんという方が3月23日篠田理恵に頼まれて車を貸したと言うんです。
えっ犯行当日理恵が車を借りていた?それで至急関越道のNシステムに照合しました。
ヒットしました。
これです。
(北条)この車が午前10時46分に東京方面へ。
午後0時38分埼玉方面へ走行しているのが確認されました。
残念ながら運転席までは映っていませんでしたが。
完璧だよ!車の裏が取れたんだ。
警部これでもうやっぱ篠田理恵が秋山と裕子を殺したって事は確実ですね!それは理恵の死が本当に自殺だった場合の話だ。
彼女は自殺したのではないとおっしゃるんですか?遺書もなく玄関の施錠もされていなかった。
もう1つ気になるのは一般にナイフや包丁で自殺を図る時刃を直接肌に触れさせるものだ。
腹を刺す時は服をまくる。
首を切る時は髪の毛を手繰り上げる。
ところが現場には理恵の毛髪が多数落ちていた。
篠田理恵の死が他殺なら犯人は他にいる。
私は今回の一連の事件は全て仕組まれているようにしか思えないんだ。
私もそう思います。
出来すぎてますよ!秋山を殺したのはあくまでも戸川だ。
戸川の自供は犯人しか知りえない秘密の暴露。
これだけは動かない。
裕子と理恵を殺したのは一体誰だとおっしゃるんですか?戸川を車で運んだ協力者。
ちょっと待ってください。
私はやはり武井美由紀が気になります。
裁判はまだ2日ある。
諦めるのは早い。
はい。
戸川雅夫も武井美由紀も同じ川越の出身。
秋山も妻の裕子も同じローン会社で働いていた。
事件の根っこは全て川越にある。
カメさん明日川越へ行こう。
はい。
武井美由紀さんとは高校時代親友だったそうですね。
当時の事をお聞きしたいと思いまして。
(栗沢則子)はい…。
例の秋山が持っていた写真です。
困ります。
もうお話しする事はありません。
武井美由紀さんの父親も街金で借金を…。
高校3年生の時美由紀のお父さんは多重債務で大変でした。
同級生の戸川雅夫さんと美由紀さんが最近会っていたという事はありませんか?いいえ。
高校の時2人は親しくしていませんでしたし聞いた事はありません。
では12年前当時美由紀さんから秋山博之という名前を聞いた事は?あります!話していただけませんか?12年前その秋山という人は美由紀に借金の事で父親を助けたかったら俺の言うとおりにしろと関係を迫ったんです。
(則子)美由紀はお父さんを助けたい一心で…。
それで美由紀さんの父親は?
(則子)結局取り立ては続いて…。
心労がたたったのかまもなく病死しました。
美由紀は秋山を許さないと言っていました!
(菊池)確かに私は以前秋山さんが経営するローン会社で働いていました。
でも詳しい事は…。
すいません。
ヤミ金同然のあくどい取り立てを行っていたのは確かです。
暴利で貸し付けるだけじゃない。
12年前秋山さんは整理屋もやっていました。
整理屋!?というと多重債務で困ってる人に弁護士の関係者だって嘘をついて近づくという…。
そうです。
債務整理を代行すると騙して高額の手数料を取って返済にはわずかしか回さない。
債務者が支払う事が出来なくなったらさっさとやめて債務者はわけがわからないまま前にも増して厳しい取り立てが来る。
多重債務者を食いものにした卑劣な行為です。
秋山は川越のローン会社時代に整理屋をやっていた。
あっ…カメさんちょっと。
はい。
悪いけど先に帰っててくれないか?私はちょっと気になる事があってね1人だけ会っておきたい人物がいるんだよ。
わかりました。
私も実はちょっと気になる事があるんです。
昨日何か見落としていないかと思いまして篠田理恵の部屋の遺留品を見直したんですが例のビデオカメラがちょっと…。
それじゃあ!はい。
(店内の音楽)十津川といいます。
カメさんそのビデオどうかしたんですか?んっ?このビデオになんかあるんですか?ああ…ビデオカメラの映像がどうも気になってね。
時間は午前10時18分ですから…。
熊谷駅出てすぐですね。
このビデオはこれ誰が撮ったんだろう?まあ法廷じゃあ戸川が理恵に頼まれて撮ったと言ってましたが。
何かが違うんだよなあ…。
え?おいみんな聞いてくれ。
(北条)はい。
戸川が秋山を殺した時戸川を車で運んだ協力者その共犯者が秋山裕子と篠田理恵を殺したと見て間違いはない。
だがこのままでは戸川は無罪になってしまう。
目撃者を探すんだ。
でも…今日も理恵のマンション周辺ずっと聞き込み入れたんですが目撃者は全然出ません…。
裁判が結審するのは明日だ。
もう時間がない。
秋山博之の事件一本に絞ろう!
(一同)はい!3月23日戸川を乗せた車は高速から練馬インターを下り石神井にある秋山の家に向かった。
到着した時間は?はい。
あの…僕らの検証では午前11時30分頃でした。
理恵が借りた車を運転していたのは一体誰なのか?3月23日午前11時半前後。
該当する車が映っていないかどうかこの辺り一帯に設置されている防犯カメラ全てあたってくれ!
(一同)はい!すいませーん。
わかった!えっ?ありがとうございました。
洗濯物だ!えっ!?ビデオカメラの映像で引っかかってるものがわかったんですよ!警部ちょっと来てください。
警部と一緒にパレオエクスプレスに乗った時に沿線の民家のどの家でも洗濯物が干してありました。
ところが3月23日戸川が撮影したというこの映像では雨も降ってないのに洗濯物が干してありません。
警部私この裏を取ってきてもいいですか?頼むよカメさん!はい。
ちょっとこれを見ていただけますか?ここに映ってるのこれお宅ですよね?ええ。
これは今年の3月23日土曜日午前10時18分パレオエクスプレスの車内から撮影されたものなんです。
気象台に確認したところ当日の埼玉県の天気は晴れ降水確率は0パーセントでした。
それなのに洗濯物が干してありませんよね?どうしてなのかなと思いまして。
3月23日と言われても…。
でも晴れた週末なら洗濯はいつも朝必ずしてます。
ですよね。
まあ念のため翌日24日日曜日の天気も調べました。
曇りのち雨降水確率は60パーセントでした。
つまりこのビデオが撮影されたのは…。
3月23日じゃないよ。
その日は僕の誕生日だったけど虫歯が痛くて歯医者さんに行ったから覚えてる。
朝歯医者さんに行く時ママ洗濯物干してたもん。
ああそう。
じゃあ次の日の日曜は?朝塾に行く時雨が降るからって言われて傘を持ってった。
ママ洗濯しなかったよ。
本当?うん!あれだ。
あっ。
これねこっちこっちこっち…!あっここにある。
急ごう。
はい。
起立!武井さん今日はどうしてここに?戸川君の事が気になったもので。
礼。
(裁判長)これより検察官弁護人双方に論告弁論を伺います。
裁判長。
論告に入る前に最後の証人尋問を要請します。
(裁判長)弁護人証人尋問の請求について何かご意見は?しかるべく。
では採用して証人尋問を行います。
証人は証言台へ。
(貴子)昨日行った捜査で新たな事実がわかったそうですね。
はい。
まず…。
「急行のエクスプレスと合わせ…」これは篠田理恵さんのビデオカメラにあった映像です。
被告人はパレオエクスプレスに乗った時列車から降りた理恵さんに頼まれて撮影をしたと証言しました。
するとこの映像は被告人が3月23日に撮影したものという事になります。
ところが…。
この民家の住人に確かめたところ3月23日は朝から洗濯物を干していたと言うんです。
この映像には洗濯物は干されていません。
つまり3月23日に撮影したものではないんです。
被告人がビデオの日付を操作し翌日24日に撮影したものです。
ではなぜ3月23日に撮影出来なかったのか。
言うまでもありません。
事件当日被告人はパレオエクスプレスには乗っていなかったからです。
異議あり!住人の記憶違いという事もある。
なぜ翌日に撮影されたと断定出来るんですか?熊谷駅に設置された監視カメラに翌日24日ホームに向かう被告人が映っているからです。
前の日に来たばかりのパレオエクスプレスに翌日どうしてまた乗りに来たんでしょう?それは…パレオエクスプレスが楽しかったので次の日1人で行っただけです。
裁判長!今回は特別な状況下での裁判ですので論告内の証人尋問にも同意しました。
ですが検察官と証人の推測に付き合う気はありません。
これが最後の質問です。
3月23日パレオエクスプレスにずっと乗っていたという被告人の証言を覆す決定的な証拠が出てきたのですね?はい。
私は秋山博之氏を殺害したのはあくまで被告人戸川雅夫であり事件当日熊谷駅から被告人を事件現場まで車で運んだ協力者がいると考えました。
証拠はこれです。
これは篠田理恵さんが店の客に借りた車です。
3月23日午前11時28分。
石神井の秋山家近くの道路沿いに設置されてある防犯カメラに映っていました。
しかし運転しているのは理恵さんではありません。
(どよめき)弁護人がなぜ被告人の犯行に協力したのか。
なぜあなたが共犯なのか。
12年前川越で秋山氏が整理屋をしていたのを知りあなたの事が気になりました。
整理屋には弁護士の協力が必要です。
弁護士会に確認をしあなたが昔川越で法律事務所を構えていた事を知りあなたが昔秋山氏に加担をしその事で脅されていたのではないか。
ここから先は後ほど警察で伺います。
(どよめき)静粛に!静粛に!
(どよめき)武井さん!あなたを戸川の共犯者と疑い申し訳ありませんでした。
いえ。
梅木さん!ちょっと説明してくださいますか!戸川被告と本当はどんな関係なんですか?ちゃんとそこを説明してくださいますか!悪いが私とカメさんは少し寄り道をする。
(北条)えっ?はい。
ああ押さないで!あっ押さないで!逃げるのか梅木!梅木さん!昨日梅木さんが離婚した奥さんに会いました。
泰代に?
(徳永泰代)私は主人の仕事に関しては何も知りません。
ただ主人は小さな個人事務所をやってましたが経営はかなり苦しかったようです。
失礼ですがなぜ離婚されたのでしょう。
私たち夫婦には6歳になる息子がいました。
和也は心臓に持病があって入退院を繰り返していましたけど…亡くなりました。
別れたくて別れたわけではありません。
でもあの時は私は主人を責めるしかありませんでした。
そうでしたか。
明日が…和也の命日です。
今日は和也君の十三回忌の命日だと聞きました。
秋山がかつて川越で整理屋をやっていた。
だから私を疑ったんですか?いいえ。
今回の一連の事件を仕組んだ人間がいるとしたらそれはよほど頭の切れる人物です。
それともう1つ。
鞄に入っているものを出してください。
泰代さんから聞きました。
和也君はSLがとても好きだったそうですね。
これは和也君の墓前に供えるために買ったんじゃないんですか?この玩具を見た時私は気になりました。
梅木さんはいつなんのために熊谷駅に行ったのか。
ひょっとしたら3月23日戸川雅夫を車で運ぶ時だったのではなかったのか。
フッ…。
私も甘いですね。
いいえ。
この玩具を買ったのは…。
あなた今でも家族を思ってる。
今でも息子さんを愛しているからです。
(嗚咽)12年前私は秋山に誘われ整理屋に加担しました。
どうしようもなかった。
事務所の経営がうまくいかず和也の治療費を払う事が出来なくなっていたんです。
和也を救うために犯罪に手を貸すしかなかった。
和也が亡くなってすぐに私は秋山と手を切りました。
秋山と組んでいたのは3か月。
幸い露見する事はなく私は一からやり直そうと東京に出ました。
東京の弁護士会に籍を移しこの12年懸命に働きました。
梅木さんの噂は私も聞いていました。
弱者を救うために国選の案件も進んで引き受ける立派な弁護士だと。
10年前の殺人事件の裁判で冤罪を立証され一躍名声を得られた。
フッ…。
私はただ必死に働いてきただけです。
結果的には成功を収めた事が秋山にまた付け込まれる事に…。
(梅木の声)事件が起きるひと月前突然秋山が訪ねてきました。
(秋山)どうも先生ご無沙汰してまーす。
銀座にこれだけの事務所を構えるなんて梅木先生も立派になられましたねぇ。
(秋山)本当によかった。
とりあえず3000万払っていただけますか?整理屋に加担していたといっても12年も前です。
脅しにはなりませんよ。
所属している弁護士会でも3年以内の違反行為しか処分の対象にはならない。
フッ…今さらばらされても懲戒処分にもなりません。
そうかもしれませんが公表したらマスコミはあんたを叩きますよ。
今や梅木先生は人権派弁護士として有名ですからね。
何しろ弁護士は信用が第一だ。
公表したらあんたは終わりだ。
それでもいいんですかね?先生。
変な事考えないでくださいよ。
この事はある人物にも話してますから。
(梅木)私は秋山に「金をすぐには用意出来ない。
時間をくれ」と言いました。
秋山を殺すしかないと思った。
いいえその時は思いませんでした。
翌日…。
篠田理恵が訪ねてきたんです。
秋山があなたを脅しに来たでしょ。
(梅木の声)秋山が言っていた「ある人物にも話している」というのは愛人の篠田理恵だったんです。
私は理恵も金を要求しに来たのだと思いました。
秋山に金を払う事なんかないわ。
殺せばいいのよ。
(梅木の声)理恵は秋山と妻の裕子を恨んでいると言い…。
2人を殺してくれたら私は梅木さんの過去をばらす事はしない。
でも殺さなかったら…。
わかりますよね?秋山と理恵に追い詰められ私はどうすればいいか考えました。
秋山を調べてみると私がよく行く居酒屋でバイトをするイラストレーターの戸川雅夫ともめている事がわかり私は戸川君から話を聞きました。
ギャラだけじゃない。
あの男のせいで僕の父親は死んだんです。
秋山は許せない。
出来る事なら殺したい。
でも殺しても刑務所へ入ったら意味がないですからね。
(梅木の声)戸川君の悲しみが私の最後のボタンを押す事になりました。
秋山は死んで当然の男なのです。
秋山を殺しても君を刑務所へは行かせない。
私が無罪にしてみせる。
そしてあなたは完全犯罪の計画を立てた。
まず戸川が秋山を殺しいったん自供する。
次に裁判が近づいた頃あなたが秋山の妻裕子を殺害する。
そうすれば少なくとも犯人を戸川とは別の人間だと思わせる事が出来る。
そして裁判直前自殺に見せて篠田理恵を殺す。
全てを理恵の仕業だと見せた上で裁判で戸川が自供を覆せば無罪を勝ち取る事が出来る。
裕子と理恵を殺す事は戸川に話したんですね?戸川君にとって裕子は秋山と同罪です。
理恵にしたって秋山のローン会社時代の汚い金で店を持った。
2人を殺すのは構わないと…。
理恵にはどう言ったんです?もちろん計画の全ては話しません。
秋山は戸川君が殺し裕子は私が殺すとだけ言いました。
だがいずれ戸川を無罪にするにはアリバイが必要だ。
アリバイの事は刑事が訪ねてきても最初は「違う」と言うんだ。
そして裁判が始まる直前検察庁へ行って戸川君と一緒にいたのは自分だが戸川君はパレオエクスプレスをすぐに降りたと言ってくれ。
でもそんな事言ったら…。
その供述を裁判で引っくり返してくれればいい。
わかったわ。
(梅木の声)理恵は私の指示どおりに動きました。
理恵に車を借りさせたのも…?私が指示しました。
理恵を殺し彼女に罪を着せる事は最初から計画していた。
殺人を依頼するような女です。
秋山と裕子を殺したとしてもやがてはその殺人をネタに理恵が私を脅してくるのは目に見えてます。
そして3月23日完全犯罪の計画が実行された。
なんだお前は!?
(刺す音)
(秋山)うっ!この野郎…!
(刺す音)
(秋山)ああっ!
(梅木の声)そして彼が秋山を殺した同じナイフで…。
(刺す音)
(刺す音)
(裕子)うっ!どうぞ。
(梅木の声)理恵には裁判の事で確認しておきたい事があると言って朝早くに訪ね…。
悪いね朝早くから。
いいえ。
あっ!発見者を装ったのは裁判が始まる前に理恵の死体が出なければ困るから。
そうです。
計算外だったのはパレオエクスプレスで旅行作家の小島俊介が目撃していた事です。
まあ結果的には理恵が検察に呼ばれて供述する事になりましたし…。
全てはうまくいくと思ったんですが…。
パレオエクスプレスでのアリバイは客観的な証拠が必要だ。
それで戸川に熊谷駅のホームで写真を撮らせ車内でビデオを撮影させ三峰口駅では遺失物届を出させた。
ええ。
ビデオ撮影はどうして篠田理恵に頼まなかったんですか?余計なものを映されても困るし翌日戸川君に撮影させました。
(梅木)まさか洗濯物でばれるなんて…。
やはり完全犯罪は出来ませんね。
梅木さん。
12年前どうして秋山の犯罪に手を貸したんですか?それがなければ今回の殺人はなかった。
いくら息子さんを助けたかったからといっても…。
和也が亡くなる1年前和也と一緒にパレオエクスプレスに乗った事があります。
(汽笛)和也すごいねぇ!
(梅木の声)その時そりゃあもう和也は喜んで…。
(梅木の声)それが和也と行った最後の旅行でした。
(泰代)和也…和也…。
和也!あなた…どこ行くの?仕事に決まってるだろう。
どうして!?あなた!ごめん和也…。
和也…。
先生…。
誠に残念ですが死亡を確認致しました。
(梅木の声)12年前私は過ちを犯しました。
償うためにも弁護士として必死に働いてきた。
同じ過ちを繰り返す事ほど愚かな事はない。
そんな事はわかってる。
秋山と理恵に脅された時弁護士を辞めればいいそうも思った。
でも…。
(2人)シュッシュッポッポッシュッシュッポッポッ…。
(梅木和也)シュッシュッポッポッシュッシュッポッポッ…。
(泰代)和也いいねぇ。
わぁ〜!わ〜い!
(和也の声)「おとうさんへおしごとがんばってね」「かずやより」和也のためにも…。
弁護士を辞めるわけには…!梅木さん。
和也君との思い出のあるこの町でもう一度やり直す事は出来るんじゃないんですか?いやぁ川越はいいとこですね。
ああ。
(汽笛)
(汽笛)2014/12/27(土) 12:00〜13:55
ABCテレビ1
西村京太郎トラベルミステリー 秩父SL・3月23日の証言[再][字]
秩父SL・3月23日の証言〜大逆転法廷!! 沿線の洗濯物に秘密が!十津川警部VS黒い帽子の女!
詳細情報
◇番組内容
超ロングラン人気シリーズ第60作!!誤認逮捕だったのか!?被疑者に、SLに乗車していたアリバイが浮上!さらに不可解な連続殺人も発生!十津川は自ら証言台に立つが…!?
◇出演者
高橋英樹、高田純次、蟹江敬三、窪塚俊介、小沢真珠、秋本祐希、森本レオ、宇梶剛士、山村紅葉、伴杏里
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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