企業の新規上場が急増している。現在、アベノミクス効果による株価上昇には一服感がみられるものの、新規上場企業数はここ数年増加を続けており、2014年には新規株式公開(IPO)での公募と売り出しの合計額が約9800億円と前年比約9割の増加となった。この流れは今後も続くものと予想されており、ますます目が離せなくなりそうだ。2015年に上場が予想される企業について取り上げた。
まず企業にとっての上場メリットを改めて整理してみよう。
①資金調達の円滑化
上場する企業にとっての最大のメリットは、上場で株式発行による資金調達が可能になることだろう。銀行借入や社債発行とは異なり、返済不要であるため、うまく活用すれば資金繰りに余裕が生まれる。
②企業の信用力向上
「上場企業」の冠が付くことで、会社の知名度・信用力の向上につながることも見込まれる。
③社内体制の改革
上場の際に、監査実施を含めた企業情報の開示が必要となり、第三者の意見を反映した経営が求められるため、組織的な企業運営・内部管理体制の充実につながることも見逃せない。さらに上場企業として社会的な責任が求められることから、役員・社員のモチベーションが向上することも期待できるだろう。
特に新興企業にとっては①、②のメリットが大きい一方、従来グループ経営を行ってきた老舗企業が③の効果による社内改革を狙って上場に取り組むケースも見られる。
近年、M&Aなど株価の上昇を背景に上場による資金調達を目的とした、IPOが活発化しており、この傾向は2015年も続くと考えられている。2015年に上場が見込まれる注目企業について見ていこう。すでに発表された大型案件に加え、IT関連企業を中心として多くの企業の上場が予想されている。
1.日本郵政
子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命などを有する日本郵政は、これらの子会社と同時に秋口の上場を目指している。これは2015年の最大の上場案件となる見通しだ。本上場により日本郵政の時価総額は8兆円規模に達するとの見込みもあり、メガバンクで最大の時価総額約9兆円を誇る三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> には及ばないものの、三井住友フィナンシャルグループ <8316> の約6兆円を大きく上回る。今後、民営化が進み住宅ローンなどの貸出分野で新規業務を開始すれば、地銀などの大きな脅威となると考えられる。
2.東京地下鉄
東京メトロで知られる都内の鉄道運営業者、東京地下鉄も中期経営計画「東京メトロプラン2015」で将来の完全民営化を見据え、できる限り早期の株式上場を目指すとしており、グループを挙げて準備を進めている。上場の具体的な時期は未定であるが、2015年目が離せない企業であることは間違いない。
3.ヨドバシカメラ
近年、統合が相次ぐ電気量販店では、ヨドバシカメラの上場がささやかれている。昨年からネット通販で、有機野菜の販売を開始するなど新業態の拡充に投資を進めており、上場により資金調達の円滑化を図る可能性がある。
4.ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)