(ドアの開く音)こういうところは初めてか?
(甲斐享)まあ…。
だろうな。
初めての奴らはすぐにわかるよ。
で?
(杉下右京)はい?あんたら一体何やらかしたんだ?まあなんでもいいじゃないですか。
(ドアの閉まる音)この店にはよく来るんですか?ええ。
安くてうまいんで。
はい。
はい。
その卵焼きも美味しそうですねぇ。
俺ここの卵焼き大好きなんですよ。
あっこの肉じゃがもうまいですよ。
結構ですねぇ。
よかったらシェアしませんか?いいですねぇ。
では適当に食べたところで。
はい。
ちょっ…ちょっとお客さん!お客さん!お勘定頂かないと。
困りますよ。
どうしました?
(滝沢勝二)金なんかねえよ。
文句あるんなら警察でもなんでも呼べよ。
(店主)おい!警察に電話しろ!あいよ!それには及びませんよ。
警察でーす。
(警察官)こいつね毎年年末になると無銭飲食とか微罪を犯してわざと勾留されに来るんですよ。
食うには困らないし寒さもしのげる。
まあ多いみたいですね。
留置場や拘置所で年越そうって人。
(滝沢)うるせえなあ。
(携帯電話)今調書取るからちょっと待ってろ!失礼。
(携帯電話)はい。
ええ。
わかりました。
定食屋のご主人後味悪いので被害届は出さないそうです。
(滝沢)えっ?残念だったな滝沢。
もう帰っていいぞ。
おいそんな事言わねえで泊めてくれよ。
ここんところろくに仕事してねえんだ。
安宿泊まる金もねえんだよ。
ダメだダメだ!帰った帰った!いいのかよ?犯罪者を野放しにして。
何するかわかんねえぞ!ハハハ…。
大それた事が出来る奴じゃないよお前は。
なんだと?俺はな昔人を殺した事があるんだぞ。
5年前の今頃…。
(警察官)なんだって?なんでもねえよ。
あの…ちょっといいっすか?なんだよ?今人を殺したとおっしゃいましたね。
なぜあのような事を?それは…そうでも言わなきゃ泊めてくれねえと思ったんだよ。
外で寝なきゃならねえ人間の気持ちはあんたたち公務員にはわからねえだろうな。
それにしても5年前の今頃と随分具体的でしたね。
別に適当に言っただけだよ。
ではなぜ途中でやめたのでしょう?いけませんか?いけなくはありませんが人を殺したとなると警察も取り調べないわけにはいけません。
取り調べ中は勾留されますよ。
勾留されたいというあなたの願いがかなうじゃありませんか。
そんな事どうでもいいだろ!俺の事はほっといてくれ。
君ほっとけますか?うーん…ほっとけませんね。
またあんたたちかよ?すみませんねぇ。
どうにもあなたの事が気にかかりましてね。
何がだよ?昨日あなたは食堂でテーブルいっぱいに料理を頼んでおきながらほとんど食べていませんでした。
それに顔色もよろしくなかった。
もしかしたらあなたが最近仕事が出来なかったのも体の具合が悪いせいではないかと思いましてね。
だとしたらこのようなところで暮らすのはましてや冬になったら厳しいでしょうねぇ。
それであなたは拘留されたくて必死だった。
それでつい真実を口走ってしまったと。
まあそんな事もあるかと思いましてね。
俺が本当に人を殺したとでも言うのか?冗談じゃねえ!ところで5年前の今頃起こった殺人事件をピックアップしてみたんですけどこれとか…えーこれとか。
こんな事件も…。
あんたらなんなんだ一体!暇人か?ええまさしく。
いい加減にしてくれ!ではまた来ますね。
失礼します。
どれでした?これでした。
(米沢守)ご依頼の件用意しておきました。
なんかいつもすいませんね。
被害者はこちらの方ですね?
(米沢)ええ。
事件があったのは5年前の10月14日。
目黒区に住む染谷タキさん当時72歳が殺されて現金2万円が奪われました。
死因は扼殺です。
この事件は手がかりが少なく捜査も難航したようですが4日後の18日今度は同じく目黒区に住む山本洋一さん61歳妻房子さん57歳が包丁で刺殺され現金10万円と貴金属などが奪われる事件がありました。
そしてその2日後の10月20日山本さん宅で盗まれた貴金属を質屋で換金しようとしていた岩倉圭一当時50歳が店主の通報により逮捕されました。
その後の取り調べで岩倉は山本さん夫妻の事件と共に染谷タキさんの事件も自供し裁判で死刑が確定しております。
この連続殺人事件なら覚えてます。
僕が交番にいた時中根署管内で起きた事件なので。
おや。
この事件が何か?あっいえ。
解決済みですか…。
ええ。
それにしては気になりますよね滝沢さん。
暇ついでに行ってみますか中根署。
お疲れさまです!どうも。
ういっす。
堀江さん。
(堀江邦之)おおカイト!随分ご無沙汰じゃないか。
うん?なんだお前本部行ってもちっとも貫禄つかんな。
余計なお世話ですよ!ハハハハ…。
堀江さんこそ全然変わんないじゃないですか。
あっおなかのあたりは貫禄ついてたりして…。
うるさいよバカ。
ハハハハ…。
あっどうも。
今日は?突然すみません。
実はこちらの管内で5年前に起きた連続強盗殺人事件の捜査資料を拝見出来ないかと思いまして。
あああの事件の?でもどうして今頃?大した事じゃないんです。
ちょっとした確認です。
ふーん。
本部も色々と大変だな。
沢田土屋ちょっと資料を用意してくれ。
(沢田泰三・土屋公示)はい。
カイトこれで全部だ。
(土屋)終わったら声かけてください。
すいません。
ういっす!山本夫妻の事件については指紋やゲソ痕など決定的な証拠が出ていますねぇ。
岩倉本人も勝手口から上がり込み金品を盗もうとして見つかったために殺したと自供しています。
岩倉の犯行で間違いないようですねぇ。
じゃあやっぱり問題はその4日前に起きた染谷タキさんの事件って事になりますね。
そういう事になりますねぇ。
あれ?何か?染谷さん宅で採取された岩倉の指紋なんですけど採取された日付を見ると事件から7日も経ってるんです。
普通指紋ってすぐに採りますよね。
そうですねぇ。
なるほど。
こちらも1つ気になるものを見つけました。
これです。
山本夫妻の事件の被害届ですか。
ええ。
盗品にあった輸入ブランドの靴下が二重線で消されています。
なぜでしょう?間違いだったとか?ところで堀江さんは君を刑事に引き上げてくれた方でしたね。
ああはい。
堀江さんは僕にとっては恩人みたいな人です。
それが何か?当時岩倉を取り調べたのはその堀江さんだったようですよ。
えっ?あ…本当だ。
ああ指紋。
これは鑑識の努力ですよ。
いや岩倉が逮捕されたあともう一度被害者宅で追加の鑑識作業をしてくれてそれで運よく見つかったんですよ。
ではこちらはいかがでしょう?被害届の中のこの輸入ブランドの靴下が二重線で消されているのですが。
確かに…。
それは単純に遺族の勘違いだったんです。
勘違いといいますと?ですから盗まれていたと思ったのが盗まれてなかったと。
なるほど。
係長そろそろ。
ああ…すいません。
これから会議なもんで。
お忙しいところを…。
カイト今度ゆっくりな。
堀江さん下戸じゃないですか。
俺はウーロン茶でも酔えるんだよ!すいませんゆっくりお構い出来なくて。
いや〜5年間空き家なので。
靴のままどうぞ。
ああ…失礼します。
今窓開けますから。
はい〜。
(ノック)染谷タキさんが殺されたのがこのあたり。
で指紋が採取されたのがここ。
ここにタンスがあった。
つまりここは塞がれていたわけですね。
ええ。
確かにここなら最初の指紋採取で見つからなかったかもしれませんね。
しかし逆に考えれば犯人はなぜこんなところを触ったのでしょう?あ…。
被害者は首を絞められて殺されていましたが首には手袋痕が残っていました。
手袋をしていた犯人がわざわざ手袋を取ってこんなところを触るでしょうかねぇ?しかも岩倉の指紋がここから採取されたのは事件の7日後。
岩倉が山本さん夫妻の事件で逮捕されたあとです。
まさか…。
ええ。
まさかかもしれませんね。
またあんたたちか。
もういい加減にしてくれ。
実は例の事件なんですがね調べ直してみたところ捜査にいくつかの重大な疑問点が見つかりました。
ええ?となるとやはりあなたが告白しかかった事が真実である。
つまりあなたが真犯人である可能性もあると思いましてね。
そんなわけねえだろ!じゃあなんで岩倉って奴が犯行を認めたんだ?おや?僕は例の事件としか言っていませんがどの事件かおわかりのようですね。
あなたについても調べました。
ここ数年あなたは何度も喧嘩で検挙されてますよね?でもそれが始まったのって3年前。
つまり岩倉の死刑が確定してからなんですよ。
もしかしてあなたは他人になすりつけてしまった罪をずーっと気にしてたんじゃないですか?だから自暴自棄になって…。
そんなんじゃねえよ!!現場から誰のものかわからない毛髪が見つかりました。
毛髪?どうでしょう?その毛髪があなたのものかどうかDNA鑑定をしてみるというのは。
そうすればすぐに疑いは晴れると思いますよ。
帰れ!!もう帰ってくれ!帰ってくれって言ってるだろ!
(自転車が倒れる音)滝沢さん!滝沢さん!大丈夫ですか?
(看護師)手短にお願いしますね。
おう…。
久しぶりに布団の上で寝たよ。
礼を言わなきゃな。
まあどっちみちがんが全身に回っててもう長くはねえらしいがよ。
はあ…。
あん時さあ…。
はい?俺は仕事にあぶれてて丸2日ほとんどなんにも食ってなかったんだ。
そしたら…。
(染谷タキ)泥棒!!
(タキ)あーっ!夢に出てくるんだ。
あのばあさんの顔が…。
はあ…。
地図まだかよ?急げ!はい!
(伊丹憲一)芹沢お前に電話だ。
(芹沢慶二)俺に?うん。
杉下警部じゃないですか!邪魔が入らないように。
くれぐれも内密に迅速に。
ではよろしくお願いします。
どうしました?いや…。
あの状態で滝沢が嘘をついてるとは思えませんよね。
だとすると死刑囚岩倉はなぜやってもいない罪を認めたのか?認めざるを得なかった。
じゃあ…そんなまさか…。
岩倉の弁護士に会ってみましょう。
目黒で起きた連続強盗殺人の1つだそうです。
真犯人を名乗る男が病院にいるから調書取りに来てくれって。
ひょっとしたらひょっとして冤罪事件かもしれないっすよ。
行きましょう先輩。
なんで俺たちが特命係の使いっぱしりしなきゃいけねえんだよ。
誰が行くか!…ですよね。
(中園照生)今冤罪がどうとか言ったな。
詳しく聞かせてもらおうか。
じゃあ最終的には岩倉が自分から罪を認めたって事ですか?
(大久保弘明)ええ。
染谷さん殺害に関しては最初は否認していたんです。
ところが…。
(岩倉圭一)あれ本当は両方とも俺がやったんだ。
(大久保)えっ?どうしたんです?急に。
(大久保の声)それからは何を聞いても自分がやったの一点張りで控訴も本人の意思で断念したんです。
こんなところでよろしいでしょうか?最後にもう一つだけ。
山本さん夫妻の事件で被害届に書かれていた輸入ブランドの靴下が捜査の途中で削除されているのですがそれについて何か心当たりはありませんか?確かレシートが残ってたんで息子さん夫婦が一応被害届に書いたそうですが結局盗まれたものじゃなかったんでしょう。
それが何か?いえ。
お忙しいところありがとうございました。
どうも。
どういう事でしょう?滝沢と岩倉1つの事件に2人の人間が自分がやったと主張している。
もともと2人には接点があって岩倉が滝沢をかばっているとか。
いやそれはないでしょう。
もし2人に接点があるのであれば滝沢がそう言ったはずです。
気になるのは犯行を否認していた岩倉がなぜ急に罪を認めたのか?なんで急に認めたんでしょう?
(角田六郎)暇か?コーヒーもらうよ。
考えられるのは取引です。
取引?取引?もしかして司法取引の話か?それなら俺ちょっと詳しいよ。
聞くか?じゃあ教えてやる。
罪を軽くしてやる事を条件に被疑者に捜査に協力させて情報を引き出したりするのが司法取引だ。
日本でもそれがやれたらうちが犯罪組織を一網打尽に出来るんだけどね。
取り調べの全面可視化と共に昨今導入が議論されていますからねぇ。
組対五課の課長ともなれば無関心ではいられないでしょうね。
そういう事。
じゃあ杉下さんは岩倉と警察の間に取引があったって言うんですか?でも司法取引って刑を軽くするからこそ罪を認めたり情報を流したりするわけですよね?でも岩倉は死刑ですよ。
死刑?ええ。
しかし刑を軽くするだけが被疑者の希望ではありません。
そこで気になるのが例の靴下です。
あれが勘違いなどではなく岩倉によって盗まれたものであり意図的に被害届から削除されたとしたらどうでしょう?被害届から靴下を削除する事がやってもいない罪を認める条件だった…。
でもまたなんでそんな条件を?それはまだわかりませんがね。
ただ…。
靴下?一体なんの話してんだよ?あの靴下には括弧して「6M」と書かれていました。
どうもあれが気になるんですよ。
6M?なんだ?6Mは靴下のサイズです。
LLとか3Lってのは聞いた事あるけど6Mなんてサイズ聞いた事ねえぞ。
Mは「month」つまり月を意味します。
あっ!えっ?確か岩倉には2年前に亡くなった奥さんとの間に娘さんがいましたね。
何かわかるかもしれません。
あっ課長司法取引に関しましては後日また時間のある時に。
いってきます。
「また」ってお前そんな暇じゃねえよ。
(北村久美子)警察が今さらなんの用?実はあなたのお父さんが罪に問われた2つの事件のうち1つについて真犯人を名乗る人物が現れたんです。
もしそれが事実ならお父さんはやってもいない罪を認めた事になります。
何か心当たりはありませんか?そうだとしたらあの人死刑じゃなくなるの?あ…それは…。
だったらどうでもいいんじゃない?あの人の事はずっと隠して生きてるの。
今さら蒸し返されると正直迷惑なんだけど。
葵!何グズグズしてんの?それ持ってって。
早く!失礼ですがお子さんはおいくつですか?5歳だけど。
あのもういいかな?これからあの子を預けて仕事に行かないといけないんで。
最後にもう一つだけ。
5年ほど前なんですがねお父さんから何かプレゼントのようなものはもらっていませんか?あの人からプレゼント?物心ついた頃から刑務所出たり入ったりしてたのよ?親らしい事なんて何一つしてもらった事ない。
例えば輸入ブランドの靴下サイズは6M。
つまり生後6か月の赤ちゃん用の靴下なんですが…。
えっ?もらってましたか?その…その靴下どうされました?そんな事覚えてるわけないでしょ。
あんな事件起こしてたってわかって私やお母さんがどんだけ大変だったか…。
世間からさんざん叩かれてお母さん体壊して一昨年死んだ。
私はあの子の父親に逃げられた!あの人の事はもう忘れたいの。
これ山本夫妻の息子さん夫婦から借りてきました。
この中に大切に靴下のレシートが保管されていました。
購入日は殺害当日。
靴下はベビー用でした。
つまり山本夫妻は半年前に生まれた孫のためにブランドものの靴下を購入していたんです。
一方岩倉は犯行後それと思われるベビー用の靴下を娘の出産祝いに贈っています。
つまりこの靴下はやはり岩倉が盗んだものだった。
それがなぜ被害届から削除されているんでしょうか?それは…。
そんな事がなんだっていうんだ?被害届から靴下を削除してくれたら染谷さん殺害を認めてもいい。
岩倉からそう取引を持ちかけられたのではありませんか?取引なんてそんな…。
大体たかが靴下1足で殺人を認める人間がどこにいるんですか?普通ならばそんな事はあり得ません。
しかし岩倉は傷害はじめいくつもの前科がある上に山本夫妻を殺害しています。
染谷さんの事件を認めようが認めまいが死刑になる事は避けられない状況だった。
となれば話は違います。
岩倉の願いは娘に贈った出産祝いの靴下が殺人を犯した時に盗んだものだと知られないようにする事だった。
しかし裁判になれば全てが明らかになってしまいますからね。
それだけはどうしても避けたかった。
そう考えれば岩倉がそんな取引を持ちかけたとしてもなんの不思議もありません。
そこのところいかがでしょう?こんなレシート取引があった証拠になどならない。
真犯人を名乗る人物が現れたんです。
その男が喋れば全てわかります。
堀江さん本当の事を言ってください。
知らない…。
知らないって言ってるだろ!忙しいんで失礼する。
堀江さん!
(芹沢)ええ滝沢はまだ目を覚ましてません。
それと…ちょっとまずい事になりました。
内村刑事部長にこの事知られちゃいました。
そうですかわかりました。
どうもありがとう。
どこへ行くんですか?もう一度堀江さんに会ってきます。
どうしても信じられないんです。
堀江さんがそんな事したなんて…。
先ほどの堀江さんの様子を見れば真相は明らかじゃありませんか。
それはわかってます。
カイトくん内村刑事部長に滝沢の居場所を知られてしまいました。
となれば何か手を打ってくるはず。
急いだほうがよさそうですね。
えっ?警察の方ですよね?はい。
滝沢さんの意識が回復しました。
先輩…。
それでどうしても警察の方に話がしたいと言ってます。
ただまだ危険な状態に変わりはないんであまり長い時間は困りますけど。
わかりました。
よーし行こう。
(沢田)失礼しますよ。
なんだ?あんた。
中根署ですよ。
調書なら本人が回復次第我々が取ります。
お引き取りを。
なんだって?
(土屋)出ろ。
はいもしもし?何もするなと言ったはずだ。
そっちは中根署に任せて戻ってこい。
これは命令だ。
いいな!
(土屋)って事だ。
中園参事官です。
すぐに戻れって。
(芹沢)どうも。
(伊丹)どうも。
どうも。
滝沢が意識を回復しましてで本人は話がしたいと言ってるんですがね。
そうですか。
ご無理を言いましたね。
あとは我々が…。
別に警部殿に頼まれたから来たわけじゃありません。
お願いします。
こちらへどうぞ。
(土屋)カイト何しにきた?
(沢田)調書なら我々が取ります。
ご心配なく。
滝沢に会わせてもらいます。
困るんだよ。
彼は我々と話がしたいと言っています。
(沢田)特命係に捜査権はないと聞きましたが。
何企んでるんですか?カイトくん。
はい。
扉開けてもらえますか?はい。
待てよカイト。
イテッ!アイタタタタ…。
おい大丈夫か?公務執行妨害の現行犯で逮捕する。
はあ?あなたにも来てもらいますよ。
(土屋)ひどいなぁ…。
すいません俺のせいで。
いいえ。
これでかえって取引があった事がわかりました。
しかしこのままだと…。
ええ中根署は自分たちに都合のいいように調書を取る可能性がありますね。
クソッ!いつまでこんなとこに…。
お前ら警察か?警察だろ!なんだと!?警察がなんでこんなとこにいるんだ!おい!
(大河内春樹)出てください。
(開錠音)
(甲斐峯秋)本当なのかね?岩倉という死刑囚が取引でやってもいない罪を被ったというのは。
本当です。
(大河内)そう言うからには何か証拠が見つかったんですか?滝沢という真犯人を名乗る男が現れました。
その男が犯人しか知り得ない事実を喋れば再捜査の対象となります。
そうなればいずれ岩倉が書類の改ざんを条件にやってもいない罪を認めた事が明らかになるでしょう。
しかしその事件で冤罪が晴れたとしても岩倉の死刑は変わりません。
だからといって冤罪を見過ごすわけにはいきません。
(甲斐)確かにそのとおり。
冤罪の隠蔽など正義に反する。
ただし全てはその滝沢という男が話せばの話だが…。
死んだよ。
さっき連絡があった。
調書を取る前に病院で息を引き取ったそうだ。
残念だったね。
唯一の根拠だったんだろ。
なるほどそういう事ですか。
じゃあ中根署を動かしたのは…。
お話はそれだけでしょうか?では失礼します。
どうするつもりだね?まだ方法はあります。
(甲斐)お前はどう思うんだ?その岩倉という男を取り調べた刑事はお前の元上司だった男じゃないのかね?何か飲むか?結構です。
そうか。
残念だったな。
お前に言われて気になって部下行かせたんだが調書取れなかった。
取らせなかったんじゃないんですか?何を言ってる?堀江さん…。
俺には本当の事を言ってください。
理由があるんですよね?堀江さんがなんの理由もないのに違法な取り調べなんてするはずない。
何があったんですか?堀江さん!
(岩倉)俺がやった。
あのばあさん俺が殺した。
認めるのか?本当にお前がやったのか?ああ。
だけど認める代わりに一つだけ頼み聞いてくれ。
頼み?それ聞いてくれたら全部認める。
なんでも協力する。
だから刑事さん頼み聞いてくれ。
お願いだ。
お願いです。
本人が自分が真犯人だって言うんだぞ。
誰が嘘だと思う?それで認めるなら被害届から靴下を削除するぐらいどうって事ないと思うじゃないか。
証拠の指紋だってあいつのほうから協力したいって言ってきたんだ。
だから…。
(ため息)認めるんですね?取引があった事証拠をねつ造した事…。
だからなんだ?告発するのか?そんな事してなんになる?岩倉はどっちみち死刑だ。
滝沢はもう死んだんだ。
何も変わらないじゃないか。
見逃してくれよ。
もう上が動いてるんだ。
俺や関わったうちの連中が責任を取れば済む問題じゃなくなってるんだよ。
頼むカイト。
この歳で警察を追い出されたら一家路頭に迷っちまうんだよ。
頼む!
(月本幸子)いらっしゃいませ。
ビールでよろしいですか?あっ…はい。
認めましたか?堀江係長に会ってきたのではありませんか?あっ…ビール切らしちゃった。
ちょっと裏からビール取ってきますね。
(ドアの開閉音)明日岩倉の娘さんにもう一度会いにいくつもりです。
そこで全てを話します。
岩倉がなぜ罪を認めているのかも。
そんな事したら娘さんが…。
なんでしょう?傷つきます。
だからこそ岩倉はやってもいない罪を被ってまで靴下が盗難品である事を隠そうとしたんじゃないんですか?君は何が言いたいのですか?岩倉はどっちみち死刑です。
真実を明らかにしても何も変わらないし誰も幸せにならない。
でも不幸になる人はいるんです。
では君は真実を葬れというんですか?堀江さんに取引を持ちかけたのは岩倉のほうです。
岩倉が自供したんです。
堀江さんはそれに応じただけです。
それは罪ですか?禁じられた取引をして証拠をねつ造しました。
だからそれは…。
どんな事情があれ我々警察官は真実から目を背けてはならない。
僕はそう思いますよ。
そうなんだ…。
(久美子)あれ人を殺した時に盗んだものだったんだ。
持ってたんですね。
あの人が唯一親らしい事したのがこれだったのよ。
じゃあな。
(久美子の声)嬉しかったのに…。
なのになんなの…。
人を殺して盗んだものだったなんて…。
ふざけんな…。
ふざけんじゃないわよ…!その靴下がお父さんがやってもいない罪を認めている理由です。
しかしそれは正しい事ではありません。
今お父さんにそれを言ってあげられるのはあなたしかいません。
そんな事知らない!こんな話聞きたくなかった!今さらなんなのよ!帰ってよ…帰ってよ!
(泣き声)杉下さん。
(ため息)もうこれ以上…。
これ以上なんでしょう?だから…。
杉下さんは正しいかもしれない。
だけど…。
正しければそれでいいんですか?話はそれだけですか?杉下さん!まだ出来る事があります。
入院中に採取された血液が保存されていました。
(中園)なんなんだこれは…。
なんでこんな事になってるんだ!娘にやってもいない罪を認めてほしくないってそう言われて書いたそうです。
だからなんで娘がそんな話をするんだと聞いてるんだ!特命係じゃないですかね…多分。
何!?
(内村完爾)この度は警察庁次長自ら奔走して頂き感謝します。
ただ…。
これかね?はあ…。
心配はいりません。
まあ座って。
なんの証拠もない以上こんなもの死刑囚のたわごとに過ぎませんよ。
それとね念のために言っておきますが私にとっては冤罪の隠蔽などどうでもいいんです。
はあ?では…。
困るのは「取引」という言葉ですよ。
言葉というものは一人歩きを始めるんでね。
なんの事でしょう?
(ノック)はい。
失礼致します。
岩倉の弁護士が再審請求に向けて記者会見を開くそうです。
記者会見?
(大久保)染谷タキさん殺害に関して真犯人を名乗る人物が現れました。
「残念ながらその人物は先日病死しましたが入院の際に採血された血液が病院に保存されていました」「この血液と犯行現場に残されていた毛髪をDNA鑑定するよう再審では裁判所に請求する予定です」「この2つが一致すれば…」杉下…。
「染谷さんを殺害したのは岩倉氏ではないという証拠になります」すいません。
その事件の真相がわかっても岩倉死刑囚の死刑は変わらないのでは?あ…甲斐です。
今のうちに岩倉の件に関わった刑事たちに退職してもらったほうがいいでしょう。
それとくれぐれも取引の事を口外しないようにどこかいい就職先を世話してやってください。
よろしく頼みますよ。
堀江さん…辞めるんですか?ああ。
再就職先を紹介すると言ってくれたがこれだけ迷惑をかけて受けるわけにもな。
心配するな。
田舎に帰れば畑があるんだ。
なんとか暮らしていけるさ。
おいそんな顔するな。
今となっちゃお前と杉下警部には感謝してるんだ。
真犯人を名乗る男が現れたと聞いて初めて自分が犯した間違いに気づいて生きた心地がしなかった。
でもやっと心の重しが取れたよ。
でも…。
堀江さんだけが…。
全部自分がまいた種だ。
責任は俺一人で取る。
頑張ってきたのになぁ…。
本当…本当…頑張った。
お話とはなんでしょうか?うん…。
法制審議会が取り調べの全面可視化を検討しているのは知っているね?その見返りに我が警察が何を求めているのかも…。
司法取引の合法化でしょうか?そのとおり。
そのとおりだ。
まあこっち来て座りたまえ。
さあ…。
この国も年々組織犯罪が巧妙化している。
いくら末端の人間を逮捕してもトカゲの尻尾切りで組織の全貌をつかむのは至難の業だ。
だから被疑者に餌を与えて情報を引き出す事が出来る司法取引は我々警察にとっては強力な武器となりうる。
司法取引はかねてから被疑者が刑の軽減を願うあまり虚偽の情報を流す可能性があり冤罪を作りかねないと指摘されています。
そこに改めて議論の矛先が向きひいては合法化の道が遠くなります。
そこまでわかっていながらなぜ君は…。
岩倉はあの事件では無実です。
どんな理由があれやってもいない罪で裁かれていいはずがありません。
それが法です。
では聞こう。
法はなんのためにある?人々の生命財産を守るためではないのかね?今の法が守られないのであればたとえ新しい法を作ったところで同じ運命をたどるのではありませんかねぇ。
まったく君って男は…面白い男だね。
昨日もう一度この子連れて父に会いにいってきたの。
あ…そうですか。
不思議ね。
もう二度と顔なんか見たくないと思ってたのに…。
父さんな本当の事を言えて…よかった。
本当に…よかったよ。
だからあなたたちにお礼を言わなきゃと思ったの。
えっ?本当にありがとうございました。
ん?
(北村葵)ママが笑った。
ん?なーによ?何?教えて。
ママに教えて。
いらっしゃいませ。
どうぞ。
どうかしましたか?ビールください。
はい。
あの…。
はい?いや…いいです。
2014/12/28(日) 12:00〜12:55
ABCテレビ1
相棒 season13[再][字]
第5話「最期の告白」
右京と享が留置場に入れられる!
お決まりのサスペンダーも取られて勾留。
右京たちが追っていた事件は、やがて警察組織を揺るがすことに…
詳細情報
◇番組内容
右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は無銭飲食でわざと捕まろうとしている男と知り合う。体調も思わしくない様子の彼は「5年前に人を殺した」と口走る。そのただならぬ様子に引っ掛かりを覚えた右京たちが、当時の事件を調べると、とある連続強盗殺人が浮かび上がってくる。が、既に解決済みの事件だった…。しかし、冤罪の可能性を感じた右京たちは、捜査を担当した所轄へ!そこは享がかつていた中根署。事態は思わぬ展開に…!
◇出演者
水谷豊、成宮寛貴、鈴木杏樹、神保悟志、石坂浩二
川原和久、山中崇史、六角精児、山西惇、小野了、片桐竜次
【ゲスト】山口良一、ダンカン、佐藤正宏、佐藤めぐみ
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
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