(相良浩介)超音波メスください。
はい。
ここは肝動脈に接している部分ですから慎重に腫瘍を剥離しなければなりません。
でもあまり時間はかけられない。
慎重にでも素早く。
ん?肝門部で門脈に浸潤してますかね。
えっ?
(高泉)CTでは問題なかったのに。
出血もちょっと多いですね。
(高泉)ガーゼ。
(看護師)はい。
血圧下がってきました。
相良先生…。
(心電図モニターの音)相良先生!大丈夫オペにアクシデントはつきものです。
プラン変更しましょう。
患者さんの体力を考えて今日は門脈に接した部分にラジオ波凝固を行います。
術後に内科的治療を追加しましょう。
ただいまジャパーン!
(桃井正一)堂上総合病院の評判は右肩上がりです。
患者さんも手術の数も増えてきました。
もっと言って〜。
この半年ずーっと黒字が続いてます。
黒字…。
(桃井)黒字です!ああ〜幸せ。
ただ…開業医の先生からの紹介患者さんの数がなぜか先月の半分に。
半分?なぜ?どういう事?これ。
実は妙な噂を耳にしまして。
噂?うちには患者を紹介するなというなんというんですか?圧力…。
圧力!?評判の上がってきた堂上総合病院をねたむ奴がいても不思議じゃありません。
誰よ?そんな圧力かけられるのは相当な人物よ。
これは私の推理ですが…。
何?堂上総合病院の最大の弱点は森山先生です。
前からもそうでしたが今はさらに図に乗っておられます。
事務長…私の甥っ子の事そんなふうに言わないで…。
森山先生にむかついてる人は1人もいないと?山ほどいるわ…。
その中で一番力のある人は誰でしょう?力…?まさか…。
西都大学の…仙石教授!ピンポン!そ…そんなバカな!だって卓ちゃんが仙石会をやめたのはもう1年も前の話よ。
なんだって今頃になって仙石教授がこんな嫌がらせすんのよ!そりゃそうですが…。
何が「ピンポン!」ですか!ああ…申し訳ありません。
ブー!調子に乗りました。
もう…。
アイムホーム!インチョーアンドジムチョー!へへへヘ…。
あっあの…どちら様で?ハッ!僕だよ伯母さん。
あっ…やだもう森山先生!アメリカ人が入ってきたかと思いました!3か月の間にすっかりアメリカナイズされちゃったかな。
(3人の笑い声)でどうだったの?テキサス医科大学は。
ああ…腹腔鏡手術に関してはやっぱり進んでるね向こうは。
そう…。
たくさん勉強させて頂きました。
「頂きました」?アイムホーム!フロムテキサス!
(佐々井圭)あら!おお!
(段原保)森山先生!おかえりなさい!元気だったか?エブリバディ。
(皆川和枝)元気ですよねぇ。
森山先生もお元気そうで。
本当は戻ってきてほしくなかったんだろ?相良先生。
フフ…腹腔鏡手術はマスターされましたか?テキサス医科大学のマクドナルド教授が僕のために患者をコーディネートしてくれててね。
進行した消化器がんの腹腔鏡手術を3か月で152件やったよ!
(一同)ええ!?152件!?すごいですね。
もう完全にものにしたよ。
すごい!たった3か月で…?日本でその種のオペが出来るドクターは何人もいませんよ。
森山先生オーラが見えます。
ハハハ…ごめんねまぶしくて。
これが僕が向こうでやったオペの記録ですよ相良先生。
いいんですか?見せてもらって。
どうぞどうぞ!嫉妬に悶えるなよ。
ハハハ…。
森山先生。
いえいえ素晴らしい事ですよ。
これで堂上総合病院が戦力アップするんですから。
フフフフ…。
オー!みんなにお土産があるんだよ。
お土産ですか?絵葉書。
(高泉)オー…嬉しいな…。
ありがとうございます。
おおテキサス…。
いいとこだぞー。
あれ?足りなかったな…。
ごめんね皆川先生。
ソーリードクター相良。
「タララッパッパーララッパッパーラ」「ラッパッパッパッパ」みんなの分の絵葉書買ったと思ったんだけどな。
なんて大人げない…。
(相原亜美)吉川さん聞きました?帰ってきちゃったんでしょ森山先生が。
穏やかな日々ってあっという間に過ぎるんですね。
(田村戸紀子)愚痴はあと。
大宮さんの入院準備して吉川さん。
相原さんは記録終わったの?すみません!
(ため息)もう3か月経っちゃったのね。
(宮部佐知)救急薬品はここ。
シリンジはここね。
(藤波あかね)はーい!じゃあ行きましょうか。
はーい!患者さんと接する時は言葉遣いに気をつけて。
…はい。
あっそれから患者さんにはいつも笑顔で。
忘れちゃダメよ。
わかりました!はい。
宮部さん。
はい。
202号室の桜井さん診察しますよ。
わかりました。
「患者さんにはいつも笑顔で」か。
君がそんな事を言うようになったとはね。
それはどういう意味ですか?褒めてるんですよ僕は。
絶対からかってる。
ご自分で何か気になる事ってありますか?
(桜井稔)いや特には…。
採血の結果も問題なかったようですね。
ああそう?じゃあ大丈夫だ。
予定どおり退院出来ますよ桜井さん。
ありがとうございます。
やっと仕事に戻れる…。
でもあんまり無理なさらないでくださいね。
弁護士の仕事は大変でしょうけど。
はい。
健康が何より大事です。
そう。
お大事になさってくださいね。
ありがとうございます。
よかったですね桜井さん。
宮部さん…。
はい。
退院したらお食事にでもいかがですか?え…?宮部さんにはお世話になったしお礼もしたいので。
フフ…そんなお気遣いは結構ですよ。
それじゃ。
(東幸之助)雪村絵里子さんです。
(仙石大吾)ご気分はいかがですか?えー…雪村絵里子さん。
(雪村絵里子)ああ…吐き気がひどくて…。
(仙石)それはお薬の副作用でしょう。
ジアプラテン50ミリか。
ふーん…。
(小田村聡)2週間前から投与しています。
仙石先生…右の脇腹も痛いんです。
いやそれは仕方ないんですよ。
でも…夫が調べてくれました。
トラマドール系の薬がこの痛みに効果があるって。
雪村さん…。
(萩原伊知郎)治療方針は仙石教授がお決めになられます。
(城山一太)素人判断は治療の妨げになりますよ雪村さん。
ああ…すみません…。
お大事に。
(仙石)胃がんが肝臓に転移してちゃもう終わりだな…。
もう少し抗がん剤治療を試みてみては?そんなの仙石教授のご研究とは関係ないだろ。
そうですね…。
あの患者にはもう興味はない。
それよりあっちはどうなった?堂上総合病院ですね。
しっかり圧力かけてます。
(桃井)うーん…。
(城山)もう効果は出ているでしょう。
どんどん締め付けてやんなさい。
町医者のくせに生体肝移植なんかやりやがって。
調子に乗るなよ!じゃあももちゃんお大事にね。
先生ありがとう。
(母親)ありがとうございました。
いえいえ。
気をつけて。
(雪村謙一)西都大学病院ではもう治る見込みはないと…。
妻の余命は半年だって仙石先生が…。
仙石教授…。
でも僕は妻を死なせたくないんです!もうダメよ。
どこの病院でも無理だって…。
お前が諦めてどうするんだ?遼はまだ8歳なんだぞ。
あの子のためにも生きるんだよ。
奥さんの胃がんは肝臓に転移しています。
もしかしたらこの画像に写っていない転移もあるかもしれませんね。
これ…全てのがんを手術で取り除くっていうのは…無理でしょう。
ただ僕は余命半年だとは思っていません。
えっ?外科的治療と内科的治療を組み合わせて治療すればがんを根治出来る可能性はありますよ。
本当ですか?ええ。
でもこれは確立された治療法ではありませんから私たちは手探りで進めていく事になります。
そこで何より大事なのは患者さんとご家族の病気と闘うんだという強い意志です。
お任せします先生!妻を助けてください。
(雪村)頑張ろう絵里子。
頑張ろう!治療に耐えられるでしょうか?雪村さん。
簡単に希望を持てと言われても難しいですよ。
医者の心ない言葉で深い傷を負ってるんですから。
(ため息)皆川先生…。
雪村さんが仙石教授の患者さんだったっていう事はみんなには黙っておきましょう。
え?特に森山先生には。
これが雪村絵里子さんの腹部CT画像です。
がんの原発巣は…ここ。
胃の幽門部か。
はい。
そして明らかな転移巣はここです。
肝臓の左葉外側に3センチ。
肝臓の右葉にもありますね小さいのが。
こりゃ大変だな。
皆川先生と相談して決めた治療方針はまず抗がん剤の多剤併用療法で転移巣の中にある小さなものを消失させます。
内科的治療で出来るだけのがんを叩くんです。
そしてそのあとに外科的根治手術を施す。
うまくいくんですか?こんなに進行しちゃってるのに?何もしなければこの患者さんは死を待つだけです。
残りの人生を穏やかに過ごさせてやるのも医療でしょ?ただ雪村さんには8歳の息子さんがいらっしゃるんです。
(和枝)ご主人も諦めたくないと。
でも可能性は限りなく低いよ。
そう。
…ですよね。
だから別の病院でも断られてきたんだろ?そうそう!
(段原)おっしゃるとおり!でも抗がん剤治療がうまくいってオペまで持っていけば森山先生がアメリカでマスターされた腹腔鏡手術が…使えますよ。
何?えっ?まず僕が幽門部にある胃がんを切除します。
そしてそのあとで森山先生にバトンタッチして腹腔鏡で肝腫瘍を切除して頂く…。
相良先生。
どうでしょう?この手順でのオペは。
そういう事なら話は別だ。
やって頂けますか?森山先生。
当然だ!テキサス仕込みの腕を見せてやる!
(和枝)大丈夫なんですか?森山先生に任せて。
まあねあの先生はとてもユニークな方ですけど…。
ユニーク!?人格に問題ありでしょう。
でもDVDを見る限り難易度の高い腹腔鏡手術を完璧にマスターされてますよ。
それにこの病院のためにもやっぱり森山先生にやってもわらなきゃ。
堂上総合病院を理想の病院にしたいから。
はい。
(萩原)選挙戦は仙石教授が断然リードされております。
(仙石)よーしハハ…。
ただ脳外の松田教授が追い上げてきておりまして。
松田?
(萩原)ええでもまあ本人にはその気はなさそうなんですが周りの連中が担ぎ上げてるんです。
ふーん…あいつは何年入局だ?仙石教授より5年下です。
そんな奴に私が負けるわけないだろう。
もちろんですよ!医学部長は仙石教授で決まりですよ。
フフフ…。
頂きます。
ところで教授雪村絵里子という患者の事ですが…。
雪村?先月末に退院させた胃がんの患者です。
ふーん。
それがどうした?今堂上総合病院に入院してるそうで。
堂上?一応お耳に入れておいた方がいいかと。
フフフ…どうせ助からん。
そんなのを引き取るとは奴らも苦しくなってきたな。
仙石教授の圧力が効いて減ってるんだよ患者が。
でも担当は相良だそうで。
ああ?ちょっとちょっとこれ見てくださいよ!ひどい噂が流れてますよ。
(高泉)噂?病院のクチコミサイト。
えっ?「堂上総合病…最悪」?え?
(佐々井)「堂上はやぶ医者ばっか」?やっぱお父さん転院させた方がいいんじゃない?でも今さら…。
この病院あとですごい高い治療費請求してくるんだって。
えー?
(たまき)卓ちゃん!何うろたえてるんだよ伯母さん。
仙石教授だって!え?紹介の患者が減ったのもうちのひどい噂が広がってるのもみんな仙石教授がやらせてるんだってー!はあ…知り合いのクリニックの院長が教えてくれた…。
でも俺が仙石会をやめたのは1年以上も前だぞ。
どうして今さらそんな事を…。
院長!ああ事務長…。
あなたの推理したとおりだったの…。
いや大変です!あの時言う事きいとけばよかった…。
(桃井)いいからこれ見て!え?…えーっ!?
(たまき)「殺人病院」…。
何これ!えっ!?
(桃井)病院の回りにベタベタ貼られてるんです。
えっそれも何?仙石教授が?
(桃井)このままじゃうちは潰れてしまいます。
ああ〜!もうどうしよう…。
(たまき)ああ〜…。
(渋谷翔子)森山先生!エスアイ製薬の渋谷です。
売り込みはあとにしてくれ。
森山先生私は森山先生の味方ですよ。
堂上総合病院の売り上げが落ちたら担当の私も困っちゃうんですから。
どういう意味だ?大変な事になってるんでしょ?仙石教授の嫌がらせで。
理由を知ってるのか?大変お怒りになってるようです仙石教授は。
なんで?自分が見限った患者さんを森山先生と相良先生が治しちゃうかもしれないから。
ええ…?仙石教授か…。
雪村絵里子さんが?仙石教授の患者さんだったんですか?とぼけるな。
知ってたんだろ?相良先生。
いや〜全然。
知ってたんでしょ?皆川先生。
うーん…。
ほらやっぱりそうだ。
知ってて黙ってたの?なんでそんな患者さん引き受けちゃったんですか。
ちょっと待ってください。
何が問題なんですか?その患者が完治しちゃったらどうすんだよ?え?素晴らしいじゃないですか。
仙石教授のメンツを潰す事になるんだぞ。
でも森山先生は仙石会をおやめになったんでしょ?そうですよ。
もう仙石教授にどう思われようと…。
君たちはなんにもわかってない。
あのね西都大学は今ね医学部長選挙を控えていて仙石教授はその最有力候補なのよ。
仙石教授が西都大学病院のトップになっちゃったらうちなんか簡単に潰されちゃいますよ。
ああ〜…。
うちだけじゃないよ…。
俺自身ももうこの世界で生きていけなくなる。
フフッ…そんなまさか。
笑い事じゃない!君のせいだぞ。
あの雪村って患者退院させろ。
退院?今すぐに!患者さんを放り出すんですか?院長。
それは…。
当然だ!それは出来ません。
院長…!私たちドクターは患者さんの命を助ける事が仕事です。
そのとおりです。
…ですよね。
そんなきれい事を…。
でも森山先生おやりになりたいんでしょ?アメリカでマスターしてきたオペを。
絶好のチャンスじゃないですか。
うん…。
みんな見たがってますよ。
森山先生の腕を。
(ため息)なんでよりによって仙石教授の患者なんだよ…!んん…んんん…。
んんん…んんん…。
んん…ん…んんん…。
卓ちゃん卓ちゃん卓ちゃん…。
ね。
いや…俺はやらない。
森山先生…。
そんな患者に関わるのはまっぴらだ!先生の協力が必要なんです!嫌だ嫌だ!
(ため息)
(雪村遼)学校で描いたんだよ。
上手に描けたわね。
つらいの?抗がん剤にはね副作用っていうのがあるんだよ。
でも治るんでしょ?お母さん。
もちろん。
治すんだよな?遼…。
いよいよ退院ですね。
宮部さんお世話になりました。
いえ。
あっ退院されても暴飲暴食はダメですよ。
外食は自然食のお店にします。
そう。
その時は…。
宮部さんを誘いたいな。
ハハハ。
ですからそういうお気遣いは…。
僕は本気ですから。
またあなたと会いたいんです。
え?メールでも電話でもいいのでどうかお返事ください。
僕は待ってますから。
お…お大事になさってください。
こんなチャンスめったにないわよサッちゃん。
弁護士ですよ先輩。
弁護士。
待ってよもう〜。
誠実そうな人じゃない桜井さん。
迷う事なんてないですよ。
もうやめて!この話はあと。
お仕事がありますから。
照れてる!本当は嬉しいのよ。
(遼)じゃあねママ。
いい子にしてるのよ遼ちゃん。
じゃあよろしくお願いします。
はい。
またね遼君。
うん。
(雪村)じゃ行くね。
(遼)バイバイ。
(ため息)いい子ですね遼君。
本当に素敵なご家族でうらやましいです。
あなたはいるの?…え?子供いるの?結婚してるの?あっいえ。
私はまだ…。
じゃあ何がうらやましいのよ!私は…あの子を残して死んじゃうかもしれないのに!す…すみません。
無神経な事言ってしまって。
(荒い息遣い)ごめんなさい。
本当に。
(泣き声)
(翔子)仙石教授の?そう。
なんでもいいんです。
大きな声で言えないような噂を耳にしたら僕に教えてください。
それはつまり…悪い噂?例えば。
仙石教授と戦うおつもりですか?相良先生。
いえいえ。
僕は職場を失いたくないだけです。
もちろん借りは返しますよ渋谷さん。
わかりました。
よろしくお願いします。
こりゃあ驚いたなあ。
森山…。
何しに来たの?森山君。
(城山)ここは西都大学病院だぞ。
お前は出入り禁止じゃなかったっけ?せ…仙石教授…。
はい。
申し訳…ありませんでした。
なんで謝るの?うちの病院に仙石教授の患者がいるのは相良が…あの相良が勝手に引き受けたからなんです。
僕は反対したんです。
本当に…本当なんです!
(小田村)だからなんなんだよ?ですから…ですから…。
もういじめないでください。
お願いします。
お前は仙石会を飛び出していった人間なんだぞ。
その事も申し訳なかったと…。
まさか戻りたいっていうのか?許して頂けるなら…ぜひ!ぜひ?
(外科医たちの笑い声)
(仙石)いやいやいやいや…。
いい事だよいい事だよ。
やっと森山君も人間が出来てきたんだよ。
仙石教授…。
じゃあ土下座してみようか。
…はい?今ここで土下座したら許してやってもいいよ。
土下座?いいですねえ。
(城山)土下座しろよ森山。
ほら早くしろよ。
いや…。
それはちょっと…。
ちょっと?僕は…。
受け付けないっていうか…。
そういうキャラじゃないし。
(萩原)何言ってんだ?お前。
ネットで流されたりしたら困るし。
私の命令が聞けないっていうのか?土下座だけは勘弁してください。
じゃあ許すわけにはいかないな。
シュッ。
土下座?出来るわけないだろ。
俺にはプライドがあるんだ。
(桃井)じゃあ仙石教授にはまだ…。
(たまき)許してもらえなかったの?伯母さんだってさ甥っ子がさ人前で土下座なんて見たくないだろ!何言ってんのよ。
今はこの病院の未来がかかってるのよ!えっ?土下座で済むなら安いもんじゃないの!伯母さん…!今はねプライドなんかどうでもいいでしょ。
仙石教授に土下座しなさい。
こうやって。
ね!
(能勢裕之)ドクターステップの能勢と申します。
ドクターステップ?つまりヘッドハンティング?
(能勢)そういう事です。
僕がですか?
(能勢)キャリアアップされたいというお考えはありませんか?2500万?当直なしで?僕を名指しで?
(能勢)3人ともすっかりその気になってます。
まあすぐに転職したいと言ってくるでしょう。
(仙石)医者がいなくなれば堂上は潰れる。
一番簡単な話だ。
(能勢)でもいいんですか?あの3人にあんないい条件の病院を紹介して。
どうせ使い捨てだもん。
ハッハッハッ…。
(和枝)でも先生。
この先治療がうまくいってオペ出来る事になったとしても残存してしまう肝臓の転移巣除去はどうするんですか?そうですねえ…。
え?森山先生がおやりになるんじゃないんですか?やりたくないって言ってるの。
どうして?説明するのもバカバカしい理由よ。
(たまき)他のドクター探した方がいいわ。
(和枝)あっ院長…。
森山先生今仙石教授の事で頭いっぱいだから。
本当バカバカしい事よね。
仙石教授ですか…。
腹腔鏡で肝腫瘍切除の出来るドクター探せばきっといるでしょう。
相良先生今は患者さんの事を第一に考えてください。
あっ皆川先生。
ねえお忙しいところ悪いんだけど私ね昨日から胃がなんかキリキリするの。
ちょっと診て頂ける?
(和枝)はい。
多分ストレスだと思いますよ。
(たまき)ねえ。
森山先生がいいんだけどな。
あ…あの相良先生。
ん?雪村絵里子さんの事なんですが。
うん。
雪村さんとても悲観的になってしまわれてて治療に前向きじゃないっていうか副作用がつらいから抗がん剤はもう嫌だって。
君なら患者さんを勇気づけられると思うけどな。
雪村さんは私には心を開いてくださらないんです。
何がおつらいですか?吐き気がひどくて…。
抗がん剤の副作用おつらいですもんね。
十分承知してます。
でもね雪村さん治療の成果は確実に出てるんですよ。
大丈夫。
希望を持って一緒に頑張りましょう。
はい。
何かあったらいつでも看護師に言ってくださいね。
ありがとうございます。
じゃあよろしくね。
はい。
じゃあ点滴替えますね。
もう嫌。
え?でも今相良先生に…。
どうせ私は死ぬのよ。
雪村さん…。
お母さんがそんな事言ってたら遼君に…。
やめて!あなたがんになった事あるの?あなたなんかに何がわかるのよ!ドクターには本音が言えなくても看護師にそれをぶつけてくる患者さんは珍しくない。
患者さんの一番身近にいるのは…。
やっぱりナースだって事だよ。
君が雪村さんに信頼されないと治療は出来ない。
申し訳ありませんでした。
仙石教授!あ…うう…。
あっ…。
なんでここから動かないんだ?誰も見てないじゃないか。
土下座なんて簡単だろ。
なんで出来ない…。
くっ…。
(荒い息遣い)仙石教授…。
くは〜っ。
《年収3000万…》《週休3日で当直なし》《僕を名指しで》どうしたの?へ?何?
(千住)おかしいよ今日はみんな。
(佐々井)何が?なんか仲間はずれって感じなんだよな僕だけ。
(段原)何言ってるの?千住先生。
(高泉)仲間はずれなんて…。
(佐々井)チーム森山だよ僕らは。
千住先生!
(絵里子の声)あなたがんになった事あるの?あなたなんかに何がわかるのよ!君が雪村さんに信頼されないと治療は出来ない。
(ため息)
(戸紀子)またため息。
あっすみません。
やっぱり替えようか。
雪村さんの担当。
え?そんなに大変なら。
いえ私の患者さんですから。
真面目すぎるのよね宮部さんは。
少しは仕事を忘れる時間をつくりなさい。
忘れろって言われても…。
(桜井の声)またあなたと会いたいんです。
(電話)はい。
西ナースステーションです。
「先日までそちらに入院していた桜井と申します」…え?「宮部さんはいらっしゃいますか?」うん美味しい。
良かった。
このお店なんでも美味しいらしくって。
らしい?いや。
ネットで調べて見つけたんで実は僕も初めてなんです。
弁護士さんなら色んなお店ご存じなんじゃ…?仕事で使うのはこういうお店じゃありませんから。
お気遣いありがとうございます。
いいえ。
お礼を言うのは僕の方です。
入院している間は本当にお世話になりました。
本当に素晴らしい仕事ですよね看護師さんって。
アハハそんな事…。
いえ正直な気持ちです。
また入院したいぐらいですよ僕は。
あっええ…?考えるな…。
ドントシンク。
フィール!頭じゃない…体に覚えさせるんだ体に。
そうそうそう…。
土下座なんて単なる体の動きだ。
足を曲げて膝をつける!手を床において!頭をつける…ハアッ!キャッハハハハ…!イエーイヨーホホホ。
よーしよしよしよし…。
出来る出来る出来る出来る…出来るぞ!フフン。
もう出来るぞ。
目を閉じてイメージしろ。
目の前に仙石教授。
そしてその取り巻きたち。
そこに俺が登場する。
申し訳ありませんでした。
仙石教授。
うう…はあくっ…。
くっ…。
ごちそうさまでした。
ああいえいえ。
じゃあおやすみなさい。
おやすみなさい。
宮部さん。
僕は…。
僕は本当はプライドの高い人間なんです。
はい…?弁護士なんてみんなそうです。
でもあなたと出会って僕は変わった。
変わったんです。
初めて座薬を入れて頂いた時に。
座薬!?あんな事僕にはありえませんでした。
女性にお尻を丸出しにして座薬を入れられるなんて。
でもあの時はもう仕方なかった。
プライドを捨てるしかなかったんです。
いや…看護師はそういう事には慣れてますから。
そんな事わかってます。
でも僕は入院している間あなたに何度も座薬を入れて頂いてはっきりとわかったんです。
この人の前ならプライドを捨てられる。
本当の自分をさらけ出せるって。
宮部さん僕と結婚を前提に付き合ってください。
お願いします!か…考えさせてください!あっ…すいません。
僕は本気ですからね。
お願いします。
(運転手)はい。
(仙石)準備は?
(萩原)全て整っております。
(仙石)うむ。
(一同)よろしくお願いします。
メス!
(看護師)はい。
あとは頼む!はい。
(一同)お疲れさまでした。
電気メス。
はい。
(ため息)
(ノック)はい。
(城山)失礼します。
お疲れさまでした教授。
(仙石)うん。
票固めはどうなったの?確実にこっちが勝っています。
(仙石)そうか。
そもそも松田先生本人が仙石教授と戦おうという気がないようですから。
松田だってわかってんだよ。
俺と張り合うなんて10年…ハハハハ…!20年早いって。
ハハハ!おっしゃるとおりでございます。
(電話)うっしゃ!
(電話)はいはい。
(看護師)「先生トラブルです!」おいしっかり押さえろ!はい!出血止まりません!クソッ!
(心電図モニターのアラーム)すいません!早くそっちのルートの方ポンピングして!は…はい!輸血追加!とりあえず…出血は?
(小此木圭)父はどうして死んだんですか?安心して任せろっておっしゃったじゃありませんか!非常に難しい世界最高レベルのオペだったんです。
しかし残念ながら患者さんが高齢でそれに持ちこたえられなかったんです。
責任逃れなさる気ですか!?手術ミスがあったんじゃないですか?仙石先生。
いやいや…私はミスはしておりません。
ただあの…。
助手の彼が私のオペについてこれなかったんです。
(翔子)仙石教授の手術で患者さんが亡くなったそうです。
でも執刀してたのは教授じゃなかったって。
えっ?そもそもあの先生は論文の数と上司への気遣いで教授になった方で手術の腕は…全然だって。
西都大学病院って医学部長選挙が近いんですよね?仙石教授が最有力候補です。
だから今スキャンダルは絶対ダメ。
今回患者さんが亡くなられた件も責任は全部准教授の萩原先生が被ったそうです。
あっそう…。
渋谷さん。
はい。
医学部長選挙の仙石教授の対抗馬って誰ですか?
(松田)胃がんの患者?はい。
西都大学病院に入院していたんですが今は堂上総合病院で僕が治療に当たっています。
それで?ええ…。
まだ完治する可能性のある患者さんなんですけどもただご本人がとても悲観的になっていらして。
まあ…よっぽど嫌な思いをされたんでしょうね。
今までの病院で。
相良先生君の噂はかねがね耳にしてたよ。
東京医療大学病院のホープと言われていたのに突然そこを辞め今は民間病院に移って臨床医に徹している。
まあホープだったかどうかはわかりませんが。
オペの腕は抜群。
患者からの信頼も厚く生体肝移植まで成功させて堂上を一躍有名病院に変えた。
なかなか出来る事じゃない。
恐れ入ります。
でもそれは嘘だったのかな?初対面の人間にいきなり嫌味とはね。
私となんの話がしたいんだ?君は。
松田先生。
僕を医学部を目指している高校生だと思って説明して頂けませんか?大学病院ってどんなところなんですか?大学病院の教授って偉いんですか?大学病院は患者の治療だけをするところじゃない。
研究と教育という大事な役割も担ってる。
はい。
つまり治る見込みのない患者もしくは珍しい症例ではない患者を入院させておくのは大学病院にはそぐわない。
なぜなら研究と教育の対象にならないからだ。
はい。
だから患者の希望に沿えない事もある。
患者が嫌な思いをしたとしてもそれは仕方のない事だ。
医学の発展のためにはね。
(ため息)先生方は未来の10万人の患者さんの事を考えてらっしゃる。
でも我々臨床医はまあどんなに優れていようと治せる患者さんの数はたかが知れてる。
だから大学病院の教授は偉い。
今僕が言ったのは大学病院とは何かという質問に対する答えだよ相良先生。
大学教授が偉いとは一言も言ってない。
未来の患者を救うためだから目の前の患者を犠牲にしてもいいなんて僕は思わない。
そんな道理が通るなら未来の患者を救うと言いながらその未来になればまた目の前の患者を犠牲にする事になる。
大学病院にだって色々な人間がいるんだ。
治療途中で退院させざるをえなかった患者がその後どうなったか…。
奇跡が起きて助かってくれる事を祈っているドクターだっているんだよ。
すみませんでした。
僕の無礼な発言をお許しください。
でも西都大学病院に松田先生のような方がいらっしゃるとわかって安心しました。
君は僕を…。
松田先生年齢なんて関係ありませんよ。
西都大学病院のために患者さんのためにどうか先生がリーダーになってください。
お願いします!ああ?松田が…?初めて自分の口から医学部長になると。
松田に票が流れてるのかな?お前たち一体何をしてきたんだ!松田なんかあんな奴きれい事ばかり並べてちょっとオペがうまいだけの凡庸な男だろう。
えっ?萩原。
(萩原)はい…。
医学部長に必要なのは強烈なリーダーシップとカリスマだ。
それは誰なの?小田村。
仙石教授です。
そう私だよ城山。
はい!だったら私に勝たせろ…。
絶対…。
絶対私に勝たせろ!
(ドアの開く音)これ以上何やれっていうんですか?自分の研究も学生の指導も患者の治療も全て放り出して選挙運動に専念しろって事さ。
やるしかないだろ!仙石教授に嫌われたら俺たちは…。
なんだか大変ですねぇ。
天下の西都大学病院のドクターたちが実は奴隷扱いなんて。
世間が知ったらびっくりだ。
お前…。
堂上総合病院の相良です。
相良…。
何しに来た!ここはお前が入って来れるような場所じゃ…。
面白いですよねぇ。
インテリジェンスに溢れてるはずの人たちが上司に責められ追い詰められるとこんなくだらない事するんですから。
これはもうコメディーですよ。
な…なんだそれは?俺たちはそんなもの…!えっと…。
オペ中に患者さんを死なせてしまった萩原先生はどちらですか?僕はあなたに同情しますよ。
だって仙石教授の患者さんだったんでしょ?それを無理やり押し付けられてそんな事になってしまって。
そりゃあないですよね。
だったら自分でやれよって思ったでしょ。
相良…!なんでそんな人にへいこらしてるんですか?あなたにはプライドはないんですか?そんな事町医者のお前なんかに…。
雪村絵里子さん。
仙石教授が余命半年と宣告して西都大学病院から放り出した彼女を今は僕が治療しています。
もし雪村さんが完治して社会復帰したら…。
うーんそうだな…。
メディカルトゥデイ辺りに記事にしてもらおうかな。
「西都大学の教授が治せなかった患者を町医者が救った」。
もしそうなったら仙石教授の立場なくなりますね。
というより笑い者だ。
何!?医学部長選挙で仙石教授が勝ったとしてもそんな記事が出たら次は確実に負けますよ。
松田教授に。
5年も下の松田教授がトップになれば世代交代です。
そうなったらもう西都大学に仙石教授の居場所はなくなる。
このまま仙石教授についていたら皆さんにも厳しい現実が待ってますよ。
乗り換えた方がいいんじゃないのかな?松田教授に。
だってあの人は誰かに責任を押し付けたりするような人じゃないでしょ。
オペ中に患者さんが亡くなったとしても。
(城山)お前…俺たちを脅してるつもりか!?あの患者を治せるわけないだろ!治しますよ。
僕は必ず雪村さんを助けます。
じゃあ。
(小田村)何言ってんだあいつ。
出来もしない事を…。
(萩原)クソッ!
(女性)かいとよく頑張ったね!
(男の子)ありがとう!今日何食べたい?ハンバーグ!ハンバーグかぁ。
よしお母さん頑張ってごちそういっぱい作るからね!
(男の子)やったあ!遼君。
今日は1人でお見舞いに来たの?はい。
ふーんそっか…。
看護師さんたちがみんな遼君の事褒めてるぞ。
すっごくいい子だって。
遼君わかってるもんな。
自分が元気でいなきゃお母さんも元気になれないってわかってるもんな。
偉いぞ。
でも…。
ん?治らないんでしょ?もう…死んじゃうんでしょ?お母さん。
遼君。
人はねいつか必ず死ぬ。
それはお金持ちだろうが貧乏な人だろうが変わらない。
それだけは平等だ。
でもねもう十分生きたっていう幸せな死もあればまだ早すぎるっていうつらい死もある。
僕の奥さんがそうだった。
だから遼君には絶対にあんなつらい思いはさせたくない。
薬の効果は確実に出てるんだよ。
お母さんの体にあった小さながんはなくなってきた。
もうすぐ大きながんを手術で取る事が出来る。
2人でお母さんを助けよう。
よし!
(千住)引き抜き!?いやぁ…引き抜きっていうかちょっとそういう話があっただけですよ!へえ〜どういう条件なの?知りたいなあ。
うん…。
週休3日で2500万。
年収!?やばい!俺酔ってるな…。
(千住)高泉先生にそんな話が…。
そのくらいだったら俺だって…。
(千住)来てるんですか!?俺だってさ…。
(千住)えっ!佐々井先生も!?どんな話ですか!?いやいやいや…。
えっちょちょちょ…!言えないよ〜!教えてくださいよ〜!君ら…転職を考えてるんだって?聞いたよ。
千住先生!報告しないわけにはいかないでしょ。
チクッたのか?自分には話が来ないからってさぁ。
人間はチクらずにはいられない生き物なんだよ。
チーム森山を抜ける気か?君らは。
いずれこの堂上総合病院の院長になろうというこの俺を裏切る気か?そんな事絶対に…!
(千住)そういう事だろ。
金で動く人間なのか?君らは。
いや…違います。
いやそうでしょ。
恥ずかしくないのか?そういう事じゃ…。
そういう事でしょ?それでも辞めるって言うんだったら…。
えっ!?辞めないでくれ…。
俺が…俺が悪かった…。
いやいやいやいや…!やめてください森山先生。
先生はなんにも悪くありません!ぼ…僕たちが悪いんです!申し訳ございませんでした…!
(高泉)先生ーっ!
(段原)先生…先生!
(一同の泣き声)「シャラララシャバドゥバ」「シャバドゥバ」森山先生。
紹介します。
僕の大学時代の先輩で北海道で外科医をやってる青柳先生です。
外科の森山先生です。
(青柳順平)青柳です。
学会で上京したついでにお邪魔しました。
相良の顔を見に。
へえ〜相良先生にも友達がいたんだ。
「シャバドゥバ」ああそうだ。
それで実は今大変な患者さんを抱えてまして。
進行して転移のある胃がんなんですけど。
肝臓のここにあった転移巣には抗がん剤がかなり効いてだいぶなくなってきたんですけどどうしても1か所消えない転移巣があって。
ああ…。
これを腹腔鏡で切除出来るドクターがいないんですよね。
じゃあ俺がやってやるよ。
何…!?でも出来るんですか?青柳さん。
ああ。
向こうじゃ何回も。
えっ!?確かにこのオペは難しい。
アメリカに2〜3か月行ってマスターしてきたなんて言ってる奴がいるがそんな付け焼き刃の三流ドクターに任しちゃダメだ。
言ってくれ。
いつでも北海道から駆けつけるから。
本当ですか!?いや…助かりますそれは!えっ本当に?ああよかった!よかったドクターが見つかった!ありがとうございます!そっかぁ…。
俺が三流だと?チクショウ!あんな田舎者に…。
(ナナ)でも先生はオペ出来ないんでしょ?なんで出来ないんだよ。
アメリカまで行ってマスターしてきたオペなのに…。
(ナナ)やりたいんだったらやればいいのに。
それをやったら俺は仙石教授から抹殺されちゃうんだよ。
ど…土下座する意味がなんにもこれなくなっちゃうのこれ…。
(ナナ)じゃあオペは諦めなきゃね。
あー…。
はい水割り。
俺が名前を出さずにオペをすればいいんだ…。
そうだ!でもそれじゃあ俺の名前を世間にアピール出来ない。
ダメだ…。
あ〜〜!あ〜!
(ナナ)でもその北海道の先生がオペしてもやっぱり怒っちゃうんじゃない?仙石教授は。
え?先生の病院で患者さん治しちゃう事に変わりないんだから。
そうだ…そうだよ…。
どうしたらいい…?ねえどうしたらいいんだよ?じゃあ森山先生が手術しちゃう。
だから…!そのあとで土下座する。
え…?どっちみち土下座するんだったらあとでも先でも同じでしょ?え…?なんでこんな簡単な事に気づかなかったんだ?オペした事も全部入れて最後土下座すりゃいいんだよ!これで解決。
ナナちゃん…。
ユーダイナマイト!えっ!?「だから…」オペは俺がやるって言ってるんだよ!いやでも…それはもう青柳先生に…。
君が最初に頼んできたの俺じゃないか。
俺がやれば堂上総合病院のレベルが上がるんだぞ?ええまあ…そうなんですけど。
あのオペは…俺がやる。
わかりました。
それじゃあ森山先生にお任せします。
任せろ。
もう十分生きたっていう幸せな死もあればまだ早すぎるっていうつらい死もある。
僕の奥さんがそうだった。
だから遼君には絶対にあんなつらい思いをさせたくない。
では先生よろしくお願いします。
(桜井)こちらこそ。
(男性)失礼致します。
(桜井)どうも。
お待たせしてすいません。
いえお忙しいのはわかってましたから。
嬉しいなあ。
宮部さんに誘ってもらえるなんて。
じゃあご飯でも食べに行きますか。
この辺りですと…。
あっ…桜井さん。
はい?私は…桜井さんとはお付き合い出来ません。
あなたは私の事を誤解してらっしゃいます。
私は白衣の天使なんかじゃありません。
普通の女です。
そんな事…。
宮部さんは優しい人です本当に。
私はナースとしてやるべき事をやってるだけです。
でもまだ出来ない事がたくさんある。
今だって患者さんの心に寄り添えなくてどうしていいかわからないの。
今は恋愛よりも仕事をしたいんです。
ドクターに認めてもらえるようなちゃんとしたナースになりたい。
ごめんなさい。
あ〜あ…もう結婚出来ないかも。
検温の時間です。
お願いします。
(操作音)あなたのおっしゃるとおりです。
健康な私には雪村さんのつらさはわかりません。
わからないけどわかるための努力はやめません。
私はどうせ死ぬんだって雪村さんおっしゃってましたけど遼君がいるのに本気でそんな事思うはずない。
抗がん剤が嫌だって言いながらそれでも治療に耐えてるのは…。
生きたいと思ってらっしゃるからでしょう?遼君のために。
不安だと思います。
苛立つ事もあると思います。
その時はどうぞ私にぶつけてください。
それで雪村さんの治療が進むなら私は…全然平気ですから。
(アラーム)体温計を。
少しお熱下がりましたね。
(絵里子)ごめんなさい…。
ごめんなさいこんなに嫌な患者なのに…。
こんなに…。
いいお母さんです。
私…頑張る。
治療頑張る。
…はい!雪村絵里子さんのオペの日取りが決まりました。
今月の7日午前10時に開始します。
このオペはリレー手術になります。
まず僕が腹腔鏡を使って幽門部にある胃がんの原発巣を切除。
そしてそのあと森山先生に肝臓の転移巣を除去して頂きます。
了解。
いよいよデビュー戦ですね森山先生。
見せてくださいテキサス仕込みのスーパーテクニック。
応援してます!チーム森山ですから。
ノープロブレム。
ノープロブレム。
ナースの皆さん大丈夫ですか?術後ケアのプランはしっかり出来ています。
わかってるわよね?
(一同)はい!では…。
皆さんお願いします。
でもよくオペする気になってくれたわね森山先生。
ああそういえば今日は…。
(たまき)何?西都大学病院の医学部長選挙の日です。
(戸倉充博)「ではただ今より医学部長選挙を執り行いたいと思います」俺が勝ってるんだな?最終的票読みは。
はい…。
(戸倉)「名前を記入してあの投票箱に入れて頂きます」ご家族はこちらでお待ちください。
(雪村)はい。
絵里子頑張れよ。
うん…。
お母さん…。
もう一度子供を抱きしめても…。
もちろんです。
(絵里子)おいで遼。
お母さん頑張るから。
うん…。
「バカラッパッパ〜ララッパッパ〜ラ」「ラッパッパ〜ララ〜」このオペで俺の評価をドーンと上げてやる。
患者さんは化学療法後で貧血がまだ改善されてませんから出血には十分気をつけてくださいね。
俺にプレッシャーかけてるつもりか?相良先生。
フフッ…。
時間です。
これから雪村絵里子さんの進行胃がんに対する根治術を始めます。
卓ちゃん…!頑張って!まず最初に僕が執刀し森山先生が第一助手を。
肝切除に入ったら執刀は森山先生に代わり僕が助手に付きます。
よろしく。
では始めます。
メス。
(看護師)はい。
電気メス。
はい。
12ミリのトロッカーください。
(看護師)はい。
(咳払い)このまま仙石教授についていたら皆さんにも厳しい現実が待ってますよ。
乗り換えた方がいいんじゃないのかな?松田教授に。
だってあの人は誰かに責任を押し付けたりするような人じゃないでしょ。
オペ中に患者さんが亡くなったとしても。
輸血準備をお願いします。
はい。
思った以上に出血が多いな。
千住先生血圧は?問題ありません。
僕まで打席を回してくださいよ相良先生。
原発巣を含めた胃を取り出しますよ。
大丈夫…。
大丈夫だ遼。
雪村さん…。
「仙石大吾」「仙石大吾」よしっ。
再建始めます。
リニアステープラー。
よし。
オッケー。
最初の山を乗り切りました。
ここから先は森山先生ですね。
では森山先生お願いします。
始めます。
(一同)お願いします。
鉗子。
はい。
卓ちゃん…!森山先生バイタル正常です。
ハーモニック。
(看護師)はい。
鉗子。
「松田義雄」
(どよめき)「松田義雄」何!?よし。
腫瘍はほぼ取れた。
あ…?出血ですね。
あっ…?剥離面が止血出来てないようです。
止血出来てない?えっ…!?森山先生大丈夫です。
止血にこだわってもいたずらに出血を増やすだけです。
早く切除した方が止血も簡単になりますよ。
このまま続けましょう。
でも…。
もし切除に手間取ったら出血が…。
出血が…!どうなるんです?腫瘍剥離面から出血が続いて最終的には出血多量で失血死。
失血死!?患者はもともと貧血があります。
早く決断しないと!
(千住)早く決断しないと!森山先生患者さんの顔を見てください。
雪村絵里子さんの顔を。
雪村さんは僕たちを信頼して命がけでこの手術台に上がったんです。
我々ドクターは患者さんの信頼に応える義務がある。
お母さん…。
そのせりふは前にも聞いたよ。
雪村さんの命を救えるのは世界中で森山先生しかいません。
おべんちゃらはいい。
千住先生止血は後回しだ。
もう少し出血をするぞ。
はい!よーしこのまま一気にグリソン鞘と肝静脈を一括切除する。
はい。
リニアステープラー。
(看護師)はい。
森山先生!卓ちゃん!「松田義雄」
(どよめき)いけますよ松田先生。
俺が圧勝するんじゃなかったのか?萩原。
残り3票…。
頼む…!「仙石大吾」
(仙石)よーし…!ん?んん…いや…。
えっこれは…。
(仙石)えっ?
(三好正人)なんですか?この字は「石」じゃないよね?これ…「右」ですね。
どうしたのよ?ただの書き間違えでしょう。
「有効票です。
仙石大吾」なんだったんだ…。
1票差。
これは逆転あるねぇ。
「仙…」
(仙石)よしっ!「ん〜?」
(仙石)え〜?えっ!?
(仙石)なんなんだ今度は!これはダメだろう…。
これダメですね。
(戸倉)「これは無効票です」なんで無効なのよ!「“仙石”ではなく“仙岩”と書かれています」仙岩!?誰だこんなくだらん間違えをするのは!?残り1票ですよ。
あれが仙石票なら…。
同点で決選投票か。
「仙…」
(仙石)よっし!あー…。
(仙石)えっ!?これは話にならない。
(三好)はい。
「“仙左”と書かれています」
(一同の笑い声)仙左!?
(戸倉)「これも無効」もう一度よく見ろ!「開票の結果西都大学医学部長は松田義雄先生に決定致しました」
(拍手)松田先生!ありがとう。
遼!終わった…。
お母さん!
(雪村)絵里子。
がんは全て取り去りました。
オペは完璧です。
お母さん頑張ったぞ。
これからは遼君も一緒に支えていくんだ。
はい!うん。
おっ!よしっ!
(亜美)よかった。
術後管理室へ。
ご家族もどうぞ。
先生ありがとうございました!お大事に。
(遼)ありがとうございました!じゃあいつもどおり万全のケアでお願いしますね。
わかりました。
ハハッ。
あっ!
(拍手)お疲れさまでした相良先生森山先生。
ハウディー!お見事でした!素晴らしいオペだったわ森山先生。
初打席で場外ホームラン打っちゃったからね。
(笑い声)これで堂上総合病院がまたレベルアップしますね。
本当は悔しいくせに。
またそういう事言って。
本当にお疲れさまでした。
ご苦労さまでした。
正直どうだったんですか?森山先生のオペは。
完璧でした。
やっぱり優秀ですよ森山先生は。
そうですか。
あれで性格がまともならね。
(相良と和枝の笑い声)実は初めてなんですよね僕仙石先生にお会いするの。
初めまして。
堂上総合病院の相良です。
相良…!残念でしたね医学部長選挙。
ああそうだ。
これまだ外部の人間は知らないはずでした。
実はあるMRさんに教えてもらったんですけど。
早いんですよ彼女の情報。
私を笑いに来たのか!?医学部長になったのは5年も下の松田だ…。
ここにはもう私の居場所はない!肩書きも…権力も失い…野に下る仙石大吾を笑いに来たのか…!?もういいんじゃないですか?肩書きだの権力だのって。
仙石先生はドクターです。
患者さんを助ける事が出来る。
僕は期待していますよ仙石先生のこれからのドクターとしてのご活躍を。
ドクター…。
仙石教授!教授…。
今までの…今までの数々の無礼どうか…どうかお許しください!それから事後報告になってしまいますが僕は教授が見限られた患者のオペを成功させてしまいました!どうかどうかお許しください!森山…。
申し訳ございませんでした!今さらそんなの意味ないのよ。
仙石教授…。
もう終わった事よ。
相良先生!ああ。
雪村さんの検査結果が出ました。
おっ。
うーん…うん。
CRPも下がってきたし肝機能も安定してるね。
じゃあ今日からお食事は…?うん。
もう普通食でいいんじゃないかな。
はい!宮部君。
これあげる。
シュークリーム。
すっごく美味しいんだ。
ありがとうございます…。
じゃあ。
頑張ろ。
2014/12/28(日) 14:00〜16:00
ABCテレビ1
DOCTORS 最強の名医 スペシャル[字][再]
「余命180日、大学病院が見捨てた患者…史上最強の敵登場で病院崩壊の危機!!」沢村一樹、高嶋政伸、比嘉愛未、黒川智花、滝沢沙織、敦士/小野武彦、伊藤蘭、野際陽子ほか
詳細情報
◇番組内容
堂上総合病院の存続危機!相良や森山が気に食わない西都大学病院・仙石教授がついに動き出す!しかも、仙石教授が見捨てたガン患者を救おうとする相良…ドクター相良vs大学病院!相良はこの事態をどう切り抜けるのか!?
◇出演者
沢村一樹、高嶋政伸、比嘉愛未、黒川智花、滝沢沙織、敦士/小野武彦、伊藤蘭、野際陽子 ほか
◇おしらせ
1月4日(日)よる9時からは『新春ドラマスペシャル DOCTORS 最強の名医 2015』
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/doctors/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:18122(0x46CA)