ごちそうさんっていわしたい! 2014.12.28


(セミの声)
(悠太郎)そんな事ひと言も言うてないでしょう!
(源太)この際はっきり言わしてもらうけどな!いっつもそっから人偉そうに見下ろすんやめえ!そっちこそええ肉見せびらかすのやめてもらえますか?め以子が無理してでも買うてきてしまうでしょう!
(机をたたく音)
(泰介)いい加減にしろ〜!もう何なんですか!?みんなして!ホンマに!ホンマに何なんですか〜!
(トラ)
ちょっとストップ。
え〜っとなぜこのような修羅場になっているかと申しますと思い起こせば40年前。
一人の食いしん坊のお話まで遡るのでございます
幼い頃から食い意地が張っていた私の孫娘め以子。
周りがあきれ返るような恥ずかしい事を数々しでかしましたが…
僕はあなたを信じてるんやと思います。
あなたの食い意地を。
その食い意地が見事に身を助け晴れて下宿人だった西門悠太郎のもとに嫁ぐ事と相成りました
(め以子)18年間ごちそうさまでした!
慣れない土地での暮らしは家風や風習味の違いに苦労もございましたが…
西門の味やな。
持ち前の食い意地で乗り切りやがて3人の子どもにも恵まれました
あなたが浮気してるからでしょう!してませんよ!
まっちょっとしたもめ事はありましたけれど…。
時代はやがて戦争へと足を踏み入れてゆき…
(活男)兵隊さんのごちそうさんになりたい。
できるだけ早く戻ります。
待ってます。
そしてめ以子は飯炊きを続けひたすら家族の帰りを待ち続けておりました
(静)かっちゃんは…。
(小関)立派な最期だったそうです。
それでも悠太郎が戻ってくる事を信じ…
もう聞かれへんかもしれんなあ思うて。
悠太郎さんの「ごちそうさん」。
(豚の鳴き声)捕まえて下さい!ここれ…ホンマなんかな。
ただいま戻りました奥さん。
こうして昭和22年3月30日。
待ち続けていた夫悠太郎が帰ってきたのでございます

そしてそれから1年余りがたち皆変わりなく元気に暮らして…
(ため息)
あれ?ちょっと!泰ちゃん何かあったのかい?…という訳で今回は私のかわいいひ孫泰介の物語でございます

(ラジオ・希子)「続きましては『今日のすてきな洋食』の時間です。
今日のお題は『ジャガイモ』。
皆様よりたくさんのジャガイモ料理をお寄せ頂きました。
その中からペンネームミスヒルズさんのお料理ジャガイモのパンケーキ風をご紹介します」。
(室井)新メニューの開発ねえ。
(桜子)そろそろ焼氷を超える目玉商品出したいじゃない?せやけどそのネチャネチャしたの何?
(馬介)水で戻した乾燥バナナ。
(室井)へえ〜。
乾燥バナナってメチャクチャ高くない?ちょっとつてがあってな。
安うしてもろてん。
まっ本物のバナナはさすがに無理やけどな。
売り上げ増えたら支店出せるかもしれないしね。
よし完成や。
よし。
はい飲んでみて。
あ…ほな支店の夢乗せてお先どうぞ。
いやいやいや源太さんこそ遠慮しないで。
いやいやいや遠慮してへんし。
先に飲んで。
いやいやいや先にどうぞ。
大丈夫。
うんまずいです!やっぱりあかんか。
(源太)いや…飲まんでも見たら分かるやろ。
これはにおいからして無理よ。
ちょっと飲んでみて。
ついで飲んでみて飲んでみて。
いやいや…要らへんで要らへんで!いやいや…もう臭いねん!いらっしゃいませ!
(源太)おお〜泰介久しぶりやな。
夏休みでこっち戻ったんか?泰ちゃ〜ん。
泰介君?おい泰介?あ…源太おじさん御無沙汰してます。
(桜子)何かあったの?ぼ〜っとしちゃって。
いえ…別に。
夏負けやない?焼氷食べて元気出して。
(室井)僕分かっちゃった。
恋煩いでしょう!
(桜子)そうなの?ち…ちち違いまちゅよ。
(笑い声)ちょっとちょっと!どんな人なのよ?色白でもち肌のぷくぷくか?やっとお前もぷくぷくのよさに気付いてくれたか!違うよ深窓の令嬢でしょう?顔はかわいいんだけどとっても気が強くて手に負えないの。
分かった。
男の人って母親みたいな人を求めるっていうじゃない?…って事は?
(3人)え〜?
(2人)めいちゃん?め以子?め以子に似てる人って…うん?のっぽで大食いで…単細胞かいな。
という事はつまりのっぽで大食いで単細胞かいな。
そんな人な訳ないでしょう!ほら〜やっぱり女や!
(桜子)もう大丈夫大丈夫。
め以子には内緒にしとくから。
ででででで?どこで知り合ったの?その子と。
昔野球部にいた時にお世話になってた「まるおか」っていう料理屋の娘さんです。
まるおかってイワシ料理が名物の店やな。
(泰介)そうです。
大将が野球好きでいつもよくしてもらってたんです。
で卒業のお祝い会の時に料理を運んできてくれたのが…。
真沙子さんでした。
えっ何?何?何さん?真沙子さんでした!
(室井)真沙子ちゃん!それが初めての出会い?
(泰介)はい。
僕が立ち上がった時に偶然真沙子さんのお盆にぶつかってしまって。
で油で揚げたイワシがこう宙を舞って…。
僕の服に油の染みがついてしもたんです。
分かった!その油を真沙子ちゃんが水で落としてくれて泰介君のハートも落としちゃった!もうバカね。
水じゃ油は落ちないでしょ!もう。
大体「水と油」っていうぐらい…うん?何や?「水と油」…「水と油」。
う〜ん…。
えっちょっと桜子ちゃんどうかしたの?そうよ。
「水と油」ってねえ!それってそっくりなのよ。
め以子と通天閣の出会いと!えっ?
(桜子)これって運命じゃない?ええっ!?だって親子2代同じ出会い方すんのよ。
うんうん奇跡だよ。
ただの偶然ちゃうの?め以子と通天閣が出会ったのは私たちが内緒で行ってた銀座のカフェーだったの。
この背だとさやっぱり男の人を見下ろす事になっちゃうじゃない?それがなきゃもっとこういろいろそれらしい事もあると思うの!私だって桜子みたいに…うん?
(民子)あっあの〜大丈夫ですか?あっ…。
すいません大丈夫ですか?あっその水もらえますか?あの〜よろしいですからホンマに。
ホントすいません。
あの…拭いてもいいですか?結構です。
余計なお世話なんで。
余計なお世話?染みを取るいうんは物質を別の物質で包み込んで取り除くという行為です。
…物質?生クリームで出来る染みの正体は油です。
油と水は「水と油」いうくらい仲が悪い。
つまり溶け合わん。
そうですよねぇ…。
あれ絶対分かってないよね。
あなたがしてるこの行為は何の効果もなくむしろ染みを擦り込む効果しかない。
へえ〜。
ホントめいちゃんって昔っから食い意地だけだよね。
そうそう。
それ以外はすっからかんなのよね。
通天閣も理屈っぽいわ融通はきかへんわ。
ホント。
全く変わってへんな。
大体ようそんな出会いからあいつら結婚まで行き着いたな。
それはね僕のおかげなんだよ。
泰介君。
君がこの世にいるのもひとえに僕のおかげだからね。
(馬介)どういう事?めいちゃんさ「まるや」って料理屋の次男坊とお見合いしたんだけどね。
(まるや女将)失礼します。
(まるや女将)お待たせしました。
当主の太一郎。
息子の真次郎でございます。
今思えばまるやの次男坊っていい男だったんだよね。
案外あの男でもよかったのかもしれないけどその時僕がね…。
(室井・小声で)お〜いお〜い!あっ室井さん!何やってるんですか?…でそのあと僕が「結婚は米だ」って名言をめいちゃんにね。
要はめ以子お見合い飛び出して通天閣のとこ行っちゃったのよ。
それで今仲良うやってんやったらめでたしめでたしやないの。
いやいやだからねうまくいったのはね僕が「結婚は米だ」って…。
あいつらに今があんのはもめる度にわしが手ぇ貸したったからじゃ。
あの〜…。
(室井)違うよ!僕の「結婚は」…。
「米」でしょ。
あっはい。
ねえ源太さん。
あの2人の最大の夫婦げんか覚えてる?当たり前や。
通天閣が女医さんと浮気した事件やろ?そうそう。
ちょっと僕に言わせて「結婚は」!ねえ?あん時ホンマ大変やったわ。
聞いて。
もう通天閣あの〜誰や?
(せきばらい)あの!真沙子さんの話してたんですけど。
ああ…すまんすまん。
ごめんね。
まあええんですけどね。
…で?真沙子さん泰ちゃんに飛んだ油どないしてん?もちろん服が真っ白になるまで完璧に染みを抜いてくれましたよ。
ああ〜やっぱりめいちゃんとは大違いだね。
もちろんです!控えめやけどしっかりとしたしんの強い人で。
(室井)「しんの強い」。
花に例えるなら野に咲く白百合いうか。
1つ年上やけど可憐でものすごいかいらしくて。
日本国憲法に例えて言うなら…。
憲法!?まさに人間性の三権分立といいますかその清く正しく美しい様が互いに均衡を保ち合い見事に支え合っている。
それと…大事なんこっからですよ。
戦争が終わって戻ってきた時ですけどそれを知った真沙子さんが「少しで申し訳ないけどお祝いに」。
…って赤飯作ってきてくれて!それも僕にだけですよ。
諸岡さんにはなかったんですよ!いやいや諸岡君は結婚してるからやろ。
諸岡さんにはなくて僕にだけ作ってきてくれたんや。
聞いてへんし!真沙子さんも泰ちゃんの事をええなって思ってるんと違う?えっやっぱり?そうなんですかね?「僕にだけ」ですもんね。
それやのに…やっぱ信じられへ〜ん!おいおい…一体どうしたんや?そうよ気持ち悪いわよ一人で。
何?真沙子ちゃんに何か問題でもあるの?実は僕昨日の夕方見てしもたんです。
まさか…ここで仕事を…。
あの真沙子さんがって。
いまだに信じられなくて。
見間違いちゃう?そうですよね!いや女は分からんで。
えっ?真面目な子に限って駄目な男に引っ掛かんのよね。
(泰介)えっ?ちょっとやめなよ。
(泰介)そうですよ!泰介!室井さ〜ん!女って落ちてく時はあっという間だぞ。
うわ〜!きっと見間違いですよ!僕今から真沙子さん所へ行って確かめてきます!若いな〜。
ちょっと脅かし過ぎちゃったかしらね。
でもホンマやったら泰ちゃんには手に負えん相手と違う?まっそん時はわしが落とし方教えたるわ。
何か盛り上がってきたね。
恋の炎は燃え上がった方が面白いわよね。

やっかいな事にならなければいいけどね
(犬の遠ぼえ)
(桜子)見間違いじゃなかったんだ。
自宅に行ったら仕事に行ってるみたいやけどって。
飲食店らしいけどって大将も詳しい事は知らんみたいでした。
親にも隠してるんだ。
そりゃあホンマの事は言えんわな。
やっぱり悪い男にだまされてんのかな〜。
いえ…原因は大将でした。
(一同)えっ?
(鈴の音)
(泰介)戦争でご長男が戦死して女将さんは空襲で亡くなって大将は生きる気力を失ってしまったらしくて。
店もずっと閉めたまんまやそうです。
まだ小さい弟さんもいるから生活の全てが真沙子さん一人の肩にかかってきてしまってるんです。
男にだまされたんやなかっただけでももうけもんやんか。
そうだけどお金のためじゃ仕事辞められないじゃない。
僕このままほっとかれへんと思って真沙子さんが帰ってくるの近くで待っとったんです。
…で会えたん?「僕にできる事があったら何でも言うて下さい。
真沙子さんの力になりたいんです。
例えばちゃんとした仕事を探す手伝いをするとか。
とにかくこんな仕事やったらあきません!」って言うたんですけど…。
真沙子さん何て?えらい怒られました。
(室井)どうして?「学生の身分で人の仕事の事とやかく言うなんて失礼やないですか?みんなすき好んでやってる訳やありません。
あなたに何が分かるんですか?それにお金ないと困りますよね?実際。
あなたみたいな学生がお金の事何とかできるとでも言うんですか?」。
あらまあまた「立て板に水」っちゅう感じやな。
まあ言うてる事は正しいといえば正しいけどな。
ホンマぐうの音も出ませんでした。
自分の未熟さを痛感してただただ情けなくて。
僕が大人の男やったらちゃんと稼いでる身分やったら助けてあげられたのに。
僕にだけ赤飯作ってきてくれていい感じなんかなって思ってたけどただの勘違いやったみたいです。
ねえちょっとちょっと…。
何やねん?どう思う?どうって?何か聞いてた子と随分違うっていうか。
野に咲く白百合があんなきっつい言い方で説教する?泰介君ってずっと優等生で来ちゃったから女を見る目ないのかも。
大体家が悪いしな。
(3人)家?食い意地だけのがさつな母ちゃんと…。
(源太)友達は数式だけの姉ちゃんとホンマは旦那尻に敷いてるおばはんといくつんなっても娘気分のばあさんと。
いけずで…いけずで…。
あっやめて下さい!いけずなおばはん。
(和枝)あの子ぉがよかってんわわても悠太郎も。
そりゃそやろ。
亜貴子ちゃんとあんさんでは「月とスッポン」。
えらい芋ねえちゃんでも性悪のおへちゃでもええ女に見えてまうんやろな。
真沙子ちゃんてどんな子なんだろうねえ?どんな子ぉなんやろなぁ?どんな子なんだろう?えい!ああ〜…。
えい!よいっ!これあげようか。
あっおおきに。
わいも頂戴よ!ちょっと待ってちょっと待って。
はい。
おおきに!こんにちは。
(室井)いらっしゃいませ〜。
(川久保)何で室井さんが?うん?あっ。
ちょっと今桜子ちゃんも馬介さんも出かけてて。
あっどうぞどうぞ。
(室井)はいどうぞ。
え?うちが頼んだの焼氷やけど。
(室井)…でこれが希子ちゃん。
(希子)私コーヒー頼んだんですけど。
(室井)はいこれ川久保さん。
(川久保)僕もコーヒー頼んだんですけど。
今日は皆さんに思い出の品を出させて頂きました。
(3人)思い出の品?懐かしいな〜。
昔飲み屋でお静さんが酔い潰れちゃって。
「ハモニカない〜?ハモニカ〜」って。
ほらちょうど今ぐらいの時期だったでしょ?ああ〜そうそうそう。
天神祭の時期やったね。
天神祭か。
いや〜。
う〜ん。
甘酸っぱい恋の味やわ。
ほらあんたも焼氷解けんうちにはよ食べ。
うん?思い出の味やろ?えっ?・「うま介印の焼氷」
(川久保)・「氷氷氷なのは」
(3人)・「間違いないのさ」ああ〜もうやめてよ!食べるからもう。
頂きます。
(室井)どうぞどうぞ。
回想
(オルガン)
(龍子)さんはい!・「氷氷氷なのは間違いないのさ」・「ところがどうにも噂だと」・「何でも火を吹く氷だと」・「氷のお山に白帽子」・「パッと火がつきゃこんがり焼けて」・「とけそでとけないもどかしさ」・「熱くて冷たいあの人と」私が変われたんはちい姉ちゃんのおかげやな。
食い意地って人も救えるんやね。
うん。
あの〜。
何?僕こんな飲み物に何の思い出もないんですけど。
飲めば分かるから。
(静)うわ…。
まずっ!
(笑い声)ねえねえ?あまりのまずさに今日という日が思い出になったでしょ?まずいまずい…。
え〜?何飲ませてんの?まずぅ〜!
(ドアの開閉音)かわいそう…。
あっお帰り。
重かった。
はい。
よいしょ!はあ〜…。
あ〜重い!ホントに。
疲れた!桜子ちゃん!?
(川久保希子)桜子さん!?…でで?どうだったの?ちゃ〜んと見てきたわよ。
いやどないしたん?その格好。
何見てきたんですか?実は泰ちゃんに好きな子ができたんですよ。
(3人)ええ〜!?まあでもお年頃ですよね。
何かほっとしたわ。
あの子ほら何や奥手やから。
うち心配しとってん。
でもめ以子には内緒ですよ。
分かってる。
ええ年してワーワーキャーキャーまとまるもんも踏み潰しそうやもんな。
(桜子)この間泰ちゃん一人で勝手に浮かれたり落ち込んだりしてはたから見てても何かもうじれったくなっちゃって。
でこうなったら気をもんでてもらちが明かないね。
だったらまずはお相手がどんな人かこっそり見てきて対策を考えてあげようって盛り上がってね。
でこの格好で探偵してきたって訳です。
でで…どうやったん?その子かいらしかった?顔ですか?う〜ん…。
夜の蝶だって聞いてた割には地味っていうか…。
(川久保希子静)夜の蝶!?ああもともとは料理屋の娘さんなんですよ。
でもお父さんが体壊しちゃったらしくて家計支えるためにその娘さんが…。
(静)夜の仕事始めたん?
(希子)へえ〜。
いや…いやええ子やん。
ほな泰ちゃんが結婚して辞めさしたげたらええんちゃう?お母さんちょっと結婚は気ぃ早いんちゃいますか?せやけどはよしてもらわんとひ孫の顔見られへんし。
大ちゃんがいるやないですか。
せやかてうち…かいらしい女の子もだっこしたいもんなあ。
でも大事なんは…こことちゃいますか?あれ?えらい厳しいな。
だってちい姉ちゃんに内緒にすんのやったらそこはちゃんと調べとかんと。
もし変な子やったら申し訳立たんやろ。
物売りに行っただけではどんな子か分かりませんよね。
フフフフ…。
よいしょ。
「ゴムひもせっけんタワシにしゃくし何かご入り用なものございませんか?」。
そしたら彼女何て返してきたと思います?「このせっけん粗悪品だすなあ。
うちが自分で作った方がええもん作れます。
ゴムひもはまあまあやけどちょっと高おますな。
タワシは留め金の始末が悪い。
使たら3日で壊れますな」って。
いちいち重箱の隅つっつくみたいにすごく細かくて。
私これくらいやったら買うてしまうけどね。
そうでしょう?でも全部文句つけられて突っ返されたのよ。
けど目利きとも言えますよね。
(桜子)まあね。
お台所に作りかけの料理があったんだけどささがきゴボウはホントの笹みたいに細〜かったし大根のかつらむきも透けるほど薄かったから家事は何でもできる人なんだと思うけど。
そんな子なんやったらええお嫁さんになるんやないかな。
ん〜でも何か思ってた人と違ったのよね。
しかたなく夜の仕事に出た薄幸の乙女っていうのを想像してたんだけどみんなを取りしきってるやり手ババアみたいな?え…。
じゃあとんでもなくいけずかもしれんって事ですか?大丈夫かな?その子。
(希子)ねえ…。
ああ〜!
(一同)うん?どうしたんですか?お母さん。
(川久保)お母さん?かか…和枝ちゃんに似てる!そんな…和枝さんみたいな人なかなかいてはりませんよ。
せやんねえ。
私も後にも先にもお姉ちゃん以外あんな人見た事も会った事もないですよ。
せやけどそんな子なんやったらこらなかなか難儀やな〜。
(ハト時計の音)ていっ!「あなたはイワシのような人だ」。
(笑い声)最高〜。
「イワシ」…。
(ため息)うわ〜!何してるの?あっいや…別に。
うん?いや〜もうさっきから待ちきれなくってさ。
何?何か元気ないんじゃない?ああ〜うん。
うん?実はなちょっと話したい事があってな。
あっ泰介君早く早く!もうみんな待ってるよ。
もう何なんですか?大切な用事って。
一体何やねん。
みんな呼び集めて。
いや…もうね今からホントすごい事が起こるから。
僕から泰介君への贈り物。
僕にですか?いやいやいやいや礼はいらないよ。
とにかく今から店の扉が開くと泰介君に奇跡が起こるんだ!奇跡?奇跡って…。
(ドアが開く音)ほら来た!和枝さんが奇跡?あれ?おかしいな。
あ…どうもお久しぶりです。
何だすか?わての顔に何かついてまっか?ああ〜いや別に。
この店は客を席にも座らせしまへんのんだすか。
失礼しました。
あのこちらどうぞ。
まあ客でもないけどな。
けど暑い中歩いてきたさかい焼氷でももろときましょか。
(桜子)はい。
何たくらんでんねん?いや違うんだよ。
おかしいな。
もうそろそろだと思うんだけどな。
おばさんもここよう来はるんですか?何でわてが。
ここで注文すんのは今日が最初で最後だす。
(机をたたく音)
(ハト時計の音)うま介印の焼氷です。
火が消えたらお召し上がり下さい。
味に自信がない分おおぎょうに火ぃつけてごまかしてはんの。
いや…ここの焼氷はホンマにおいしいですから。
食べてみたら分かりますって。
そうだすか。
コーヒーシロップと?こっちは…。
梅の酸味が味を引き締めてますな。
ありがとうございます。
けどこの上にニッキ振ったらもっとおいしいんちゃいます?えっ?えっ?メレンゲの上にハッカ飾るんも涼しげでええけどね。
ああ…はい。
氷削り器の手入れも甘いんちゃいますか?刃ぁ研いでへんから氷の削り方粗うなってますで。
とはいえどうせ無くなる店や。
今更改良したところで意味ありまへんな。
えっ?ちょぉおばはん無くなるってどういう意味や?おばはんおばはん気安う呼ばんとってくれはります?まあええわ。
ここ売りに出しはったんやろう?人手に渡るいうんはのうなるいう事ちゃうんだすか?えっ?
(桜子)えっ馬介さんホントなの?うう〜…。
ああ〜!「破産土地家屋手放した」。
えっじゃああのここに来たのって?物件購入の下見だすけど?えっ!?あっあの〜もう一度考え直してもらう訳には…。
わてが買わんでもほかの人が買うだけの話でっしゃろう。
わてなここに洋食の店出そう思てますねん。
あんさんら希子のラジオ番組で洋食の作り方募集してんの知ってはります?今そこで一番のミスヒルズさんいう人がおってな。
独創的な洋食の作り方を次から次へと投稿しはってわて感心しとったんだす。
ほしたらその実力買われはって洋食の仕出し弁当屋始めたらしゅうてえらい成功しはって。
わて人づてに紹介してもろてな。
この先食糧事情がようなってくるはずやから一緒に事業しまへんか?言うたら興味持ってくれはって。
けどなえらい腰の低い謙虚なお方でな。
自分に経営は無理や。
けど勉強はしたいから山下さんの下で使てほしい言わって。
わてな一番好きな材料がイワシやからイワシを名物にした店がええかな思てますねん。
仕入れ値が安う抑えられるから利益率高おますやろ?まあ不安の種といえばヒルズさんが何でかイワシだけは一回も料理した事ない言うてはった事だすな。
まあそんなんはこれからわてがなんぼでも教えたげたらいいだけの話だすけど。
聞いてはる?まっええわ。
今度機会があったら紹介したげますわ。
気ぃは回るし料理も一流やのに気のええ子でな。
何やまるで若い頃のわてそっくりでな。
居抜きやったら…あ〜キ〜ンとした。
改装費用もほとんどかからんし助かりましたわ。
ほなさいなら。
あ…キ〜ンとした。
ああ〜!どんだけしゃべくり倒すねんあのおばはんもう!ああ〜!馬介さん!もう馬介さん泣いてないでほら親戚回りの金策行ってきて。
うあ〜!とらすけおじさ〜ん!とんだ奇跡ね室井さん。
いやいや違うんだって。
僕が用意した奇跡っていうのはね。
(ドアが開く音)ほら今度こそ!僕の顔に何かついてますか?悠さん何しに来たんだよ!喫茶店に飲食以外の目的で来る人っておるんですか?もう〜そうじゃなくってぇ。
泰介!家に帰ったらうま介に行ったって聞いてわざわざ来たんやで。
何でわざわざ?2人だけで話したいからに決まっとるやろ。
あっよしだ汁2つお願いします。
はい。
あっ3つ。
(桜子)は〜い。
2人だけで話したい事って何?おばあちゃんに聞いたで。
好きな子おるんやって?ごめん。
この間お店にいらっしゃった時につい。
大丈夫や。
お母さんには言わへんから。
う〜ん…。
何や聞いた話やとちょっと大変な子ぉらしいな。
まあ若い時は熱に浮かされたみたいになるしな。
そうそう。
駆け落ちしちゃったりね。
僕はしませんよ。
お父さんは泰介の年には結婚しとったで。
…で?もうプロポーズの言葉とか考えてるんか?そんな訳ないでしょう!向こうはまだ僕の気持ちも…。
いや〜いざとなるとえらい緊張するもんやで。
ちなみにお父さんとお母さんの時はやな…。
何女学生みたいにうきうきしちゃってんのよ。
息子のためを思てやないですか。
参考になるかもしれんし。
納豆お化けが出てくんのよ。
お化け?場所は僕の下宿先。
よう覚えてはりますね。
め以子から耳にたこ。
…で話しだすと長い。
あの僕別段聞かんでもええんですけど。
お母さんが料理屋の次男坊とお見合いする事になったんや。
せやけど結局お母さんお見合いの途中で外に飛び出してしもて。
それが僕のひと言がきっかけね。
僕が「結婚は」…。
「米だ」って言ったからなの。
せや。
結婚は米じゃないか?こ…米?
(室井)新米の時期はどうやっても甘くてうまいけど時がたつにつれスカスカのボソボソになってく。
だから炊き方が大切だし工夫が必要になってくる。
それをしないとまずいんだがそれをするのは手間だ。
その手間を喜んでやれる相手だと結婚はうまくいくんじゃないか?ねっねっ。
名言でしょう?ええか?泰介。
本題はここからや。
(大五)こいつはねほかの事はまだまだなんですけどね飯炊くのだけはうまいんですよ。
(真次郎)本当ですか?今度食べさせて下さいよ。
炊けない…。
あんなふうには炊けない。
ある人の「ごちそうさん」が聞きたくて。
だから私…炊けたんです。
ごめんなさい。
(大五)おいめ以子!西門さ〜ん!頑張れ〜!西門さん!西門さん!あっ…。
(ざわめき)あなたを…一生食べさせます!朝も昼も夜も私はあなたにおいしいものを食べさせます!だから…私を一生…食べさせて下さい!お断りします。
…えっ?ホンマは好きやったんやけど西門の家が家やったからな。
あの時は結婚なんてとても考えられへんかった。
でもそのあと悠さん川に飛び込んだせいで熱出しちゃってね。
そこにお母さんが見舞いに来てくれて。
何でおるんですか?風邪をひいたのは私が川に落ちたせいですから。
おかゆここに置いておきますんで。
あの!夢を…見てたんです。
…夢?納豆の沼に落ちる夢でな。
もがけばもがくほど沈んでいって「もう死ぬ!」って思た時お母さんが助けに来てくれて…。
「もう大丈夫だから」って言うと納豆を吸い上げるように食べ始めるんです。
それこそ口の幅で吸い上げるんです。
妖怪みたいに。
…妖怪。
そこで笑って目ぇが覚めて…。
目ぇが覚めたら…。
あなたがいたんです。
一世一代の告白やろう。
「目ぇが覚めたらあなたがいたんです」。
ん〜…。
それやのにお母さんちっともピンと来えへんでな。
もう言うしかないそう思て…。
大好きなんです。
あなたの食べてるの。
せやからあなたを一生食べさせる権利を僕に下さい!お願いします。
なあ?感動的やろ。
言ったでしょ?長いって。
はい。
いや〜この話まるまる全部聞いたの初めてやけどお前らホンマ初めっからアホやったんやな。
いやホンマアホらしい!ねっねっ?僕が悠さんとめいちゃんの恋のキューピッドだって分かったでしょ?泰介君大船に乗った気持ちでいてよ。
僕が2代にわたって恋の奇跡を起こすから!もうホンマお母さんにはいっつも食べ物がついて回るんやね。
当たり前やろ。
お母さんやで?「ごちそうさん」やで?悠さん僕に感謝してよ。
ん?何ですか?急に。
今から泰介君の一世一代の告白が見られるかもしれないんだよ。
えっどういう事ですか?それは見てからの…。
お楽しみ。
来た!来た〜!今度こそ正真正銘泰介君の恋の奇跡!えっ誰?あれ?あれあれあれ?あれ?大将。
えっ?何でここに?大将って真沙子ちゃんのおやじさん?あっ先日は突然伺って失礼しました。
西門君。
これは一体どういうつもりや?えっ?「この恋文は何や?」て聞いてんねん!恋文!?知らん…。
(源太)「あなたはイワシのような人だ。
見た目は一見地味だし」。
かわいい娘をイワシて。
どういうこっちゃ!いや…僕は…。
そのあともや!「安くて大衆的な魚だが食べればうまい」。
俺の店までけなすとはお前ええ根性してんな。
看板のイワシ料理を安うて大衆的やてバカにしたやろが!娘も店も安物ぞろいてか!いやまさかそんな…。
褒めるふりしてしがない飯屋のくせにてバカにしてんのは見え見えや。
帝大生つうのは偉いなあ!ええっ!?いえ僕は…。
店に通うてる頃は爽やかな好青年や思てたけどがっかりや!いやあのこれ泰介の筆跡やないですよ。
それからなあ!俺に隠れて陰でコソコソ真沙子に手ぇ出してんのもお前やろう!ええ?真沙子に仕事の口教えたやろう!それもあんな仕事!いや…違います!僕が…僕が真沙子さんに夜の仕事なんか勧める訳ないじゃないですか!夜の仕事?ショックなのは分かりますけど…。
「夜の蝶という苦界から救い出し」て書いてあるから泰介が教えたんやないんちゃいます?そんな事よりもっと悪いわ!あいつは…あいつは!洋食作ってたんや!
(ハト時計の音)
(一同)はっ?洋食や!真沙子が西洋料理を作ってたんや!えっ?大将が日本料理屋だと西洋料理を目の敵にされちゃうの?お前真沙子の気ぃ引こう思て!ラジオの料理番組に投稿勧めたり。
え…。
弁当屋出させたり!知りません!俺にばれんようにミスヒルズなんちゅう訳の分からん名前付けて!ホンマに知りません!ミスヒルズ…。
ミスヒルズってその名前どっかで…。
分かった!「まるおか」の「おか」でヒルズ!せやなくて。
そうよ。
さっきめ以子のお姉さんが言ってたじゃない?「『おか』は英語にしたら『ヒルズ』だす」って?違うわよ。
ミスヒルズに手伝ってもらって洋食のお店を出すって。
和枝さんが声かけたのって真沙子さんの事だったんじゃない?
(源太)せや。
(室井)そうじゃない?じゃかましいわ!何をゴチャゴチャ。
あの〜。
何や?えっそもそも真沙子さんが働きに出なあかんようになってしまったんもあなたが店をやめてしまったからやないんですか?うるさいわ!俺はな洋食だけは嫌いなんや!昔からな洋食て聞いただけで虫唾が走るんや!その娘が洋食の弁当屋をするなんて逆立ちしてもありえへんわ!変な男にだまされへん限りな。
あの…ちょっと伺ってもよろしいですか?またあんたか…。
うん?洋食が嫌い言い切るんはいささか非論理的ではないかと思いまして。
はい!?お父さん今はちょっとそういう話はええんと違う?材料で苦手なものがあるいう話なら分かります。
その材料自体の香り舌触り味が嫌で嫌いいうなら合点がいくんです。
せやけど一口に洋食と言うたかてどこまでを洋食とするかは人によって解釈が違うてきますし更に言えばそれら全てを食べきる事は不可能やと思います。
嫌いとまで言い切るんは無理があるというか尚早というか。
ああ〜うるさい!個人的な恨みがあるんじゃ!洋食にですか?そうや。
好きやったんや。
えっ?洋食好きやったんや!スコッチエッグにオムレットライス。
バターたっぷりのチキンライスと上に載ったふわふわの卵。
そして…酸味の利いたケチャップ。
はあ〜…。
聞いただけでよだれが出るな。
久々に開明軒行きたくなっちゃった。
おい。
今何て言うた?「開明軒に行きたい」って。
わしの前で二度とその店の名前を口にすんな!えっまさか大将を洋食嫌いにしたのが開明軒?わしはな昔その店の娘に思いっきりこけにされたんや。
(一同)えっ?好きな男がおるのにのこのこお見合いにやって来てあげくわしのために飯は炊けんやと?こんな人をバカにした話あるか!?えっそれって…。
まさか…。
嘘でしょう?お待たせしました。
息子の真次郎でございます。
(室井)じゃああの時のまるやの次男坊?何か随分変わられて。
昔もっと男前だったよね?何やと?イテッ。
長い年月さぞや御苦労があったんでしょうねえ。
何であれあの日から俺は洋食は二度と口にせえへん。
自分が店やる時はイワシ料理を名物にする。
そう心に固く誓ったんや。
何でそこでイワシが出てくんねん。
イワシはなあの女との因縁の魚や。
因縁の魚?そうや。
あの日「嫌いなもん何か」て聞いたらなあの女「イワシはあんまり好きじゃないかも」って言いよったんや!イワシはあんまり好きじゃない…かも。
(真次郎)よし!よしよしよし。
今度俺のイワシ料理食わしてやるよ。
せやからなメチャメチャおいしいイワシ料理作ってやる。
ほならあの女俺を選ばへんかった事を後悔するやろう…いや!させてやる。
その思いだけでな俺は店の看板料理をイワシにして頑張ってきたんや。
あの〜。
何やしつこいなあもう。
そこまでの思いがあって何でわざわざ大阪に来はったのかなって。
関東大震災で店も家も全部潰れてしもたんや。
兄貴はそれ以来気落ちして商売やめてしもたけど俺はまるやが好きやった。
日本料理を極めたかった。
せやから一から一人でやってやる。
そう思て東京出てここでまるおか始めたんや。
それでここまで頑張って…何か泣けてくる。
そら見た目も変わるほどの苦労があったわな。
ホンマですねえ。
そっか。
意外に近い所に恋敵がいたんだね。
恋敵?何で今そんな爆弾落とすんですか!だって面白いじゃない!もういい加減にして下さい!あなたのお見合い相手今この人の奥さん。
貴様が!貴様があの女の旦那!?ほなお前はあの女の息子!とにかくなお前ら家族の顔もう二度と見たない!言うとくぞ。
ちょっとでも真沙子に近づいてみい!承知せえへんからな!覚えとけよ!もうおしまいや…。
どう責任取るつもりなの?室井さん。
ホンマですよ。
取り返しつかへんやないですか。
僕だって泰介君に幸せになってほしい一心だったんだよ。
結果失敗だったけどね!開き直んな!見合いの相手がめ以子やってばらす事なかったやろが!条件反射だよ。
もめ事って思うとパッパッパッて体が反応しちゃうんだ。
通天閣お前も人の事言えん立場やからな。
何で僕が?「洋食が嫌いなんは非論理的や」とか訳分からん事言いだして話ややこししたんやろが。
ほなあなたは相手の発言が意味不明でも適当に合わせて会話しろ言うんですか?そっちの方がよっぽど失礼でしょう。
ほな何か?そんために大事な息子がほれた女と金輪際会えんようになってもええっちゅう事か!そんな事ひと言も言うてないでしょう!この際やからはっきり言わしてもらうけどな。
いっつもそっから偉そうに人見下ろすんやめえ!そっちこそええ肉見せびらかすのやめてもらえますか?め以子が無理してでも買うてしまうの知ってるでしょう!
(たたく音)いい加減にしろ〜!もう何なんですか!ホンマに!みんなしてみんなして!もう!ホンマに何なんですか〜!そもそも僕は真沙子さんに好きとも言うてへんのですよ!告白もしてへんのです!まだ何も始まってへんのです!まだ何も始まってへんのに勝手に終わってしもたんです〜!あ〜!頼んでもへんのに勝手に変な恋文出したり!話ややこしくしたり!みんなして僕の人生を面白がってペシャンコにして踏み潰して!もう僕の人生はおしまいや〜!ああ〜!悪かった泰介!お前の言うとおりや!わしらが悪かった。
ごめん。
申し訳ない。
落ち着いて。
ほらコーヒー飲んだら?なっなっ。
心配すな。
これからの事ちゃんと考えるからなっ。
これからなんてある訳ないでしょう!真沙子さんにも大将にもえらい嫌われてもうたんですよ!
(源太)いや大丈夫や!ええ?泰介。
この危機をな逆手に取ったらええねん。
ここで泰介の真心を真沙子ちゃんに伝える事ができたら逆転サヨナラホームランだって夢やない!そんな事言われても…。
大丈夫や。
真沙子ちゃんぐらい賢い子やったらあんな偽物の恋文泰介が書いたんちゃうてと〜っくに気付いてるはずや。
ええか?泰介。
女がどういう男にほれるかお前知ってるか?知性と教養。
芸術性でしょう。
母性本能をくすぐる人じゃない?
(源太)ああ〜そういう事もあるやろうけどわしがこれまで落としてきたぷくぷくの子らはなみ〜んな「うちの事を分かってくれるのは源ちゃんだけや」て言うてたんや。
自分を理解してくれる人ですか。
なるほど。
なるほど。
確かに。
それとってもうれしい。
せやろう?つまりやな泰介がホンマに真沙子ちゃんの事を分かっとるちゅう事が伝わったら相思相愛も夢やないっちゅう事や。
おうっ!まず今の真沙子ちゃんの状況やけど。
洋食嫌いのお父さんが怒って家の中は大変な事になってるでしょうね。
だけどさ考えたら不思議じゃない?真沙子ちゃん何でわざわざラジオ投稿したり弁当屋やったんだろう?そこまでの腕があるなら外に行かずに真沙子ちゃんがまるおかやったらよかったんじゃない?そうよね。
わざわざお父さんの嫌いな洋食作って怒らせる事なかったのにね。
どないしたんや?きっと外でやらんとあかんかった理由があったはずなんです。
それに…。
(源太)それに?何でイワシ料理だけは作らんかったんやろう?和枝さんもそんな事言ってたわね。
イワシ料理だけはあかん。
まるおかの看板料理はイワシ料理。
あっ!
(源太)泰介何か分かったんか?そうや。
イワシや!
(源太)えっ?そうなんですよ!イワシが鍵なんですよ!鍵?おおきに源太おじさん。
何が?僕今から真沙子さんとこ行ってきます。
さてさてどうなる事やら
そして次の日

(「湯の町エレジー」)また屋台やってもいいじゃない。
馬介さんならすぐ新しいお店出せるようになるって。
そうそう。
こんなしょぼくれた店あのおばはんにのしつけて渡したったらええねん。
僕たちも一緒に頑張るからさ。
屋台で出すメニュー考えましょう。
ねっ。
じゃあ…。
私が作ったジュース飲んでみて下さい。
馬介さん。
どうぞはい。

(しゃっくり)
(ハト時計の音)
(ドアが開く音)いらっしゃい。
(源太)おお泰介。
(室井)泰介君。
どうだった?あれから。
真沙子さんの所に行って話をしてきました。
何の話?
(泰介)夢の話です。
夢?兵隊に行く前僕には夢がありました。
もう一遍野球したいしお酒とかも飲んでみたいしくだらへん事でけんかして殴り合いのけんかとかもしてみたいし。
お父さんみたいに自分を懸けて仕事してみたいし。
お母さんみたいに誰かをアホみたいに好きになってみたい。
僕は僕にそれを許さんかったこの時代を憎みました。
真沙子さん戦争は終わったんです。
夢はかなう時代になったんです。
真沙子さんにも夢があるはずです。
あなたの夢はまるおかの復活なんやないんですか?イワシ料理だけ作らんかったんはイワシがまるおかの魂やからやないんですか?でも今あのまるおかはありません。
お兄さんも女将さんもここにはいない。
悔しいけど悲しいけど元のまんまいうんは難しい。
それでも…せやから…。
せやからここから始めてみませんか?
(泰介)真沙子さんはイワシが子どもの頃から食べてきたまるおかのイワシ料理が大好きですよね?僕にも西門の料理で好きなもんがあります。
西門の柿の葉ずしは何やほかんとことは味が違うんです。
きずしは臭みがないのに酢が立ってのうてほんのり甘くてまろやかで。
葉の香りに溶け合うてて。
あの味はうちにしかない味なんです。
嫁に来た母が西門の味を作ろうとしましたが…。

(泰介)伯母のようには作れませんでした。
でも母の作った柿の葉ずしもおいしかった。
あれもまた西門の味なんです。
まるおかの味はあなたの中にあるんです。
真沙子さんが作ればそれがまるおかの味なんです。
僕は今のまるおかのイワシ料理が食べたい。
真沙子さんのイワシ料理が食べたいんです。
お願いします。
僕にまるおかのイワシ料理を作って下さい。
真沙子さんは何も言いませんでした。
でも…。
(泰介)真沙子さんイワシを手に取りはって…。
まるおかのイワシ料理が誕生した瞬間でした。
そのあと真沙子さん作ったイワシ料理を大将に見せて「うちの夢はもう一度まるおかをやる事です」って。
…で大将何て?一口食べて…。
「まだまだやな」て。
(室井)えっ?でも…。
こんなんやったらわしもゆっくりしてられへんわ。
…って言わはって。
ふっと厨房に立ちはったんです。
真沙子さんと並んでイワシ料理を作り始めた大将の背中が僕昔のまるおかと重なって。
いい匂いがしてとっても幸せでした。
それから…。
何これ?
(室井)おお〜!真沙子さんが今までのお礼にってくれたんです。
「和食は勉強中やから洋食で堪忍」て。
おいしい。
ああ〜真沙子さん早くもう一度まるおかを再開させて大将にもお客さんにもそして何より泰介さんに「ごちそうさん」って言わしたいって。
ウフフフフ…。

(ドアが開く音)いらっしゃいませ。
わて正式にここ買いましたんで。
今月いっぱいで出ていってくれはる?あの〜一つだけお願いが。
何でっしゃろ?ここで店やり続ける限りはうまいもん出し続けて下さい。
ここはホンマに大事な大事な場所なんです。
あんさん誰に向こて物言うてはんの?えっ?店でおいしいもん出すんは当たり前の話でっしゃろう。
けどわては焼氷みたいなこけおどしやるつもりはあらしまへん!
(竹元)誰だ〜!誰だ焼氷の火を消そうとする不届きなやからは!
(泰介)教授…。
どなただす?人の名を尋ねる前に自分の名を名乗るのが礼儀だろう。
あっすいません。
僕の伯母でつまり父の姉の山下和枝です。
あ…あのあの西門の姉なのか。
おっけんか?あんさんの父親相当評判悪いみたいだすなあ。
ともかくあの魅惑的な黒い魔女を葬り去ろうと言うなら私の人生を賭してお前をこの店の外に葬り去…。
(匂いを嗅ぐ音)うん?何だこっ…!何だこの深紅なる情熱の炎をまとったかぐわしい食べ物は!いちいち大層なお人やな。
確かにこれびっくりするほどおいしいおすなあ。
(一同)えっ?えっまだ食うてへんのに?そうだろう。
これにはニンニクと月桂樹が入っているな。
(和枝)粉つけて焼いてありますな。
(竹元)なるほど。
だから形が崩れないのか。
姉君先ほどは大変失礼した。
その眼力なかなかの手だれと確信した。
あんさんも大したもんですわ。
月桂樹が入ってるやなんて素人の殿方ではなかなか分かりまへんで。
そのとおりだ。
姉君私は食を愛しているんや!嘘…この2人何か気ぃ合ってない?明日雨ちゃう?あんさんこれ売りはるんやったらこの場所貸したげてもええで。
えっ!?この店一緒にやろう思てたヒルズさんなお父さん店再開しはる事になってこっちに来られへんようにならはったんだすわ。
けどうちは喫茶店やからイワシ出すいうんはちょっと…。
お前に想像力はないのか!この香ばしい食べ物を使って軽食を考案すればいいだけの話だろう。
喫茶店やったらパンに挟んでいわしサンドとかええんちゃいます?姉君の言うとおりだ。
姉君パンはドイツの酸味のあるものが合うと思うがいかがか?それよろしおすなあ。
けどどうやって作ったらええんやろう?酵母に酸味のある物を入れてみるのはいかがか?
(和枝)うん。
雑穀入れて香ばしさも出したいだすなあ。
(竹元)そうそう。
姉君もしよければこの店に更に人が集まるよう私の英知と技術を結集して知恵を絞るが?安うしてくれはるんやったらお願いしますけど?決まりだ!ほな近くで昼御飯でも食べながらご相談させてもらいますわ。
ああ。
ただ焼氷に関してはもう一回考えてほしい。
焼氷はもうよろしいおすな。
焼氷が好きだ。
焼氷だけは…。
何やこれ。
和枝が考案した新メニューのいわしサンドはバカ売れしており
うん。
ホンマうまいわ。
イワシは仕入れ値が安いため利益率は高いそうですが…。
もうかってうれしいかといえば…
疲れた。
もう駄目だ。
いやいや疲れてへん。
疲れた。
疲れてへん。
疲れた。
疲れてへん。
室井さん室井さん。
向こうのテーブルにもいわしサンド持ってって。
和枝にその分がっぽりと賃料を取られているらしく…文字どおり馬車馬のごとく働かされているうま介の面々なのでございました
入ってるでよう見てや。
(桜子)ありがとうございました。
こんにちは。
(桜子)いらっしゃいませ。
め以子。
大人気やねえ。
めいちゃんここどうぞ。
あっおおきに。
や〜っと念願のいわしサンドが食べられる。
あっ2つ。
(室井)2つ〜!変われば変わるもんよね。
昔はイワシ苦手だったくせに。
まあこれはお姉さんのおかげかな。
塩水で洗うんですか?速い…。
みそに山椒も入れるんですね。
頂きます。
おかげで手間ひまかけるとおいしくなるって教えてもろたし。
「七度洗うと鯛の味」ってホンマなんやって分かったし。
感謝してるんよ。
うちのいわしサンドも最高よ。
ああ…イワシを骨までじっくり素揚げしてレタスとマヨネーズ入れたとか?ああ〜!あっあ〜せやったらタルタルソースの方がおいしいかな。
タルタルねえ。
なあ?ふ久もうあんたは…。
外で食べる時くらい論文読むのやめ。
(ふ久)ごめん。
今度は何?光電効果。
物質に太陽光が当たると電子が飛び出すんよ。
それで電力作れんかなあ思て。
あ…まああんたの見えへん力が戻ってきたちゅう事やんな。
せやけどホンマ心配したんやで。
あんな変わった子が将来結婚できるんかなあて。
何で石なんか投げてたん?
(ふ久)落ちへん石探してたんや。
そんなもんある訳ないやろう。
あるかもしれんやん。
(正蔵)上に行く下に行くやらがあってもう引っ張り合うたりぶつかったりしてこの力は目には見えへんのやで。
見えへん力…。
ようやくちょ〜っと落ち着いたかと思たら…。
心の声
(ふ久)「嫌なんです。
先輩の球をほかの誰かが受けるなんて」。
「西門…」。
諸岡君うち諸岡君の事複製したい。
諸岡君の子どもが産みたい。
全くあんたにはびっくりさせられる事ばっかりや…。
ああっ来てたん?初めて食べる味や。
トマト。
そうか。
トマト煮なんや。
おいしい。
もうこれ匂いだけでおいしい。
ほな頂きます。
(室井)どうぞどうぞ。
うん!うん…。
どないしたん?もうおいしい!私もこないにおいしく作れるようになりたいわ。
(ドアが開く音)こんにちは〜。
泰介。
あっお母さんも来てたんや。
うん。
これうま介に差し入れって言づかってきたんです。
真沙子さんから?まあ…。
いやちょっと…。
今度お母ちゃんにも紹介してよ。
うんまあそのうちな。
料理上手で家事全般得意なんやて?うん。
もうそないに何もかんもできる人がお嫁に来てくれたら幸せやね。
ああ〜!
(桜子)泰ちゃん開けてみましょう。
さ〜て何が入ってるのかしらね?
(一同)おお〜!あっ!あっ!何なん?どうしたの?何何?こ…これ!うん?「まだ柿の葉が若かったので代わりに笹の葉を使って笹の葉ずしにしてみました」だってはい。
嘘や。
(泰介)懐かしいなあ…。
柿の葉はまだ若すぎてなどうにも包めんから笹の葉ずしで堪忍や。
笹の葉にいぐさてちまきみたいですね。
お姉さんが縁起担いでくれはったんよ。
教えたったやろ?あんさん言いなはれ。
昔大陸に物書きがおってな。
事情があって川に身投げしたんよ。
ん〜…詩人な。
でな慕うとった人らが「これ食べ〜」って笹の葉でくるんだちまきを川に流したんや。
(和枝)う〜ん…何やあんさん話すとありがたみの薄〜い話に聞こえますけど要するにいぐさは邪気をはらってくれる。
転じて難を逃れるいう事だすわ。
うん。
屈原の故事ですよね。
「屈原の故事にあるようにいぐさには邪をはらうという言い伝えがあります。
うま介の皆さんのご健康をお祈りしております。
真沙子」。
ああ…ああ〜ああ〜…。
真沙子さん和枝伯母さんと同じ事思いついたんやな。
偶然てあるもんやな。
おいしいねえ。
いけるよ。
そうそうこの味。
すごいなあ。
味まで和枝伯母さんとそっくりや。
ホンマや。
そういえばこの間和枝伯母さんが真沙子さんに「今度西門の味教えてあげますわ」って言うてたんです。
(一同)へえ〜。
えっ?
(泰介)いやこれってうちの人間になるのにふさわしいって思ってくれてはるって事ですよね?あのお姉さんが認めるってすごい事よね。
けどホンマは気ぃ利いたええ人やもんな。
そうなんですよ。
(室井)いいんじゃないの?ちゃう〜。
ちゃう。
えっ?いけずや。
お姉さん自分そっくりの嫁を送り込むつもりなんや〜。
え〜?いやいやいやいや…。
ほな確かめてくるわ。
いやそれあかん!あかんてあかんて。
何で何で?お母さんあかんて。
みんな気になるやんなあ?なるなるなる!あかん!ほな泰介ここに連れてきて。
いやいやいやいやいや…一回落ち着こう。
なあなあなあ…こうなったらここで話すか何やら…お母さんに任せとき!なっ!もうお母さん!・「そんな時こそ微笑みを」・「ポツリポツリと町の色変わってゆけば」・「傘はなくとも雨空に唄うよ」・「どんな君でもアイシテイル」・「顔を上げてごらん光が照らす」・「涙の河も海へと帰る」・「誰の心も雨のち晴レルヤ」・「雨のち晴レルヤ」2014/12/28(日) 16:00〜17:30
NHK総合1・神戸
ごちそうさんっていわしたい![解][字]

3月に終了した「ごちそうさん」が、スピンオフドラマとなって帰ってくる!ヒロイン・め以子の長男・泰介の初恋を巡って、おなじみの顔ぶれが大騒ぎ!抱腹絶倒のコメディー

詳細情報
番組内容
3月に終了した「ごちそうさん」が、スピンオフドラマとなって帰ってくる!あれから1年。喫茶「うま介」にヒロイン・め以子(杏)の長男・泰介(菅田将暉)が思案顔でやってくる。すわ初恋!?と、うま介の面々は色めき立ち、恋のアドバイスをしたり、思い出話を語ったり。誰かがいらぬことをしたばっかりに話はこじれにこじれて…。千原せいじさんをスペシャルゲストに迎えてお送りする、抱腹絶倒のコメディーです。
出演者
【出演】杏,東出昌大,宮崎美子,キムラ緑子,高畑充希,和田正人,菅田将暉,松浦雅,茂山逸平,前田亜季,山中崇,中村靖日,ムロツヨシ,千原せいじ,【語り】吉行和子
原作・脚本
【作】加藤綾子

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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