2人の子どもを育てる20代の母親が都内の救急センターに運ばれてきました。
経済的に苦しい生活の中心身共に追い詰められ重い肺炎を引き起こしていました。
今経済的困窮に子どものいる世帯の生活が脅かされています。
4人の子どもがいる母子家庭。
食べる物が十分にない時さえあるといいます。
母と2人で暮らす高校3年生。
家計を助けてほしいと言われ進学を諦めました。
国が発表している日本の子どもの相対的貧困率は次第に悪化し先進国の中でも高い水準です。
国は子どもの6人に1人がOECDが基準とする貧困ラインを下回る暮らしだとしています。
その実態は家庭という閉ざされた環境の中で見えにくくほとんど把握されてきませんでした。
事態を重く見た国は今年8月子どもの貧困対策に関する大綱を閣議決定。
教育の支援や親への就労支援などの施策を打ち出しました。
特に親から子への貧困の世代間連鎖の解消を目指すとしたのです。
私たちは子どもの未来のために何ができるのか。
貧困の連鎖をどう断ち切るのか。
模索する現場からの報告です。
日本の子どもたちの間で今貧困が広がってきています。
今年国が発表した子どもの貧困率は16.3%。
これは子どもの6人に1人が経済的に困窮している事を意味しています。
日本の子どもの貧困率はOECD経済協力開発機構に加盟する先進20か国の中でも4番目に高く年々深刻さが増しています。
この貧困率の数値正確には相対的貧困率といいます。
これは国民の標準的な所得の50%未満つまり半分に満たない所得しかない世帯の割合を表しています。
日本の現在の貧困ラインは3人の世帯だとおよそ211万円です。
これを下回る家庭では…今日は貧困の連鎖を断つためには何が必要かその解決策を探っていきます。
まずご覧頂くのは子どもたちの過酷な実態です。
満足な食事すらとる事ができない状況も生まれています。
山梨県南アルプス市にあるNPO法人です。
・はいフードバンク山梨です。
ここには連日行政や社会福祉協議会の担当者から食糧支援の依頼が寄せられています。
連絡を受けると企業や農家などから寄贈された食品を生活に困窮する家庭に無償で届ける活動をしています。
これまでに食糧支援を行った家庭は1,000世帯以上。
いっぱいだ!いっぱいだね!当初支援の対象は高齢者や単身の男性が中心となっていましたが今は子どものいる世帯が増え全体の半数近くを占めています。
子どものいる家庭に今何が起きているのか。
食糧支援を受けている澤村さんです。
1人で4人の子どもを育てています。
澤村さんは3年前に離婚。
パートの仕事で得る月10万円と児童扶養手当など8万円で生計を立てています。
家賃や光熱費などの必要経費を差し引くと家族5人の食費は月に4万円ほど。
月によって働く時間が短くなる事もあり収入が減ると食費を切り詰めざるをえません。
澤村さんが夜まで働く日は子どもたちだけで夕食をとっています。
食費に2万円ほどしか充てられない月もあります。
野菜や肉類はほとんど買えなくなり米や麺などが中心になるといいます。
食べ物にも事欠く暮らしは子どもたちの日常に影響を及ぼしています。
母親が働いている間兄弟の世話や家事を担うのは長男の武史さん17歳です。
中学の頃から不登校になりました。
経済的な理由から友達と同じ事ができず孤立しがちだったといいます。
もう一度やり直したいと思った武史さんは母子世帯向けの貸付金を利用して高校に進学しました。
しかし周囲になじめず人と関わる事に自信が持てなくなっていきました。
高校に通えなくなり中退。
家に閉じ籠もるようになりました。
この日澤村さんが仕事から帰ってきたのは子どもが寝静まった深夜11時半。
荷物の積み降ろしなど体力を使う仕事で腰痛に苦しんでいます。
しかし体を休める余裕はありません。
親子で一緒に過ごす時間も十分にとれない日々が続いています。
なぜ子どものいる家庭に困窮が広がっているのか。
NPOは大学と共同で実態調査に乗り出しました。
対象はNPOの食糧支援を受けてきた子どものいる家庭270世帯です。
はい。
こんにちは。
調査を進めるうちに特に母子家庭の子どもたちが厳しい状況に置かれている事が分かってきました。
この日訪ねたのは幼い子ども2人を育てるシングルマザーの…派遣社員として働く倉田さんの月収はおよそ8万円。
児童扶養手当などの7万円を合わせて生活しています。
ちょっと厳しいですね。
家賃や通勤に欠かせない車の維持費など生活に必要な費用を支払うと月末には所持金がほとんど無くなります。
(泣き声)2人の子どもはぜんそくが原因で体調を崩す事が少なくありません。
しかし病気の子どもを預かってくれるところが見つからず会社を休むと仕事を失うという悪循環が続いています。
食糧支援を受けてきた子どものいる家庭270世帯への調査。
世帯主の多くが非正規雇用で平均年収は187万円。
1人当たりの一日の食費は329円。
全国平均の半分です。
2割の家庭は200円未満でした。
更に経済的な理由から子どもたちのさまざまな機会が奪われている実態も分かってきました。
塾や習い事に行かせられない。
子どもを遊びに連れていってあげられないと答えた親は全体の4割。
十分な医療を受けさせられないという親は2割。
そして貧困が子どもの健康や精神状態に影響を与えていると答えた親は全体のおよそ6割を占めました。
今日はゲストのお二人とこの問題について考えていきます。
ご紹介します。
子どもの貧困問題がご専門の国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩さん。
そして若者支援の活動を続けている鈴木晶子さんです。
よろしくお願いします。
(2人)よろしくお願いします。
鈴木さんはフィールドワークを続けてこられて今のこの貧困の実態どのように実感されてますか?衣食住っていうところで言いますとやはり高校生の育ち盛りの男の子が一日菓子パン1個で生活してるとかポテトチップ1人1袋でお昼ごはんを済ませているとかそういった場面というのは若い困窮世代の子どもたちを支援しているとよくある場面で非常に広がってきているなというのを感じます。
貧困といいますと経済的な問題という事に焦点が当たりがちですが阿部さんはその貧困の姿をどういうふうに捉えてますか?経済的な困窮というのはただ単にお金がないという事ではなくそのほかにもいろいろな影響を及ぼすんですね。
経済的な困窮を基にして人間のあらゆる側面に生活のあらゆる側面に影響してしまうというのが今の貧困の恐ろしいところだと思います。
先ほどもありましたように身体的なものもありますしまた友人とつきあう事ができないといったような事もありますし今の日本の社会の中では経済的な豊かさが学力ですとか体力ですとかあらゆるところに影響してきますのでそれらを内在化してしまうと自分は価値のない人間ではないんだろうかといったような事で自分の肯定感が下がってしまうといったような連鎖を起こしてしまう訳ですよ。
子どもたちが当たり前の事ができなくなっているという事をしっかり認識すべきであると。
子どもの心と体にも深刻な影響を与える貧困。
背景にあるのがひとり親世帯の経済的困窮です。
日本の…各国比較の最新データがある2010年の時点では先進20か国の中でも最悪のレベルです。
特に母子家庭は年々増え続け…そのうち8割が働いていますが困窮した暮らしから抜け出しにくいという指摘もあります。
阿部さんこれはどういうふうに考えたらいいですか?究極的には女性の就労の問題とまたそれの背景にあるのがやはり女性は男性と結婚してそれで男性が主な稼ぎ手で女性はサブの稼ぎ手であるというような固定観念からの作られた労働の環境というのが女性が一人で子どもを育てていくといった時には非常に障壁になってしまう訳ですね。
ですので子育てをしながら正社員の職に就くというのが非常に難しいというのはひとり親世帯でなくても全ての女性の問題でありますし。
特に独り身の女性ですね単身の女性に関しては非常に貧困率は高いんですね。
実のところ。
それをましてや一人で子育てもし稼がなければいけないっていうふうになると二重三重の困難に立ち向かわなければいけないというふうになります。
子どもをケアして休まなくてはならないかもしれないというリスクを抱えたまま就職活動を実際していっても正社員はおろか非正規雇用の中でもフルタイムに近いある程度時給が確保できるような待遇のいい仕事っていうのは就きにくくてかなり条件の厳しいパートタイムのお仕事をそれだけでは足りないので短い時間のものを二重三重にトリプルワークまでして生活を支えているようなお母さん方もいて非常に労働市場の中で子育て中の親御さんというのは不利な状況に置かれているのは確かだと思います。
(阿部)女性はそのうち男性と結婚するだろうですとか先入観念をもとに女性の貧困について今まで社会というものも政府というものも見てこなかったというのがあるかというふうに思います。
これは本当に解決しなければいけない問題な訳ですけども鈴木さん。
どうしてですねなかなかこれが見えてこない。
知らない人も多いですよね?こういう実態について。
そうですね。
いくつか理由はあると思うんですけれどもやはり当事者自身がですね声を上げにくい。
一体どこに助けを求めていいのか分からないとか何をどういうふうに助けを求めていいのか分からないというような状況があると思います。
更に子どもたちは例えば貧しいという事がいじめやからかいの対象にもなりえますし恥ずかしい事だと感じている子どもたちもたくさんいますので先ほどのVTRの子どものように「お金がないとは言えない」というふうにですねなかなか声を上げづらくなっている。
そうした中で隣の人からも貧困が見えないとかですねそういった状況にもなりますしそもそも生活に困窮してる貧困の方々とそうでない方々っていうのは生活をしているそもそも場所が違ったりとかですねあまり実はそれぞれがバラバラに生活をしているのでなかなか交わる機会が少ないというところもあると思います。
(村石)周囲の目からは見えにくいといわれる子どもや女性の貧困。
東京・三鷹市にある大学病院です。
心身に不調を来し病院に運び込まれて経済的困窮が明らかになるケースが増えています。
この日運び込まれた23歳の女性。
非正規雇用で働いてきましたが3か月前仕事を失いました。
今後も仕事が見つからないのではないかという不安に駆られ大量の風邪薬をのみ意識を失ったといいます。
衰弱して倒れたという20代の女性も搬送されてきました。
2人の子を持つ母親でした。
厳しい生活の中で子どもを抱え追い詰められた女性。
重い肺炎を引き起こしていました。
患者の生活や経済面の相談に乗っている加藤雅江さんです。
貧困が周囲から見えない事で事態が深刻化するケースが増えていると感じています。
生活が困窮していても支援がある事さえ知らない女性も多いといいます。
妊娠7か月の…住んでいる自治体では妊婦検診に補助がある事を知らず費用が払えないと思い病院に来る事をちゅうちょしていました。
両親ともに収入の不安定な仕事で子どもの頃から生活は楽ではなかったと言う理加さん。
定時制高校を中退し建設現場で働いていました。
職場で出会った男性との間に子どもを設けましたがその後男性は仕事を失いました。
子どもは1人で育てなければならないと考えています。
理加さんには2人の幼い妹がいます。
親には迷惑はかけられないと高校中退後は自活してきました。
このままでは産まれてくる子どもにも不自由な生活をさせてしまうと感じています。
この病院では深刻な問題を抱える親子や女性たちを行政の窓口につないでいますが支援の限界を感じています。
(榎園)社会の中で孤立を深めていく親子や女性たち。
助けを求めても公的な支援になかなかたどりつけず困窮を深めていくケースも少なくありません。
都内に暮らす山本さん。
32歳のシングルマザーです。
妊娠してからもホテルでのアルバイトで生計を立てていた山本さん。
5万7,000円の家賃が大きな負担だったため公営住宅に入れないか行政の窓口に相談しました。
しかし応募期間ではない事を理由に断られました。
年金で暮らす高齢の両親には頼れず出産直前まで仕事を続けました。
出産後も暮らしを切り詰め自分の食費を子どものミルク代に回してきた山本さん。
貯金が20万円ほどにまで減った今年10月…職員からはハローワークで仕事を探す事を勧められました。
しかし山本さんが子どもを預けて働ける仕事は見つかりませんでした。
貯金は残り11万円。
家賃も翌月分までしか払えない状態になりました。
先月もう一度福祉事務所に窮状を訴えた山本さんは生活保護を受ける事になりました。
子どもとどこで暮らせばよいのか不安な日々を送った山本さん。
貯金もほとんど無くなっていました。
生活に行き詰まる親子や女性たちをどう具体的な支援に結びつけていくのか。
取り組みを始めた自治体があります。
はいスタート!東京・足立区では全職員を対象にした研修を実施。
まちづくり課や納税課どの窓口でも訪れた人が困窮していると判断すれば福祉の担当者に報告する事を義務づけました。
失礼します。
更に困窮者への支援をきめ細かく行うためにNPOとの連携も始めました。
病気の母親を支えながら働いていた30代の女性。
体調を崩し仕事を失いました。
NPOは女性が抱える問題を細かく聞き取り計画書を作成。
医療機関と連携しながらの就労支援など長期的なサポートを行っていく事になりました。
医療機関に運び込まれる女性たちの姿がありましたがどうご覧になりましたか?支援をしていてもかなりいらっしゃるんですがあれほど追い詰められないとSOSというものがこちらから見えないようになっているという方々というのかなりいらっしゃるんですよね。
なので今VTRの女性も本当に痩せてしまってたりもうすぐ出産というところまで来てやっと状況が分かるというそういう方々が本当にたくさんいらっしゃいますし医療機関でなくても私たちのような生活の支援をしているところにもう母子で路上に出るぐらい家を追い出されてやっと発覚するような方もいらっしゃるという状況ですね。
SOSを出すという事はできないんでしょうか?妊娠7か月の女性の例で見ると実際に妊婦検診の補助がある助成があるという事を知らなかったっておっしゃってるんですね。
実際生活に困窮されている方というのは情報弱者である事も多いんですよね。
困窮する世帯の中で育ってきた子たちは特にさまざまな社会の仕組みについて知らない事が多い。
実際親もそれを活用していないがために困窮状況がなかなか改善しないという事もありましてなかなかやはり情報を取りに行くという事も難しいですしそういう情報があるという事もどうやって調べるのかもまた自分が何か助けてもらえるという事を知らないという方が非常に多いかなと思いますね。
「助けて」と言えない親子や女性たち。
今ある支援は例えば母子世帯へは所得や子どもの数に応じて支給される児童扶養手当などの経済的支援やシングルマザー向けの就労支援などです。
そして最低限の生活を保障するのが生活保護最後のセーフティーネットです。
子どもを貧困から救うために制度をどのように利用すればいいのでしょうか?そして今後どのような支援が必要なのでしょうか?働いてるから私は生活保護には該当しないと諦めずに貯金が尽きてきて…実は働いていて足りないという方もたくさん利用していらっしゃるしそういう使い方をして頂けるといいと思うんですね。
シングルマザーであれば児童扶養手当を利用すると。
それでもなおかつ足りないものに関しては生活保護で補うと。
その方の状況に合わせて支援をしていくというのは非常に重要な事になります。
阿部さんどういうふうにお考えになっていますか?
(阿部)低所得者の家計を支援している策が圧倒的に足りないといった事があります。
諸外国においては公営住宅のような公的な住居を供給している国もたくさんありまして日本もありますけれども数的に絶対的に足りないんですね,そのほかにも家賃補助ですとか食料費の補助ですとか光熱費の補助といったようないろんなメニューを設けて低所得者の家計を支える支援策を用意しています。
やはり支援策の方の拡充というのが絶対的に必要になってくるかなというふうに思います。
そんな中で足立区の取り組みをご覧頂きました。
さまざまな窓口で困窮している人を見つけた場合にそれを福祉の窓口につなげようという取り組みですね。
考えてみると行政の中には情報はたくさんある訳ですね。
これをもっと生かしていくべきだろうと。
そうですね。
税金や保険料ほかにも水道料金であるとか保育園の保育料とかですねそういったさまざまな行政が徴収するお金に関して滞納があった場合には困窮のSOSとして市役所の方からきちんと案内を出すというような取り組みがありましてフットワークの軽さは民間は持っているんですけれども行政の持っている困窮者のSOSに関わる情報に比べると圧倒的に少なくてですね本来は行政が一番そういう困窮のサインをキャッチするのはできるはずなんですよね。
たとえそれを全てキャッチしてキャッチしたあとにどうやってサポートしていくのかといったところでのメニューが少ないといった事もあるのでキャッチするだけでは不十分でそれ以降にその方々をどうやって支援していくのかというところまで含めて日本の社会が求めなければいけないところだと思います。
この貧困の問題について国も動き始めています。
今年の8月に閣議決定されました「子供の貧困対策に関する大綱」。
これには4つの柱があります。
まず学習支援の推進などを目指す教育の支援。
生活相談の機能強化や子どもの居場所作りを進める生活の支援。
親の自立や学び直しを支える保護者の就労の支援。
そして経済的支援。
ひとり親家庭への支援について調査研究の検討などです。
国はこうした方針を打ち出したんですが既に各地でこの試金石ともいえる取り組みが進んでいます。
子どもを貧困から救い出すために保護者への支援を包括的に行う取り組みが進められています。
発達に心配のある子どもたちを預かる札幌市の社会福祉法人です。
子どもたちの親の中には経済的に行き詰まったシングルマザーも多く生活を立て直すためにおよそ60人を雇用しサポートしています。
ここでの支援によって生活の困窮から抜け出しつつある家族がいます。
17歳と15歳の2人の娘を育てるシングルマザー…9年前に離婚。
専業主婦だった島田さんは仕事も見つからず生活は一気に苦しくなったといいます。
島田さんは8年前長女を通わせていた事がきっかけで支援を受ける事になりました。
貯金も底をついた島田さんが最初に受けたのは経済面の支援でした。
幼い2人の子どもを抱え働きに出る事が難しかった島田さん。
社会福祉法人のスタッフの助けで生活保護を受給する事ができました。
この社会福祉法人の支援はこれだけにとどまりません。
親子の精神的なケアから就労支援まで生活を一貫して支えていかなければ子どもを貧困から救い出せないと考えているのです。
島田さんもまたさまざまな悩みを抱えていました。
先の見えない生活への不安から事あるごとに子どもたちにきつくあたっていたのです。
母親の精神的な不安定さは子どもたちにも影響を及ぼしました。
中学3年生の次女のかれんさん。
4年前から不登校になりました。
島田さん親子の様子を心配したスタッフはグループカウンセリングへの参加を勧めました。
同じ境遇の女性同士が不安を打ち明け合う事で島田さんの気持ちが安定すると考えたのです。
島田さんも徐々に苦しい胸の内を語れるようになっていきました。
就労支援も始まっています。
この社会福祉法人が運営するカフェーで接客などのトレーニングを受け週に5日働けるようになりました。
月に12万円の収入を得るようになった事で…経済面や精神面のケア就労支援。
一貫したサポートを受ける中で島田さん親子の生活は少しずつ安定していきました。
4年間不登校だった中学3年生のかれんさん。
2か月前から学校に少しずつ通えるようになりました。
今は高校への進学を目指しています。
はい行ってらっしゃい。
行ってらっしゃ〜い。
貧困の親から子への連鎖を断ち切るために教育現場の模索も始まっています。
学校以外の人々の力を借りて子どもたちに安定した進路を選択させようという取り組みです。
東京・足立区の…全校生徒640人余り。
経済的に厳しい家庭に育つ生徒も少なくありません。
中退する生徒の割合は都立高校の中でも高く…進路が決まらないまま学校を離れてしまう生徒も多い事が長年の課題でした。
昨年度の高卒の就職内定率は98%。
しかし高校を中退すると就職は厳しくなり貧困に陥るリスクが高まるため国も対策を強化すべきとしています。
おはようございます。
(一同)おはようございます。
高校では去年からNPOと連携し塾に通えない生徒などを対象に無料の補習講座を始めました。
参加しているのはおよそ30人。
学習への意欲を引き出し中退の防止だけでなく進学にもつなげたいとしています。
更に経済的な理由で進学を諦めざるをえない生徒が安定した仕事に就けるよう就職支援も強化しています。
高校からの委託を受けて進路相談を行うのはNPOのスタッフ…不登校や引きこもりなど若者の自立支援の専門家です。
教師には打ち明けにくいという子どもたちの相談に乗り適切な進路に導いています。
この日一人の生徒が相談に訪れました。
専門学校に進学を希望していた…母親に学費の負担はさせられないと進学を諦めたといいます。
五十嵐さんの心配は進路の変更でゆきさんが将来への希望を失ってしまう事でした。
当初気落ちして教師には相談しなくなっていたゆきさん。
五十嵐さんはゆきさんと一緒に仕事を探し励まし続けています。
都営住宅で母親と2人で暮らしているゆきさん。
ホテルでのベッドメークの仕事で生計を立てる母親との切り詰めた暮らしが続いています。
学生の間では子どもとして見られる事が多いですが…。
ゆきさんは母親の家事を手伝いながら希望する会社の面接に備えて練習していました。
また自分だけではなく周りや会社の迷惑になるので積極性も大事にしていきたいですが。
ゆきさんにとって初めての就職試験の日です。
会社へ向かうゆきさんのもとに五十嵐さんと同級生が駆けつけました。
靴早く履かないと。
時間が…。
行ってきます。
間もなく社会に出るゆきさん。
周囲の支えの中で今も就職活動を続けています。
各種の支援の取り組みでしたけれども鈴木さん。
最初の母親シングルマザーを支える取り組みはどうご覧になりましたか?はいそうですね。
子ども若者の支援ってやっぱり世帯丸ごとの支援が必要なんですよね。
生活保護の申請のような生活の支援からですね働き場所を提供するまで就労までですね一貫した支援っていうのを親子ともども受けられる場所というのは非常に貴重ですし是非ほかの地域でも同様の世帯丸ごとのワンストップの支援を期待したいというふうに思いました。
子どもたちを高校でしっかり支えていこうという取り組みありました。
これはどういうふうにご覧になりました?実は子どもの貧困対策の中でも学校のプラットフォーム化という事がうたわれていまして先ほどありましたように学習支援就労支援だけではなく生活の支援まで含めたものが今後学校にああいうふうに入ってくると学校を一つの基点として子どもとその親たち世帯全体が支えられるという取り組みができると思います。
特に高校で言いますと一つは高校までは…。
高校進学率って高いですから高校までは子どもたちの姿ある程度しっかり見えてる最後のチャンスであるという事と持っている情報を学校だけで抱えずに地域に開いていく事で地域の手助けを借りてさまざまな支援をしていく。
そしてそうする事で卒業したあとも地域とのつながりが在学中から持てているそのつながりがあれば何か卒業後も困った時に地域のあのNPOに頼りに行ってみようという事もできるようになるんですよね。
急がれる子どもへの支援。
子どものいる家庭への公的支出の割合を先進20か国との比較で示したグラフです。
日本はアメリカやカナダなどに次いで4番目に低い水準となっています。
まだまだそういった支援は不足しているというのが実感ですか?そうですね。
やはり財政的な措置というのが必要になってくる訳ですね。
その財政的な措置を子どもの貧困に対して向けるという社会的な合意というのが必要になってくるかなというふうに思います。
子どもの貧困対策というのは長い目で見ると投資になるんです。
お子さんが高い学力をつけ社会人となって税金を政府に返してくれる訳ですから非常に投資としても効率が高いといった政策かと思うんですけれども現状の今の財政状況が厳しいといったところでその投資に回すだけのお金を充てられてないというのが現状かというふうに思います。
子どもの貧困を解決するそういう目的に向かって大事な視点ですね。
鈴木さんどんなとこに感じてらっしゃいますか?先進事例というのが今回紹介されましたのでこれをどこの地域に住んでいても必ずこうした支援が受けられるというふうに全国に広げていかなくてはならない。
住んでる自治体によってかなり救済されるそういう子どもたちもいるけれども全然放っておかれる子どもたちがいるというのでは本当に自治体間の格差になってしまいますので全国にこうした取り組みが広げられるよう国が財政的な責任をしっかり持って自治体に配分していくという事が必要になってきますし民間でも自治体でも本腰を入れて力を入れていくというそういう必要がまだまだあるというふうに思ってます。
阿部さんはいかがですか?そうですね。
まずは理解だというふうには思います。
これまで子どもの貧困といってもゲーム機を買う事ができないんだろうですとか塾に行く事ができないんだろうと。
それぐらい我慢すればいいじゃないかといった空気で大した問題ではないというふうに捉えられがちだったと思うんです。
でも今日のVTRもありましたように育ち盛りのお子さんが十分に食べる事もできないといったような状況であったりお母さんがうつ状態になってしまって子どもと一緒に死にたいというふうな言わざるをえないような状況になってるというような本当に深刻な状況が今実際起こってる訳です。
これに対して先進諸国で福祉国家としていいのだろうかと。
自分の国でおなかいっぱい食べられない子どもがいていいんですかというのを今大人は全て自分に問いかけるべきだと思うんですね。
それはいけないだろうと思うのであればじゃあ私たちも痛みを伴ってこれを解決しますという覚悟ができるんではないかなというふうに思います。
周囲の大人たちの支援を受けて苦しい生活から抜け出そうとしている少年がいます。
うまそう。
(一同)頂きます!NPOの食糧支援を受ける山梨県の澤村さん親子です。
4人兄弟の長男…高校を中退して自宅に閉じ籠もるようになってから2年がたとうとしていました。
こんにちは。
こんにちは。
食糧支援を通じて各家庭の相談に乗っているNPOのスタッフ。
武史さんにも声をかけてきました。
自信を失っている武史さんが将来に向けて踏み出すためには社会との接点を取り戻す事が大切だと考えています。
地域の人たちと運営する農園に来て力を貸してほしいと半年前から呼びかけてきました。
ああ…はい…。
この2年厳しい暮らしの中で心を開く事ができなかったという武史さん。
家族以外でここまで親身になってくれた人はいませんでした。
誘いを受けてから半年。
武史さんがこの日初めて農園にやって来ました。
頼まれたのは畑を耕す作業。
地域の人たちに見てもらうために2万株の花の球根を植え付けます。
武史さんはスタッフと共に2時間にわたって汗を流しました。
私たち一人一人は子どもたちの未来のために何ができるのか。
この日少年は小さな一歩を踏み出しました。
この冬が過ぎると畑一面は花に覆われます。
知りたい!ありがとうございます!2014/12/28(日) 21:00〜22:00
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「子どもの未来を救え〜貧困の連鎖を断ち切るために〜」[字]
今、子どもの6人に1人が、国が基準としている“貧困ライン”以下の暮らしを強いられている。背景にあるのは貧困の世代間連鎖。現場ルポを通して連鎖を断ち切る道を探る。
詳細情報
番組内容
今、子どもの6人に1人、およそ300万人が国が基準としている“貧困ライン”(一人世帯122万円未満)以下で暮らしている。事態を重く見た政府は今年8月「子どもの貧困対策に関する大綱」を閣議決定。貧困の世代間連鎖が大きな課題とされた。連鎖を断ち切るためには何が必要なのか。取材班は、厳しい暮らしを強いられる子どもたちをルポ。各地で始まった試行錯誤も紹介しながら、子どもたちの未来への処方箋を考える。
出演者
【出演】国立社会保障・人口問題研究所部長…阿部彩,NPO法人理事…鈴木晶子,【キャスター】内多勝康
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ニュース/報道 – 報道特番
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