・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
修和女学校を卒業したはなは故郷に戻り小学校の教師になりました
(朝市)おはようごいす。
(もも)おはよう朝市さん!
(ふじ)おはようごいす。
(吉太郎)今日っから朝市も念願の先生か。
うん。
はな行こう。
(はな)うん。
はな…。
てっ…。
はなは6年生の担任になったのですが…
(騒ぐ声)
(キヨシ)勉強なんやりたかねえ!勉強なんやりたかねえ!お願いだから静かにして。
(騒ぐ声)ほれじゃあ今日の理科の授業は生き物のお勉強をします!
(鐘の音)
(緑川)校長先生!大変です!6年生の教室に人っ子一人いねえです!
(本多)何!?
(生徒たち)グッドモーニング!グッドアフタヌーン!グッドイブニング!せ〜の!ハ〜イ…。
(寅次)早く教室戻れ!今に校長先生の雷が落っこちるから!おまんら授業サボってどけえ行ってただ!校外授業です。
校外授業だと?はな先生と野の花を摘みました!バッタも捕めえたさ!英語も教わったじゃん!英語?
(本多)おまんはなにょう考えてるだ!
(たえ)はな先生を叱らねえでくりょう。
(生徒たち)校長先生アイムソーリー!うるせえ!金輪際英語なん生徒に教えるじゃねえ!英語は禁止!も…申し訳ありませんでした!校長先生。
安東先生は生徒が騒いでうるさかったからほかの学年に迷惑かけねえように校外授業に出かけただと思います。
今日だけは許してやって下さい。
生徒たちこんなに楽しそうだし…。
楽しきゃいいってもんじゃねえ!おまんら2人とも教師の自覚が足ら〜ん!はな!朝市!立っちょれ〜!
(赤ちゃんの泣き声)
はなは新任初日にして教師失格のらく印を押されてしまいました
おまんちは貧乏だから弁当持ってこれんずら。
(マサル)ほうだほうだ!貧乏がうつるからあっち行けし。
あっち行けし〜。
回想もも。
白い米のおまんまがあんなにいっぺえ!
(キヨシ)おまんなにょうしてるだ?たえさんは想像の翼を広げてるの。
(生徒たち)想像の翼?ええ。
その翼を広げればどんな鳥よりも高く飛べるし雲のごはんだって食べる事ができるのよ。
先生どうして分かるでえ?先生も小さい頃そうだったから。
おらだけかと思ってたけんど先生もほうけ。
うん。
(おなかが鳴る音)これ食べろし。
てっ!ふんだけんど先生は?先生はおなかがいっぱいなの。
(たえ)ありがとごいす。
頂きます。
小山たえの事だけんどな。
おまんの弁当をやるのもたえのためにゃならん。
一回弁当やったら明日っから弁当がねえともっとつらくなる。
ほんな生徒を考えもなしに中途半端な情けをかけたらけえって不幸んなる。
おまんみてえな甘ったるい同情心じゃ救えんだ!
そして1か月が過ぎました。
はなはここ1週間学校を休んでいるたえの事が心配でなりませんでした
おまんに話すとまた余計なおせっかいをすると思って黙ってたけんど小山たえはもう学校には来ん。
てっ…。
もうすぐ親戚のうちに引き取られていくそうだ。
(ため息)もう学校に来んなんて…。
(たえ)はな先生!たえさん!どうしてるか心配してただよ。
弟さんは?よそんちにもらわれてった。
おらも明日親戚んちに行く事になってるだ。
明日?うめえ!本当にうめえなあ。
た〜くさん作っただから腹いっぺえ食えし!ありがとごいす!ん?先生これ読んでもいいけ?うんもちろんだよ。
(周造)ハハハはなのちっくい時とそっくりじゃん。
はなも三度の飯より本が好きだったじゃんな。
本読んでる時にゃ飯腹いっぺえ食ってる時よりも顔がキラキラしてたじゃんね。
(笑い声)たえさん。
連れていきたいとこがあるの。
先生の大好きな場所。
きっとたえさんも気に入るから早く食べて行こう!こんな時分にどこ行くでえ?今日しかないの。
たえさん。
てっ!本がいっぺえじゃん!ここにある本全部読んでもいいだけ?ええ。
先生。
おらもここが大好きだ。
先生の夢はね子どもも大人もわくわくするような本をいつか自分で作る事なの。
へえ〜!先生本作るだけ。
どんな物語でえ?え〜っとそれは…。
聞かしてくりょう。
「ある所に大層太った長いみみずがおりました。
『私のように立派な体を持ってるみみずはどこにもいやしない。
お庭から道端からどこからどこまで探したって私ほどの器量よしは見つからないわ』」。
(物音)てっ!出た!キャ〜!
(朝市)はな!な〜んだ朝市け…。
「何だ」じゃねえら!たえのおやじが夜遅く帰ったら娘の姿がどこにも見当たらねえって。
ごめんなさい!今度は校長の雷じゃ済まんら。
ボコ。
おとうが待ってる。
行くだぞ。
はな先生ありがとう。
この部屋の事も先生の事もずっとずっと忘れねえ。
ごきげんよう。
さようなら。
ごきげんよう先生…。
はなは祈りました。
つらい時苦しい時想像の翼がたえを支えてくれるようにと
回想
(朝市)教師ってのは子どもの人生を預かる責任の重い仕事だっておらは思ってる。
はなは心のどっかで思ってるじゃねえだけ。
本当はこんな田舎の学校の教師になんかなりたくなかったって。
そのとおりかもしれない…。
短い間でしたがご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした。
ちょっと待てし!たったのひとつきで退職願を出す教師がどこにいるだ!まあほうはすぐ代わりの教員は見つからんから明日っから心を入れ替えてこぴっとやれし!てっ…。
でももし今度問題を起こしたら本当に辞めてもろうぞ!はい。
ありがとうごいす!
ようやくはなも先生らしくなってきたある日。
一通の手紙が届いたのです
村の人が届けてくれただ。
それは遠い親戚の家へ行ったたえからの手紙でした
(たえ)「はな先生ごきげんよう。
お元気ずらか?おらは双子の子守をしながらひもじい思いをする事もなくなりました。
でもあんまし元気じゃありません。
ここは知らねえ人ばっかでおらは独りぼっちです。
さみしくて泣きたくなる時もあります。
ほんな時は想像の翼を広げてあの本の部屋に飛んでいくだよ」。
回想「ある所に大層太った長いみみずがおりました」。
(たえ)「先生が作ったお話の続きをいつか教えてくりょう。
楽しみにしています」。
はなはたえのために話の続きを書く事にしました
出来た!てっ!朝市!何書いてるでえ?ああ…これは小山たえさんのために書いただよ。
えっ?たえさん遠い親戚のうちでさみしい思いをしてるみてえだからちっとでも元気になってもらおうと思って。
住所分かっただけ?ほれが…。
ほうだ。
何?朝市。
雑誌に投稿したらどうずら。
雑誌に載ればたえさんもどっかで読んでくれるかもしれんら。
ほら!
そして思い出したのです
回想
(蓮子)はなちゃんは花子と呼ばれたいって言ってたわよね。
世に自分の作品を出す時にその名前を使えばいいじゃないの。
ペンネームね!
夏休みが近づいたある日の事
てっ!
(2人)て〜っ!
なんとはなが児童雑誌に応募した「みみずの女王」が賞を取ったのです
はな?どうしただ?おかしいじゃん。
おら安東花子って書えて出したのに…。
てっ!「村岡印刷」。
「はなちゃんご無沙汰しております。
『みみずの女王』大変面白く拝読しました。
ああはなちゃん何もかもが懐かしくてたまりません」。
回想いい加減にして下さらない!?子どもじみた友情ごっこはもう飽き飽きしました!私から二度と連絡なんかできるはずないのに…。
そのころはなは久しぶりに東京にやって来ました
(須藤)祝賀会もうすぐ始まりますから。
(英治)あっ。
村岡印刷さん…。
安東はなさんこの度はおめでとうございます。
はなじゃありません。
はい?私の名前間違えて載ってたんです。
まさか…。
ほらちゃんと安東はなさんになってるじゃないですか。
安東花子と書いて送ったんです。
入稿した時は確か安東花子さんになってたのに。
えっ?やっぱり!お宅の印刷所が間違えたんだろう!いや…いやうちは頂いた原稿のまま印刷しました。
とにかくちゃんと謝っといてくれよ。
え〜…。
あなたを怒らせたのなら謝ります。
でもなぜ花子がはなになってしまったのか謎ですね…。
(梶原)本気で小説家を目指すの?梶原さん。
あの…私なれるでしょうか?安東君はそこらの人に比べると個性的で常識外れのところもある。
だが小説家になるには普通すぎる。
諦めた方がいいって事ですか。
そうだ。
では受賞のお言葉を頂きましょう。
安東さん。
はい。
(拍手)「みみずの女王」は私が尋常小学校で受け持っているたえさんという生徒と一緒に作った物語です。
その子はもう遠くに引っ越してしまったのでお話の続きを読んでもらいたいと思い応募しました。
そしたら運よくこの賞を頂けました。
この受賞は一回きりのいい思い出として甲府に帰って真面目に教師を続けたいと思います。
ありがとうございました。
(拍手)最初で最後だから花子という名前で載りたかったな…。
それ入稿する時私が本名に直したの。
えっ?やっぱり安東はなの方がはなさんらしいし修和女学校の先生方や同級生も気が付いてくれると思って…。
てっ…醍醐さん気が利き過ぎです!ごめんなさい。
私あの人にひどい事言っちまった…。
村岡さん!どうしよう…。
あれ?まだいらっしゃったんですか。
てっ村岡さん…。
どうも。
ごめんなさい!私の早とちりで誤植じゃなかったんですこれ!友達の醍醐さんがはなに変えてたんです。
ああ…そうでしたか。
本当にごめんなさい!ああいえ。
一つ聞いてもいいですか?花子という名前にどうしてそこまでこだわってたんですか?女学校の頃腹心の友ができて…。
腹心の友?その人と約束したんです。
自分の作品を発表する時は花子っていうペンネームを使うって。
花子は私の夢なんです。
あなたは花子になるべきです。
花子という名前でこれからも書き続けて下さい。
英語の翻訳も続けて下さい。
あなたなら大丈夫です。
じゃあお元気で。
ごきげんよう。
さようなら。
ごきげんよう。
さようなら。
村岡英治からもらった言葉をじっとかみしめるはなでした
・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
童話を書いて賞を取ったはな。
東京で行われた祝賀会に出席しました
(拍手)
(英治)花子という名前でこれからも書き続けて下さい。
(はな)おはようごいす。
(本多)てっ来たじゃん。
こっちこっち。
安東先生早く。
おまんにぴったりの見合いの話が来てるだ。
見合い?甲府にこれ以上いい相手はいねえ。
地主のせがれだ!てっ…武?ハッハッハッハッハ。
それだけはお断りします!
(緑川)より好みしてる場合じゃねえじゃんけ。
ねえ校長。
ほれに人の話は最後まで聞け。
相手は武じゃねえ。
うん。
てっ…武じゃねえ。
詳しい話は徳丸さんとこ行って聞けし。
あそこが持ってきてくれた話じゃん。
はあ…。
はなのお見合い相手は徳丸家と肩を並べる大地主の跡取り息子でした。
そしてお見合いの日
・
(使用人)旦那様!望月さんおいでんなりました。
おおこれはこれは坊ちゃん!さあどうぞどうぞ。
安東はなさんとお母さんのふじさんでごいす。
初めまして。
望月啓太郎です。
はなさんの書かれた童話…。
「みみずの女王」ですか?本当面白かったです。
てっ読んで下さったんですか?ありがとうごいす。
いいご趣味でごいすね。
えっ?
(吉太郎)はな。
吉太郎は徴兵検査で甲種合格となりました
見合いの返事どうするだ?うん…。
いい話だとは思う。
いい人そうだったし。
兄やんはどう思う?おじぃやんとおかあ残して兵隊行くのが気がかりだったけんどはなが結婚しても近くに住んでくれりゃあ安心して行けるじゃん。
いい男じゃん。
おらが女だったらすぐに結婚承知するさ。
兄やん…真面目な顔して冗談言わんで。
はな。
旦那さんに愛想尽かされねえように尽くすだぞ。
気が早いら。
おらははなの父親代わりだからな。
兄やん…。
はなのお見合いから数日後
(キヨシ)廊下に変なおじやんいるだよ。
変なおじやん?グッドアフタヌーン。
はな。
てっ!おとう!?
行方知れずだった吉平がなんと4年ぶりに帰ってきました
おかあはおとうのこん怒ってるけ?怒ってはないけど…もう帰ってこなんもんだと思ってる。
はな!助けてくりょう。
てっ…な…何?おとうが帰っても追い返されねえようなんとかしてくれちゃ!頼む!頼む!おとう…。
ただいま。
(ふじ)ああお帰り。
はなどうしたでえ?えっ…。
何だかそわそわして。
あ…あの…あのね…おとうの事だけんど…。
えっ?おとうが?実は…。
(吉太郎)ああはな帰っただか。
(もも)お姉やんお帰り。
ただいま。
おかあまき置いとかあ。
ああありがとう。
ほいでおとうがどうしたでえ?おとうだと?ううん!えっと…あ…元気にしてるかなって。
あんなやつどうなってても今っ更関係ねえじゃんけ。
縁談?どういう事でえ?
(朝市)はなこないだ地主の跡取り息子と見合いしたです。
グズグズもったいをつけてるけんどこれ以上ねえぐれえいい条件だ。
断る理由もねえら。
さっさと決めろっておまんからそう言って…。
てっ!はな!見合いなん断れ!あんた!おとう!まだ早いじゃん!しまった…。
信じられねえ。
よくものこのこ帰ってこれたもんだな!
(もも)兄やん!
(ふじ)吉太郎やめろし!せっかくおとうが帰ってきてくれただから…。
今っ更何の用があって帰ってきただ!キチ落ち着けし。
俺の事よりはな!望月さんとの縁談なんもちろん断るずらな?ほれは…。
はなを東京の学校で勉強さしたのは広い世界で英語を使って活躍してほしかったからじゃん。
地主に嫁がせるためなんかじゃねえ!こんな狭っ苦しい田舎で一生終えてもいいだか!?よし!俺が今っから徳丸さんとこ行って縁談断ってくるだ!てっおとう!何も知らねえくせに勝手な事するじゃねえ!勝手な事!?おまんははなが好きでもねえ地主と結婚すりゃあいいと思ってるだけ!?2人とも…2人ともやめてくりょう!はなが見合いしたのは何でだか知ってたけ!?兄やんいいから…。
家族のためじゃんか!結婚したら望月さんがこのうちの借金肩代わりして家族の面倒まで見てくれるちゅうでほれではなは見合いしただ!借金?何一つ知らねえくせに…知ろうともしなんだくせに…。
おとうなんか…こんなおとうなんかおらたち家族に必要ねえ!兄やん!ふじ。
長え事すまなんだ。
このとおりだ。
ふじ…。
お帰りなさい。
ただいま。
(徳丸)吉太郎君入営おめでとう!お国のためにこぴっと頑張れし!ほれじゃあ乾杯!
(一同)乾杯!
(拍手)おかあまで晴れがましいだよ。
おら兵役が終わってもそのまま軍隊に残れるように頑張ろうと思ってるです。
てっ。
職業軍人を目指すつもりでごいす!兄やん…。
おお〜頑張れし!
(拍手)俺はほんなの聞いてねえぞ!ちょっとあんた!おとう!ずっとうちにいなんだのにどうやって話せっていうだ。
おとうに許してもらわんでももう決めただ。
おらは軍人になる。
金稼いで家族に楽さしてやるだ。
俺は絶対に許さねえぞ!
(吉太郎)また逃げるだけ!何だとう?おとうはいっつもほうやっておらたちから逃げるじゃんけ!おらはおとうみてえにフラフラ生きたりしねえ。
おまんみてえには絶対にならねえ。
夏休みのある日。
しびれを切らした望月がはなの返事を聞きにやって来ました
てっ望月さん…。
お返事遅くなって本当にすいません。
こちらこそこんなとこまで押しかけて。
望月さん。
あの…私結婚にはパルピテーションが大切だと思うんです。
つまり胸がときめく事です。
お会いするのはまだ2回目ですけんどこれからもっともっといろいろお話をしてお互いの事をもっと知っていくうちにそういう瞬間があるかもしれません。
その時が来たらこぴっと決断したいんです。
そんな訳で…あの…もう少し考える時間を頂けますか?ほれは考えるものではなく感じるものではねえでしょうか?えっ?はなさん。
はい。
この話は白紙に戻さしてくりょうし。
てっ!えっどうして…。
えっ…。
先日あなたにお会いした時僕はときめきました。
だけんどあなたの方はほうじゃなかった。
残念だけんどご縁がなかったようです。
望月さん…。
失礼します。
ごきげんよう…。
さようなら…。
そして季節は巡りいよいよ吉太郎の入営の日がやって来ました
あんた一緒に見送ってくりょう。
俺に見送ってほしくなんかねえら。
あの子本当はあんたに認めてほしかっただよ。
ボコの頃からずっと。
あんた。
おとう…。
(戸が閉まる音)ほれじゃあ行ってめえります!体に気ぃ付けるだよ。
万歳!
(一同)万歳!おとう…。
吉太郎!頑張ってくるだぞ!
そのころ福岡の嘉納伝助の屋敷では蓮子が頻繁にサロンを開いていました
また短歌っちゅうやつか?こげな紙切れ一銭にもならんばい。
(蓮子)あら歌だってお金になるんですよ。
ほう。
そらどげしたら金になるとや?本にして出版するんです。
お金出して下さるんですね。
おう!この嘉納伝助の嫁が作る本ばい。
やるなら金に糸目はつけんでよか。
飛びっ切り豪勢なもん作っちゃれ!もちろんそのつもりです。
はなが初めて教え子を送り出す日です
撮りま〜す。
(シャッター音)はい撮りました。
皆さんご卒業おめでとう。
5月にお引っ越しした小山たえさんから今日お手紙が届きました。
てっ!たえから?読みます。
「はな先生6年生のみんなお元気ずらか?みんなはもうすぐ卒業ですね。
おらは今は学校に行ってねえけんど時々そこの教室に遊びに行きます。
こないだおとうが一冊の本を買って届けてくれました。
ほこにはな先生の『みみずの女王』が載っててドキドキしながら読みました。
読むと笑えて胸の奥にポッと明かりがともったみてえに元気になるだよ。
おら元気で頑張ってるからみんなも頑張れし。
アイラブユー。
サンキュー。
たえ」。
おしまい。
(拍手)これっからいっぺえつらい事はあるとは思うけんどみんながどこにいても家族が見守っててくれてる事を忘れんように。
はい。
ふんじゃあ皆さんお元気で。
ごきげんよう。
さようなら。
(生徒たち)ごきげんよう!さようなら!
(生徒たち)はな先生!てっ!
(生徒たち)先生!ありがとうございました!サンキュー!アイラブユー!・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
(鐘の音)
はなが初めて生徒たちを送り出してから4年の月日がたちました
(周造)よっこらしょ。
帰ったぞ!いい土産を持ってきただ!
(ふじ)はっ?縁談話じゃ!ももの縁談じゃ。
(ふじ周造)てっ!てっ!旅先で知り合った森田君っちゅう若者だけんどこれがなっかなか見込みのあるやつでなあ!新天地の開拓のために一家挙げて北海道に移住するだとう!
(はな)北海道?働きもんのもものこん話したら向こうも是非にと言ってくれてる。
ほれに時代は今北海道だ。
偉え外国の博士も言ってる。
え〜…何だっけな…。
ボーイズベー…アン…。
Boys,beambitious.ほれほれ!ボーイズビーアンビシャスだぞもも!あっおとう。
ももは女の子だからGirls,beambitious.おお!ももよ大志を抱けし!森田君はなでっけえ野望を持った熱い男だ。
どうでえ?夢のある縁談ずら?う〜ん…。
さっきの縁談の話嫌ならお姉やんからおとうを説得するよ。
おら家族と離れるのは嫌だ。
ほれと…おらお嫁に行くなら好きな人のところがいいなあ…。
ひょっとして好きな人でもいるのけ?誰?あ…。
てっ!やっぱし言えねえ!おやすみ!
(鶏の鳴き声)
(朝市)おはようごいす。
ああおはようごいす。
おはよう。
おはよう。
これうちのおかあが漬物漬け過ぎたからって。
てっ!ありがとう!ほら。
うわ〜おいしそう!朝市ほつれてるじゃん。
痛っ!てっ!ごめん…。
(朝市)大丈夫大丈夫。
大丈夫?お姉やん貸して。
ああ…。
出来た。
これで大丈夫ずら。
ももちゃんうまいね。
エヘヘ!これくらいどうって事ねえだよ。
いつでもやってあげるさ。
本当け?ありがとう。
てっ…。
て〜っ!大丈夫け?てっ!大丈夫。
大丈夫。
もしかしてももの好きな人というのは朝市では?
こうなったら急いで朝市とももをくっつけなきゃ。
おとうを諦めさせるためにはほれしかねえ。
うん。
ももの朝市への気持ちに気付いたはなは茶飲み会を計画しました
うめえなあ!本当だなあ。
あ…おらちっと御不浄に。
ももちゃんもっとカステラ食えし。
武!ここんちは広いから迷子になってしまうかも分からん。
一緒に来てくりょう。
はあ…甘えん坊なやつじゃん。
ももちゃんほら。
ありがとう。
武うちまで送ってくりょう。
何ではなたれを送らんきゃならんでえ?いいから!えっ?おお…おい。
あっほういやあももちゃん北海道行く人と縁談があるだって?朝市さんどうすればいいと思う?ももちゃんならきっといいお嫁さんになるら。
ふんだけんど周りに流されて気が進まん結婚だけはしん方がいい。
うん。
送ってくれてありがとう。
ほれじゃ。
うん。
ももちゃんおらの顔何かついてるけ?ううん!おら最高に楽しかったさ!ほうけ。
ならいいけんど。
ほれじゃ。
(小声で)…という訳さ。
ももは朝市の事が…。
ある日の事です
(寅次)安東先生郵便ずら。
ありがとうごいす。
てっ!
それは9年間も絶交していたあの蓮子からの手紙だったのです
「踏繪」…。
「白蓮」…。
その本は当時一世を風靡した竹久夢二が装丁を施した歌集でした
(蓮子)「前略安東はな様。
以前『児童の友』という雑誌であなたの童話をお見かけ致しましたがあれ以来待てど暮らせどあなたの作品は一作も見かけません。
その間に私は歌集を出す事に相成りました。
あなたはいつになったら安東花子の名前で本を出すのですか?ではごきげんよう」。
蓮様…。
はなの胸にはたまらない懐かしさが込み上げてきました
蓮子の歌集に刺激されたはなは物語を書こうとしますが…。
しかし「書きたい。
書かなければ」と焦れば焦るほど自分にいらだってしまうのでした
(朝市)はな?ボコみてえな顔して…。
朝市さん…。
大好きな朝市の心の中にいるのは自分ではない。
その時ももは知ってしまったのです
そしてももは重大な決意をしました
おとう。
おらあの縁談受けようと思う。
おらはおとうが選んでくれた人と結婚する。
だってももには好きな人が…。
はな。
もういいら。
おかあ…。
ももが自分で考えて決めた事さ。
おかあは賛成じゃん。
ほんな…。
このままでいい訳ねえ。
お姉やんお帰り。
もも。
行こう。
どこに?朝市が本の部屋で待ってる。
てっ!ももは朝市の事が好きなんだよね。
やだなあ!お姉やんまでなにょう言ってるでえ。
縁談の話受ける前に朝市にももの気持ちこぴっと伝えた方がいいと思うの。
心に思ってる事を伝えないのは思ってない事と同じ事だよ。
お姉やん…。
行こう。
分かった。
朝市さん。
あれ?ももちゃん。
どうしたでえ?朝市さん。
おら…。
朝市さんが…好きだ。
ももちゃん北海道にお嫁に行くって…。
ほの前にちゃんと言いたかっただよ。
子どもの頃からずっと好きだった気持ちをなかったこんにするなんて寂しすぎるら。
ふんだから朝市さんにこぴっと気持ち伝えてからお嫁に行く事にしただ。
朝市さんもこぴっと伝えんきゃ駄目だよ。
朝市さんはお姉やんが好きずら?うん。
好きだ。
ちゃんと言ってくれてありがとう。
おらこれで安心して北海道に行ける。
絶対…幸せんなる。
さいなら。
ふんじゃあね!
(ふじ)もも。
お帰り。
おかあ…。
もも。
おら…。
(泣き声)もも偉かったじゃんね。
(泣き声)
はなはももの初恋が実らなかった事を知ったのです
そしてももが北海道に旅立つ朝がやって来ました
お姉やんの新しい物語楽しみにしてる。
書えたら送ってくりょう!約束だよ。
おらの事今日まで育てて下さってありがとうごした!
こうしてももは北海道へ旅立っていきました
よし。
平凡な私にしか書けない普通の話を書くじゃん。
「百合子は一人っ子でしたからお友達が遊びに来ない時は寂しくてたまりませんでした。
『誰か遊びに来ないかなあ』と言いながらお庭の木戸から裏の原っぱへ出ていきました」。
「『私ねお父さんたんぽぽは子どもに似ていると思うの。
チョウチョウやハチと一日中元気に踊っているようじゃありませんか。
お日様が沈むとたんぽぽも目を塞いで眠りますのよ』」。
「『お父さんもこれからはたんぽぽを邪魔だなんて言わないようにしようね』。
お父さんは優しく百合子の頭をなでました」。
はなは書き上げた作品をかつて働いていた出版社に持ち込む事にしました
(梶原)「君は小説家になるには普通すぎる」と言ったよね。
はい。
諦めた方がいいと言われました。
君の新作はひどく普通だ。
安東君。
あっあっ大丈夫です!慰めとかそういうのは一切いりませんから。
これでこぴっと諦めがつきました。
話は最後まで聞きたまえ。
この作品は何気ないありふれた日常を切り取ってる。
ささやかな暮らしの断片に光を当て奇をてらったところが少しもない。
そこが実にいい。
てっ…。
君は平凡さを逆手に取ってすばらしい作品を書き上げた。
洗練された平凡。
それは直ちに非凡さに通じるものだ。
是非出版させてくれ。
本にして頂けるんですか?よろしく。
(醍醐)おめでとうはなさん!…じゃなかった。
安東花子先生おめでとう!
ついに花子の名前で本が出版される事になったのです
そのころ朝市は…
回想
(もも)朝市さんもこぴっと伝えんきゃ駄目だよ。
はな。
おらずっとはなの事が好きだっただ。
結婚してくりょう。
今度こそ安東花子の名前で出して頂けるんですよね。
もちろん!ただし出版社はここじゃない。
えっ?実は近々出版社を作る事になったんだ。
もし君が本気で執筆を続けていく気があるなら東京に来ないか?新しい会社で一緒に働いてほしい。
てっ…。
・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
北海道に嫁いだももに励まされて書いたはなの童話がめでたく出版される事になりました
(梶原)独立後の第1冊目として君のあの話を出版したいと思うんだがどうかな?
(はな)ありがとうございます!
そして秋も深まったある日の事
梶原さん!ごきげんよう。
君の本出来たよ。
どうぞ。
えっ。
わざわざ届けて下さったんですか?
(梶原)うちの出版社にとっては記念すべき第1冊目だからね。
わあ…夢見てるみたいです!それから今日はご家族の皆さんにお願いがあって参りました。
お嬢さんを下さい。
(一同)てっ!梶原さん?この間の話真剣に考えてほしい。
ああ!あの話ですか。
(ふじ)はな!あの話って?ほりゃあ結婚話しかねえら!
(周造)そうさな…。
違う…違うってば!実は新しく作った出版社で一緒に働いてほしいとはなさんをお誘いしてるんです。
ほうですか!出版社!是非いい返事を聞きたい。
はな東京に行っちもうだけ?おじぃやんおかあ心配しなんで。
梶原さん。
私やっぱり決心がつきません。
このうちを離れる訳にはいかないので…。
…そう。
「蓮様ごきげんよう。
9年間もご無沙汰してしまってごめんなさい」。
「先日はすてきな歌集とお便りありがとうございました。
白蓮の名で詠まれた歌の数々田舎教師の私にとっては大いに刺激的で触発されました。
おかげで私はもう一度物語を書く事に挑戦できたのです」。
(蓮子)はなちゃん…ついにやったわね!そうその調子!
(レコードを乱暴に止める音)冬子。
いい見合いの相手が見つかったぞ。
銀行の頭取の息子ばい。
何ですって!?近いうちに先方と食事するごとになったきいいな。
(冬子)おとっちゃん…。
冬子さんがかわいそうだと思わないんですか!?何を言う!冬子の幸せを思っちょるきこそこの縁談を持ってきたとやないか!冬子さんはそれでいいの?わしの言うとおりしちょったら間違いないき!横暴です!冬子さんはまだ若いんです!もっと教養を身につけて自分の可能性を広げるべきです!おなごんくせに学問やらせんでよか!学のあるおなごはわしは好かん!じゃあなぜ私と結婚などしたんですか!あなたは私のどこを好きになったんですか!お前の華族っちゅう身分とそん顔たい!身分と顔?そんなの愛じゃないわ!あなたは何一つ私を理解しようとなさらないじゃありませんか!黙らんか!お前の身分と顔以外…どこを愛せちいうとか!
一方甲府では…
東京の出版社の事迷ってるだけ?ううん。
朝市こそ浮かない顔してどうしたでえ?悩みがあるならはな先生が聞いてやるじゃん。
回想お姉やんが好きずら?こぴっと伝えんきゃ駄目だよ。
はな。
大事な話があるだ。
えっ?放課後時間あるけ?うん。
教会の本の部屋で待ってるから後で来てくりょう。
しかし大変な事が起こります
はなちゃ〜ん!おかあ!大変だ!周造さんが倒れただよ!おじぃやんが?先生。
一命は取り留めたけんど心臓がかなり弱っている。
もう一遍発作が起きたらほの時は…覚悟してくりょう。
もう無理させんように。
ああ…字が読めたらな…。
(吉平)あの…。
俺でよかったら読みますけんど…。
ふんじゃあ読まして頂きます。
「『たんぽぽの目』。
百合子は一人っ子でしたからお友達が遊びに来ない時は寂しくてたまりませんでした。
『誰か遊びに来ないかなあ』と言いながらお庭の木戸から裏の原っぱへ出ていきました」。
「お父さんは優しく百合子の頭をなでました」。
おしまい。
婿殿。
はい。
わしはもうそう長くはねえ。
お父さん…。
ふじの事こぴっと頼むぞ。
子どもたちの事も頼んだぞ。
もう一遍読んでくりょう。
はい。
「『たんぽぽの目』。
百合子は…」。
それから吉平は周造にせがまれ何度も「たんぽぽの目」を読み聞かせました
ただいま。
ああお帰り。
あっおじぃやんもう大丈夫け?
(周造)ああ。
お帰り。
はなの作る話は面白えなあ…。
今日何べんも何べんも婿殿に読んでもらっただ。
てっ…おとうに?ああ。
はな。
見っけた夢は夢中になって追っかけろし。
この手でわしらの作れんものを作ってくれっちゃ。
「たんぽぽの目」。
じぃやん大好きじゃん。
おじぃやん…。
甲府に初雪が降った日周造は眠るように息を引き取りました
(足音)ごめん。
待ったけ?校長先生に捕まっちまって。
大丈夫?うん。
相談って何ずら?学校の事け?ううん。
ふんじゃあ…。
東京から出版社の人が来た事あったら?ほの事で…。
迷ってるだけ?おかあたち残してとても上京なんてできねえって一遍は諦めたけんど…。
はなは東京に行きてえだけ?うん。
ふんじゃあ行けし。
朝市…。
一生懸命やって勝つ事の次にいい事は一生懸命やって負ける事だ。
おとうおかあ。
聞いてくりょう。
何でえ?改まって。
おらを東京に行かしてくりょう。
てっ…。
おら本気で夢を追っかけてえ。
本作る仕事に就きてえさ。
おらこれまで人生は足し算だと思ってた。
明日は必ず今日よりもいい事があるって信じてた。
ふんだけんど大好きなおじぃやんが死んでしまって…。
人生は引き算なのかもしれない。
ほう思ったら何だかじっとしていられんくなったさ。
勇気を振り絞って自分の足で一歩を踏み出さんきゃって。
ほれで東京の出版社に?お願えします!おらのわがままを聞いてくりょう!はながほうしてえならほうしろし。
ふじ!いいだけ?おじぃやんが生きてたらきっと応援してくれるら。
はなのあの本が大好きだったからねえ。
ありがとうおかあ。
ありがとうおとう。
はなが学校を去る日がやって来ました
(戸が開く音)校長先生…。
本当にいろいろありがとうごいした。
思い出すら。
おまんがいっとう最初に学校へ来た時この机へ座ったじゃんね。
回想
(笑い声)
(本多)初めは字も書けなんだおまんが作家の先生目指して東京に行くたぁ本当におまんにゃあいつもびっくりさせられてばっかだわ。
(本多)東京へ行ってもこぴっと頑張れし。
おまんはこの小学校の誇りじゃん!校長先生…。
元気で頑張れし!はい。
さいなら。
安東先生。
安東先生の事は決して忘れんさ。
朝市…。
はなの言いてえ事ぐれえ分かるさ。
「おらの事は花子と呼んでくりょう」ずら。
ほうずら。
今またはなは新しい曲がり角を曲がろうとしていました。
曲がり角の先には何があるのでしょうか
「花子とアン」ここまでいかがでしたか?花子は甲府を出ていよいよこのあと東京に向かって編集者として翻訳家として第一歩を踏み出していきます。
いろいろな出会いがありそして花子はついに恋に落ちます。
このあとも引き続きどうぞご覧下さい。
2014/12/29(月) 10:30〜11:54
NHK総合1・神戸
「花子とアン」ダイジェスト こぴっと一挙放送!「山梨・教師編」[字]
あの感動をもう一度!連続テレビ小説「花子とアン」第8週から第11週まで「山梨・教師編」ダイジェストでお送りします。
詳細情報
番組内容
(第8週)学校を卒業したはな(吉高由里子)は母校の小学校の先生になる。赴任早々問題を起こして自信をなくすはなだが、生徒・たえに、自作の物語を聞かせる約束をし、ペンを握る。(第9週)はな(吉高由里子)のもとに見合い話が舞い込む。はなが返事を先送りにするなか、数年ぶりに帰ってきた吉平(伊原剛志)は縁談に反対。吉太郎(賀来賢人)と大げんかになる。
出演者
【出演】吉高由里子,伊原剛志,室井滋,賀来賢人,土屋太鳳,窪田正孝,高梨臨,マキタスポーツ,相島一之,山田望叶,伊藤真弓,鈴木亮平,石橋蓮司,仲間由紀恵
原作・脚本
【原案】村岡恵理,【脚本】中園ミホ
キーワード1
連続テレビ小説
キーワード2
花子とアン
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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