・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
(かよ)お姉やん。
もうあの人の事待ったりしちゃ駄目だ。
村岡さんは結婚してるだ。
まさか自分が道ならぬ恋をしていたなんて思ってもみなかったはな。
それでも新しい雑誌の完成に向けて大忙しの毎日を送っていました
あとは宇田川先生の連載小説だけですね。
(須藤)もうこれ以上待てません。
ほかの作家に頼んだらどうでしょう?
(梶原)いや宇田川満代の連載はこの雑誌の目玉になる。
諦めずに口説き落とそう。
・安東さん電話。
(はな)あっはい。
ありがとうございます。
はい安東でございます。
・宇田川満代です。
てっう…宇田川先生!あ…すぐに伺います!宇田川先生何だって?うちの連載の第1話を今書いて下さってるそうです!
(どよめき)すごいわはなさん!お手柄よ!行ってきます!宇田川先生…。
話しかけないで!ここまで来たら一気呵成よ。
(時計の音)出来たわ。
宇田川先生ありがとうございます。
「銀河の乙女」ですか!すばらしいです!傑作です!特にここ。
「『スピカスピカ。
おお私の美しい星よ』。
ルカはささやきました。
『二度とこの地球に帰ってこられなくてもいいの』。
その時銀河の女王が見えない翼をルカにそっと授けました」。
そこ実は私も一番気に入ってるの。
そして2週間後
お待たせしました!
ついに「にじいろ」の創刊号が完成しました
よし!いい出来だ!
そのころ英治は…
(英治)香澄。
今日はどう?
(香澄)新しい雑誌?うん。
郁弥が初めて担当した童話雑誌なんだ。
あいつ早く君に届けろってうるさくて。
フフフ。
この絵…あなたが描いたのね。
…うん。
絵描きになるのは諦めたんじゃなかったの?才能がないからね。
でも…これはすてきだわ。
この童話郁弥がイギリスで買ってきた本を翻訳したものなんだ。
女性の翻訳者なんて珍しいわね。
君は「にじいろ」創刊号の読者第1号だから忌憚ない意見を聞かせてくれ。
じゃあ心して読ませて頂きます。
そんなある日の事です
一体どういう事?とっくに書店に並んでる「にじいろ」創刊号が私のとこに届いてないんだけど。
宇田川先生?ごきげんよう。
ごきげんよろしい訳ないでしょ。
はなさん。
宇田川先生に創刊号お渡ししてなかったの?
(息をのむ音)いつまでたってもくれないからこちらから取りに伺いました。
誠に申し訳ありません!宇田川満代も随分となめられたものだわ。
本当に…何とおわびしたらいいか…。
本当に申し訳ありません!もう結構よ。
先生。
二度とこのような不手際がないようにしますので今後ともご執筆よろしくお願いします。
先生…。
(梶原)先生申し訳ありませんでした。
一方福岡の蓮子は…
「君ゆけばゆきし淋しさ君あればある淋しさに追はるるこころ」。
恋の歌をつづってしまうほど蓮子は龍一に引かれていたのです。
そして一通の手紙が英治のもとに届きました
何だよ…これ…。
一体どうして…。
分からないよ!兄さんこそ心当たりはないのか?
(英治)香澄!これは一体どういう事なんだ。
そこに書いたとおりです。
どうして急に別れたいだなんて…。
あなたの心の中には…私ではないほかの女の人がいる。
君と別れるつもりはない。
いいえ!別れて下さい。
死ぬのを待たれるのは嫌なの。
(風鈴の音)実は義姉さんが兄と離婚したいと言いだしたんです。
てっ!?
(醍醐)英治さん離婚するんですか!?醍醐さん!お姉やん…。
失恋から立ち直りかけていたはなはすっかり混乱してしまいました。
そして蓮子のもとにも手紙が届きました
(龍一)「前略脚本の第2稿無事に届いております。
これにて上演するつもりです。
稽古への立ち会い是非に願いたく思います」。
そのころはなにまたまた事件が
(梶原)次号の「銀河の乙女」は2ページ増やすという事で…。
でもまた「文芸東洋」と締め切りが重なりそうなのよね。
私でお力になれる事があれば何でもおっしゃって下さい。
・
(雷鳴)・
(雨の音)
(宇田川)あらやだ。
雨?この傘貸して。
あっそれは…。
何?私に貸したくないの?ああいえ…。
じゃあお借りするわ。
何なの?あなた。
これだけは…持っていかんでくりょう…。
聞いた?この人担当の作家より傘の方が大事なんですって。
宇田川満代は傘以下って事?じゃあ原稿も傘に書いてもらえばいいじゃないの。
私お宅の雑誌にはもう書かないから。
その傘に書いてもらいなさいよ。
まあまあ先生。
作家を見下す最低の編集者じゃないの。
こんな人辞めさせて。
分かりました。
編集長…。
安東は宇田川先生の担当から外します。
ではごきげんよう。
(ドアが閉まる音)安東お前…ずっとどうかしてるよな。
しばらく会社に出てこなくていい。
そんな抜け殻みたいなやつはうちにはいらない。
(かよ)お姉やん。
甲府に帰れし。
つらくてつらくてどうしようもねえ時は逃げたっていいと思うだ。
おかあのほうとう食えばきっと元気になるさ!かよ…。
こうしてはなは甲府に帰りました
ただいま。
あれ…。
(ふじ)え〜?ブドウ酒造りてえだと?
(吉平)ほうだ。
日本一のブドウ酒を造りてえ!あんたまたとんでもねえこん言いだして…。
はなちゃん?てっはな!おかあおばさんただいま。
てっ!はな!グッドアフタヌーン。
おとう!おお…グッドアフタヌーン…。
いきなり帰ってくるなんてびっくりするじゃん。
出版社はどうしただ?こんなとこにいて大丈夫なのけ?うん!あ…新しい雑誌が出来上がって一息つけたからお休みもらっただよ!ほうか。
早く見してくれちゃ。
ほの雑誌。
ああ。
…ごめん。
忘れた。
(吉平)え〜?忘れた?こんにちは!おお朝市!あっ朝市。
はな久しぶり!うん。
おかあから聞いて持ってきただ。
(吉平)おお。
(朝市)学校で校長先生や生徒らと読んだだよ。
はなの翻訳した「王子と乞食」!てっ!はなが翻訳しただけ!後でおらにも読んでくりょう。
うん!朝市わざわざありがとう。
はな。
こんな大事なもん忘れるなんてはなどうかしてるじゃん!「にじいろ」おかげさまで評判もよくて次の号の問い合わせもたくさん入ってます。
それはよかった。
英治が聞いたら喜びます。
英治君奥さんの病院?実は英治は離婚したんです。
離婚?
(平祐)嫁の方から別れてほしいと言ってきまして英治は最後まで納得しませんでしたが嫁の意志が固く…。
そうでしたか…。
ところがあいつは夫婦でなくなった今も病室に通い続けています。
(ドアが開く音)ただいま。
あ…梶原さん。
やあ待ってたんだよ。
梶原さん。
今夜はゆっくり息子の愚痴でも聞いてやって下さい。
いろいろ大変だったみたいだな。
はい。
俺も一度結婚に失敗してる。
僕は2人の女性を傷つけてしまいました。
(梶原)安東君は甲府の実家に帰した。
ここんとこずっとうわの空だったからね。
申し訳ありません。
どんな道を選ぶかは君次第だ。
だが後悔だけはするな。
そしてはなは翻訳をしようと原稿用紙に向かうのですがこの辞書を引く度に英治の事を思い出してしまうのでした
今度こそ忘れてやらあ!
(朝市)はな!なんて事するでえ!英語の辞書じゃんけ。
もう見たくないから捨てるだ!はな!やめろし!ほっといてくりょう!ほっとける訳ねえら!こんな大事なもん投げ捨てたら罰が当たるら!はな…。
「もう見たくねえ」ってどういうこんでえ?「今度こそ忘れてやる」ってどういう意味でえ?朝市…。
ごめん…。
おらに…言いたくねえような事け?ごめん…。
東京で傷ついて帰ってきただけ?顔見た時から分かってたさ。
(ため息)おら…好きになったらいけん人を好きになっちまった。
奥さんがいる人だって知らなんで…本気で好きになっちまっただ。
いつまでここにいるでえ。
ここでじっとしてても何にも変わらんよ。
はなはもう立派な大人じゃん。
自分でこぴっとけじめつけんきゃいけんよ。
落ち着いたらこぴっと東京へ帰れし。
おかあ…。
母ふじに励まされはなは東京に戻りました
よし。
面白い!もう大丈夫みたいだな。
はい!ご心配おかけしました。
一方手紙をもらった蓮子は上京し龍一と会っていました
死ぬほど会いたかった。
はっ…。
蓮子さん…。
そんな恐ろしい事できないわ…。
待ってくれ蓮子さん!ごめんあそばせ。
あ…あなたは…どうしていっつも転ぶの?
(笑い声)
そして英治のもとには訃報が
兄さん…。
(梶原)三田!
(三田)はい。
(梶原)これ村岡印刷に届けてくれ。
私これから届けます。
お前には大仕事が待ってるだろう。
宇田川先生の原稿催促だ。
私とっくに宇田川先生の担当外されたんじゃ…。
彼女に首切られた編集者は数え切れない。
そこをなんとか強引に頭下げてねじ込むんだ。
それさえそろえば「にじいろ」秋号完成だ。
はい。
こぴっと頑張ります!・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
(はな)今度こそ忘れてやらあ!
(朝市)はな!なんて事するでえ!おら…好きになったらいけん人を好きになっちまった。
奥さんがいる人だって知らなんで本気で好きになっちまっただ。
おかあに全てを打ち明けたはな。
東京へ戻り忙しい毎日を送っていました
(かよ)お姉やん。
(武)ようはなたれ。
はな!てっ…朝市どうしたでえ?朝市はおらのお供だ。
おらはお父様の言いつけでブドウ酒を東京で売るために来ただ。
すげえなあ。
2人ともすっかり東京になじんでて。
(梶原)これは宇田川先生!「銀河の乙女」連載の中で一番評判いいんですってねえ。
それはもう。
「みみずの女王」がね早速単行本にしたいって言うの。
(2人)よろしくお願いします!私挿絵を描いてもらう人はもう決めてるの。
誰ですか?「王子と乞食」の挿絵描いてる人。
私創刊号からずっと気に入ってんの。
この人に頼んで。
その挿絵は英治がはなのために描いたものでした
早速村岡印刷さんに頼んでみます。
(醍醐)村岡さんと顔合わせるの久しぶりね。
ええ。
はなさんはもう大丈夫?醍醐さん。
その節はご心配おかけしました。
でももう本当に大丈夫。
今私の頭の中は仕事の事でいっぱいなの。
英治の妻が病気で亡くなってから半年がたっていました
おはようございます。
ごきげんよう。
(英治)どうぞこちらへ。
失礼します。
はなと英治の久しぶりの再会でした
こことここ。
1枚だけ宇田川先生の強い希望があります。
はい。
え〜っと…ここの部分に主人公ルカの絵を入れたいとの事です。
(郁弥)その挿絵どうして引き受けたの?えっ?いや…父さんが勝手に引き受けてきちゃったんだよ。
安東さんの頼みだから引き受けたんじゃないの?はなちゃんこっちよ。
蓮様!お待たせしてごめんなさい。
ううん。
今日は一段ときれい。
まあ…うれしい。
頂いたお手紙に「会わせたい人がいる」って書いてあったけれど。
そうなの。
実は今日彼もここに呼んでいるの。
てっ…えっ彼ってもしかして帝大生の?そう。
もうすぐ来るわ。
(ドアベル)
(かよ)いらっしゃいませ。
おおはなちゃん!久しぶりやね。
あなた…。
(嘉納)サイダー飲みよるか?あ…いえ…。
今夜は料亭で接待があるっておっしゃってたじゃありませんか。
いやまだ少し時間がある。
お前が欲しがっちょったもんが見つかったき渡そうと思うてな。
(嘉納)ほれ。
てっ…きれい…。
お前ここんとこしばらく元気がなかったきこれで機嫌も直るち思うておお東京中の宝石店やら百貨店やらハハッ探させたとばい。
ほら。
(かよ)てっ…こんなにきれいな宝石初めて見たじゃん。
こんなもの買うくらいなら貧しい子どもたちに寄付でもなさったらどう!?蓮子!でも蓮様すごくお似合いだったわよ!わがままなお姫さんたい。
ハハハハハハ!
(机をたたく音)
(ドアが閉まる音)ん?どげしたとか?もう帝大生の方とは会わない方がいいんじゃなくて?それは無理…。
今この瞬間も会いたいんですもの。
蓮様…。
あの人を思う気持ちを止められないの。
もう恋に落ちてしまったんですもの。
やっと分かったの。
私がこの世に生まれて今まで生きてきたのは彼と巡り会うためだったの。
はなちゃんなら分かるでしょう?はなちゃんも村岡さんの事をそう感じたから好きになったんでしょう?そんな事…。
そりゃあちょっとはパルピテーションを感じてしまった瞬間はあったけれどそんなのはとっくに昔の話よ。
村岡さんははなちゃんにとってたった一人の巡り会うべき人じゃなかったのかしら。
いかがでしょうか?これは銀河の乙女ではないわ。
あとの絵はいいけどこの絵は描き直してちょうだい。
分かりました。
もう一度読み直して描いてみます。
よろしく。
宇田川がどんな銀河の乙女を求めているのか英治にはイメージする事ができません
もう一度読み返してみたんです。
はなは英治のために「銀河の乙女」を読み返しメモを作りました
参考になればよいのですが…。
すごく助かります。
メリークリスマス。
この日はカフェーのクリスマスパーティー
おお随分人が集まってるな。
(龍一)お祭り騒ぎだな。
たまにはいいだろ。
かよちゃん。
強い酒をくれ。
はいただいま。
龍一さん。
石炭王とご一緒じゃないんですか?あの日はごめんなさい。
お目にかかって謝りたかったの。
どうも。
お久しぶりじゃん。
あの…。
はなたれんとこの地主の徳丸武でごいす。
蓮子さん。
お久しぶりです!あら朝市さん!お懐かしいわ。
龍一さん…。
(嘉納)蓮子!
(龍一)これはこれは石炭王の嘉納伝助…様ではありませんか。
フフフ…よかご機嫌やな。
何しよった?遅いき迎えに来たばい。
へえ〜お優しいご主人だ。
お前の知り合いか?…いいえ。
行くぞ。
あっちで運転手が待ちくたびれちょるき。
さあ。
待てよ!待ってくれ…。
行かないでくれよ!酔っ払いたい。
相手するとやなか。
英治さん。
挿絵の調子はいかがですか?それが…なかなか難しくて。
宇田川先生はもしかしたら英治さんだけの銀河の乙女を見たいんじゃないかしら。
それは…どういう事ですか?銀河の乙女は誰の心にもいると思うんです。
英治さんの心にもきっといるはずです。
僕の心にいる…。
・「Twinkle,twinkle,littlestar,」大変!はなさんいつの間にあんなに酔っちゃったの?あっ…。
・「Upabovetheworldsohigh,」あ〜!はなに英語の辞書を贈ったのはあんたですか?はい。
そうですけど…。
あんたに言っておきてえ事がある。
はなは…甲府に帰ってきた時あの辞書を捨てようとしたです。
回想今度こそ忘れてやらあ!
(朝市)はな!なんて事するでえ!ほんな大事なもん投げ捨てようとするなんて…びっくりして止めました。
ほん時のはなは…おらが見た事もねえような悲しい目してたです。
(朝市)あの辞書をくれたあんたの事必死に忘れようとしてただと思います。
今は元の明るいはなに戻ったみてえに見えるけんどやっぱりおらには違って見えます。
(朝市)はなはきっともうおらの知らんはなになっちまった…。
あんたのせいじゃないですか?あんたもはなの事が好きならはなの気持ちこぴっと受け止めてやってくりょう。
ちょっと待って下さい…。
朝市さんこそはなさんの事が好きなんじゃないんですか?おらははなが好きです。
(英治)そんなに思ってるなら…あなたが彼女と結ばれるべきだ。
はあ…まだ分からんだけ。
おらじゃ駄目じゃん!あんたじゃなきゃ駄目どう!あ〜…。
兄から預かってきました。
挿絵出来たんですか?はい。
すてき…。
これは…はなさんよね。
えっ?だってほらこの女の子想像の翼を広げてる。
てっ…。
福岡の蓮子の自宅に龍一から手紙が届きました
(龍一)「あなたはあのご主人と別れる事はできない。
それがよく分かりました。
もうこれでおしまいにしましょう。
さようなら。
筑豊の嘉納夫人」。
どげんしたとか?ん?お願いです!東京へ行かせて下さい!…駄目だ。
俺が上京するまで行ってはならん。
それなら私はこの家を出ていきます!何やと?私と離縁して下さい!何を言いよると!ほんなこつお前どげんしたとか!お願いです!私を…自由にして下さい!いいじゃない。
ではそれで進めさせて頂きます。
(英治)花子さん。
大事な話があります。
(英治)花子さん。
自分の気持ちから逃げるのはもうやめる事にしました。
僕の人生にはあなたが必要なんです。
結婚して下さい。
ごめんなさい。
それはできません!お姉やん…。
僕はあなたをいっぱい傷つけたんですね。
何て謝ったらいいのか言葉が見つかりません。
でも自分を許せないなんてそれだけはどうか思わないで下さい。
ほうだよお姉やん。
お姉やんは幸せになっていいだよ。
ほんなに好きになれる人はお姉やんの前にもう現れんだよ。
村岡さん。
お姉やんのこん幸せにしてやってくれちゃあ…。
お願えします!よろしくお願い致します。
お姉やん…。
よかったね…。
本当によかったね…。
ほうだけんど…何でかよが先に返事するでえ!・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
(英治)僕の人生にはあなたが必要なんです。
結婚して下さい。
(はな)ありがとうございます。
よろしくお願い致します。
(かよ)お姉やん…よかったね…。
本当によかったね…。
(郵便配達員)電報です。
おお〜。
大みそかにご苦労さんでごいす。
ご苦労さんでごいす。
おお!はなからだと。
「会わせたい人がいる」だとう。
てっ。
会わせてえ人…。
はなは英治を連れ甲府に戻ってきました
おとう。
おかあ。
ただいま帰りました。
どうぞ。
お邪魔します。
(吉平)ああほうけ。
お宅は印刷会社をやってるだか。
ほれじゃあはなの出版社の本も印刷してるだか?はい。
村岡さんは私が翻訳してる「王子と乞食」の挿絵も描いて下さってるの。
へえ〜!あの挿絵描いたの君だったか!あれはいい絵だったじゃんね〜!ところで…お義父さん…あの…今日は…大事なお話があって伺いました。
え〜っと…そのですね…。
あの…。
いや〜村岡さん!もう英治君でいいら?はい…。
俺は君の事が気に入ったぞ。
ボコの頃から本が大好きなはなにぴったりの相手じゃん。
はなのこん嫁にもらってくれちゃあ。
このとおり。
え…。
(ふじ)てっ!おとうが先に言っちゃ駄目じゃんけ!おとう!村岡さん困ってるじゃん!ああいえ…。
てっ!アハハハハハ!
(鐘の音)ここが花子さんの一番好きな場所ですか。
はい。
そうだ花子さん。
ここで結婚式をやりましょう。
結婚式?はい。
この甲府で。
そしていよいよはなと英治の結婚式の日です
(「ローエングリン」結婚行進曲)
(森)出席されている皆さんのうちでこの結婚に正当な理由で異議のある方は今ここで申し出て下さい。
ありませんか。
(平祐)異議あり!てっ…。
父さん…。
私はこの結婚には反対します。
はなのどこが不満だっちゅうだ!英治には結婚したら家に入って夫を支える嫁を迎えたい。
仕事を続けるなど言語道断!ちょっと父さん…。
俺も異議ありじゃん!てっ…おとう!こんな古くせえ考えの舅の家に嫁いでもはなは幸せになれん!ちょっとあんたなにょう言うでえ!ほうだよおとう。
(もも)落ち着いてくれちゃ。
ほれならおらも異議あり!てっ!おかあ…。
おばさんまで!?
(小声で)朝市。
おまんこそ異議があるじゃねえだけ?ほら反対しんとはなちゃん結婚しちもうよ。
異議なし!おらも異議なし!異議なし!
(郁弥)異議なし!
(周造)そうさな…異議なし!今…おじぃやんが…。
ほれじゃ俺も異議なし!アイタ…。
父さん…。
異議なしと認めます。
では続けましょう。
村岡英治さん。
はい。
安東はなさん。
あっすいませんちょっと待って下さい。
はなではなく花子と呼んで下さい。
(笑い声)お姉やんまた言ってる。
分かりました。
では誓約して頂きます。
村岡英治さん。
あなたは安東花子さんを妻とし生涯愛する事を誓いますか?はい!誓います!
(森)そんなに大きな声で返事をした人は後にも先にも初めてです。
(笑い声)花子さん。
あなたは英治さんを夫とし共に歩み生涯愛する事を誓いますか?はい。
誓います。
(周造)そうさな。
(シャッター音)
甲府で結婚式を挙げてから1年半たちました
安東はな改め村岡花子です
いい天気だね…。
花子のおなかには赤ちゃんがいます。
この日は蓮子が伝助と共にやって来ました
蓮様!
(蓮子)はなちゃんすごくきれい。
やっぱり村岡さんははなちゃんの巡り会うべきたった一人の人だったのね。
(嘉納)ほう…。
ねえあなた。
赤ちゃんが生まれたらすぐに会いに来たいの。
蓮子のやつまたすぐに東京に来ようとしちょるとばい。
ねえ来てもいいでしょう?分かった。
分かった。
ありがとうございます。
え〜さあそろそろ行くばい。
じゃあはなちゃんまたな。
ええ。
蓮様是非いらしてね。
はなちゃん赤ちゃんが生まれたらすぐに知らせてね。
私元気な赤ちゃんを産むわ。
待ち遠しいわ。
「たらちねの母と呼ばれてこの家にわが幸は満ちあふれけり。
花子」。
そして花子と英治には元気な男の子が誕生しました。
名前は歩です。
そのころカフェードミンゴでは…龍一たちが蓮子との駆け落ちの計画を話し合っていました
やるんだろ?ああ。
計画は既に練ってある。
いつだ?3日後の夜だ。
はなちゃんとこの子に祝いを買うたとか。
ええ。
うれしそうやな。
だって3日後の今頃ははなちゃんと赤ちゃんに会えるんですもの。
蓮子の胸は高鳴っていました。
蓮子にとって牢獄のようなこの屋敷を出てついに愛する人と駆け落ちするのです
駆け落ちの当日龍一と蓮子は夕方5時にカフェーで待ち合わせていました
いらっしゃいませ。
そちらへどうぞ。
いやあっちでいい。
そして蓮子は伝助に「はなと赤ちゃんに会いに行く」と嘘をつき出かけようとしていたのです
あなた。
ありがとうございました。
何か?きんつばぐらいで大げさやき。
ハッハッハッハ。
ごきげんよう。
・「高く碧い空が落ちてきたとしても」・「海が轟いて押し寄せたとて」・「貴方がいる限り私は恐れない」・「愛する心に恐れるものは無い」蓮子さん?蓮子さん…。
ごきげんよう。
蓮子さんいなくなったのかと思った。
どうして?そんなに心配ならあの人に手紙を書くわ。
手紙?この手紙を龍一さんに託します。
あなたへの愛の証しですから。
ありがとう。
蓮子。
ごめんください!朝早くにすみません!醍醐です!どうしたんですか?これ!見て下さい!
(英治)絶縁状?蓮様…。
嘉納さん。
今日の新聞に奥様の記事が…。
何やと?旦那様…。
うちはいつかこげな事になるとやないかと思うちょったとです!ばってん新聞に絶縁状載せるちゃここまでひどい女や思わんやったばい!ぜ…絶縁状!?
(タミ)旦那様!こげな…!
(黒沢)嘉納さん…冷静に聞いて下さい。
蓮子さんの手紙の全文がここに公開されています。
(嘉納)何ち書いちゃると!?早よ読め!「嘉納伝助様。
私は今あなたの妻として最後の手紙を差し上げます」。
「ご承知のとおり結婚当初からあなたと私との間には全く愛と理解とを欠いていました。
愛なき結婚が生んだ不遇と思い私の生涯は暗い一生で終わるものと諦めていたのです。
しかし幸いにして愛する人に巡り会う事ができました。
私はその愛によって今復活しようとしているのでございます。
ともあれ10年の間欠点の多いこの私を養って下さったご恩に感謝します」。
しかし…なぜこのような手紙が新聞に載ったのでしょうか…。
こげなもん!こげなもん!うう〜!こげなもん!あ〜っ!こげな…もん!あ〜!
(ガラスが割れる音)うう〜!ううう…。
(ガラスが割れる音)
(泣き声)ああ〜!
しかしこの時蓮子はあの手紙が新聞に公開されているとは知らなかったのです
蓮子は何もかも捨ててたった一つの夢をつかんだのでしょうか
・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
(花子)蓮様ちっとも来てくれませんね。
生まれたらすぐ来てくれるっておっしゃってたのにね。
蓮子は嘉納伝助への絶縁状をしたためました
この手紙を龍一さんに託します。
本来公表されるはずのない絶縁状。
ところが…
(醍醐)これ見て下さい!
(英治)絶縁状?蓮様…。
こげなもん!こんな恥さらしな事がございましょうか!あなた…。
(葉山)誰か!蓮子を捜させろ。
今すぐにだ。
必ず連れ戻せ!かしこまりました。
どうしてこれが!?
(龍一)一体どういう事だ…。
蓮子の手紙は投函するはずだったろう。
なぜ新聞に載ってる?俺たちが新聞社に持ち込んだんだ。
俺たちを売ったのか!?龍一さん!俺はお前を信用して蓮子の手紙を託したんだ!新聞に載せるために渡したんじゃない!落ち着け!2人を売ろうと思って新聞社に持ち込んだ訳ではない!だったらなぜだよ!これは革命だと言っただろう。
持たない者が持つ者から奪う。
女房から夫に絶縁状を出すなんて前代未聞の事だ。
どうせやるなら世間に衝撃を与えるようなやり方の方がいい。
そうだろう?ふざけんな!俺は革命のために蓮子を連れ出したんじゃない!彼女を自由にしてやりたかっただけだ!
(戸をたたく音)はい。
嘉納蓮子について話を聞かせて下さい。
駆け落ちした帝大生の事は知ってましたか?何でもいいんで話して下さい!・
(歩の泣き声)歩!本当に何も知りません!
(記者たち)いやいやいや…。
失礼します!失礼します!花子さん!何なんですかあなたたち!英治さん…。
ひょっとしたらここに嘉納蓮子をかくまってるんじゃないですか?かくまってなんかいません!ちょっと…。
やめ…帰ってくれ!
(吉太郎)いい加減にしろ!度が過ぎる!兄やん…。
新聞記者を呼べ…。
(タミ)えっ?旦那様?こっちもあの女に反論するったい!
(醍醐)結納金だのお小遣いだの歌集の出版費だの嘉納伝助さんの主張はお金の事ばかり!きっと嘉納さんは愛情を表現するのが不器用な人なんだと思う。
(醍醐)私ずっと蓮子様はぜいたくな暮らしがしたくて石炭王と結婚したと思ってたの。
でもそれは誤解だってこの記事を読んで分かったわ。
蓮子様はお家の犠牲になっていたのね…。
きっとこの10年帰る所もなくて遠い福岡でさみしい思いをなさってたんだわ…。
兄吉太郎からの情報をもとにはなは蓮子の居場所を訪ねます
ここだわ。
私は二度とはなちゃんに会うつもりはなかったわ。
会わす顔ないもの。
花子に会いに行くと言ってご主人の前からいなくなったそうですね。
ええ。
子どもが生まれたら顔を見に来てくれるって言ったのもあれも全部嘘だったの?そうよ。
駆け落ちの計画を周到に立ててあなたを利用したの。
(英治)あの…いくら何でもそれはひどいんじゃないですか?花子はあなたが失踪してから心配で夜も眠れなかったんですよ。
今頃どこでどうしてるのかって家族みたいに心配してたんですよ。
ご迷惑おかけしました。
こんな私とはもう関わらない方がいいわ。
お帰り下さい。
私帰らないわ。
ちょっと2人にして。
私今すごく怒ってる。
道ならぬ恋はやめろとはなちゃんず〜っと言ってたものね。
こんな騒ぎを起こした私を軽蔑した?軽蔑なんて…。
でも怒っているんでしょう?ええ。
これ以上怒った事がないっていうぐらい怒ってるわ。
蓮様…今初めて正直に生きようとしてるんでしょう?はなちゃん…私ね人を愛するってどういう事か初めて知ったの。
あふれ出てくるの。
どんどん…。
それをあの人に分けてあげたいの。
ほかには何も望まないわ。
身分も何もかも捨てて…あの人と生きていきたいの。
ねえ蓮様。
これ覚えてる?修和の庭で書いたしおり…。
蓮様あの時からこう言ってたわ。
一番欲しいものは燃えるような心。
誰かを本気で愛したいって。
その夢がかなったのね。
よかった…。
本当よかった。
世間が何と言おうと私は蓮様の味方よ。
はなちゃん…。
それなのに蓮様ったらもう二度と会えなくてもいいなんてひどいわ!それで…はなちゃん怒ってたの?そうよ!許せないわ!もう会えなくてもいいだなんて。
はなちゃん…。
ごめんなさい!本当に…ごめんなさい…。
はあ…。
駆け落ち騒動から8か月が過ぎました。
歩もすくすく育っています
さあ蓮様のとこ行きましょうね。
蓮子と龍一は龍一の父の古い友人の家に身を寄せていました
あっうちの子も…動いたわ。
あっおかえりなさい。
(2人)お邪魔してます。
龍一さんどうしたの?つけられていたようだ。
えっ!?いよいよここも危険になったようだな。
そんな…。
でもどこへ行けば…。
(ふじ)よ〜しよしよし。
蓮子ははなの実家に身を寄せる事になりました
蓮様足元気を付けて。
ごきげんよう。
お父様初めまして。
よく来たね蓮子さん。
おかあ…。
この度はお世話になります。
(吉平)自分のうちだと思ってくつろいでおくんなって。
ありがとうございます。
一方龍一は村岡家に
(戸をたたく音)貴様か…。
貴様やったんか…。
蓮子はどこじゃ…。
言わんか!蓮子はどこにおるとか!?ここにはいません。
とぼくんな!蓮子はどこじゃ。
どこじゃ!嘉納さん?言わんか!嘉納さんいけません!暴力はいけません!嘉納さん!嘉納さん!嘉納さん!おかあのほうとうやっぱり天下一品です。
蓮子は連れて帰るき居場所を教えろ!あんたのもとには帰さない!俺たちは一生一緒だと誓ったんだ!貴様!自分の立場が分かって言いよるとやろな!訴えるなら訴えろ!そのくらいの覚悟とっくにできてんだよ!やっぱしぶっ殺しちゃる!嘉納さん!やめて下さい嘉納さん!蓮子はどこか!?やめて下さい嘉納さん!蓮子さんはおなかに赤ちゃんがいます!…何?もうじき生まれるんです。
こいつの子か。
はい。
フッ…。
ハハハハ…。
ハハハハハハ!ハハハハハハハ!ハハハハハハハ…。
(嘉納)金額は好きなだけ自分で書け。
嘉納さん…。
出産祝じゃ。
こんな金は要らない。
お前にやるとやない。
蓮子への祝い金じゃ…。
私にもお手伝いさせて下さい。
ほんなこんしなんでいいから。
あっ!蓮子さん!大丈夫!?ええ…。
すぐに横になった方がいいら。
大変だ。
産婆さん呼んでこんと!あっ大丈夫です。
少し立ちくらみがしただけですから。
大丈夫け?
(歩の泣き声)
(郵便配達員)電報です。
ご苦労さまです。
宮本さん!電報です!
(かよ)大変じゃん。
すぐに行かんと!かよちゃんごちそうさま!あっ。
(リン)大変大変!怪しい男が来るだよ!怪しい男?見るっからに怪しい男に「安東さんちはどこか」って聞かれたさ!逆の方指しといたけんど!まさか…蓮様がここにいるっていう事知られたずらか?蓮子さんおらたちがこぴっと守るから心配しなんでいい。
あっこの男じゃん!おまんなにょうしに来ただ?あの…こちらに…。
龍一さん!蓮子!てっ!てっ!君に渡せと。
伝助の会社の番頭が置いていった封筒でした
実は…この間嘉納さんと会って話をしたんだ。
初めは話し合いなんてもんじゃなかった。
村岡さんがいなかったらどうなっていたか分からない。
でも嘉納さん最後は分かって下さったんですね。
(吉平)龍一君飲もう。
(龍一)頂きます。
ボコが元気に生まれてくる事を祈って乾杯!
(龍一朝市)乾杯!おとうの早とちりのおかげで龍一さん来て下さってよかったわね。
ええ。
(吉平)龍一君。
こぴっと精進して立派な弁護士になれし。
はい。
ほうしていい父親になるだよ。
はい。
これからはきっといい事ばっかりよ。
はなちゃんお父様おかあリンさん朝市さん。
ありがとうございます。
ありがとうございます。
その翌日
(戸が開く音)どちらさんですか?なにょうするでえ!来い!何ですかあなたたち!やめて!逃げろし!イテテテテテテ!あ〜!蓮子さん逃げろし!逃げろし蓮子さん!お兄様…。
連れていけ早く!
(男たち)はい。
やめて!乱暴はやめて!やめて!やめてちょうだい!おまんら!妊婦に寄ってたかってなにょうするだ!やあ!あ〜!誰か!駐在さん呼べし!駐在さん!駐在さん!やめて下さい!お兄様!もうやめさせて下さい!お兄様!?…って事は伯爵様け!こんなろくでもねえまねする伯爵もいるだけ!?あっ!あ〜!どうして妹にこんなひどい事ができるの!?はなちゃん…。
蓮様にもやっと愛する家族ができたのよ!家族の誰にも愛された事ない蓮様がようやく愛を見つけたのに!なぜお兄さんのあなたがそれを引き裂くの!?蓮様だって幸せになっていいじゃないですか!もういいのはなちゃん。
おかあリンさんはなちゃん…。
お世話になりました。
何があってもこの子は私が守るってそう龍一さんに伝えて。
蓮様…。
必ずまた会えるから。
・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」どうして妹にこんなひどい事ができるの!?はなちゃん…。
家族の誰にも愛された事ない蓮様がようやく愛を見つけたのに!なぜお兄さんのあなたがそれを引き裂くの!?蓮様だって幸せになっていいじゃないですか!
花子の実家にいた蓮子は兄に見つかり連れ戻されてしまいました
蓮子は生まれてくる子を守るためならどんな辱めでも受ける覚悟をしていたのです
・
(醍醐)ごめんください!はなさん!醍醐さんごきげんよう。
どうなさったの?お邪魔してもよろしくて?お話があるの。
お客様?あっ紹介するわ。
宮本龍一さん。
この方が…。
おめでとうございます!
(龍一)…えっ?蓮子様無事に男の子を出産なさったんです。
赤ちゃんの名前?はい。
男の子か…。
純平…。
葉山家に幽閉されていた蓮子に花子はようやく会う事ができました
蓮子さん。
この事はお兄様にはないしょですよ。
私が叱られるんですからね。
はなちゃん!蓮様…。
はなちゃんよく来てくれたわね。
私赤ちゃんを産んだのよ。
元気な男の子よ。
坊やは…坊やはどこ?この家にいるわ。
乳母が面倒を見ていて私は会えないけれど。
そんな…。
どうしてですか?母親がおなかを痛めて産んだ子に会わせてもらえないなんて!・
(赤ちゃんの泣き声)坊やもお母さんに会いたくて泣いてるじゃないですか!蓮様私が連れてくるわ。
ちょっと…通して下さい。
行かせて下さい!わ…分かりました!今連れてきますよ!本当に…なんて強引な人なのかしら。
(ドアが閉まる音)これ…龍一さんから預かってきたわ。
純平…。
この名前を龍一さんが…。
少しだけですよ。
あ…坊や!まあ…なんてかわいらしい赤ちゃんなの!よかったわね。
お母さんにだっこしてもらえて。
さあもうよろしいでしょう。
お願いします。
もう少しだけ…。
(園子)連れていってちょうだい。
ちょっと…待って下さい。
申し訳ございません。
乳母が育てるのは華族の家のしきたりです。
純平!早く連れていきなさい!あなたももうお帰り下さい。
私こんなの許せないわ!赤ちゃんを母親から取り上げるなんて!はなちゃんもういいの。
そんな…。
もし希望を見失いそうになったら想像の翼を広げてみて。
え…?親子3人で幸せに暮らす日の事を思い浮かべるの。
それから1年がたとうとしていました
皆さん!この「にじいろ」秋号をもって創刊号から連載してきた「王子と乞食」の翻訳がついに完結となりました。
翻訳者の村岡花子先生本当にご苦労さま。
皆さん本当にありがとうございました。
では乾杯!
(一同)乾杯!ありがとう。
(拍手)あっ!I’vegotanidea!何だよ急にびっくりするじゃないか。
郁弥さん。
何?いい考えって。
「王子と乞食」を一冊の本にしませんか?単行本を出版するのね。
これだけ好評なんですもの。
いい案だわ。
梶原さんいいですよね。
(笑い声)お姉やんすごいじゃん!兄さん。
装丁に工夫を凝らして今までの日本にない美しい本にしようよ。
イギリスに負けないくらい!そうだな。
やってみるか!うん。
この日はかよの誕生日。
郁弥はかよに求婚をしにやって来ました
よし。
(小声で)あなたは僕の女神だ…。
あなたは僕の…。
(時計の音)かよさん。
ハッピーバースデー!お誕生日おめでとう!
(バイオリン)てっ!?かよさん。
あなたは僕の女神です。
てっ…。
僕と…結婚して下さい。
(拍手)いよっご両人!おめでとう!おめでとう!おめでとう!かよさん?郁弥さんの…バカっちょ!かよさん!?
(平祐)ごめんくださ〜い。
やあ花子さん。
ごきげんようお義父様。
ほら歩。
おじいちゃま来て下さってよかったわね。
(平祐)ん?ほう…。
(地震の音)
大地震が関東地方の南部を襲いました
歩…。
歩?お義父様?うう…ここだ。
歩は無事か!?はい!うわっ!
花子は親とはぐれた近所の子どもたちを預かっていました
大丈夫よ。
そうだ!何か面白いお話をしましょうか。
どんなお話がいいかしら。
そうね…。
「ナミダさん」というお話はどうかしら。
花子は子どもたちを力づけたい一心で必死に想像の翼を広げお話を作ったのです
「昔ある所にあんまり泣くのでナミダという名を付けられた小さい娘がありました。
何か思うようにならなければナミダさんは泣きました」。
「するとカエルは『なぜかって言われたらもうじきお嬢さんの周りに涙の池が出来るだろうと思いましてね』」。
英治さん…。
みんな…無事でよかった…。
(歩)パパ。
無事だったか!英治さんお帰りなさい。
心配したのよ…。
帰ってくる途中そこいら中火の海でこの世のものとは思えない光景だった…。
無事だった社員を帰したあと郁弥とかよさんを捜しにカフェードミンゴに行ってみたんだけど…火事があちこちで起こっていて捜すのは諦めて帰ってきたんだ…。
もう一度行ってくる。
(園子)誰か!誰かいないの!?お兄様お義姉様ご無事だったんですね。
(園子)蓮子さんどうして…。
乳母がもう田舎に帰るからと私のところに純平を連れてきてくれたんです。
・
(足音)龍一さん…。
行こう。
迎えに来たんだ。
この子が純平か…。
はい。
(園子)蓮子さんお待ちになって!あなたも…。
(葉山)もう自由にしてやれ!あなた…。
さあ行きましょう。
かよ?かよ!無事だっただけ。
お帰り…よかった…。
かよを捜しに行った英治が戻ったのは震災から3日後の事でした
(英治)火災に巻き込まれて…郁弥は逃げきれませんでした…。
人違いじゃないのか?そんな…。
震災から5日後。
吉平たちが甲府から救援物資を持ってやって来ました
この辺りはだいぶ無事みてえですね!ああ。
はな…かよ…無事でいてくりょう!せ〜の!お〜い!はな!無事け〜!?てっ!おとう!お義父さん!朝市さんも!来てくれたんですか!英治さん!はな!朝市!よかった!無事で…本当よかった!おとう…。
おおかよ!
(朝市)おじさんもおばさんも本当に心配してただよ!
(吉平)本当にみんな無事でよかった!かよ…。
おとう。
おらたちは無事だったけんど郁弥さんが…。
かよ…。
ありがとう。
どうぞ!皆さん!たくさんありますから召し上がって下さいね。
はなさん!醍醐さん!無事だったのね。
まあ甲府の皆さんもごきげんよう。
(武)て〜っ!梶原さんたちは…。
はい。
梶原さんも皆さんもご無事です。
原稿や本は全て燃えてしまったけど…。
あっねえ醍醐さんも召し上がって。
おとうたちが甲府からいろいろ持ってきて作ったの。
醍醐さんどうぞ。
ありがとうございます。
頂きます。
おいしい!よかった。
(正男)ありがとう。
かよ…まるで感情をどこかになくしてきてしまったみたいなの。
(朝市)かよちゃん。
うちのおかあがいつか言ってただ。
おとうが死んじまった時ここがギュ〜ッて締めつけられるみてえで苦しくてたまらなんだって。
ふんだけんどけがが治るみてえに自然と…心のつらさもよくなる。
ふんだからかよちゃんも…きっと大丈夫だ!私にもほうとうを頂けるかしら。
はい。
蓮様…。
(英治)龍一君!はなちゃんも皆さんもよくご無事で。
その節はお世話になりました。
蓮様もう葉山様のお屋敷からは解放されたのね。
龍一さんが純平と私を救い出しに来てくれたの。
想像の翼を広げてこの日が来るのを待っていたのよ。
お姉やん…。
何?かよ。
もう一遍だけでもいいから…郁弥さんに会いてえ。
かよ…。
郁弥さんあんなにすてきな求婚してくれたにおら…恥ずかしくって店を飛び出しちまったさ。
どうしても…郁弥さんに伝えてえこんがあるだ。
回想かよさん。
僕と…結婚して下さい。
はい…。
おらをお嫁さんにしてくれちゃあ。
(泣き声)会いてえ…。
郁弥さんに会いてえ…。
(泣き声)
かよは悲しみから立ち直れるのでしょうか
お姉やん…。
・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
(英治)火災に巻き込まれて…郁弥は逃げきれませんでした…。
そんな事どうして分かるんだ?もう一度捜しに行く。
父さん…。
捜してみなきゃ分からないじゃないか!郁弥はもういないんです!
(かよ)お姉やん…。
もう一遍だけでもいいから郁弥さんに会いてえ。
大震災から半年。
人々は悲しみを乗り越え復興に向けて歩き始めていました
父さん。
一日も早く会社を再建したいんです。
(花子)郁弥さんの遺志を継いで「王子と乞食」の単行本を作りたいんです。
回想「王子と乞食」を一冊の本にしませんか?装丁に工夫を凝らして今までの日本にない美しい本にしようよ。
郁弥さんからもらった「王子と乞食」の原書のおかげで翻訳の仕事を続けてこられたんです。
だから恩返しのためにも是非実現させたいんです。
よかったわね。
一方蓮子は…
・
(浪子)蓮子さん!蓮子さん!はい!遅い!あなたねえ伯爵家から正式に籍を抜かれてもう華族様じゃないのよ。
こちらも平民として扱います。
あっな…何その絞り方は!もっとちゃんと絞って!はい。
お義母様。
お…遅い…。
遅い〜…もうイライラするね〜…。
家事も満足にできないような嫁は出てってもらうよ!はい!お義母様!村岡印刷を再建するならいっそ出版社を兼ねた印刷会社にしたらどうかしらって。
そうすれば「王子と乞食」の単行本も出版できるでしょう。
そうか確かに。
その手があったな!よし。
じゃあ出版と印刷の両方ができる会社を作ろう。
ええ。
(平祐)何を言ってるんだ。
あの恐ろしい震災からまだ半年しかたってないんだぞ。
住む所も着る物も何も足りていないのに誰が物語の本なんか買うんだ。
父さん…。
かよは屋台で働いていました
いらっしゃい。
…てっ!かよちゃんごきげんよう。
おいしい。
ひょっとして家出でもしてきたですか?まさかですよね。
そのまさかなの。
てっ?私…今夜は帰りたくない。
私ってそんなに遅いかしら?これでも精いっぱい急いでやっているのよ。
お掃除もお炊事もお洗濯も。
大丈夫。
家事は慣れです。
そのうちできるようんなりますよ。
そう?
かよは蓮子に家事を教える事になりました
こうするとしわが伸びるですよ。
(たたく音)面白い。
蓮子さん。
左手は軽く丸めて押せえると切りやすいですよ。
あっ本当だわ。
ただいま。
お帰り。
お帰り。
ねえかよ見て。
英治さんが「王子と乞食」の装丁描いて下さったのよ。
こういうしゃれた装丁なら郁弥さんも喜んでくれるらね。
ほんなこんしても意味ないじゃん…。
かよ?おやすみなさい。
何かあったの?お姉やんたちは郁弥さんの夢をかなえようとして頑張ってる。
ほれでも郁弥さんは…。
郁弥さんの時計はあの日からずっと止まったまんま…。
前に進まんきゃいけんのかな…。
おらは…このまま止まっていてえ。
郁弥さんのいた時間に…。
てっ!はなちゃん久しぶりやね。
はなちゃんはまた本を書いて出さんとか?ええ…。
出したいと思っているんですけどこのご時世ですからなかなか難しくて。
東京はこげんありさまやきこげん時こそあんたの本を待っちょる人がほかにも大勢おるとやろね。
嘉納さん…。
もう一つ聞きたい事がある。
な…何でしょう?蓮子は無事に暮らしちょるか?はい。
震災のあと龍一さんと坊やと一緒に暮らせるようになって蓮様も人並みにお姑さんの事で苦労なさってるみたいですよ。
ああ…。
そうか。
邪魔したな。
いえ…。
あの…。
ちょっと一杯やりませんか?そういえばはなちゃんとかよちゃんはこの人の事を褒めていたわね。
「怖そうに見えるけどきっと苦労人で優しい人だ」って。
はい。
それなのに…あのころの私はこの人のいいところなんて一つも見ようとしていなかった。
自分で心を閉ざしてしまって…。
しかたなかったろ。
今思えばこん人は気の毒な花嫁じゃった。
俺は金ん力で買えんもんは何一つないち思ちょった。
ばってんこの年になってやっと分かった。
金の力ではどうにもならんもんが一つだけある。
俺の負けたい。
蓮子…しゃん。
はい。
今…幸せか?はい。
そうか。
ごちそうになった。
元気でな。
あなたもお元気で。
ごきげんよう。
さようなら。
さあ!今夜は神楽坂中の芸者呼んでどんちゃん騒ぎたい!醍醐さんが声をかけてくれて修和の同級生たちがこんなにお金を送って下さったの。
皆さんのお気持ちに必ず応えましょう。
そうだね。
何年かかっても必ずやり遂げよう。
父さん!父さん!印刷機が買えます!「王子と乞食」を出版できるんです!まさか…。
(英治)本当です。
銀行が融資してくれたんです。
嘉納伝助さんが口を利いて下さって…。
(平祐)そうか…。
あっもう少し…あっあっ…上がり過ぎちゃった。
もう少し下げて。
これくらい?うん!完璧よ。
たくさんの人たちの力を借りて青凜社が誕生しました
・きっと予約の電話よ!花子さん早く出ないと!はい青凜社でございます。
・
(電話交換手)甲府からです。
おつなぎします。
・
(武)もしもし?はなたれけ?てっ…武…。
はな!会社設立おめでとう!朝市…ありがとう。
ほれにしてもはなたれのくせに新聞に広告出すなんて生意気じゃんけ。
武…。
はな!「王子と乞食」生徒にも読ましてえから1冊予約頼むじゃん!てっ…朝市ありがとう!おお朝市。
電話代もってえねえから。
なっ。
ああっ!武…。
まだ話が…。
(電話が切れる音)
「王子と乞食」の予約第1号は朝市でした
ついに「王子と乞食」の本が刷り上がりました
出来ただね…。
かよ。
てっ…きれい。
郁弥が好きだった勿忘草
時間は止まっちゃあいんだね。
回想よく似合います。
結婚したら子ども何人ぐらい欲しいですか?てっ…。
僕はいっぱい欲しいんですよ。
かよさん。
あなたは僕の女神です。
結婚して下さい。
郁弥さん…。
ありがとう…。
かよ…よく似合う。
お姉やん…。
止まっていたかよの時間がまた動き出しました
2年後かよは必死で働き小さいながらも自分の店を持ちました
(時計の音)今日はお集まり頂き本当にありがとうございます。
お客さんがおなかいっぱいになって元気んなれるような店を目指してこぴっと頑張りますのでどうぞごひいきに。
さあ乾杯しましょう。
かよさん開店おめでとう。
乾杯!
(一同)乾杯!ありがとうございます。
おめでとう。
(拍手)久しぶりに3杯目飲んじゃおうかしら。
お姉やん!
(英治)花子さん!はなちゃん!冗談よ!冗談よ…。
ねえ歩ちゃん。
歩!
もうすぐ5歳になる歩
「トムは王子に言いました。
『たった一度でいいから王子様が着ていらっしゃるような着物を身につけたいと思います』」。
花子にとって毎晩こうやって歩にお話を聞かせるのが最高に幸せな時間でした
(歩)王子とトムはそっくりだもんね。
そうね。
・「これからはじまる」・「あなたの物語」・「ずっと長く道は続くよ」・「虹色の雨降り注げば」・「空は高鳴る」・「眩しい笑顔の奥に」・「悲しい音がする」・「寄りそって今があって」・「こんなにも愛おしい」
大震災から3年目の夏。
歩はもうすぐ5歳になります
(花子)歩ちゃん!おじぃやんとおばぁやんが来てくれたよ。
(吉平)歩〜。
グッドイブニ〜ング!
(歩)おじぃやんおばぁやんグッドイブニング!てっ歩!もう海水着着てるだけ?歩ったら明日が待ち切れなんで朝から大騒ぎさ!ああ〜こんだけてるてる坊主つるしゃあ明日はきっと晴れるら。
(雨の音と雷鳴)歩ちゃん…。
海水浴はまた今度ね。
やだ。
みんなで海水浴するんだもん!
(泣き声)歩ちゃん。
みんなと一緒にお弁当食べましょう。
雨なんか嫌いだ!ずっと降らなきゃいいんだ!「今日のようにある暑い夏の朝の事です。
小さなひとひらの雲が海から浮き上がって青い空の方へ元気よく楽しそうに飛んでいきました。
ずっと下の方には下界の人間が汗を流しながら真っ黒になって働いておりました」。
「あんまり太陽の光線が強いので人々は時々空を見上げては雲に向かって『ああ…あの雲が私たちを助けてくれたらな』」。
さあ雲は何て言ったと思う?「助けてあげるよ」って。
そうね。
「下へ下へと人間の世界に下っていった雲はとうとう涼しいうれしい夕立の滴となって自分の体をなくしました」。
(英治)ほら。
まあ…。
雲は死んじゃったんだね。
ええ…。
でもね雲が降らせた雨で苦しい苦しい暑さからたくさんの人や動物や木や草花が救われたのよ。
じゃあ雨の事嫌ったらかわいそうだね。
うんそうね。
今日は雨で海に行けなくて残念だったけど今度の日曜日行こうね。
うん。
僕分かったよ。
(平祐)ん?何だ?歩。
雲はね雨を降らせて消えちゃったあと虹になるんだよ!ほうね!お別れにお空の虹になったんだ。
歩は神童に間違いありませんよ!いや〜全くじゃん。
(笑い声)
ある日の事。
花子に新しい翻訳の依頼がありました
(梶原)大急ぎで翻訳してもらえないだろうか。
はい。
是非やらせて下さい。
・「こっちがママアのダアリング」お母ちゃままだお仕事?歩と海に行きたいからこぴっと頑張ってるんだよ。
邪魔しないようにしような。
分かった。
そして日曜日がやって来ました
お母ちゃま起きて!早く海に行こうよ!てっ…。
もう朝…。
しまった!寝ちまった!早く!海海海!どう?行けそう?まだこれだけ…。
お母ちゃまの嘘つき。
締め切り間に合いそう?ええ。
今夜頑張ればなんとか。
お母ちゃま…。
どうしたの?歩ちゃん。
僕お熱があるかもしれないよ。
本当だわ。
随分高いお熱よ。
風邪ひいたのか。
(英治)歩?歩ちゃん?歩!?英治早く医者を呼べ。
はい。
歩ちゃん。
(平祐)歩!先生…歩は?
(医者)残念ながら疫痢の可能性が高い。
(英治)疫痢…。
そんな…。
(医者)もうお時間がないので抱いてあげて下さい。
花子さん…。
お母ちゃま。
何?歩ちゃん。
僕が「お母ちゃま」と言ったら「はい」ってお返事するんだよ。
お返事しますとも。
お母ちゃま。
はい。
お母ちゃま…。
はい。
お母ちゃま…。
…ちゃま。
はい。
はい!歩ちゃん?歩…。
その日の明け方歩は息を引き取りました
(郵便配達員)電報です。
(蓮子)歩君が…。
はなちゃん…。
(戸が開く音)
(英治)花子さん。
蓮子さんが来て下さったよ。
はなちゃん…。
蓮様…。
歩…。
「お母ちゃま…お母ちゃま」って…。
はなちゃん…。
歩…。
(泣き声)歩!
(泣き声)はなちゃん…。
(泣き声)
蓮子が再び花子のもとを訪れました
はなちゃん…。
こんな事しかできなくてごめんなさい…。
蓮様…。
ありがとう…。
「あすよりの淋しき胸を思ひやる心に悲し夜の雨の音」。
「母と子が並びし床の空しきを思いやるなりわれも人の親」。
「われにさへけさは冷き秋の風子をうしなひし君がふところ」。
蓮子から贈られた歌の数々が花子を仕事に向かわせました
英治君。
これ。
申し訳ない事をしたかもしれないな…。
「歩ちゃん。
あなたと一緒にこのご本を読みたかったのですよ」。
「でももうあなたは天のおうちね…。
お母ちゃまはバカでしたね…。
こんなに早く天国に行ってしまうなら仕事ばかりしていないであなたのそばにずっといてやればよかった…」。
(雨の音)「雨が降ってきました…。
お母ちゃまの心にも雨が降っています…。
かわいいお宝の歩ちゃん…。
お母ちゃまの命はあなたの命と一緒にこの世から離れてしまったような気がします」。
(泣き声)英治。
花子さんどこ行ったんだ?ゆうべ徹夜したのでまだ寝てるはずですが…。
いや…どこにもいないぞ。
えっ?はなちゃんいなくなったんですか?すみませんが連絡があったら教えて下さい。
(戸が閉まる音)
(浪子)早まった事考えなきゃいいけどね。
えっ…。
父さん!おお…。
花子まだ戻ってませんか?ああ。
僕が目を離したりしなければ…。
おばさんナミダさんのお話して!僕はみみずのフト子さんの話がいい!はなちゃん!花子さん!心配したよ…。
早くに目が覚めてしまって…散歩に行っただけよ。
僕を置いて一人で歩のところに行こうとしたんじゃない?海に連れていけばよかった…。
仕事なんかしないで…海に行けばよかった…。
行きましょうよ…。
これから海に行きましょう。
もうここに来る事もないと思ってたわ。
思い出なんてつらいだけだもの。
仕事なんてしないでもっとそばにいてやればよかった。
もっと私がちゃんと見ていれば歩ちゃん…あんなに早く天国に行く事もなかったのに…。
花子さん!そんな事ないって!私みたいな母親のところに生まれてこなければ歩はもっと幸せになれた!私の子になんか生まれてこなければよかったのに!花子さん!それは違うよ!歩言ってたんだ。
「神様に頼んだ」って。
回想神様と雲の上から見てたんだ。
そしたらお母ちゃまが見えたの。
雲の上から?お母ちゃま英語のご本を読んだり紙にお話を書いたり忙しそうだったよ。
でも楽しそうだった。
だから神様に頼んだの。
「僕はあの女の人のところに行きたいです」って。
歩がそんな事を…?歩は本当に君を選んでこの地上にやって来てくれたような気がするんだ。
君は歩が選んだ最高のお母さんじゃないか。
はなちゃん!てっ…。
回想僕分かったよ。
雲はね雨を降らせて消えちゃったあと虹になるんだよ!そうね。
お別れにお空の虹になったんだ。
英治さん。
私もっと忙しくなってもいい?これからすてきな物語をもっともっとたくさん子どもたちに届けたいの。
歩にしてやれなかった事を日本中の子どもたちにしてあげたいの。
大賛成だよ。
はなちゃん…。
歩…。
ありがとう…。
花子は書き始めました。
歩に話してやったお話を思い出しながら
2014/12/29(月) 13:05〜15:30
NHK総合1・神戸
「花子とアン」ダイジェスト こぴっと一挙放送!「大正編」(2)[字]
あの感動をもう一度!連続テレビ小説「花子とアン」を第14週から第20週まで「大正編」をダイジェストでお送りします。
詳細情報
番組内容
(第14週)はな(吉高由里子)は、村岡(鈴木亮平)が忘れられずにいた。仕事は手に付かず失敗を繰り返し、出勤停止を言い渡される。失恋から立ち直れないはなは、甲府へ帰ることに。(第15週)はな(吉高由里子)は、新しく出版される本の挿絵を、村岡(鈴木亮平)に依頼しに行く。「本職でない」と断わる村岡だが、父・平祐(中原丈雄)に挿絵を描くよう促される。
出演者
【出演】吉高由里子,伊原剛志,室井滋,鈴木亮平,黒木華,窪田正孝,松本明子,高梨臨,中島歩,中村ゆり,町田啓太,山田真歩,藤本隆宏,吉田鋼太郎,中原丈雄,仲間由紀恵
原作・脚本
【原案】村岡恵理,【脚本】中園ミホ
キーワード1
連続テレビ小説
キーワード2
花子とアン
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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